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ダークホースと呼ぶには強すぎる〜アジアカップ2023カタール大会 グループD第2戦 イラク代表vs日本代表 マッチレビューと試合考察〜

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そういえばblue-ingも行かねえと

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビューAFCアジアカップ2023グループD第2戦、イラク代表vs日本代表の一戦です!

 

 

 

アジアカップ2023観戦ガイドを作成しました!コンテンツは随時更新しておりますので、是非ご活用くださいませ!

 

2023年のJリーグを振り返る記事も色々更新しています。それらの記事はこちらにまとめておりますので是非!

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

 

 

アジアカップ初戦、大きく羽ばたいた日本代表と、その礎の一部に携わったフィリップ・トルシエのピッチ上での邂逅というドラマチックなシチュエーションがその舞台だった訳ですが、日本の弱点というよりは発生した粗をこれでもかと刺されるような試合展開に持ち込まれて大苦戦。反省点や課題は大きく出ながらも、最終的には個の力で捩じ伏せる…ある意味ではトルシエに対して、この国のスタンダードの成長を一番強く見せつけるような結果で執着しました。

 

 

アジアサッカーの中で絶対的な競技力を持っているのは、やはり日本、韓国、イラン、サウジアラビア、オーストラリアの5ヶ国。それ以外の国は基本的に「こいつらをどうやって倒すか」「こいつらをどうやって出し抜くか」が大きなポイントになってきます。その点で言えば、今日対戦するイラクはまさしくその第二勢力とも言える集団です。

ルイス・エンリケの右腕も務めたことがあるヘスス・カサス率いるチームはポゼッションスタイルでメキメキと実力をつけていますが、イラクは元々中東諸国の中でも技術の高いチームとして知られていました。2007年にはアジアカップ優勝経験も有しており、ロシアW杯最終予選のグループで同居した時も大苦戦。「優勝候補とまでは言わずともダークホースと呼ぶには強すぎる」…それがイラクの立ち位置でしょうか。

 

そして、今回の舞台はカタールです。

カタールでの日本vsイラク…今の日本代表を率いる男が青のユニフォームに袖を通す立場だった30年前、そこに待っていたのは悲劇でした。

 

 

30年をかけて、その記憶を一つずつ塗り替えていこうとしている日本代表。その歴史はもう全てを白に返せるような時代がもう訪れています。

両チームスタメンです。

 

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日本は初戦のベトナム戦からメンバーを2人変更。ベトナム戦では中村敬斗、細谷真大が先発していましたが、今日は南野拓実を左サイドで起用した上でトップ下に久保建英を置き、ワントップには浅野拓磨が入りました。ベトナム戦ではベンチを外れた冨安健洋と中山雄太がベンチに名を連ねており、欠場が続く三笘薫に加えて渡辺剛と野澤大志ブランドンがベンチを外れています。

 

 

 

本日の会場はカタール、ライヤーンのエデュケーション・シティ・スタジアムです。

 

 

カタールW杯用に建設された7つのスタジアムでは2番目に早くオープンしたスタジアム。多くのスタジアムが2021年にオープンしましたが、当会場は2020年中にオープンした事もあって2020年のACLやクラブW杯でも使用されました。スタジアム名はカタール財団が1997年に設立したエデュケーション・シティという教育機関エリアの中に設置されている事が由来で、カタールW杯用に建設されたスタジアムはアラビア要素を全面に押し出したスタジアムが多い中、ここは比較的モダンな造りのスタジアムですね。

W杯では8試合が開催されましたが、チュニジアのフランス撃破や韓国のポルトガル撃破、さらにモロッコのスペイン撃破やクロアチアのブラジル撃破もこの会場だったので、図らずも多くのジャイキリが生まれた場所という事に…。

 

 

しかし試合は出鼻を挫かれる展開になります。序盤からイラクに押し込まれる形になると、リズム良く両サイドに振りながらワイドにボールを回してきたイラクに対し、日本の守備陣はその攻撃とテンポに振り回される形になってしまいます。

5分、右サイドから左に大きくボールを展開すると、ジャシムが左サイドを抉ってクロス。一度はGK鈴木が弾きますが、こぼれ球にいち早く反応したアイメン・フセインが合わせてゴールイン。試合開始早々、イラクが先制点を獲得する事に…。

 

 

なんとか反撃に出たい日本はサイドのスピードを活かしての突破を試みていましたが、イラクの日本に対するプレスのかけ方に巧く嵌め込まれる形になっていました。日本の最終ラインに対しては判断の時間と選択肢を奪うようにコースを高い強度で潰す守備で詰め、SBやサイドラインでは徹底的に潰しに行く。ただ少し中に入った時にはスッと中央を固める守備にシフトする…そういうプレスの辞め時の判断と共有を含めたプレスのかけ方が抜群に上手く、日本は前がかりになりながらもイラクの守備網をなかなか崩せない時間が続きます。

 

 

 

ただ、全体的に前がかりになる日本は両SBのところから攻撃の起点が作りにくくなると共に位置だけが高くなってしまう状況が続いており、そこに対するイラクのサイドからのカウンターを谷口と板倉の2CBで対応せざるを得ない状況が続いていました。遠藤がどうにか戻ってカバーしていた事もあって追加点はどうにか耐えていた日本でしたが、とうとう決壊したのは前半アディショナルタイム。左サイドでラインギリギリのボールを残したアルハッジャージが菅原を振り切って左サイドを突破。エリア内に侵入してクロスをに入れると、ファーサイドに走り込んだアイメン・フセインがまたしてもヘッドを叩き込んで遂に被弾…。

 

 

迫り来るイラクの猛攻と効果的な守備のシステムの前に完全に嵌め込まれる形になった日本。想定以上の苦戦を前に、2点ビハインドで前半を終えます。

 

 

日本は後半から谷口を下げて冨安を投入。しかし53分にはワイドに開いた日本のDF間を突かれる形で決定的な場面を作られ、これは菅原がなんとか戻って阻止したものの…日本にとっての苦しい時間は続きます。

それでも日本は久保を右、伊東を左にした4-2-3-1にシフトすると、後半は伊東と浅野のスピードでいくつかチャンスを創出。56分には伊東のクロスに飛び込んだ浅野が倒されて一度はPKの判定が下されますが…VARの末にPKは取り消し。日本は61分に浅野と久保を下げて上田綺世と堂安律を投入します。

 

 

 

いずれにしても後半の日本はサイドでのスピードを手に入れ、それに対してイラクも前半と比べると守備での疲労も見えてきた事で、日本はポケットのスペースに堂安や伊東が度々入り込んで折り返す事でチャンスは作れるようになっていました。しかしイラク守備陣もサイドは日本に崩される格好になりながらも最後の最後の中央は固めてシュートは許さず、日本はフィニッシュまでなかなか持ち込めない展開に。67分に南野が倒されて得た堂安のFKも、その弾道は僅かに落ち切らず…。

 

 

 

74分には守田と伊東を下げて前田大然と旗手怜央を投入し、前田を左サイド、旗手と南野を2シャドーにした4-1-4-1にシフトして攻め立てようと試みます。81分には伊藤のクロスに堂安が合わせるもタイミングが合わず、83分には右サイドを抉った南野のクロスボールに前田がドンピシャのタイミングで合わせましたが…これも枠を捉えられません。

それでもアディショナルタイム、日本はどうにか旗手の左CKをファーサイドの遠藤が合わせて1点を返します。

 

 

その後もセットプレーでの混戦から堂安が決定期を迎えましたがシュートは掬い上げてしまう形になり……試合終了。

日本はイラクに対してまさかの敗北。あと1点が届かずイラクの決勝トーナメントが決まり、日本の決勝トーナメント進出の行方は最終戦に委ねられる事になりました。日本のアジアカップグループステージでの敗北は1988年大会のカタール戦(●0-3)以来となります

 

 

 

まず大前提に、冒頭で書いたように……イラクはダークホースと呼ぶには強すぎる実力は元々持っているチームで、この黒星は例えば最終予選のオマーン戦ほど想定外すぎる黒星ではない、というところは前提にあります。イラクは昔からサッカーに於いては育成年代からしっかりとしたコンセプトの下で育成を行っており、才能頼みではなく各々の選手にしっかりとベースが備わっている。そこに対してヘスス・カサス監督が戦術とゲームプランを上乗せさせた事で高い競技力を備えている…というところは忘れてはならないポイントです。

その上でイラクはプレスの掛け方がすごく上手かった。日本のDFラインにはコースに沿いながら強度を高くプレスをかけてサイドに逃がしていく。そしてサイドに出る時に生じるミスパスや、サイドエリアに追い込んだところをしっかり潰す。逆に中に入ってきたらしっかりとブロックを組んでもう一度サイドに逃がす…その守備の連携をするにあたって、個人としてもチームにしても2つのモードを切り替える判断を的確に行い、そしてそれをしっかりと共有した。それで前半の日本は効果的なチャンスをほとんど作れませんでしたし、後半はイラクも運動量が落ち、個の能力はやなり日本が上回っている事もあって押し込めはしましたが、その原則はイラク側はしっかり持っていた事もあって、押し込んでいたイメージほど日本はシュートを良い形では打てていないんですよね。運動量と個のパワーで形勢こそ入れ替わっても、イラクはそういう原則は守備としてしっかり持っていたんですよね。そこは日本が攻めきれなかった、イラクが逃げ切れた大きなポイントでしょう。

 

 

また、イラクは日本に刺すようなカウンターをきっちりと切り出せていたところも大きかったです。ビハインドを受けている立場、ましてや前評判や戦力、事前の予想では圧倒的に優位なチームがビハインドでそれを喰らった時には相当精神的な消耗を強いられる。これはいわば、カタールW杯の時に日本がスペインを相手にやった事でもあるんですけど……アジアカップではそういう立場に日本がなってしまう。そこでの精神的なバランスは整え切れていなかったように思います。

 

 

また……今日に関しては、森保監督の采配に関してももう少しやりようがあったのでは、という感覚はありました。前半はピリッとしなかった菅原が後半は守備面で頑張ってくれたとはいえ、前半からカウンター対応はほぼほぼ2CBだけでやる形になっていた中で、後半も谷口→冨安の交代だった事で数的なバランス自体に変化はなかったところであったり、浅野は結構イラクDFにストレスを与えていたと思うので、例えば3-4-2-1にして浅野を引っ張ったりとか、もう少しやりようもあったんじゃないか…とは感じましたね。

基本的に森保監督は、チームの最大公約数を見つけ出すマネジメントは実に上手い方だと思いますし、それこそが現在の日本代表の監督に適していると言える強みだと思いますが、今日に関しては逆に、少しそれを考えすぎた事が裏目ったというか、イラクに対して後手に回るというよりも効果を出しにくい戦いになってしまった部分はあったのかなと…。

 

 

地上波だったのに…

ではでは(´∀`)