隣の席からミートソースの匂い
どーもこんばんは
カフェでこのブログを執筆中であります。
さてさて、ロシアW杯の日本代表、西野ジャパンをブラジル大会終わりから改めて振り返っていこうという総括企画は今回で2回目。
今回は2015年3月、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督就任から話は再開します。
2014年ブラジルW杯に於いて、決して前評判の高い訳ではなかったアルジェリア代表を率いて決勝トーナメント進出。
ベスト16ではこの大会の覇者となったドイツと延長戦までもつれ込む死闘を演じ、敗れはしたもののこの試合はブラジルW杯名勝負の一つとして挙げられています。
協会がアギーレ招聘時にも掲げた「W杯決勝トーナメント進出経験のある監督」という条件に合致する監督であったハリルホジッチ。
しかしW杯本戦では失敗に終わったものの、それに至るまでのプロセスの中は過去最高とも言える完成度を見せていたザックジャパンのスタイルと良くも悪くも真逆であるサッカー観を持っていたハリルには、就任時から多少の不安の声は見受けられました。
就任当初こそチュニジア、ウズベキスタン、イラクに3戦とも快勝で3連勝したものの、ロシアW杯2次予選の初戦、ホームでのシンガポール戦では格下相手に1点も奪えずスコアレスドロー。その2ヶ月後、Jリーグ組で挑んだ東アジア選手権では1勝も出来ずに大会を終えるなど、この辺りからハリルジャパンへの風当たりは強くなっていきました。
(日本vsシンガポール戦、スタメン)
ハリルは就任当初から「デュエル」「縦に速いサッカー」の2つを標榜し続けていました。確かにこれはブラジルW杯でも露呈した日本代表の明らかに足りない部分であり、特に流行語にもなる勢いですらあった「デュエル」の部分はこの辺りからJリーグでも強調され、対人に於ける個の重要性を戦術として示した事はハリルの一つの功績と言っても過言ではないでしょう。
ですが監督がチームを選ぶのと同様に、チームというのもまた監督を選ぶもの。ハリルの目指すサッカーと日本代表には明らかな相違があったように感じます。
これは決してハリルが、或いは日本代表が良いとか悪いとかではなく性格も含めて相性の問題で、ある意味どうしようもない問題なのです。
逆に日本代表と相性の良かった監督がザッケローニで、自分との相性よりも自分からチームに合わせていくタイプの監督がアギーレであり、そして西野朗だったのではないでしょうか。
真偽は定かではありませんが、韓国代表の次期監督候補にハリルが挙がっているというニュースを見て、多くの人が「ハリルは韓国の方がスタイル的に合ってそう」と感じたのはサッカーに於ける相性の持つ力の大きさを表していると思います。
再び話を代表の歩みに戻すと、初戦のシンガポール戦では引き分けたとはいえ2次予選は相手が格下という事もあってその後の試合を全勝で通過。
ですがそんな中迎えたロシアW杯最終予選、ホームでの初戦でUAE相手に逆転負けを喫する最悪のスタートを切ってしまいます。
(日本vsUAE戦、スタメン)
その後タイ戦、イラク戦は勝利するものの格下相手の試合の内容としては不満が残るもので、この時久し振りに日本代表ファンが「W杯に行けないかもしれない恐怖」を覚えました。
もちろんW杯に行けるという事は決して当たり前ではありません。ですが実績と戦力ではアジアでは間違いなくトップであるはずという事を考慮すれば、イラク戦終了間際の山口蛍の劇的ゴールには歓喜したとはいえ「なんでこの段階からこんな苦戦してるの…?」という想いがよぎりました。
もちろんその不調の要素は監督と日本との戦術的相性のみならず、本田圭佑や香川真司といった日本の主軸が所属クラブでも好調とは言えなかったりなどの要素も当然あります。
それでも2017年を迎えて最初の公式戦となったアウェイUAE戦では、負傷の長谷部に代わって2015年3月以来の招集となった今野泰幸をスタメン起用。この今野がMVP級の働きを見せて勝利し、また西川周作のスランプや東口順昭の怪我があったとはいえ、久しぶりに先発に抜擢した川島永嗣が獅子奮迅の活躍を見せて勝利。
その後、W杯出場に王手をかけたオーストラリア戦では中盤に長谷部誠、山口蛍、井手口陽介と守備寄りの3人を並べたこれまでにない形を取り、「デュエル」「縦に速いサッカー」という2つのキーワードに合致する選手で固めて2-0で見事勝利し、ロシアW杯出場を決定させます。
(日本vsオーストラリア戦、スタメン)
まさしくこのオーストラリア戦がハリルジャパンの3年間でハリルの理想に最も近い試合であり、UAE戦を含めたこの2試合はハリルの勝負勘も冴えた試合ではありました。
オーストラリアの弱体化という側面はあったとはいえ、このオーストラリア戦がハリルの目指すものが具現化されたような会心の勝利と言えるものだった事もあり、これまでに各所で持ち上がっていたハリル解任論は一旦落ち着きを見せます。
しかしここから今までにないほどの閉塞感に見舞われる事になったのでした。
ハリルの目指す形というものがこれまで中々見えてこなかったハリルジャパンでしたが、ある種の理想形のようなものをオーストラリア戦で見せていた為、本大会に向けてのある程度の展望は立ちつつあると思っていました。
一概にどちらが良いとは言えない案件ですが、ザックジャパンの時は10月の時点で何となく23人全員とは言えずとも、大体スタメンはこんな感じでこの辺りの面子を連れていくんやろなぁ、という予想は付いていた方が多いと思います。
メンバーの固定化というのはチーム内での競争原理が働きにくくなってマンネリ化に至る可能性が懸念される反面、クラブチームとは違って頻繁には集まれない代表チームの連携や組織力を高めるには一番効率的な手段でした。
一方ハリルジャパンは良くも悪くもメンバーが流動的に代わっており、もちろんそれはJリーグ内においても競争原理を活性化させる一つではあったのですが、逆にスタメンを固定し切れないままチームとしての体裁を成す事が出来なくなっていて、そのツケが回って来たかのような状態に10月のニュージーランド戦以降は陥っていきます。
10月のニュージランド戦、ハイチ戦では杉本健勇や倉田秋といった当落戦場の選手がゴールを決めてアピールしたといえば聞こえはいいですが、ニュージーランド戦は勝ちはしたものの低調な内容、メンバーを入れ替えて臨んだとはいえ、ハイチ戦は格下相手に3-3で引き分けてしまいました。
11月のブラジル、ベルギーとの優勝候補とのヨーロッパ遠征での2連敗は相手が相手だったため仕方ない部分はありましたが、ハリルへの不信がある意味決定的なものとなったのが12月に国内組だけで行われた東アジアE-1選手権でした。
国際Aマッチデーではない為、フルメンバーではないというエクスキューズはあったものの北朝鮮、中国との格下の試合は勝利こそ収めたものの内容は決して芳しいものではなく、迎えた最終節の韓国戦では日本と同じで欧州組を欠く韓国に1-4で大敗。
この試合の内容のあまりの酷さとハリルの幾つかの発言もあってハリルへの風当たりは一気に強くなっていきました。
(E-1選手権、日本代表主力メンバー)
実際に日本サッカー協会はこの試合の後に本格的にハリルホジッチ解任を検討。
結果的にはフルメンバーではない事を理由に、欧州組も揃う3月の欧州遠征を見て決定する事に決めました。
そしてあの希望が萎みゆくようなマリ、ウクライナとの2戦を終えてハリルホジッチは解任の憂き目を見る事になりました。
前代未聞のスクランブル状態の中監督に就任したのはかつてアトランタオリンピックの日本代表を指揮し、ガンバ大阪を率いて黄金期を築いた西野朗氏でした。
ここからあまりにも濃く、激動の2ヶ月が始まる事に…。
……第3回に続く!!