G・BLUE〜ブログとは名ばかりのものではありますが...ブログ。〜

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WE ARE WITH YOU〜ガンバとセレッソと、それから…〜(ガンバ大阪vsセレッソ大阪 観戦日記)

"俺たちが大阪さ 青と黒 俺らだけ"

 

その高らかな歌声が響くその時、その場所は聖地となる。

あの場所で起こるその瞬間の全てが、ガンバファンでなくとも空間を共有した全ての人間にとって感動とはジャンルの違う意味で計り知れない感情の余韻を巻き起こすのだ。

 

DAZNで実況を務めた下田恒幸氏はこんな事を言っていた。「関西のプロスポーツの中心に、残念ながらフットボールはありません」と。しかしそれと同時に「大阪に陣取る2つのフットボールクラブの対立構図は、阪神の存在を時に薄めてしまうだけのポテンシャルを持っていると考えます」と…。

かくいう私も野球は好きだし、阪神ファンでもある。サッカーの方が好きというだけで、サッカーも野球も両方好きな私はとしては、よく見かけるサッカーと野球の対立構造を煽るつもりはないし、したくもない。だが令和の時代を迎え、この2チームの対戦の意義は今や、阪神巨人戦の意義をいよいよ上回ろうとしているのかもしれない。

 

5月18日、そんな事を感じた、令和最初の大阪ダービー観戦日記をここに綴りたいと思う。

 

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チケットを取ったの4月の半ば頃だっただろうか。大阪ダービーという事で勢いでチケットを購入した訳だったが、はっきり言って相手がセレッソ大阪という絶対に負けたくない相手だった事もあって、不安に感じる要素は余りにも多過ぎた。

まず一つにガンバのコンディション。元々低調なシーズンを過ごし未だホーム未勝利のガンバは、第10節では首位のFC東京相手に好ゲームを見せたものの、第11節、最下位サガン鳥栖との試合ではまるで嘘のような敗北。目が節穴であったとしても不調と判るような状態でダービーを迎える事の不安は少なからずあった。そしてそれは勿論、我々ファン以上に選手や監督といった現場の方々は特に不安や危機感を募らせていた事だろう。

 

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そして何より、私自身の観戦成績である。確かにガンバが今季、一度もホームで勝てていないという現実はある。だがその一方で、元々観に行った時の勝率が著しく低い私が行った今季の試合で3戦全敗、更にそのうち2敗がショッキングな負け方とあらば尚更だ。でも大阪ダービーに関しては、去年も一昨年も現地観戦で勝利を見届けている。私の負け運とは別のジンクスに賭けてこの試合を迎えるしかなかった。

 

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万博記念公園駅からの距離が遠過ぎると言われているパナソニックスタジアム吹田。しかし今回からは、その長い道のりにも工夫が加えられた。

 

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各選手のフラッグを掲げ、ガンバのこれまでのタイトルの歩みを掲げ、抽選会場も設置された。Panasonic roadを渡れば、決戦の舞台に到着である。

 

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いつもと違って堅い書き方をしてるところに突然ではあるが、景気付けという事でフォトセッション的な事をしていらっしゃった東口順昭(のそっくりさん)と一枚。いよいよスタジアム入りだ。

 

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ウォーミングアップ中から熱気は凄まじい。ガンバは元々、特別な試合で無かったとしてもその熱さはJリーグでも屈指と言われているが、大阪ダービーとなればその暑さには一層拍車がかかるのだ。

 

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なんならもう、スタメン発表の時なんてセレッソの選手に対してほぼ全員にブーイングである。そして、ガンバの選手紹介で送られるのは凄まじい完成とコール&レスポンス。いよいよキックオフの時が迫る。

この日のガンバはかなりスタメンを弄ってきた。特に高尾瑠と福田湧矢の抜擢は予想外で、その証拠にスタメン選手時の垂れ幕、高尾と福田はどうやら間に合わなかったらしい…。

 

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遂に選手が入場する。大阪ダービーの際、コレオ合戦はもはや恒例となりつつある。セレッソ側の、重傷を負った都倉賢へのメッセージ性のあるコレオも良かった。しかし今回のガンバは凄かった。大阪、そして吹田という街の絵をコレオで演出するとは思っていなかった。

 

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いよいよキックオフ。具体的な試合内容や戦術的な話に関しては上にリンクを貼った

マッチレビューの方を読んで頂きたい。

ガンバはこの日、若手の抜擢のみならず3-1-4-2の新システムを採用したとあって、立ち上がりは少しぎこちなさが残る。しかし抜擢された選手の積極性と躍動に釣られるように積極的な動きを見せ、得点こそ動かなかったもののダービーらしい激しさは満載だった。それはセレッソも同じく…前半を終える。

 

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後半、遂に試合は動いた。高尾の縦パスを受けた高江麗央が裏をかくパスを通し、ファン・ウィジョが空けたスペースに絶妙なタイミングの飛び出しとファーストタッチで抜け出した倉田秋が右脚を振り抜いてゴールマウスにシュートを叩き込む。

サッカーは麻薬だ。大阪ダービーはまるで麻薬のようなものだ。言葉は悪いが、自分の中で一番この瞬間のスタジアムの空気が自分の心と体に与える影響を表すのに適切な言葉はこれだった。周りの観客の多くが立ち上がり、両手を挙げ、歓声を上げる。目には見えないが、全ての人間の脳汁がドバドバと放出されていた。自分の趣味がサッカー観戦である意味、ガンバファンである事の意義…それを証明してくれる要素の全てがあの瞬間には詰め込まれていた。これがパナスタである。これがガンバ大阪である。

 

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試合が動いてから、終盤に向かって試合が進めば、お互いの攻防は更に激しくなる。ビハインドの状態であるセレッソが猛攻を仕掛けてくるのは当然だが、ガンバも攻撃を最後まで捨てはしなかった。この辺りの試合展開の話はマッチレビューの方を呼んで欲しいのだが、チケットが完売し、35000人を超える観客の集まった死闘のボルテージは最高潮に達していく。

 

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…20時55分。遂にピッチに試合終了、そしてガンバの大阪ダービーと今季ホーム初となる勝利を告げるホイッスルが鳴り響いた。そのホイッスルを搔き消すような歓声、死闘の激しさを表すようにピッチで座り込む両チームの選手…勝利の余韻は、いわゆるまったりしたものでは無く何よりも激しいものだった。

 

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曇天さえ吹き飛ばしてしまいそうなガンバクラップが鳴り響く。ガンバを好き…ほんの僅かでもその気持ちのある全ての人間が待ち望んだ瞬間である。

 

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話を冒頭に戻す。

西野朗氏がガンバの監督を務めていた頃、何かのインタビューの中でインタビュアーに「もし、ガンバのようなサッカーをするチームが関東にあればもっと凄い人気になっていたと思います…」という事を言われていたのが妙に印象に残っている。冒頭で紹介した下田氏が述べた言葉のように、関西のスポーツ界には常に「阪神タイガース」という余りにも絶対的な存在が君臨していて、阪神以外のスポーツチームは基本的に「その他」といった扱いを受けている。昭和の時代、阪神プロ野球が地位を固めた時代にこの2チームは松下電器とヤンマーのサッカー部だった訳だから、この差を埋める事は容易では無いし、そしてこの先、どれだけ発展したとしても歴史で上回る事は出来ない。

だが今、少しずつ状況は過去と変わって来ているのではないか。2019年という現在、「1試合」の重みとしての大阪ダービー阪神巨人戦よりも上回ってきているのではないだろうか。大阪の北と南という立地、2005年のJ1リーグや2017年のルヴァン杯など、両チームの初タイトルの軌跡に纏わる因縁、そして基本的には1年に2度しか訪れないという刹那…。下田氏が語った「阪神の存在を時に薄めてしまうだけのポテンシャル」という下地に、確かな肉が付いてきている。

 

 

 

時代の潮流は変わり始めている。

今までは大阪ダービーなんて試合結果がスポーツニュースでチラッと流れるだけ。それが今年は、スポーツバラエティ番組「戦え!スポーツ内閣」に於いて大阪ダービー特集が組まれるようになった。日本サッカーが大きくその立ち位置を向上させた平成の時代で、2チームはそれぞれのやり方、それぞれの歴史で人気を積んだ。コンテンツとしての価値は確実に高まり、大阪ダービーという戦いは奥深さと熱狂は日に日に濃くなり、どちらが良いというわけでは無いがプロ野球には作れない新たなスポーツエンターテイメントを、今確かに確固たる存在として築き始めている。

 

ガンバ大阪セレッソ大阪…この2チームの努力はそれぞれのチームとして価値と、対立構図がもたらす因縁の意義を更に強く、味わい深いものにした。パナソニックスタジアム吹田という甲子園のような存在になりうる聖地も誕生し、そこで得た感情は関西に染み込むDNAを覆しまではしなくても揺さぶる事は夢物語なんかではないのかもしれない。

今年、日本は元号が変わった。プロ野球が大正、昭和を経てその興行的価値を確かなものとしたように、平成を経たJリーグ大阪ダービーは、令和という新たな時代へ、きっと新たなステージへと進むのだろう。例え、この予感が希望的観測に終わったとしても、私はこれからもガンバ大阪と共に歩んでいきたい。いちファンに過ぎず、無力である事は言うまでもなくとも、改めてそう思った夜だった。

 

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あとついでに京都サンガもね。

終わり。