西京極にて〜京都サンガFCvsジェフユナイテッド千葉 観戦日記〜

「確かにそこにあるもの」の持つ力は大きい。

 

「環境に甘えるな」なんて言葉はよく聞くけれど、大概の場合に於いて人に嗜好のきっかけを与えるのは環境である。それは恵まれているとか恵まれていないとかそういう問題ではなく、例えば「親が○○っていうバンドを良く聞いていたから、自然と自分も好きになっていた」「○○が好きな友達の話を聞いているうちに、自分もハマっていた」とか、そういった意味での環境だ。

このブログを観ている人はサッカー好きの方が多いと思うが、果たしてそのうちの何割がサッカーを好きになろうとしてサッカーを好きになったのだろうか?そのような人は限りなく少ないだろう。多くの人がきっかけは何らかの偶然だろうし、そこには「たまたま近くにスタジアムがあった」「親の影響」「仲の良かった友達の誘いをきっかけに」といった様々なきっかけがあるだろうが、そのどれもが偶然がもたらした環境と言える。

 

 

 

自分にとって西京極とはそういう場所だったし、京都サンガというチームはそういう存在だった。

 

 

 

このブログはガンバとサンガのファンという立場だが、メインはどちらかと言えばガンバに寄っている。しかし私がサッカーに入る入口となったのは紛れもなくサンガだ。

小学校の時、学校で招待券を貰った。父も母も元々サッカー好きという側面があった事もあって初めて西京極にサッカーを観に行ったのは2004年。自分が自発的にサッカーを観るようになったのは翌年の2005年からで、サンガとガンバの2チームを追うようになったのはそこからだ。最初に招待券を貰った時は別にサッカーに対して興味は無かったし、例えばもし、自分がサンガに触れるよりも先に阪神タイガースに触れていたとしたらこのブログは今頃野球ブログになっていたかもしれない。世界のどこにいる玄人だって、一つタイミングが狂えば全く違うジャンルの玄人になっていたかもしれない。そんなある種の不確定要素を孕むからこそ、人間という生き物は「運命」という言葉に酔うんだと思う。きっかけやタイミング…自分にとって全ての偶然が揃った環境の中心こそ西京極というスタジアムで、万博記念競技場Panasonic Stadium Suita…そしてサンガの新スタジアムなど、自分にとっての聖地はきっとこれからも増える。だが、原点はいつまでも西京極が唯一の存在となるのだろう。

これからも全く使用しない訳ではないのかもしれないが、自分にとって確かに「はじまりの場所」だった西京極は今年でサンガのメインスタジアムとしての役割を終える。初めてサッカーをこの場所で観たあの日から丁度15年。今回は2019年の京都サンガFCホーム最終戦であると同時に、西京極でのラストゲームとなった明治安田生命J2リーグ第41節、京都サンガFCvsジェフユナイテッド千葉の観戦日記を書いていこうと思う。

 

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最終節のスコアは余りにも話題になりすぎた為、恐らくこのブログを観ている方の多くはサンガがプレーオフに進出出来なかった事を知っていると思うが、この時のサンガは2連勝出来れば現実的な可能性としてプレーオフ進出を狙えるポジションにいた。思えば、去年のホーム最終戦の相手も同じ千葉だったが、J3降格すら危ぶまれていたあの時は何かも違っていた事は間違いない。西京極がラストという事で、若干センチメンタルな感情を抱いていた者は多かったと思うが、試合に関してはネガティブさも「昇格争いに絡めている事」というポジティブな側面がもたらすモノだったという解釈も出来る。新スタジアムではどのような形態になるかは読めないサンガフレンズスクエアで味噌ラーメンを購入し、Sバックに陣取る。

 

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しかし…巡り合わせというやつは、中々に仕事をするもんだ。西京極でラストのこの試合の相手は千葉。言うまでもなく、今季のJ2チームの中では歴史が古い分、西京極で試合をした回数も多いチームだ。加えて、今季の千葉にはサンガと縁深い選手が実に多い。

増嶋竜也は2008〜2010年のJ1時代のサンガで活躍し、そこから柏レイソルへと羽ばたいた。工藤浩平は今や一つの伝説ともなっている大木武監督時代のサンガのキーマンと言える存在だった。サンガサポから結構なブーイングを喰らう事になった堀米勇輝も、在籍こそ2016年の1シーズンのみだったが、その年は大車輪の活躍を見せてサンガのプレーオフ進出に大きく貢献している。そして何といっても佐藤勇人である。今でも思い出す。2008年…柳沢敦シジクレイといった大型補強のうちの一人としてサンガに入ったのだが、あの年の開幕前のワクワク感はそうそう出会えるものでもないだろう。そんな彼も今年で引退する。その最後のアウェイゲームが最後の西京極になるとは…。どうしてもエモーショナルな感情を抱かずにはいられなかった。

今季の選手紹介VTRの前に、スーパーマリオブラザーズのBGMが流れる今季のサンガ。あのメロディーも、何故かどこか切なげな音色に聞こえた。

 

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選手紹介を終えれば、いよいよ選手入場である。熱狂というよりも、今まで見たあらゆる試合の中でも「感傷的」という言葉のよく似合う試合が幕を開けた。状況的に多分、これが今年で無ければ、一つのサバイバルゲームとして扱っていただろう。しかしこの時の心の中で既に、手に汗握るとか、そういうものとは少し違う心境でキックオフの笛の音を聞く。

 

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スポーツ的な試合の詳細はマッチレビューの方を観て貰いたいのだが、試合は前半からかなりオープンな展開だった。どちらのペースという訳でもなく、サンガも千葉も初っ端から多くの決定機を作り出す。両GKの好セーブもあって前半はスコアレスで折り返す事になるのだが、どこかセンチメンタルな空気が包んでいた西京極に熱狂というか、緊張感を点火させるようなせめぎ合いが繰り広げられていた。

 

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後半は勝たなければならないサンガがかなり押し込む展開になった。クラブ創立25周年を記念したユニフォームを身に纏い、何度も千葉ゴールへと襲いかかる。だがどうしても1点が遠い。第39節、攻めて攻めて攻めて…1点も取れずに、逆にカウンターに散った甲府戦の時の幻影が西京極に蠢き始める。

だが、11000人を超す観衆がこの日最初の歓喜を、そして25年間の西京極にとって最後の歓喜はラスト5分で訪れた。前述の甲府戦ではPKを失敗して悔しい思いした、京都橘高校時代から西京極で躍動した仙頭啓矢のゴールが崖っ淵のサンガを救う。

 

 

その後、千葉のフィジカルを活かしたパワープレー気味の猛攻を凌ぎ切ったサンガは何とか勝利に漕ぎ着け、プレーオフ進出への望みを繋ぐ勝利を挙げた。

 

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はっきり言うと、最終節の相手は柏だし、さすがにあれ程の結果になるとは思っていなかったとは言え、第39節で甲府に敗れた時点でプレーオフは正直厳しいとはこの時点で思っていた。仮にプレーオフに行けたとしても、今のサンガがそこで勝ち進めるとも余り思ってはいなかった。だが、この勝利の意味は私にとってプレーオフや順位とは全く異なる意味で必要なもので、この瞬間の私にとっては心のどこかで、ここで終わるのが一番綺麗な終わり方なのかもしれない…なんて感情が渦巻く。初めてサッカーを観た15年前の西京極から長い時を経て、色々な形の感情を味わってきたが、そのどれにも当てはまらない感情を抱きながら仙頭のヒーローインタビューを聞いていた。

サッカー専用スタジアムへの移転は素晴らしい事で、サンガの長年の夢だったからこそ勿論嬉しい。だが何かを手に入れれば何かを失うのは世の定めであり、来年からは自転車でキックオフ直前に家を出て来てみたり、何かの帰りにふらっと当日券を買って流れで観戦してみたりなんて、今思えばメインスタンドのど真ん中よりも贅沢かもしれない日々はもう来ない。原点という言葉は裏を返せば、もう今はその場所に居ないという事も意味するのかもしれない。それを思うと、ホイッスルが鳴った瞬間は西京極が本当の意味で自分の原点になった瞬間だったんじゃないかと、今はそう思っている。

 

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試合後、今季限りで現役を引退する佐藤勇人が挨拶に来てくれた。サポーター席のみならず、ピッチを一周していた。10年ぶりにサンガバージョンの応援歌に懐かしさを感じながら…。私の中でサンガの佐藤勇人の一番といえば、やっぱり2008年の鹿島戦、柳沢敦とのアベックゴールで2-1の勝利を収めた時だろう。その思い出が一つ蘇れば、連鎖的に西京極での様々な記憶が蘇る。

このブログでのスタジアムガイドではこのスタジアムを高くは評価していないし、友人との会話でもネタにはしているが、評価と愛着はまた別のものなのである。

 

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沈みゆく夕日は西京極とサンガの残りの時間を示しているかのようだった。オレンジに染まる空の下で鳴り響くサンガの応援歌は熱く、そしてどこか儚く西京極を漂う。歴史には必ずはじまりの場所がある。時代は止まらず後戻りはしないが、誰かの心に何かしらの形で残る事は確かだ。

多分、立派なサンガの新スタジアムで試合を観れば「西京極より全然見やすいわwwww」と間違いなく高らかに笑うだろう。亀岡に建つ新たな聖地は、間違いなく今の西京極よりも様々な面で素晴らしいスタジアムとなるし、サッカースタジアムとして西京極が勝てる部分なんて殆ど言っていいほど無いと思う。でも良いじゃないか、少しくらい、バロメーターで叩き出せない勝手な基準の数値があったって。西京極は自分にとって、スタジアムという単位では測れない意味と価値を持つスタジアムだから。

今までいくつかのスタジアムで観戦した中で、西京極は間違いなく最も優れたスタジアムなんかじゃない。一番好きなスタジアムかと言われてもそういう訳でもない。だが、これだけは間違い無いと思う。きっと西京極は自分にとって一番特別という言葉の似合うスタジアムなんだと…。

 

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