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日本代表、アジアカップ敗退の3つのポイント①W杯仕様とアジアカップ仕様のズレ?対欧州の強みが対アジアだと弱みに変わる現象

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準々決勝敗退。

史上最強──その言葉は理想を映す称号とはならず、ショックを横たわらせた屈辱に塗れたカタールの地。前回大会のリベンジをイランに果たされる格好となった日本のアジアカップはベスト8という結果で幕を閉じました。

W杯はベスト16でも成功と言って差し支えない結果でしょう。しかしアジアカップのベスト8は失敗としか形容のできない結果です。

 

 

敗北の理由は色々あったと思います。

一方で、サッカーは相手があるスポーツな訳で、個々の試合で見れば自分達が最善を尽くしたところで負ける時は負ける。個々の試合の敗因には個々の敗因がある訳です。

では、日本代表にとって今大会の敗因は、今大会の落ち度はなんだったのか。個々の試合の難点はマッチレビューで書いたので、今回のブログでは大会全体を通したチームとしての難点を3つに分けて考えていきたいと思います。

 

 

 

【日本代表、アジアカップ敗退の3つのポイント】

①W杯仕様とアジアカップ仕様のズレ?対欧州の強みが対アジアだと弱みに変わる現象

問題は鈴木個人としてではなく……リセットされた守備陣の連携と、吉田と権田が持ち合わせていたスペック

結局のところ、伊東純也問題は…

 

 

【各試合のマッチレビューと試合考察】

第1戦 日本4-2ベトナム

第2戦 イラク2-1日本

第3戦 日本3-1インドネシア

ラウンド16 バーレーン1-3日本

準々決勝 イラン2-1日本

 

 

 

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①W杯仕様とアジアカップ仕様のズレ?対欧州の強みが対アジアだと弱みに変わる現象

 

イラン戦後、キャプテンの遠藤航がこういうコメントを残していました。

 

「アジアの戦いとW杯の戦いは違うというのを今回改めて感じた。アジア対策を別に考える必要がある」

“アジア対策”の必要性を感じた遠藤航「アジアの戦いとW杯の戦いは違う」-ゲキサカ

 

日本代表は世界の中でも、なかなか難しい立場に立たされています。

というのも、W杯では日本は強国に対して挑む立場で、記憶に新しいドイツ戦やスペイン戦の勝利のような事が起こると「ジャイアントキリング」と呼ばれる立場になる。一方で、アジアカップではその"本命感"みたいなものは大会毎に違えど、いずれにしても日本は常に優勝候補として挙げられ、イラン戦はともかくイラク戦のような展開が起こるとジャイアントキリングされた側として扱われる。これが例えば大陸大会の時点でブラジルやアルゼンチンを倒さなければならない南米諸国や、欧州中堅以下の国であればいずれにしても挑む立場での戦いを続ける必要がありますが、日本のような国の場合は対アジア、対世界の場合で2つの立場で戦わなければいけないという難しさがあります。一方で、この部分に関してはそれこそイランであったり、韓国やオーストラリア、サウジアラビア辺りも同様に持ち合わせている悩ましさでもあるので、いわば日本だけに付けられた枷という訳ではない。韓国やイランはそれでもベスト4まで行ったじゃんといえばそれまでの話ではあります。

ただ、日本の場合は森保一監督は徹底的にW杯に向けたチームを造る事を大前提としたマネジメントをしており、「だからアジアカップを軽視している」と捉えるのは単路的ではありますが、同時にアジアカップアジアカップそのものの結果以上に、あくまで2023年から2026年までの間に位置するW杯への過程の一つ…という捉え方が強いように思います。それは前回のアジアカップを含めた森保監督就任からカタールW杯までの流れを見ても明白で、今回もスタンスとしては似たようなものだったのだろうなと。

以前のブログXでも書いたように、森保ジャパンはサンプルの回収と蓄積を4年間で繰り返し続け、それを最後に全部まとめ上げる形でカタールW杯に繋げた……今回のアジアカップも、もちろん優勝を目指す気持ちは全体として強く持ちながらも、おそらく森保監督は2026年までの文脈の中の一つという全体でこの大会を考えていたんじゃないか、というのがまず一つの前提です。

 

 

先に言いますが、基本的に私は森保ジャパンは肯定的に捉えているんですよね。

おそらく多くの人はクラブチーム的な戦術性を監督に求め、「じゃあ後任は?」という問いにはクラブチームで良いフットボールを見せている監督の名前を挙げる人が多いと思いますが、昨今のナショナルチームの事情を踏まえると「代表監督」という職業そのものがかなり専門職化していると思うんです。チームとしてはがっちりと固め切らずに余白を作る、その上で選手の知見も織り込みながら、戦術というよりもそれを戦略として実践していく。この辺りは以前に書いたブログで長々と書いたのでそっちを読んでもらいたいのですが、そのやり方は代表チームの運営というクラブチーム的な戦術構築をしにくい環境でのチーム構築・チーム運営の面でなかなか合理的で画期的だったと思います。

その点で私は森保ジャパンとそのアプローチは肯定的に捉えているんですよね。ましてや日本代表選手は他国の代表選手と比べても色んなチームに散らばり、そのチームもアーセナルのようにその国のトップクラスのチームもあれば、ボーフムのように常に残留を争うようなチームもあり、遠藤航のように後者の立場のチームから前者の立場のチームに移籍した選手がいる。育った環境というよりも今いる環境が違うから通常のスタンスが異なる面々がチーム内にいっぱいいる。それをまとめる時に森保ジャパンの4年スパンでのコンセプトは合理的だと思っていますし、常に余白を使いながら、その余白を対戦相手に合わせた戦略として柔軟に使えるようにしておきたい…という考えとスタンスはW杯に於いて明確に日本の強みでした。

 

 

 

ただ今回のアジアカップに関して言えば、W杯では強みだったはずの「余白」が日本の弱みとして表れたことは紛れもない事実でした。

イラン戦後、守田のコメントが監督批判的なニュアンスを込めて大きく話題になりました。

 

どうすれば良かったのかはハッキリ分からない。考えすぎてパンクというか、もっとアドバイスとか、外からこうした方がいいとか、チームとしてこういうことを徹底しようとかが欲しい。チームとしての徹底度が足りなくて試合展開を握られるということがゼロじゃないし、この大会でも少なからずあった。ボランチとして、プレイヤーとして、チームのために考えないといけないし、その思考は止めないけど、そこの決定権が僕にある必要はないのかなと思う。あくまで僕は最後の微調整だけでいいのかなと。担っているものを重荷には感じないけど、もっと欲しい。

苦悩を吐露した守田英正の悲痛な叫び「考えすぎてパンク」「もっといろいろ提示してほしい」-ゲキサカ

 

個人的にはこれは、ニュアンスは違えど冒頭に載せた遠藤の「アジアの戦いとW杯の戦いは違うというのを今回改めて感じた。アジア対策を別に考える必要がある」というコメントにも近いものがあると思っています。

 

 

 

森保監督を含め、コーチングスタッフが何も提示していない事はまず無い。ただ、要はそれがチームスタイルとしての戦術なのか、試合に対する戦略なのか…というところで、後者に関しては森保ジャパンはちゃんとやってるんですよね。例えばイラン戦の前田大然の左WGでの先発起用はその一例ですし、実際にイラン戦の前半は良いゲームが出来ていた。一方で、日本代表として徹底された固有のスタイルを持っている訳ではない事も事実で、同時にそれは森保監督が意図的に持たない…持たない訳ではないけれど、色味が濃くならないようにしている側面はある、と。

そして上で書いたように、W杯に向けたチームを造る上では日本代表の立場では間違いではない。森保ジャパンがやろうとしている事は、10やれる戦術を持ち合わせるよりも5程度は出来るパターンを数枚持ち合わせて戦略的に繰り出すやり方なので。少なくともW杯を見据えた時にメリットのあるやり方というところは森保監督自身が日本代表で証明した部分ではあります。

 

戦い方のパターンを持っておきつつ、そのうえで選手を型にはめなければ、パターンがたくさんあることが判断につながる。相手が自分たちが採用したパターンを止めてきたときに、判断して他のパターンに変えればいい。

フリックもエンリケも対応出来なかった森保カメレオン戦術、そのヒントは別競技にあり?-木崎伸也のシュヴァルべを探せ 第9回-

 

ただ…例えばドイツやスペインと対戦する時は、やはり絶対的に相手が強いと目され、抱えている戦力のパワーは明確に彼らの方が上回っている。それゆえに持ち合わせている複数のカードから現実的に実行できる事、できない事が絞られて、そして残ったカードから戦略的にそれを使い分ける順番をゲームプランとして考えていく事が出来るんですね。

一方、アジアカップとなると、基本的には日本が絶対的に強いと目され、抱えている戦力のパワーは明確に日本が上回っているケースが多い。イランは別に「日本が明確に…」という事はないですけど、イランがしてきた戦い方もそれらのケースと同様のものでした。となると、日本としては言わば持ち合わせている全てのカードが発動可能な状態になる。要は選択肢がめちゃくちゃ増えるんです。

…これって一見すると良い事のように見えるんですけど、実はだいぶ困る状況ではあるんですよね。選択肢が多いと、相手と時間が追ってくる中で膨大な選択肢から自分の答えを提示しなければならない。選ぶ事も一つの労力ですからね。例えると「今日メシ何食べたい?」と聞かれるようなもので、例えば「中華系で」みたいな条件があれば「じゃあ餃子」とか答えようもあるし、「家から徒歩で行ける店」とか言われれば「じゃあ向かいのガストで」とでも言えるけれど、フリーの状態から「何を食べたい?」と言われても料理なんて無数にあるし、選択する事自体が一つの労力になってしまう。それが守田の言う「考えすぎていた」という部分であったり「決定権が自分である必要があるのか?」というところに繋がってくる。

つまるところ、W杯では相手のレベルの高さゆえに強制的に選択肢が絞られていくので、逆に選択肢を絞られてもいくつかの選択肢がまだ残っている状況に出来る森保ジャパンのやり方に正しさが出てくる。一方、アジアカップでは日本の選択肢が極端に減らされるような状況がほとんど発生せず、なまじ日本は選択肢の数を増やす為のアプローチをずっとやっている以上「その選択肢のどれを繰り出せばいいのか」という問題に直面する。固有の戦術、徹底したスタイルがあるという事は、前者のケースの場合ではプランBを仕込めるほどの時間的余裕が皆無に等しいナショナルチームではそれを封じられた時に立ち行かなく可能性が高いですが、後者の場合は一つ徹底したものを作る事で、それに基づいた優先順位が自動的に決まってくる形になる。日本にとっては対アジアの時は選択肢が多過ぎるので、優先順位をクリアにしたい…みたいなところが遠藤のコメントと守田のコメントに共通した部分だったのかなと。

要は、日本がW杯を見据えた時に強みとしていたところがアジアカップでは完全に弱みになってしまっていた事は事実で、それは2018〜2022年のカタールW杯までの軌跡と同様の経緯を辿っている部分でもある。ある意味ではこれも優先順位の問題なんですよね。森保監督の中にW杯から逆算した強化計画というものがあって、そしてそれはアジアカップで勝つ為の戦略とイコールではなかった。アジアカップで確実に勝つ為にはもっとガッチリ固める部分を固める必要があり、その為のメンバー選考も変わってくる。その二択の中で森保監督は前者を選んだ結果、二兎を得ることは出来なかった…と。なので今回のアジアカップとしては方向性が明確に裏目に出ましたし、この結果は間違いなく失敗でした。ただ、この方向性の主題はいつもW杯な訳で、W杯を照準にしたチーム造りの過程とするならば、そこの成否はまだ出せる段階ではないのかなと。

 

ただまぁ、これは森保監督がそれを出来る立場にいるがゆえのスタンスだろうなとも思います。

これが外国人監督になると、監督も雇う側の協会にとってもお互いがお互いをよく知らない人間同士で、毎日がある種のギャンブルになる訳ですから、監督としては常に結果という担保と引き換えに時間を貰う必要があり、協会も常に信用と疑心の間にいる。ちょっと昨今は「森保憎し」や「JFA憎し」を前提に持論を構成している人が多過ぎるように見えるので、それゆえに「ズブズブ」「傀儡」のような声も聞かれたりしますが、そういうある種の言質めいたものを得られるかどうかも監督としての能力だと思いますし、それを与えられているからこそ出来る長期計画もある。個人的にはそこを穿った見方をしようもとは思いませんし、そして同時に、アジアカップをその材料の一つにした以上は2026年の結果に対しての言い訳が出来ない事も確かな訳で。

 

 

 

私自身としては、次回のブログで語ることにも通ずるような「あくまでW杯を照準においたチーム造りの過程としてのアジアカップ」みたいな意味合いでの方針は否定するつもりはないですし、そういう観点で森保監督を解任すべき…とも思っていません。負けたという結果が返らない以上は、今はもうそれを肥やしにしてW杯を目指していかなければならない。そして森保ジャパンはその敗因をもサンプルとして集めてW杯まで持っていった訳ですし。

ただ今回のアジアカップでは、日本代表という世界的にもややこしい立場だからこそ活きた森保ジャパンとしてのスタンスが裏目に出た大会であり、W杯で強みになった部分が弱みになった大会であり、そしてそれをパワーやアイデアで覆い被せきれなかった大会だった…というのが一つ目の感想です。

 

 

 

②問題は鈴木個人としてではなく……リセットされた守備陣の連携と、吉田と権田が持ち合わせていたスペック】につづく

 

 

まさかの続くタイプ。

ではでは(´∀`)