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ガンバ大阪は宮本恒靖を解任すべきなのか?その①劇薬のリスクと処方する技量

まぁ…ね、一難去ってまた一難、とは言いますが……ガンバ界隈が荒れに荒れているわけですよ。

 

その理由は言うまでもなくただ一つ、今季のガンバの成績です。

新型コロナウィルス感染者の複数発生により活動休止を余儀なくされたガンバは活動再開後に「守れるけど点取れない症候群」に陥り、9試合で残した成績は1勝4分4敗の勝点7、得点に至っては9試合で僅か2得点(しかも1点はPK)という状態で、悲観するなと言うには酷な材料は揃ってしまいました。少なくとも今のガンバが良い状態ではないのは誰の目から見ても明らかで、順位も降格圏の18位に陥っています(順位に関しては試合数の影響も加味して考える必要がありますが…)

 

そういう状況になった時に何が待つのかというと、結局行き着くのは「監督解任論」。要するに現在、ガンバ界隈では宮本恒靖監督の監督解任を求める声が日に日に強くなっています。…まぁ、2018年7月から始まった宮本ガンバってアップダウンはかなり激しかったので、宮本監督解任論噴出自体も◯ヶ月振り△回目的な感じでもあるのですが……公式アカウントに凸する人達は別としても、解任論が出ること自体は仕方のない状況だとは思います。それは…ね、今の成績だと、そういう意見は当然出てくるでしょうし、それは自然な事ではあると。

 

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ただ、その中で結論から言うならば、私的には現段階での監督解任は反対です。

続投派といえば続投派になるんですが、続投派というよりは【解任するメリット<解任するデメリット】という感じ。要するに解任するリスクが余りにも高過ぎるんです。ただ、こればっかりは人の数だけ意見と見解があると思うので、あくまで私個人の意見だと思って読み進めて頂ければ幸いです。

 

 

 

なぜ解任に賛成できないのかというと、結論から言えば「後任監督とすべき人物がマジでわからない…」結局のところここに尽きます。

Twitterで監督解任云々の話になった時に、「監督解任を唱えるなら公認を示せ」という意見に対して「なぜサポやファンが解任を唱えるのに後任を示す必要があるのか?」と反論するやりとりが多々見られました。実際、別にファンが後任まで気にして言う必要は無いとは思っています。ただ、それはあくまでファンやサポーターなど第三者に値する人間の場合の話であり、クラブが監督を解任する時に最も大事なのは「後任のアテがあるのかどうか」です。

 

ご存知の通り、今はこういうご時世です。シーズン途中の監督交代は口で言うほど簡単な作業ではなく、今がフリーな監督だからといっても、監督側にとってもシーズン途中のチームを預かるのは難しい事で、それが外国人監督ともなれば尚更。特にこのご時世での外国人監督招聘のハードルは相当高いですからね…。だから結局のところ、監督を交代するとすれば内部昇格という形に落ち着くチームが多いのです。

じゃあ仮に宮本監督を解任したとして、今のガンバの中にいる人物で監督ライセンス(S級ライセンス)を持つ人間は誰かというと、コーチ陣であれば依田光正コーチと宮原裕司コーチの二人。もっと広げると松波正信強化部長、和田昌裕取締役、そしてユースの監督を務める森下仁志監督の5人が内部昇格の候補になってきます。それぞれのパターンで考えてみましょう。

 

 

 

【CASE:1フロントから後任監督を引っ張ってくる場合】

まず、この中で監督実績が一番豊富なのは和田氏で、彼はヴィッセル神戸時代に途中就任で結果を残した事もありましたが「取締役」という肩書きが物語る通り監督業からは半分引退状態なんだと思います。そもそも、和田氏を担ぎ出す事で監督交代という緊急事態の最中に「取締役兼GM」みたいなポストが空位なるリスクというのがそもそもあって、それは2012年に途中から監督を務めた松波強化部長にも同じ事が言えます。

 

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【CASE2:コーチから監督を昇格させる場合】

内部昇格の中で最もベターなのはコーチからの昇格とされていて、2021年シーズンも既にJ1は鹿島、J2は愛媛がこの手法で監督交代を行なっています。ただ、この2チームの場合はその時のコーチに監督経験がしっかりとあった事が大きなポイントで、鹿島の相馬直樹監督は町田で堅実な実績を有していましたし、愛媛に至っては開幕時点で監督よりも實好礼忠コーチ(現監督)の方が監督経験があるような状態でしたしね。そういう状況があるなら、監督交代に踏み切るのにも合理性があります。

ガンバの場合、依田コーチと宮原コーチはその「対象」にはなってくるのですが、この2人は監督未経験です。誰しもが監督未経験な訳で、それを殊更に強調するのは如何なものかとも思いはしますが、そもそも監督交代なんてイベントが発生する時点でチーム状態が良いわけはないので……解任する事を優先した結果、迂闊に彼らを一番難しい状態で昇格させる事のリスクは計り知れません。一番わかりやすい「失敗例」が2018年の柏レイソルで、柏は時間も資金もあるはずなのに解任だけを優先して場当たり人事で加藤望コーチを監督に昇格させた結果、待っていたのは前任の下平隆宏監督体制より酷い状況と結末でした。監督未経験者を監督に据える時は、コーチ陣や就任時点でのチーム状況を含めてある程度整えておく必要があり、それをスクランブル的に行なってしまうと取り返しのつかない事態になり得るのです。

 

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【CASE3:ユースチームの監督を引っ張ってくる】

近年の監督交代で一番多いのはこのパターンかもしれません。今季のJ1では既に横浜FCがこの手法で監督交代を行っており、湘南の浮嶋敏監督、鳥栖の金明輝監督、そしてユースではなくU-23ですが宮本監督もパターンとしては元々はここに当てはまる人物で、近年の傾向的には比較的成功確率の高い手法とは見られています。

 

 

ではガンバのユース監督は誰かというと、2019年と2020年にU-23の監督を務めていた森下仁志監督です。森下監督といえば、U-23での仕事ぶりの評価は内外ともにすこぶる高く、U-23は「森下塾」と呼ばれて多数の教え子に飛躍の機会を与え、ファンやサポーターからも「森下さん」と呼ばれ非常に信頼の高い人物です。何人か、森下さんを監督に…と仰る方もいらっしゃいますが、私的にはこれが一番最悪の一手だと思っています。

正直なところ、森下監督のトップチームでの成績は残念ながら芳しくありません。森下さんの監督実績といえばその印象が強かったので、2019年にU-23の監督に就任すると発表された時に正直「なぜ…?」と思った人は少なくなかったと思いまさし、実際に私もそう思ってました。ただ、人間の適性とは面白いもので、森下監督は若手育成面に関しては超がつくほどの有能人材である事をガンバで証明。そんな森下さんを、彼が今、最も自身の評価を高めているステージから無理やり引き剥がす事はガンバの為にも、そして森下監督自身やユースの選手達にとっても最終的には良くない結末しかもたらさないんじゃないか……としか思えないんです。「適材適所」という言葉はスポーツに限らず全ての組織が原則として持つべきで、それに乗っとれば森下監督を担ぎ出す事は一番やってはいけない人事でしょう。宮本監督を解任する権限を持つのは松波強化部長ですが、松波さん自身がかつて「担ぎ出された側」なのでその辺りは理解してくれていると思いたいですが……。

 

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【CASE4:外部監督の招聘】

ガンバの監督といえば、今の宮本監督以外で真っ先に思い浮かぶのは西野朗監督と長谷川健太監督。この2人はかなりの当たりだったのでそれぞれ長期政権を築きました。ただ長期政権自体は良いんですけど、一人の監督に依存した時期が続いていたガンバは「監督交代のノウハウが余りにも足りない」という状態にクラブとして陥っていて、結局それが如実に表れたのがセホーン&呂比須体制とレヴィー・クルピ体制だった訳です。4年目を迎える宮本監督も長期政権としてカウントするなら、ガンバの監督人事は「長期政権or超短命政権」の二択しかなく、そんな状態のフロントに絶対に失敗のできない監督選びを託す事のリスクが凄まじいんですよね…。

 

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結局のところ、私が宮本監督の解任に反対な理由として一番大きいのは「他に適当な人材が見当たらない」という事。もっと言うならば、「絶対に監督選びを失敗できない状況で宮本監督より良くなると言い切れる人材を監督に据えられると思えない」というところです。それだけではないですが、一番大きい部分はそこです。

そして宮本監督は少なくとも「愚将」と称されるべき監督ではないと思っています。宮本監督の最大の強みは「ベストではなくてもベターな方法を採れる事」だと思っていて、シーズン終了後ならまだしも、このタイミングで解任するのであれば…まだベターな方法論は持ち合わせている宮本監督で行った方がいいんじゃないか、と。個人に依拠した部分は小さくはないとは言え、少なくとも守備が崩壊している訳ではないですし、両輪がぶっ壊れている状態ではないと思うので。

 

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以前、ガンバの歴代監督を全員振り返ろうというブログを書いたんですが↓

 

 

これを読んでもらえるとわかってもらえると思うんですけど、ガンバの歴代監督を単純に上半分と下半分で割った時、ツネ様は間違いなく上半分の方にいくんですよ。ガンバはたまたま過去に2回特大のあたりを引いただけで、監督選びの上手いチームという訳でもなければ、そのノウハウを持ち合わせている訳でもない。そんなチームにこのタイミングで絶対に失敗できないリスクを任せるくらいであれば、宮本監督のまま行った方がベターなのだろうと思っています。

そもそも私自身、少なくとも宮本監督は「無能」にカテゴライズすべき人物だとは微塵も思ってないですし…その辺の理由についてはまた次の機会に書こうと思っていますが、勿論監督交代で変わるものはある。でもそれは必ずしも良い方向とは限らない。言葉にするのは簡単な「監督交代」が如何にリスクを孕む決断なのか…という事だけは心に留めて欲しいと思っています。

 

 

 

YouTubeでもちょっとしゃべってるのでぜひ↓

 

 

次回、「宮本監督がおそらくやりたいであろうサッカーとは!?〜現実と理想の狭間で〜」

デュエルスタンバイ!

 

(追記:上に書いたテーマは次々回ということになりました)

 

ではでは(´∀`)