RK-3はきだめスタジオブログ

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スポニチ報道…2026年北中米W杯、NTTドコモ(Lemino)とDAZNの放映権獲得により、地上波放送や無料/有料配信がどうなるかを推測してみる

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

ナウ!オン!!エア!!!

 

どーもこんばんは

 

さてさて、WBCが地上波で放送されないというニュースが列島を駆け巡ってから2〜3ヶ月が経ちました。

 

 

このニュースが巡った時、多くの人はWBCの行末だとかそういう事を考えたと思います。そこについて向き合った後、脳裏にこの言葉が過った人も多いでしょう。

「あれ?サッカーW杯どうなる…?」

 

…そう、そもそも放映権問題がフィーチャーされたのは野球よりサッカーの方が先で、なんなら比較的"放映権ビジネスの脅威"からは離れたところで過ごせていた野球でWBCの事案が起こった以上、じゃあサッカーW杯もっとやべえんじゃねえの?と思う事は自然な流れだったと思います。

 

 

 

サッカー日本代表戦の放映権問題が深刻な問題として表面化したのは2021〜2022年にかけて行われたカタールW杯アジア最終予選でした。

放映権高騰問題自体は前々からありましたがコロナ禍で配信サービスが急激に拡大した事、それがグローバル化の潮流と結びついた事、そんな配信サービスが放映権ビジネスに参加するようになった事で、現在の地上波テレビでは太刀打ちできない規模にまで膨らんでしまった。2021年にはそれまではテレビ朝日日本テレビのBSで放送されていたACLDAZNの放送に移行しましたが、元々ACLは「放映権が上がるとテレビ局にとって採算が取れない事」が想像しやすかったのに対し、テレビ局にとってもドル箱コンテンツであるアジア最終予選の放映権料が地上波各局にとって「採算の取れない値段」になってしまった事はあまりにも衝撃的な出来事でした。

そして決定的な転換点となったのが2022年カタールW杯。これまでの日本はオリンピックとサッカーW杯に於いてはNHKと民放の共同機構であるジャパンコンソーシアムが放映権を購入し、NHK放送分と民放放送分に振り分けてから民放放送分を振り分ける形が用いられていましたが、カタールW杯では放映権料のあまりの高騰から民放各局の足並みが揃わずTBSと日本テレビがW杯中継から撤退し、代わりにインターネットテレビのABEMAが参入。NHK+ABEMA/テレビ朝日/フジテレビというジャパンコンソーシアムと異なる形で放映権を取得した。この時はABEMAがある種のホワイトナイト的な存在になった事は記憶に新しいところでしょう。

 

 

 

とはいえその後も、EUROや決勝戦のみフジテレビで放映されていたUEFAチャンピオンズリーグなどUEFAのコンテンツも地上波から姿を消し、日本テレビもクラブW杯の放送から撤退。そして2023年の女子W杯では最終的にはNHKの放送で落ち着いたとはいえ、大会数週間前まで日本での中継先が決まらないという事態が発生していました。

その流れを見ると、2026年W杯に於いては少なくとも2018年ロシアW杯までのような地上波完全中継は望めない。その上でカタールW杯のように全試合無料で観戦できる環境になるのかどうか、日本戦は地上波放送が実現するのかどうか、それともWBCのように完全有料配信の形になるのか。サッカーファンが気を揉んでいたところ、11月4日に遂にスポニチから概要の報道が出ました。

 

 

 

あくまで発表ではなくスポニチの記事であり、このブログを書いている時点でスポニチ以外の報道機関は報じていないので、まだ"確定"と言い切るのは時期尚早ですが、カタールW杯の際にABEMAの放送権獲得が報じられたのも大会8ヶ月前でしたから、そういう時期的な事を考えても最終的な結論がスポニチの記事内容から大きく外れる事はないんじゃないかなと思います。DAZNとNTTドコモはそれぞれ「決定している事実はない」とコメントしていましたが、これはスポニチ誤報を出した…という可能性もゼロとは言いませんが、基本的には「まだ発表できる段階じゃないから問い合わせとかされても困るぞ」というニュアンスで考えるべきでしょう。スポニチの記事内容に則れば、そもそもサブライセンスがどうなるかによっても放送スケジュールは大きく変わるでしょうし、その辺りがしっかりと固まるまで正式発表の形には出来ない事は自然だと思うんで。

 

スポニチの記事内容も踏まえ、ロシアW杯以前の放送形態、カタールW杯での放送形態、そして北中米W杯の放送形態をそれぞれまとめると大体以下の通り。

 

【ロシアW杯以前】

NHK+民放4社(大会によっては5社)から構成されるジャパンコンソーシアムが放映権を獲得。

・全試合をNHK放送分と民放放送分に振り分け、民放放送分を民放各社で更に振り分ける形で、全試合の地上波放送を実施。

カタールW杯】

・TBS/日本テレビ/テレビ東京の撤退によりジャパンコンソーシアムの枠組みでの購入は行わず、代わりにABEMAが参入する形でNHK+ABEMA/テレビ朝日/フジテレビで放映権を獲得。

・全試合をABEMAが無料放送。その上で開幕戦/決勝戦/日本代表戦を含む41試合をNHK/テレビ朝日/フジテレビが放送し、残る23試合はABEMAの独占放送となった為、全試合の地上波放送は消滅したが、全試合の無料放送は維持された。

【北中米W杯】

DAZNNTTドコモが共同で放映権を取得。全104試合をDAZNNTTドコモの動画配信サービスLeminoで52試合ずつ放送する。

NHKや民放の地上波テレビ局は放映権を取得していないが、NHKDAZN及びNTTドコモからサブライセンスを取得する形で開幕戦/決勝戦/日本代表戦などの主要カードの地上波放送は確保。

・民放ではテレビ朝日とフジテレビもサブライセンス取得を検討しているが実現するかどうかは流動的。また、DAZN及びLeminoの中継が無料開放になるのか有料放送になるのかは不明。

 

…という形になりました。

ここからはスポニチの報道を事実とした上で、地上波放送がどうなるのか、無料放送が実施されるかどうかについての推測を書いていきます。あくまで推測ですので、ソース等はないよ〜…というところは予めご了承を。

 

 

 

今回の最大のポイントは「地上波テレビ局が放映権を獲得していないという事」です。

カタールW杯の際は、あくまでABEMAがNHK/テレビ朝日/フジテレビと共同で放映権を獲得する形態を取っていました。しかし今回はDAZNとドコモが放映権を獲得しているので、額面通りに捉えればDAZNとLeminoの動画配信サービスだけが放映権を行使できるサービスという事になるんですね。NHKはあくまでサブライセンスを付与されるという形なので、前回は「地上波(NHK/テレ朝/フジ)とインターネット(ABEMA)」と棲み分けているような状態になっていましたが、今回はあうまで「インターネット配信サービスでの放送」を前提に「一部試合では地上波に放映権利を提供する」という形になる訳ですね。

となると気になるのは主に2点。「どこまで地上波に解放されるか」と「無料放送になるのか有料放送になるのか」というところにはなります。

 

 

 

地上波放送に関しては、スポニチの記事に則れば"重要なカード"に関しては最低限保障される見込みと記されています。重要なカードというのは主に3つ。開幕戦、決勝戦、そして日本代表戦ですね。つまりスポニチの報道通りであれば、W杯の中でも「国民の関心が高いと呼べるカード」については地上波放送で提供される…と。

基本的にこの3試合はドル箱コンテンツになるので、多額の放映権料を払った配信サービス側としては独占で放映できるに越したことないんですよ。実際、WBCの放映権を取得したNetflixが地上波放送を一切認めない旨を公言しているのもその辺りが要因でしょう。特に彼らは日本企業という訳でもなければスポーツチャンネルでもないので、日本のメディア業界やJFA及びJリーグといった日本サッカー界との利害関係もない訳で、ハレーションが起こる事も承知の上で独占放送に踏み切れる訳です。

 

今回のネトフリもそうだが、AFC主催試合に於けるDAZNにしても、放映権を単独で獲得した以上は基本的に独占放送しなければ旨味はほとんど得られない。1つの試合で地上波と配信サービスが同時に中継を行うとすれば、単純計算すれば独占した場合で得られる視聴者数の半分ほどは地上波に持っていかれる事になる。配信サービス側は大型投資というリスクを冒して放映権を獲得している事を踏まえると、独占という形で放送しない選択は得られるはずの視聴者をただただ減らすだけで、単純計算だと配信サービス側にとってマイナスでしかない。彼らにとっても大きな投資をしたのは慈善事業をする為ではない訳で、独占放送する事を「目先の利益だけを求めている」と言われるのは酷な話だ。サブライセンスを付与するならば"それなりの理由"が必要になる。

【WBCとネトフリと地上波】WBCのNetflix放送決定と地上波消滅……Netflixの放映権獲得に至る"グローバル化のからくり"と、地上波放送実現の可否【後編:結局、地上波で放送される可能性はあるのか?】

 

それが今回は重要カードの地上波放送が容認されるとすれば、やはりWBCの際のネトフリのような「日本に進出している外資企業」ではなく日本企業であるドコモと、同時に外資企業ではありつつも日本サッカー界と利害関係を持つDAZNが取得してくれたというところが非常に大きいんですね。加えてサッカーW杯は、日本代表が関係ない試合でも数字を見込めるという、多競技が絡むオリンピックは別とすればほぼ唯一の国際スポーツイベントなので、日本戦を地上波に譲っても一定の収益は計算できる。ここがネトフリのWBCとの最大の違いと言えるでしょう。

DAZNは今後の顧客確保の観点でも一定の流入口を用意する必要がありますし、それはJリーグ等も共に国立競技場の運営に参画するドコモにとっても同様。特にドコモは独占的な放送態勢を作ることで日本国内のブランドイメージ低下は避けたいでしょうし。逆に言えばそのどちらも無かったからネトフリはああいう事を躊躇なくやれた訳ですが…。

 

 

 

で、じゃあどこまで地上波解放されるの?となると、結局はテレ朝とフジがサブライセンスを獲得するのかどうか次第ではあると思います。

サブライセンスはまずNHKが取得した上で、テレ朝とフジはどうなるかわからない…というのがスポニチの記事の内容でした。両社とも検討はしているものの、今大会はロシアW杯やカタールW杯と比べて放送時間が明らかに都合が悪い……比較的今大会と放送時間の近いブラジルW杯は一般的な番組と比較すればお化け視聴率ではありりましたが、歴代のW杯視聴率に加えて当時の代表人気や配信という選択肢が増えたここ最近の事情も踏まえて比較するとやっぱり相対的に低い。日本戦は良い数字を出せるでしょうが、局としては日本戦だけではペイできないでしょうし、平日の朝〜午前中に放映される日本戦以外のカードでどこまで視聴率が見込めるかは何とも言えないので、テレ朝とフジが尻込みする気持ちは理解はできるなと。

ここからは推測ですが、一応NHK/テレ朝/フジも放映権を持っていたカタールW杯では全64試合をABEMAが放送した上で、うち41試合で地上波放送を実施し、23試合をABEMAの独占放送としていた事を踏まえると、あくまで地上波側に放映権のない今回は、テレ朝とフジがサブライセンスを取得する事を前提とすれば、地上波放送の試合数が最も多い場合で全104試合中の40〜52試合かなと思っています。ドコモとDAZNがそれぞれ52試合で分けているうち、それぞれが半分に近い20〜26試合分を差し出す形ですね。逆に少ない場合だと、日本戦+両社の取り分から10試合前後を差し出した20〜30試合くらいの中継になるかなと。テレ朝かフジのどちらかだけが取得した場合は日本戦を含む15〜20試合くらいになるんじゃないでしょうか。一方、テレ朝もフジも脱退してNHKのみになった場合は日本戦を含む10試合前後か、もしくはNHKが日本戦を独占できる形になるので、日本戦/開幕戦/決勝戦のみの割り当てみないな形になるんじゃないかなと予想しています。

 

完全に推測になりますけど、個人的にはなんやかんやでテレ朝はサブライセンスは取るんじゃないかなと思いますね。幸か不幸か、テレ朝はおそらく来年のWBC用の予算が宙に浮いた状態でもあるので、2026年トータルの予算から極端に逸脱する事にはならないんじゃないか…とは思います。もしWBCに地上波放送の可能性が残されていてテレ朝がそれを狙っているのだとすれば話は変わってきますが、ちょっとそれは想像しにくいところはありますし、テレ朝としても「サッカー日本代表戦と言えばテレビ朝日」みたいなブランドはやっぱり捨てたくない上に、他の民放が参入しない中でNHKとテレ朝だけが地上波放送を担う形になればそのブランドはより強固なものにもなるでしょうから。

一方、フジに関しては……やっぱり"2025年のフジテレビ"という事情を勘案すると、放映権という大型投資案件かつ放送時間が微妙なこのW杯の権利にベットする判断への抵抗が出てくる事は自然というか一般的に考えればそうなるよね、という部分は否めないので、サブライセンス獲得の可能性は低いとは言わずとも少なくともテレ朝よりは低いでしょう。ただ現在のフジはバラエティ番組に大きな制約がかかっているだけに、サッカーに限らずスポーツ中継を重点的に…という方向に舵を切る可能性もある。そうなった場合は起爆剤としてW杯の放映権が投資案件としての意味を持ってくるので、テレ朝は予算の都合がつけば、フジは局としての方向次第…といったところでしょうか。

 

 

 

もう一つの争点が、Lemino及びDAZN放送分が無料放送になるのかどうか…というところです。

 

 

カタールW杯の際のABEMAは全試合の無料放送を実施した事が大きな話題と称賛を集めましたが、ABEMAが無料放送に踏み切った大きな要因としては「W杯を通じてABEMAを知ってもらう」「W杯中継の視聴を通じてABEMAのサービスを試してもらう」事で、有料会員の獲得や潜在顧客の拡大を狙った、ある種の広告費として考える意図がありました。

DAZNはともかく、Leminoに関してはカタールW杯時のABEMAのような、W杯中継を広告費として換算する考えを持っている可能性はあるかも、とは思います。2023年にそれまでドコモの動画配信サービスとして稼働していたdTVをリニューアルする形でLeminoは、動画配信サービスとしてはそれこそDAZNやネトフリ、或いはAmazon Prime Videoと比べて後発勢力的な印象が強く、一昔前は近いポジションにいたはずのU-NEXTにも少し遅れを取り始めた状況で、そもそも「dTVがリニューアルしてLeminoになった」という事すらあまり知られていない。そういう状況を考えると、基本的にドコモのサービスなのでW杯中継が滑っても経営危機に直結する訳ではないでしょうから、2022年のABEMAがそうしたように、W杯を通じてLeminoを周知させる、W杯中継を通じて一度Leminoのサービスを使ってもらうという有料配信で得られる見込みのある収益を広告費として換算するような目的の無料放送の実施は、プランの一つとしては持っていると思います。

一方、DAZNの方はスポーツ専門チャンネルという性質上、ネトフリやアマプラ、それこそLeminoとは異なり、スポーツ以外のコンテンツでの収益を得られないという事情があるので、W杯という大型投資に対してちゃんとW杯で収益を得なければならない事情がある。DAZNも2025年のクラブW杯では全世界無料生中継を実施しましたが、あの無料放送が実現したのは新クラブW杯のプロモーションを兼ねたFIFAとの共同プロジェクト的な側面もあったので、今回のW杯との比較は難しいように思います。もちろんDAZNとしても、2024年にアジア最終予選の一部試合を無料開放したように潜在顧客層の拡大を目論んだ無料放送を考える可能性はありますが、いずれにしてもDAZNが無料放送に踏み切るメリットはLeminoやABEMAと比較しても小さいという実情はあるんですよね。その差異をサブライセンスの販売額が埋める事ができれば…というところでしょうか。

ただ、ドコモとDAZNは基本的に提携関係にあるので、W杯の全試合を見ようと思ったら「絶対にドコモとDAZNの両方に月額料金を払わなければならない」という形にはしないんじゃないか…とは思います。どちらも無料視聴可能か、どちらかが無料サービスの形態を採るか、或いはLeminoとDAZNの共同パックとして販売されるかの形には落ち着くんじゃないかと。ソースも根拠もない推測ですが、ドコモとDAZNのような提携関係がある2社で権利を獲得した以上、販売形態にも両者の調整ははあると思いますし。

 

 

 

いずれにしても、国民的関心度の高いカードの地上波放送は確保されるという一点でも、LeminoとDAZNという日本のスポーツ業界に対する利害関係を持つ企業が放映権を取ってくれたという事は、このご時世を踏まえるとポジティブに捉えるべき事ではあると思います。それは直前にWBCの件があっただけに尚更。

放映権高騰の波が止まらないこの時代、スポニチの記事の締めにも書かれていたように法整備の必要性は検討されるべき事ではありますが、今大会に関しては良い落とし所に落ち着いてくれたんじゃないでしょうか。

 

 

放映権ってこわい!

ではでは(´∀`)