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理不尽を操れ!〜アジアカップ2023カタール大会 グループD第1戦 日本代表 vs ベトナム代表 マッチレビュー〜

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京都サンガちゃんもうちょっと30周年のPR頑張ってくれ

 

どーもこんばんは

 

 

さてさて、本日のマッチレビューAFCアジアカップ2023カタール大会グループD第1戦、日本代表vsベトナム代表の一戦です。

 

 

 

アジアカップ2023観戦ガイドを作成しました!コンテンツは随時更新しておりますので、是非ご活用くださいませ!

 

2023年のJリーグを振り返る記事も色々更新しています。それらの記事はこちらにまとめておりますので是非!

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

 

 

日本代表史上最強───そのフレーズと印象は決して大袈裟な表現でもなければ、過大評価でもないでしょう。

1992年アジアカップ広島大会、あそこから始まった「全日本選抜」ではない「サッカー日本代表」としての活動は、同時期に開幕したJリーグと共に様々な道のりを歩み、時代を彩った名手達、欧州や南米から先進的な価値観と知見を授けた外国人指導者達…そこに関わった一人一人が日本代表に力を積み上げ、積み上げた力で挑んだ一つ一つの戦いで文脈を紡いでいった。全てが始まった1992年のチームの主軸だった森保一が監督まで登り詰めた今、日本代表は新しいステージへ足を踏み入れている…その事は間違いないと思います。

 

 

しかし、その印象はあくまでも感覚です。

感覚ではなく、それを確かなものにする為に必要なものは、結局のところは結果であり、トロフィーリフトの写真だけが後世に語られていく。それを日本代表は、それも文脈の一つであるブラジルW杯で学んでいるはずです。その為にもアジアカップ優勝は、日本が史上最強である為に埋めなければならないピースとなります。

初戦の相手はベトナム代表。率いる男はかつて日本代表を率いて「アジアカップ史上最強のチャンピオン」と呼ばれるようなチームを作って結果を残した、日本が史上最強と呼ばれるに至るまでの文脈の中に確かな史跡を残し、今に積み上がる為の土台となった知見を大きくもたらした偉人です。恩返し弾なる響きは個人的にはあまり好みませんが、彼から受け取った知見と恩で偉人に刃を突きつけるところから日本の新時代は始まります。さぁ、アジアカップ開幕です!

両チームスタメンです。

 

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日本は堂安律や久保建英、上田綺世がベンチスタートとなり、2列目には伊東純也、南野拓実、中村敬斗とフランスでプレーする3人が並ぶ形になりました。正GK起用が予想されていた大迫敬介の負傷により注目されていたGKのポジション争いは初戦はパリ五輪世代の鈴木彩艶が担っており、アジアカップの日本代表GKとしては最も若い年齢での先発出場となっています。三笘薫、冨安健洋、中山雄太は今日はベンチを外れました。

フィリップ・トルシエ率いるベトナムは、ある種彼のトレードマークでもあるような3バックシステムをベトナムでも採用。ベトナムは守護神のダン・バン・ラムなど負傷者の影響もある中で、19歳のグエン・ディンバクをスタメンに抜擢するなど、思い切った采配も見せてきました。

 

 

 

本日の会場はカタール、ドーハのアル・トゥマーマ・スタジアムです。

 

 

今大会の会場となる9つのスタジアムのうち、7つが昨年のカタールW杯でも使用されたスタジアムで、このアル・トゥマーマ・スタジアムもその一つ。このスタジアムではカタール代表の第2戦となったセネガル戦も開催され、この地はカタールがW杯で初得点を挙げた場所ともなりました。また、モロッコ代表はグループステージで最初のジャイキリを起こしたモロッコ戦、突破を決めたカナダ戦、そしてアフリカ勢初のベスト4を決めたポルトガル戦もこの会場だったので、モロッコにとってはまさしく聖地のようなスタジアムになりましたね。アラブ地域の伝統的な帽子である「カフィーヤ」をモチーフにした外観は特徴的ですね。

 

 

3バックでブロックを固めたベトナムに対して、日本は全体的に高い位置を取りつつSBの菅原と伊藤にパスを振りながらベトナム守備陣をこじ開けようと試みていました。

なかなか隙を見せないベトナムに対して、ややハイテンポではありながらも焦れている感じでもなく、シュートはなかなか打てずともしっかりと二次攻撃まで繰り出していた日本は11分に中村のスルーパスから伊藤がCKを獲得。伊東がファーに蹴り込んだ左CKが板倉に当たってこぼれたところに走り込んだ菅原のミドルシュートは相手にブロックされるも、エリア内に転がったこぼれ球を南野が冷静に決め切って先制!

 

 

…しかし、幸先の良い展開の気持ちよさは一瞬にして誤算を突きつけてきました。

失点直後の16分、ベトナムはほぼ初めてくらいの攻撃を見せるも、左サイドのグエン・ディンバクに対しては日本の守備陣がしっかり対応してチャンスになる前に阻止。しかしこのプレーで与えたCKをドオ・フンズンが極端にニアに蹴り込むと、遠藤の前に割って入ったグエン・ディンバクがバックヘッドで合わせたボールがゴールに吸い込まれてまさかの同点。日本からすれば先制点に冷や水を浴びせられるような展開に。

 

 

日本は試合展開こそ押し気味に進んでいましたが、予想外の被弾で焦燥感をもたらしたのか…同じ同点でも先制するまでの攻め方と追いつかれてからの攻め方ではやや日本が攻め急ぎ始めるような感覚に陥り始めていました。その中でも23分に守田のパスを受けた南野が良いミドルを放つも僅かに枠外。

逆に前傾的になったところをベトナムのロングボール攻勢とスピード勝負に持ち込まれる格好になり、33分にはこの試合で存在感を放つ19歳、グエン・ディンバクがカウンターで抜け出したところを谷口がたまらず倒してしまってFKを献上。

 

 

 

遠い位置からのベトナムのFK。ファン・トゥアンタイが蹴り込んだボールに対しブイ・ホアン・ベトアインがヘディングシュート。しかしスリッピーなピッチと不規則なバウンドを前にGK鈴木の弾きが甘くなったところにファム・トゥアンハイが猛然と走り込んでなんと逆転。圧倒的日本優位と目された初戦は想定外の展開へ。

 

 

まさかの事態に目に見えて焦燥感が漂っていました。焦って前がかりになる中でベトナムのブロックの前に立ち止まり、逆にこぼれたところを迷いなく突いてくるベトナムにカウンターを喰らいかける場面が多く訪れてしまうという…想像したくない「この試合で負ける場合のパターン」を地で行くような流れに日本は少しずつ飲み込まれていきます。

 

 

 

しかしそれでも前半終了間際、直前に細谷に良い形でのシュートチャンスがようやく訪れていた日本は遠藤の縦パスをエリア内でフリーで受けた南野がGKの位置を踏まえた巧みなコントロールシュートで同点!

これで落ち着きと平常心を取り戻した日本はその直後、中央をドリブルで持ち運んだ南野のパスを左で受けた中村敬斗がこれこそが中村敬斗!!!と言いたくなるような一撃を突き刺して逆転!!

 

 

一旦はどうなることか的な恐怖に陥った試合。どうにか前半のうちにリードし返して前半を終えます。

 

 

後半から日本は細谷を下げて上田綺世を投入。

前半は同点、或いはビハインドの時間が長かった事もあってアタッキングサードに果敢に入り込む、そこに対して人数を多くかけるような戦い方をしていましたが、リードを奪った立場となった後半は日本は割り切った戦い方にシフトしていきました。基本的に日本は前半やタイ戦で見せたような二次攻撃、三次攻撃をしっかり繰り出すやり方を理想としつつも、ベトナムが迷いなくカウンターを狙ってくるがゆえに、後半はそこまでラインを押し上げず、あえてコンパクトにはしすぎないようなスタンスを選択。それゆえに前半ほど攻撃機会が多い訳ではなかったものの、前半よりも試合をコントロールしたような状態で試合は進行していきます。

 

 

 

63分には中村を下げて堂安律を投入して伊東を左サイドにスライド。基本的に人数をかけるよりも前線のタレントに委ねる形で攻撃を展開し、割りかし落ち着いた流れでゲームを作りつつ、74分の上田のシュートシーンなど随所にチャンスを作っていきました。

77分に菅原と守田を下げて毎熊晟矢と佐野海舟、84分には南野を下げて久保建英を投入。85分には中央突破を試みると遠藤の縦パスから堂安→久保と繋いで最後は上田でチェックメイト

 

 

4-2。日本にとっては想像よりも遥かに難儀な初戦となりましたが、ある意味ではトルシエ監督に日本サッカーが理不尽さを持つようになった成長を見せつける形で初戦を飾りました!

 

 

 

やや序盤から攻め急いでいる感はあったとは言えども、基本的に日本は全体を押し上げて二次攻撃、三次攻撃を繰り返していきたい訳ですから、先制点を取るまでの流れは基本的には予定通りだったと思います。

しかし唐突な同点弾を許して焦燥感が募ったところに、ベトナムが引いて構えてブロックを組む→日本が行き詰まる→パスが少しズレる→ベトナムが一気にスプリントという流れを徹底して繰り返されてしまった。おそらくトルシエ監督はベトナムの選手達にタスクを相当クリアにして託しており、それに対してベトナムの選手も異常な集中と反射神経、そして日本のボールを引っ掛けた時にチーム全体でGOサインを出すかのようなカウンターの走り方……。そういうゲームプランの落とし込みや徹底させる力であったり、フィリップ・トルシエってやっぱりそういう能力に長けた監督なんだろうなと。

 

 

日本としては結構マズイ部分はいくつかあったと思います。細谷と2列目の間の連携であったり、そこで若干行き詰まるような瞬間が前半は散見されていましたし、後半は「コンパクトになりすぎない」を良い意味で実践出来ていましたが、前半はそれが完全に間延びになっていた。そこをトルシエベトナムにモロに突かれる形になったので反省材料は多いです。

一方、日本はやっぱり個人能力であったり、能力的なところでのクオリティはアジアレベルではもう群を抜いています。ベトナム視点でこの試合を評するなら「理不尽」の一言だったのではないでしょうか。反省点は多々あれど、日本がそういう試合をできるようになった事はこの国のスタンダードが底上げされた表れでしょうし、完璧に落とし込んで完全に遂行させたゲームプランを理不尽で破壊されたトルシエは相当悔しかったとは思いますが、同時に一抹の感慨深さも覚えてくれたのではないでしょうか。間違いなくそういう次元に至るまでの文脈の中にトルシエとその時代は大きな足跡を残した訳ですからね…。

 

 

トルシエ(cvダバディ)「グエンディンバク髪を赤く染めろ!!」

ではでは(´∀`)