RK-3はきだめスタジオブログ

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ROMANTIC 2024〜2026年北中米W杯アジア最終予選グループC第1戦 日本代表 vs 中国代表 マッチレビューと試合考察〜

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絶対定期

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビューは FIFAワールドカップ2026アジア最終予選 グループC第1戦、日本代表 vs 中国代表の一戦です!

 

 

 

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オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

 

 

「目標はW杯でベスト8に行く事」

森保一がプレーヤーとして青の鎧を身に纏っていた頃、日本代表はとにかくW杯という舞台に立つ事を必死で目指して走っていました。むしろその時代ですら日本にとっては劇的に進化していた時代であり、多くの時代でサッカー日本代表はW杯なんて夢のまた夢。それが今となってはこの段階から「W杯での目標」を語るようになり、最終予選は突破する事が当たり前……そういう時代に突入している事は隔世の感を感じるものがあります。

しかしながら、W杯に出て当たり前というシチュエーションがもたらす別個のプレッシャーに計り知れない大きさがあり、日本代表は前回大会にその恐怖を強く強く味わった事でしょう。誰もが「行くと信じている」というより「行かない未来を想像していない」という状況の中でプレーする事は、かかるプレッシャーの量だけで言えばW杯よりも重いかもしれない。ましてや今の選手達は殆どの選手がドーハの悲劇以降に生まれているどころか、多くの選手がジョホールバルの歓喜の後に生まれています。口で言うほどこの環境で強いられるサバイバルは容易なものではなく、そして心地よい舞台とは言えないものがあるでしょう。

しかし世界の強国と比べても、本格的に力を入れてから急激なスピードで成長と飛躍を遂げるサッカー日本代表は、訪れるそういう局面を前にする以前に予選という舞台を粛々と勝ち続け、今や中国がかつての日本が韓国やサウジアラビアを見たような目で見ている…そういう高みまでやってきました。言葉にし難い、せまりくる圧のようなプレッシャーを前にしても、粛々と勝利を積み重ねていく…紡いだ歴史を繋ぎ合わせる為に必要なのはそういう勝利。さぁ、歴史をつなぎ、歴史を超える為の2026年の門戸がいよいよ開きます。

両チームスタメンです。

 

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日本は6月のシリア戦と同様に堂安律を右WBとして起用した3-4-2-1を最終予選初戦のシステムたして採用しました。左WBにはアジアカップ以来の代表復帰となる三笘薫を先発に起用。南野拓実久保建英がシャドーを組み、3バックは谷口彰悟を中心に板倉滉を右、町田浩樹を左に配置。GKは鈴木彩艶をスタートに持ってきました。

中国の監督、ブランコ・イバンコビッチは前回カタールW杯のアジア最終予選初戦オマーンを率いて日本を撃破した智将……日本にとっては因縁の相手です。

 

 

 

本日の会場は埼玉県さいたま市埼玉スタジアム2002です。

 

 

2002年日韓W杯の開催に向けて建設されたスタジアム。最終的には横浜国際総合競技場(日産スタジアム)に渡りましたが、一時はW杯決勝戦開催地となる可能性もありました。

圧倒的な熱量を誇る浦和レッズの本拠地であると共にサッカー日本代表のホームスタジアムとしても使用されており、特に開場以降のアジア最終予選埼スタ以外のスタジアムで開催されたのは僅か4試合のみですから、日本代表にとっても聖地は国立、本拠地は埼スタという感覚が強くなっている事と思いますが、意外にも埼スタでの日本代表戦はカタールW杯以降初めてであり、2022年3月のカタールW杯最終予選のベトナム戦以来。2023年は芝の張り替えの影響もあって代表戦が行われませんでしたが、埼スタ開場以降で日本代表戦が行われなかったのはコロナ禍で国内での代表戦自体が開催されなかった2020年を除けば昨年が初めてとなりました。

 

 

開始早々にも守田英正のボールキープから上田綺世が収めて三笘にスルーパスを送る良い場面を作った日本。このプレーの後から中国は4-4-2ブロックをかなり低い位置で組んできました。

それに対して日本は中央のボランチ-上田のラインでボールをキープしつつ、左サイドは三笘の縦突破、右サイドは堂安と久保がポジションを入れ替える流動的なコンビネーション、その合間を南野が縫うように動く形で攻撃を展開。日本は11分に右サイドに流れた久保がクロスを入れると、逆に久保と入れ替わって中央にいた堂安がドンピシャで合わせるも…ヘッドは惜しくもGKワン・ダーレイがファインセーブ。

 

 

 

しかしそのプレーで得たCKでした。久保のゴールから離れるようにカーブをかけた左CKに対し、ファーに固まった日本は町田浩樹が動きをかけて相手DFを引きつけると、DFを引き連れた町田を追い越すように前に出た遠藤航がドンピシャのヘッドで合わせて日本先制!!

チームとしてデザインされたセットプレーの動き、完璧なタイミングで抜け出して相手を引き連れた町田、その一瞬を確実に捉えた遠藤、そこに完璧なボールを送った久保…完璧なセットプレー!!

 

 

日本は縦への鋭さと流動性の2局面を有した攻撃をしっかりと繰り出しながら圧倒的に優勢に試合を進めており、時折中国にロングボールからカウンターを喰らう場面もありましたが、そこまで谷口を中央にステイさせた上で町田や板倉が対峙しつつボランチが帰陣する形で上手く対応し、2点目が入らない事以外は概ね理想通りの展開で戦えていました。

32分には前に出てきた町田の縦パスに対し見事なターンで相手DFを置き去りにした上田が折り返すと堂安が相手DFと交錯しながら詰め、最後は堂安と守田、相手のGKとDFの4人がもつれ込む状態。守田のワンタッチを最後にゴールラインを割ったようにも見えましたが、惜しくもゴールとは認められず。直後にも堂安からのパスに南野が反転から左を振り抜きますが僅かに枠の外。

 

 

 

2点目が遠いもどかしい時間が続いていた日本は前半終了間際にもチャンスを作るもなかなか枠を捉えられず。しかし前半終了間際、右サイドでボールを持った堂安の鮮やかなクロスにファーサイドのスペースに入り込んだ三笘が頭で合わせて2点目!!

 

 

あまりにも美しい堂安to三笘!!まさしくドリーミン!!前半2-0!!後半へ!!

 

 

中国は後半から中盤のシェ・ウェンノンを下げてガオ・ジュンイーを投入。4-4-2からシステムを5-3-2に変更し、日本のアタッカー陣への対応を試みます。

それでもまだまだ日本のペース。52分には南野が左にパスを出すと、ポケットに対して南野の秀逸なランと三笘の完璧なパスが炸裂。受けた南野がアウトサイドの華麗なボールタッチで相手DFを無力化させると自分でシュートを決め切ってとうとう3-0!!更に58分にも町田の縦パス、上田のポストプレーからまたしても南野!!楽しい!!楽しいぞ日本代表!!!!

 

 

日本は63分に堂安と三笘を下げてWBに前田大然、そして代表復帰となる伊東純也!伊東純也投入!!68分には久保がFKのチャンスを迎えますが、この場面では僅かに仕留め切れず。その後森保監督は71分に板倉と遠藤を下げて田中碧と代表デビューとなる高井幸大を送り込み、若手のテストと主力の休息の両面を満たそうと試みていきます。

そして待望の瞬間が77分。久保のパスを受けた伊東が相手DFが多くブロックを組む中で思い切って脚を振り抜くと、相手DFに当たったボールはコースを変えてネットに吸い込まれて5-0!!ここで決めたかIJ!!待ち望んだ男の出来過ぎた復帰戦に!!

 

 

その後は上田を下げて小川航基を投入した日本はまだまだ得失点差を荒稼ぎに行きます。

87分には伊東のアーリークロスに対して、パンピーな追いつかないクロスボールに追いついてしまう前田とそれを理解していた伊東で6点目。ラストワンプレーでは伊東の横パスを仕上げと言わんばかりに久保が叩き込んで7点目!

 

 

7-0!!!!!!!

完璧!!!!!!!

 

 

 

アジアカップ2023のイラン戦に敗れた後、遠藤航が残していたのが「アジアの戦いとW杯の戦いは違うというのを今回改めて感じた。アジア対策を別に考える必要がある」というコメントでした。

細かいことはアジアカップの敗退要因を考察した時のブログで書いたのでそちらを読んでいただきたいのですが…

 

 

日本代表は立場的にすごく難しいポジションに位置する国なんですよね。日本はW杯のような大会…欧州勢や南米勢と戦うそういう舞台であればあくまでも挑む立場として、ドイツ戦やスペイン戦がそうだったように勝利した暁には「ジャイアントキリング」と呼ばれる立場にある。一方でアジアと戦う時は、その程度の差は時期によって異なれど多くの国は「打倒日本」と言った具合に日本に対して挑む立場になり、ジャイアントキリングという言葉は日本が負けた時に言われる言葉になる。日本に限らずアジア勢は大体そうなんですが、そういう2種類の立場を背負わなければならない…という状況にいるんですね。それがいわゆる、これまでのように「引いて守るアジア勢を崩せない」というような問題に直結していたのがこれまでの日本代表で、それは前回の予選でも如実に表れていました。

そういう意味で言えば、今日の日本代表のスタンスはある意味で 「割り切った戦い方」だったのかなと。割り切った戦い方を選ぶとなると守備的な戦い方がイメージされる事が多いと思いますが、今日はむしろ完全に攻撃に振り切った…という意味での「割り切った戦い方」でした。基本的に森保ジャパンはいくつかの攻撃ユニットを持ち、それを使い分ける形で局面に変化をもたらす事で試合展開のギャップを作り出す戦略でプレーしているチームですが、今日はとにかく守備よりも攻撃の最大出力を考えていたんだろうなと。

 

 

 

その中で今日の日本代表が選択したのは左右非対称ユニットの戦い方、言うなれば「東京五輪型」とも言えるやり方でした。

ボールを収められるワントップ…今日で言えば上田と、Wボランチの間でのボールの通りを良くした上で、左サイドは三笘が積極的に縦へ突破を試みていく。逆に右は堂安と久保という2人のレフティがポジションチェンジや近い距離でのパスワークを駆使しながらコンビネーションで崩していく。そういう左右非対称な攻撃は、森保ジャパンの中では東京五輪の際に目指していた形だったんですね。ただ、三笘にしても堂安にしても久保にしてもエリア内でストライカー的な振る舞いをするタイプではないので、上田がポストプレーを優先した場合はサイドからフィニッシュまで行き切るしかない…というジレンマも抱えていたんですね。

そこで今日はシステムを3-2-4-1にした事で、この前線の、これまでは4-2-3-1でやっていた4人のオフェンスに南野拓実を加える事が出来た。これにより、堂安と久保が右サイドでボールを動かしている時も三笘が縦を斬ろうとした時も、それによって生じたスペースに南野が入っていける。ましてや南野は今日の3-0になったゴールのようにそういうスペースを縫い合わせていくような動きを得意とする選手ですから、作ったスペースを攻撃で埋めていくような攻め方が抜群にできていた。もちろん、これをオーストラリアやサウジアラビアであったり、そこからさらにもう一段階うえのレベルの相手と戦う時にも同じ事ができるかどうからやってみないと分かりませんが、今日の攻撃は「東京五輪型攻撃ユニット」が抱えていたジレンマを南野で解消することで攻撃の出力が最大化できたゲームだったと思います。

特筆すべきは、その後三笘と堂安を下げてWBを伊東と前田に変更し、そこからはよりスピーディーかつワイドに拡げたスペースを縦に走る、裏を取る意識を強めた攻撃にシフトしたやり方で、今日の前半の攻撃陣に撹乱されて体力も落ちてきた時にあの2人のスピードを広いエリアで発揮されるような交代をされたら……相手からしたら相当悪夢のような手口だと思うんですよね。選手交代を通じて攻撃ユニットを使い分けるやり方はこれまでも森保ジャパンが得意としてきた戦略でしたが、今日はスタートの攻撃ユニットも途中から繰り出すオプションのユニットも、それを攻撃に振り切った上で完遂してみせた。相手のレベル云々を言ってしまえばキリがないですが、それを理由にケチをつけるのも少し理不尽な話ではあると思いますし、今日は文句のつけようが無かったです。

 

 

 

素晴らしかった。面白かったです。

なんでしょうね…ワクワクしましたよ。これよな、これが代表よなと。ロマン溢れるチームでしたし、メンバーリストでした。

上述したように、この戦い方をオーストラリアやサウジアラビア、ひいてはその先のW杯でやるのかどうかは分かりませんが、いずれにしても日本が自分達の個の強さと、そこから拡げていく幅の豊富さを見せつけるゲームだった事は間違いない。めちゃくちゃ面白かったです。

 

 

名前を呼ばれてみたかった

ではでは(´∀`)