RK-3はきだめスタジオブログ

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ルーメン・ヒルの上で〜FIFAクラブワールドカップ2025 グループE第2戦 インテル・ミラノ vs 浦和レッズ マッチレビュー&試合考察〜

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インテルはいってる

 

どーもこんばんは

 

 

さてさて、本日のマッチレビューFIFAクラブワールドカップ2025、インテル・ミラノ vs 浦和レッズ の一戦です!

 

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私は1997年生まれなんですが……この世代の少し前くらいから生まれた世代は、サッカーを見る環境であったり、そのフォーマットが大方整ったような世代だったと思います。そして多くの人にとって、形を変えながらも大会という概念は常々あった。「初めての大会」に触れる機会はなかなかなかった……厳密には拡張なので初めての大会ではないのですが、我々にとって「初めての大会」に触れる滅多にない機会が今と言えるでしょう。

第1回大会がどのような成否を辿るのか。第2回、第3回と将来に定着する大会となるのか。その行く末はわかりませんが、今、間違いなくこの1ヶ月はサッカーの歴史に残る。賛否はあれども全ての見込み、今はその体験を素直に楽しんでいきたいと思っています。

 

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そんな歴史ある第1回大会、日本から唯一出場の権利を得たのは浦和レッズでした。

私自身はガンバ大阪のファンになりますが、どこか特定のチームを応援する立場の人間は、羨望や嫉妬など様々な感情を浦和に抱いている事でしょう。とはいえ、この歴史的な大会の第1回に出場する日本のチームで納得感があるのは日本で最もタイトルを獲得した鹿島アントラーズか日本で最もACLを制した浦和レッズが収まりが良いとは思っていたので、特にこの国で最もアジアに、世界に手を伸ばした浦和がその挑戦権を得たことは納得感を抱くものでもあります。これはACLが罰ゲームとも呼ばれた時代でも舞台に挑み続けた彼らに与えられた特権のようなスーパーステージです。

第1戦、南米のサッカー史そのものを代表するチームの前に浦和は屈した。しかしながら、まだ大会そのものが散ったという訳ではない。今大会、少なくともグループステージに於いては、2020年代UEFAチャンピオンズリーグの決勝に2度進んだ復活の青黒を前にした今日の一戦がメインイベントでしょう。日本勢の中で誰よりも早く世界と公式戦でぶつかったのは、浦和がACミランと対戦したその時でした。あれから18年の月日を経て、その最大のライバルクラブを前にした時、浦和はどのような矜持を示すのでしょうか。

両チームスタメンです。

 

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浦和は第1戦のリーベル戦と全く同じ11名を起用。今日もリーベル戦と同様に渡邊凌磨は左サイドに置き、松尾佑介を最前線としながらも状況に応じてマテウス・サヴィオと2トップ気味の形になる布陣です。

マルクステュラムやチャルハノールなど欠場者が多い離脱は1-1で引き分けたモンテレイ戦からはスタメンを4人変更。アチェルビ、バストーニ、ムヒタリアン、パヴァールが外れてデフライ、ディマルコ、ザレフスキ、新加入のルイス・エンリケがスタメン入り。パヴァールに関してはベンチからも外れています。インテルは大会前にシモーネ・インザーギ監督からモウリーニョ時代の三冠メンバーであるクリスティアン・キヴに監督を交代しているので、新体制では2試合目です。

 

 

 

本日の会場はアメリカ、シアトルのルーメン・フィールドです。

 

 

今大会にも出場しているMLSシアトル・サウンダーズの他、NFLシアトル・シーホークスが本拠地として使用するスタジアム。基本的にはNFLでの使用を前提に造られたスタジアムなので、全体的に縦長の形状は、スタジアムの規模に関係なく日本ではなかなか見ないタイプのスタジアムと言えるでしょう。ゴール裏のスタンドは「ホークス・ネスト」と呼ばれており、ビルが立ち並ぶシアトルの街並みを一望できる絶好のロケーションを持ち合わせています。

ちなみに、かつてイチローが伝説となったことでもお馴染みマリナーズの本拠地、Tモバイル・パークはスタジアムの南隣に位置していて、一部のスタンドからも姿を見ることが可能。同会場では8月にイチローの殿堂入りを記念したイベントが1週間行われるとの事。日本人がかつて伝説となった街で、浦和は伝説を作れるか!

 

 

 

 

序盤からインテルが高い位置でボールを動かし、浦和はそれを構えて待ちながら敵陣では4-4-2にで積極的にプレスをかけていく…基本的なゲームプランはリーベル戦と同じような布陣を敷いてきました。

その中でリーベル戦同様に浦和は4-4-2ブロックをしっかりと築きつつ、敵陣内ではむしろ浦和戦よりもビルドアップを阻害しないかハイプレス気味な前線守備を使い分けていた浦和は12分、右サイドでの攻防から金子拓郎とマテウス・サヴィオでボールを奪い切ると金子が右サイドを突破。サイドを抉って折り返したグラウンダーのクロスに渡邊凌磨が流し込んで浦和先制!!

 

 

15分にはサイドからインテルの波状攻撃に遭う時間もありましたし、ポケットに対するインテルの動きにヒヤッとする場面は多く作られましたが、浦和はいずれの攻撃も上手くCBとSBの間で捕まえてもう1人のCBがカバーに入る形を維持していた事で、インテルがシュートを打てるような場面は上手く避けながらプレーする事が出来ていました。その中で19分にはアスラニの左からのクロスにラウタロ・マルティネスが飛び込んで合わせる場面を迎えますがクロスバーが阻んで失点回避。

 

 

 

そこからも前半は浦和がソリッドな守備をずっとキープしていました。立ち上がりほど浦和に攻撃機会が多く訪れた訳ではありませんでしたが、ボール奪取時にはカウンターよりもなるべく高い位置に持ち運んでいく事でインテルのラインを下げさせる、インテルが高い位置でターンを回し続けるような状況にさせないプレーを続けていくようなスコルジャ・レッズの面目躍如のようなプレーぶり。

前半はほぼパーフェクトなスコルジャ・レッズのパフォーマンスを見せてリードで折り返します。

 

 

 

インテルは後半からザレフスキを下げてムヒタリアンエスポジト(次男)を下げてエスポジト(三男)を投入。ラウタロを若干セカンドトップ気味にする事で前線の経由点を増やそうと試みます。54分には右サイドからのボールを受けたアスラニが巧みなボールコントロールからシュートコースを作って狙うも枠の外へ。

浦和は基本的には前半のスタンスを維持しながらインテルがシュートを打てるような状況をまず回避するディフェンスをしっかりと継続しており、金子を下げて関根貴大を交代した直後の70分には渡邊のボール奪取から松尾がカウンタードリブル。最後はスルーパスに自ら駆け上がった渡邊がフィニッシュに持ち込む追加点にな至らず。

 

 

 

70分にはバレッラの折り返しに反応したムヒタリアンのシュートがまたも枠を捉えられなかったインテルは、良くも悪くも縦への出力が増し、同時に前線で急ぎ始めるようなプレーが増えてきました。72分にはアスラニとディマルコを下げてカルボーニとバストーニを投入。

そんな中で78分、直前のロングスローから為る攻撃ではバストーニのクロスを石原広教がブロックしてコーナーキックに。しかしその左CKでバレッラが浅いところに落ちるボールを入れると、ラウタロ・マルティネスがバイシクル気味のシュートで合わせて遂にインテル同点。インテルに高い位置でボールを持たれる時間があっても肝の部分は死守し続けた浦和にとっては、セットプレーで点を取られる最も悔しい形の失点に。

 

 

失点直後に浦和はサヴィオと松尾を下げて松本泰志とチアゴサンタナ、87分には長沼洋一とグスタフソンを下げて荻原拓也原口元気を投入。しかし浦和からすれば耐えれていたものが一度崩れたダメージは少なからずあったのか、浦和がインテルを詰めるように守っていた状態はいつの間にかインテルが浦和を振り回すような展開に。

アディショナルタイム、左サイドからバストーニが入れたクロスは一度流れるもこぼれ球を途中出場のスチッチがシュート。一度はエスポジトと交錯する形でホイブラーテンがブロックするも、そのこぼれ球をカルボーニに押し込まれて遂に逆転ゴール…。

 

 

それでもアディショナルタイム、遠い位置からの長距離フリーキックを渡邊が意表を突いて直接狙いますが…ギリギリでGKヤン・ゾマーが掻き出し、それで得たCKもゴールに結び付かず試合終了。

途中までは完璧なゲーム運びを見せていた浦和。しかし時は一瞬で運命を分け、浦和はこれで2連敗となり、最終戦を待たずしてグループステージ敗退が決定となりました。

 

 

 

途中までは完璧だったと思います。

浦和が用意したゲームプランは基本的にはリーベル戦と同様のものだったと思いますが、カウンターをチャンスに繋げられずに早い時間帯に失点もしたリーベル戦と比較した時、逆に今日は序盤から可能性を見せるシーンを作りながら守備ブロックは完璧に構築。そして前半のうちに先制点まで取り切る…その流れは完璧でした。インテルの左右のスライドに対しても微調整を繰り返して4-4-2のブロックを組み、時折ポケットを狙われてもしっかりSBとCBがCBを一枚残した状態で挟み込む。逆にインテルがバックパスしか選択肢がなくなってくれば、4-4-2の前4枚が前線の4バックのような状況を作って追い込んでプレスをかけていく…あの辺りはスコルジャ・レッズの面目躍如、或いは集大成的なパフォーマンスですらあったと思います。

 

 

だから逆に言えば、この試合で書くべき事って実はそんなに多くないんですよ。なぜなら浦和がその状態を長く続けることに成功したから。浦和の張った守備網をインテルは敗れなかったし、浦和が完全にインテルを詰めていた。後半こそインテルも選手交代を通じて高い位置でボールを動かすようにはなっていきましたが、インテルは崩れない浦和のブロックを前にパスのテンポだけ必要以上に早くなっていくような明らかに焦り気味なモードになっていった。だからこそ70分の渡邊の決定機のようにインテルが自滅しうるような場面も出てきた訳ですし。

ただ…やっぱりあの1点が重かった。浦和からすれば、それなら崩されて取られた方が精神的にはマシだったんじゃないかと思うほどに。あれだけ完璧に守って、危険なエリアには指一本侵入させなかったのに、CKからただただワールドクラスを突きつけられる。あのエース10番キャプテンが決めた同点弾を前に浦和は張り詰めた何かが切れてしまった感覚があって、同時にインテルは完全に落ち着きを取り戻した。そこから先も浦和は危険なエリアにはインテル攻撃陣を入れませんでしたし、どうにか最後の最後までは締められていたのは凄いと思うんですよ。実際、ボールが動く位置も大きく変わった訳じゃない。ただあの同点弾から「浦和がインテルを詰めている」のではなく「インテルが浦和を振り回している」という形になった。主語が変わってしまった…ここはものすごく大きかった。

後は結局…言うまでもなく浦和とインテル、アジア勢とヨーロッパビッグクラブって、スタートラインで圧倒的な差があることは確かじゃないですか。そういう時に浦和の立場で勝つには「一つのプランを90分まで遂行する」必要がある。例えば森保ジャパンのカタールW杯なんかは選手交代を計画的に行って試合に変化をつけること自体が一つのゲームプランだった訳で。その点では浦和は一つのゲームプランは完璧だったけど、それが瓦解した時にこれ以上インテルに突きつけられるものはなかった…という現実はあったのかなと。

ただ素晴らしい試合でした。それは間違いない。この場所で味わうこの感情を財産にする権利を持っているのは日本で浦和だけですし、その権利は他ならぬ浦和が自ら掴み取ったものですから。その権利を掴む道のりの中で関わった人達に対して、決して恥じることのないゲームだったと思います。

 

 

ではでは(´∀`)