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理屈と根拠を持つギャンブル〜JリーグYBCルヴァンカップ決勝 アビスパ福岡 vs 浦和レッズ マッチレビューと試合考察〜

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阪神勝ったら同日優勝になるのか

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビューは2023JリーグYBCルヴァンカップ決勝戦アビスパ福岡vs浦和レッズの一戦です!

 

 

 

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いよいよ始まりました、毎年恒例、Jリーグ秋の祭典!ルヴァンカップ決勝でございます。

Jリーグ三大タイトルとして名を連ねるこの大会。来季からはオープントーナメント制になるとの事なので、選ばれしJ1だけの大会としては今回が最後になります。その戴冠を受けるのはどちらのチームでしょうか。

 

 

言うまでもなく、この国でも屈指の名門である浦和は常勝軍団である事が常に求められたチームで、常に何かしらのタイトルを獲得する事が求められています。近年はリーグ戦では不振が続きながらも、ACLを含めたカップ戦では安定して決勝まで辿り着いていました。そんな浦和にとっての今季は完成度の高いチームでカップ戦とリーグ戦を両立させたチームと言える中で、2023年をクラブ史の中でも際立った一年するべく、そこに添える為の聖杯をなんとしても手にしたいところです。

対する福岡。…彼らにとっては、この舞台に立っている事自体が少し前は夢として語ることさえ憚るような場所だったと思います。九州初のJクラブとして1996年から始まったJリーグでの冒険は苦難の歴史の方が遥かに長く、有名な5年周期のジンクスは定期的にJ1には行けると同時にすぐに落ちる事も示しており、大分や鳥栖のような後発勢力を追う屈辱もあり、そして財政が破綻しかけた時もあった。そんな中で敢行したクラブ改革の末に迎えた今日はアビスパ愛する人達の中ではどんな結果になれど永遠の記念日でしょう。

いつだって決勝戦は特別なものです。勝てど負けれど、そこにはいつも強烈な記憶が人生に残っていく。決勝とは言わば、その記憶の色を決めるような戦いです。辿り着いた夢舞台の上に登るか、常勝を宿命付けられたチームがその矜持を示すか。全ての結末は90分後に!

両チームスタメンです。

 

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福岡は直近のリーグ戦となる横浜FM戦からは先発を3人変更しました。福岡はリーグ戦ではGKに村上昌謙を起用していますがルヴァンカップでは永石拓海で通してあり、今日もその流れに沿って村上ではなく永石を先発で起用しています。ボランチ井手口陽介とコンビを組む形でここまでリーグ戦では途中出場1試合のみの21歳森山公弥を抜擢。普段はボランチで起用されている前寛之はシャドーの位置での起用となりました。

対する浦和は直近のリーグ戦鹿島戦からスタメンを1人変更。今日はニューヒーロー賞を獲得した早川隼平を先発に抜擢してトップ下に起用し、両サイドには小泉佳穂と髙橋利樹を配置した2列目です。ボランチは岩尾憲と伊藤敦樹、CBはシャルツとホイブラーテンとそれぞれ鉄板コンビを配置してきました。

 

 

 

本日の会場は東京都新宿区、国立競技場です。

 

 

"新"国立競技場で初めて行われたルヴァンカップ決勝は2020年大会。2021年は埼玉スタジアム開催でしたが、今季は2年連続での国立開催となり新国立では3回目のルヴァンカップ決勝となりました。ここ2年は国立で単発ホームゲームを開催するクラブが増えたので新国立でのプレー経験を持つクラブも増えましたが、浦和は2021年の天皇杯決勝以来2回目で、福岡にとっては初の新国立の試合です。

今年はチケット完売!近年はルヴァンカップのチケットが完売するのは埼スタで行われた2017年大会以来となり、旧国立競技場から新国立競技場はキャパシティが増えた事もあって、今日の来場者数は遂に6万人を突破!61683人を記録し、ルヴァンカップ史上最多の観客数となりました!

 

 

両チームともソリッドな守備を持ち味とするチームでしたが、試合は想像以上に早い時間から動きました。

立ち上がりから前への圧力を強めようとしていたのは福岡の方で、序盤から紺野を中心に右からの突破を狙ってプレーしていきました。そして5分、ミドルゾーンで前寛之が右サイドにパスを振ると、ボールを受けた紺野が鋭いドリブル突破で対峙した荻原拓也を翻弄。エリア内に侵入してクロスを送ると、パスを出してからファーサイドに走り込んだ前寛之が自ら押し込んで福岡先制!新戦力と近年の躍進の象徴の2人で取り切ったゴール!福岡が早い時間でリードを得ます。

 

 

浦和は自陣ではボールを持てていたものの福岡の中盤のマンツーマン守備に遭って上手く前進できず、そこをどうにか剥がせたとて敵陣に進めば福岡がゾーンディフェンスで包囲網を敷いていた事でほとんどチャンスを作らないまま時間が過ぎていきます。一方の福岡は自陣ではリトリートとゾーン、敵陣ではマンツーマンとハイプレスを上手く使い分け、ボールを奪えば今日はシャドーの位置に入っている前寛之を活かしてパス出しの起点を一列前に置いた事で右に流れる紺野やSBの押し上げを促進。浦和としては攻撃の構築以前に福岡のカウンターへの対応に苦慮する時間が長く続いていました。

 

 

 

序盤の福岡が果敢にプレストカウンターを仕掛けていく流れこそ時間と共に落ち着きましたが、そうなると今度は純粋に福岡が自陣で固める形になったので浦和はやはりその牙城を崩せないまま時間が流れていきます。そんな中で浦和はシンプルにロングボールで背後を狙う形にシフトしていくと36分、ロングボールを右に振った浦和はクロスこそGK永石拓海のセーブに阻まれましたが、こぼれ球の流れからホセ・カンテが至近距離でシュート。しかしこれは奈良竜樹が身を挺したブロックで阻止します。

逆に福岡は41分に井手口陽介の左CKをニアの宮大樹がヘッド。ここはGK西川周作のスーパーセーブで弾きましたが、前半アディショナルタイムに獲得したセットプレーが一度は跳ね返されたものの、再びボールキープした紺野の折り返しに前に残っていた宮が今度こそ押し込んで福岡追加点!

 

 

前半アディショナルタイムにあまりにも大きな2点目を獲得した福岡。前半は完璧に福岡が想定していた、いや想像以上に出来すぎた完璧な前半を2-0で終えます。

 

 

後半、2点を追う浦和は髙橋利樹と早川隼平を下げて大久保智明と安居海渡を投入。福岡もボランチの森山公弥を下げて金森健志を入れて前を本来のボランチに戻します。

すると59分、福岡は右サイドで果敢に攻め上がったドウグラス・グローリが強引に突破を図ると、対応にあたったマリウス・ホイブラーテンがたまらずファウルで倒してしまって福岡がPK獲得!これを蹴るのは山岸祐也。しかし…山岸のPKはGK西川がキャッチでセーブ!浦和は絶体絶命のピンチで絶対的守護神がファインプレーを見せます。浦和は掴みかけた流れを確かなものにすべく、62分に小泉佳穂と伊藤敦樹を下げてブライアン・リンセンと明本考浩を投入し、安居と岩尾憲をWボランチ、リンセンとカンテを2トップにした4-4-2へシフトします。

2点のリードを持つ福岡は最大のチャンスこそ逃したものの、前半同様にディフェンスラインは上手く統率しながらしっかりと優位な立ち位置でプレーしており、浦和はやはり福岡の網をなかなかに破れない時間が続いていました。しかし67分、深い位置で酒井宏樹が対角線上にロングボールを入れると、ファーストタッチの時点でマークについた湯澤聖人を振り切った明本がGKとの1対1を制してシュート!これが決まって浦和が1点を返し、先ほどのPKストップと合わせて試合の流れを一変させます。

 

 

72分にはこれまで大躍動していた紺野が負傷退場となった事で、ボランチの中村駿を投入して中盤の構成力を目論み、75分には湯澤を下げて小田逸稀の投入で1点を守り切る姿勢を見せます。

強力な2トップにシンプルにボールを入れつつ、それをフォローする剛腕で攻め込んでいく浦和は79分にもカンテが強烈なミドルを放ちますがこの場面はGK永石が好セーブを披露。浦和は直後に岩尾を下げてエカニット・パンヤを投入していきます。

 

 

 

苦しい展開ながらもしっかりと守備の隊列を保ち、明本のゴールとカンテのミドルと以外は殆どシュートを打たれていなかった福岡。そこに対してロングボールを積極的に入れながら前線の圧倒的なパワーでこじ開けようとする浦和。89分には荻原のロングボールに前線に上がった酒井が頭で落としたところから決定機が訪れましたが、福岡守備陣も決死の守備で守りを固めていきます。

福岡は90分にFWのウェリントンを投入して浦和のパワーに対抗。試合は遂に8分のアディショナルタイムを迎え、福岡と浦和はそれぞれに意味の違うカウントダウンが始まることに。

 

 

 

アディショナルタイム、カンテがペナルティエリア前から強烈なシュート。明らかにゴールの軌道に飛んだボールの行方にスタンドの時が止まりましたが……再び時間が動き始めた時、ボールはポストに弾かれて福岡のゴール前へ。最大のピンチを回避し、最後の最後まで浦和の猛攻を跳ね返し続けた福岡。1996年のJリーグ参入以降、一時は妄想以上の想像をできなかった決勝という舞台で初優勝を勝ち取りました!!アビスパ初優勝!!

 

 

 

もちろん細かく見ていけばそのアプローチややり方は異なってくる訳ですが、大枠で見れば福岡と浦和の戦術的な傾向は比較的近いところに位置する2チームです。それを踏まえると、両チームともソリッドな守備から試合のバイオリズムにそこまで波を作りたくないチームでしょうから、序盤から基本的にセーフティーに戦う…という事は予想としてはベターだったと思います。

おそらく浦和はそういうつもりで入ったと思います。どう考えても個人能力としてのパワーは浦和の方が優っていますし、同じようなスタンスのチームが同じような戦い方で組み合えば浦和が優勢になる事は自明。その現実を踏まえた時に、立ち上がりから一気にラッシュをかけた福岡が浦和にとっての完全なる想定外を与えた事な試合の大きなポイントでした。先制点を取ってしまえば、福岡は後はセーフティーに試合を運べばいい訳で、リスクを負ってでも行くべきところとそうでないところの判断もクリアになる。結果的に前半は完全にそういう展開になった訳ですし。当然ながら福岡にとってはリスキーな戦い方ではあったので、今日の福岡の戦い方は「先制点を取る事」ではなくて「20分くらいまでに先制点を取る事」がマストだったと思います。

若干ギャンブル的なゲームプランではあったと思いますが、先制さえ取れれば彼らには堅実な守備組織を有するだけにそれを守り切れる根拠がある。実際に終盤は浦和に猛攻を喰らっていましたが、カンテの2本の決定的なシュートはいずれも崩す前のミドルであって崩されたようなシーンは明本のゴールシーンのみでしたところを見てもそう。福岡にとってそれは根拠のあるギャンブルであり、適切なタイミングで理屈を備えたギャンブルだった。そしてそのギャンブルに踏み切る勇気を持てた。そういう試合だったのかなと。

 

 

福岡というクラブは言っても小クラブであり、5年周期のジンクスと呼ばれたそれが物語るようにJ2ではそれなりの成績を出せる、でもJ1に定着は出来ないクラブの代表格でした。

それが長谷部茂利監督が就任した2020年からその潮流が変わり、2021年のJ1昇格に際してこれまでの福岡では想像し難かったほどの大型補強を敢行した…もちろん、それは資金的なバックボーンを得た事も要因ではありますが、当時はJ1の有力日本人選手はまず獲得できなかった福岡にとって、まずはとにかく、外国人選手を大量獲得してでもその車輪を回していかなければならない。でも逆に言えば、車輪さえ回し続けられるチームになっていけば自然と車体は仕上げられていく。あそこでクラブとして大幅に予算を投下した事は間違いなくギャンブルではありましたが、それは確実に根拠と理屈を持ったギャンブルでした。

J2に居続けたチームがJ1に定着するクラブになる、そしてそこから強豪と呼ばれるクラブになる為には、どこかでギャンブルに踏み切らなければならない瞬間がある。福岡は適切なタイミングで大勝負に出て、同時にそのギャンブルにクラブとして踏み切る勇気を持っていた。今日の試合展開はまるで近年のそういう躍進の根幹を映していたような試合展開だったようにも思います。素晴らしかったです。アビスパ福岡、本当におめでとうございます!!

 

 

 

【うれしはずかしじゅんいひょうのコーナー】

 

優勝:アビスパ福岡

準優勝:浦和レッズ

ベスト4:名古屋グランパス,横浜F・マリノス

ベスト8:FC東京,ガンバ大阪,鹿島アントラーズ,北海道コンサドーレ札幌

グループステージ2位:清水エスパルス,サンフレッチェ広島

グループステージ3位:アルビレックス新潟,川崎フロンターレ,横浜FC,ジュビロ磐田,京都サンガFC

グループステージ4位:柏レイソル,湘南ベルマーレ,ヴィッセル神戸,サガン鳥栖,セレッソ大阪

 

 

ちなみにサンガと同期。

ではでは(´∀`)