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邂逅〜Jリーグが急に中断期間に入っちゃったから印象に残るシーズンを振り返ろう企画・第9回 2012年残留争い〜【2012年J1最終節特集】

2020年3月19日、既に3月いっぱいの公式戦全試合の延期を発表していたJリーグは競技面での不公平性などを考慮し、2020年の降格チームを無しにする事を発表した。即ち、ある意味でJリーグの醍醐味とも言える残留争いが今年は行われない…という事である。

今回の決定はこうなった以上仕方ないものだと思うし、反対意見を述べるつもりは全くない。が、結果的にJリーグの楽しみな要素が一つ減ってしまったことは事実である。そこで今回はこれまで8回(2部構成回を含めると9回)更新してきた過去のJリーグを振り返る企画も残留争いを取り上げようと思う。

私はガンバファンだ。だから正直、この年の残留争いはあまり振り返りたくない。ただ、もし自分がガンバファンじゃなかったとして……第三者として見た時、この年の残留争いのドラマ性は喜劇でも悲劇でも歴代で類を見ないレベルのものだったのだろう。

今回は2012年の残留争いを振り返る。

 

2012年のJ1チーム

コンサドーレ札幌(前年J2、3位)

ベガルタ仙台(前年4位)

鹿島アントラーズ(前年6位)

浦和レッズ(前年15位)

大宮アルディージャ(前年13位)

柏レイソル(前年優勝)

FC東京(前年J2、優勝)

川崎フロンターレ(前年11位)

横浜F・マリノス(前年5位)

アルビレックス新潟(前年14位)

清水エスパルス(前年10位)

ジュビロ磐田(前年8位)

名古屋グランパス(前年2位)

ガンバ大阪(前年3位)

セレッソ大阪(前年12位)

ヴィッセル神戸(前年9位)

サンフレッチェ広島(前年7位)

サガン鳥栖(前年J2、2位)

 

 

開幕前

 

昨季の最終節まで優勝を争った柏、名古屋、ガンバの3チームが優勝予想での人気はやはり高かった。だが、柏はネルシーニョ監督、名古屋はドラガン・ストイコビッチ監督の下で継続路線を選択した一方、ガンバは10年間チームを率いた西野朗監督が退任し、ジョゼ・カルロス・セホーン監督と呂比須ワグナーヘッドコーチが就任しての新体制となる。戦力に関しても山口智橋本英郎下平匠イ・グノなど従来の主力が退団し、代わりに今野泰幸パウリーニョイ・スンヨル佐藤晃大など多くの選手を補強。前年にJ1で活躍していた倉田秋丹羽大輝の復帰も補強と呼べるものだったが、新体制と選手の大幅入れ替えが伴う影響を考慮した時にガンバに関しては若干予想が割れていた。それでも二桁順位を予想する者がいなかったのはアルベルト・ザッケローニ監督率いる当時の日本代表で不動のレギュラーだった遠藤保仁今野泰幸を擁し、明神智和加地亮のように代表経験者も多く揃えていた戦力の充実度が大きな要因だろう。また、優勝候補…という訳ではなかったが鹿島から野沢拓也田代有三、ガンバから橋本英郎高木和道、そして海外から日本代表の伊野波雅彦といった大型補強に成功した神戸にもダークホースとしての期待が注がれていた。

そもそも2012年は10年間チームを率いた西野監督を退任させたガンバを筆頭に、リーグ3連覇を果たすなど在任5シーズン全て(※1)で何らかのタイトルを獲得していたオズワルド・オリヴェイラ監督からジョルジーニョ監督に切り替えた鹿島、レヴィー・クルピ監督、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督というJ2から若手育成と攻撃サッカーの構築に成功した監督との契約を終了したセレッソと広島も長期政権が終わって最初のシーズンになっていた事から、これらのチームもシーズンがどうなるか少し読めない部分があった。特に主力の李忠成が退団し、森保監督が監督としてのデビューシーズンとなる広島は降格候補にも挙げられていたほど。これらのチームだけでなく、この年は8チームが新監督でシーズンインを迎えていて、これは過去最も多い数字である(※2)。ただ、最終的にシーズンはその人選が大きく運命を左右する結果となる。

残留争いに関しては鳥栖、札幌の2枠が確定的と見られており、後は大宮、新潟辺りがそろそろ落ちるんじゃないか…なんて声が挙がっていた。

 

※1 2007〜2009年のJ1、2007年と2010年の天皇杯、2011年のナビスコ杯を獲得している。

※2 新監督を迎えたのは鹿島(ジョルジーニョ監督)、浦和(ミハイロ・ペトロヴィッチ監督)、FC東京(ランコ・ポポヴィッチ監督)、横浜FM(樋口靖洋監督)、磐田(森下仁志監督)、G大阪(ジョゼ・カルロス・セホーン監督)、C大阪(セルジオ・ソアレス監督)、広島(森保一監督)の8チーム。

 

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前半戦

 

開幕からの10試合を7勝2分1敗で突っ走った仙台をロケットスタートと表現するなら、さしずめ当てはまる言葉は「逆噴射」だろうか……。そもそも監督就任のプロセス(※1)にゴタゴタがあったガンバはセホーンガンバの初陣となるACL浦項に0-3で完敗を喫した事を皮切りにリーグ開幕戦でも神戸に敗戦。続くセレッソとの大阪ダービーではラストワンプレーでのゴールで失点し敗北(※2)するとACL第2節でも敵地でアデレードに完封負けを喫し、更に第3節磐田戦では磐田のエース、前田遼一にシーズン初ゴールを許して1-2で敗れ去り公式戦5連敗という事態に陥った。セホーン監督と呂比須ヘッドコーチのどちらが主導権を持つのか定かでない状態のチームとしてのブレ、ポゼッションをベースにしていた西野監督時代から速攻をベースにした形にシフトする自体はいいけど、元々形になっていた遺産を放棄しただけでキャンプで新たな形を積む事も出来なかった攻撃の迫力不足、そしてチームが変わっても変わらない守備の崩壊……以上のスポーツ的要因に加え、ガンバには「前田遼一にシーズン初ゴールを奪われるとJ2に降格する(※3)」というジンクスまで襲い掛かる。「ジンクスはジンクスだし…」「そもそもこれまでジンクスで落ちたチームって元々降格候補やん(※3)」なんて言いながらガンバファンは傷を舐め合うが、この5試合の結果を見た上でジンクスが訪れた事で全ての点と線が繋がったような錯覚すら覚えてしまう。一度はセホーン続投を当時の金森喜久男社長が明言したが、結局3月26日に呂比須コーチと共に解任が決定。2012年の幕開けは考え得る最悪最低のスタートをガンバが切ったところから激乱が始まってしまった。後任にはコーチを務めていた「ミスターガンバ」こと松波正信監督が就任し、チームはセホーン監督時代の形だけのスタイルから西野監督時代のやり方に戻す事で再起を図る。

 

※1 G大阪は当初呂比須コーチを監督として招聘する予定だったが、同氏のライセンスがJリーグでは監督を営めない基準となっていた事で呂比須コーチの恩師であるセホーン監督を招聘される形となった。このような経緯から実権は呂比須コーチが握っていたとも言われており、二頭体制のような形になった結果、選手達にも混乱を与える要因になった。

※2 リーグ戦での大阪ダービーG大阪が敗れたのは2003年以来実に9年ぶりだった。

※3 この「前田の呪い」「デスゴール」とも呼ばれたジンクスは2007年から始まっており、2007年から2011年までに前田が初ゴールを決めた相手(甲府、東京V、千葉、京都、山形)は全て降格、それも17位以下で降格した上で1年でJ1復帰も出来ないというオマケまで付いていた。上記でも書いた通り、2011年まではそもそも降格予想に名前の多く挙がるチームが対象だった事で一部で話される小ネタ程度のものでしかなかったが、この年のG大阪が降格もあり得る程の窮地に陥った上で前田に決められた事でこのジンクスは国内サッカーメディアのみならず海外メディアや一般ニュースでも報じられるようになる。

 

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予想外の不審に陥ったのはガンバだけでは無かった。それぞれ新監督を迎えた鹿島は開幕から5試合、マリノスに至っては7試合勝利から見放されてしまい、同じく開幕5試合の時点で勝ち星の無かったガンバ、札幌、新潟と併せて「未勝利ファイブ」というネットスラングまで生まれる事態となる(※4)。加えて前年王者の柏は10試合を消化して3勝2分5敗と黒星が成功し、前々年王者の名古屋も勝ち切れない試合が続き、逆に開幕ダッシュに成功したのは前述の仙台に加えて広島、浦和、磐田という浦和以外は上位予想に名前の挙がらないチームであった。

 

※4 鹿島、新潟、G大阪は第6節、横浜FMは第8節、新潟は第9節で初勝利を収めた。

 

マリノスに関しては第8節で初勝利を飾るとそこから15試合無敗で上位争いのカテゴリーに加わるようになったが、ガンバと鹿島は浮上のきっかけを掴んでもすぐに手放してしまい一向に調子が上がらず、ガンバに至っては降格圏から抜け出す事さえも出来ない。気が付けばガンバ、新潟、札幌の3チームが降格圏で独走のような形になっており、特にガンバにとっては降格候補筆頭と言われながら大健闘していた鳥栖との第13節の試合展開は今のガンバが如何に絶望的な状況であるかを如実に見せつけられる形になってしまったのだ。

この時点で波乱続出となったJリーグは約3週間の中断期間へ突入する。

 

2012Jリーグディビジョン1第13節

ガンバ大阪2-3サガン鳥栖

2012年5月25日19:03@万博記念競技場

G大阪得点者:二川孝弘(3分)、佐藤晃大(67分)

鳥栖得点者:豊田陽平(68分)、藤田直之(86分、90+4分)

 

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第13節終了時点

1位 ベガルタ仙台(27)

2位 サンフレッチェ広島(25)

3位 ジュビロ磐田(24)

4位 清水エスパルス(23)

5位 浦和レッズ(22)

6位 FC東京(22)(※5)

7位 川崎フロンターレ(22)

8位 サガン鳥栖(20)

9位 横浜F・マリノス(18)

10位 鹿島アントラーズ(17)

11位 セレッソ大阪(17)

12位 柏レイソル(17)(※5)

13位 名古屋グランパス(17)(※5)

14位 ヴィッセル神戸(15)

15位 大宮アルディージャ(15)

16位 ガンバ大阪(9)(※5)

17位 アルビレックス新潟(9)

18位 コンサドーレ札幌(4)

 

※5 ACLの影響で第9節が延期されているので1試合消化数が少ない。

 

転落と崩壊の過程があまりにわかりやすく、インパクトが強かった事からガンバばかりが目立つが、よくよく考えればこの年はそもそもこの時点で大概おかしかった。前年度の上位3チーム(柏、名古屋、ガンバ)の全てが12位以下になっており、過去3シーズンの優勝チーム(鹿島、名古屋、柏)という見方をしても3チームとも二桁順位。そもそも、過去3シーズンでトップ3に入った6チーム(鹿島、川崎、ガンバ、名古屋、セレッソ、柏)のうち、川崎を除く5チームが10位以下にいる事自体がおかしい。上位にしても、トップ5の顔触れは浦和以外は上位予想されていなかったし、浦和にしても前年は15位だったのだ。私はガンバファンだからこの時には絶望感と恐怖しかなかったが、今振り返ると改めて意味のわからないシーズンだったように思う。

Jリーグは3週間の中断を経て6月中旬、第14節から再開の時を迎えた。

 

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中断明け

 

中断期間が終わってもガンバの調子は中々上がってこない。第15節では最下位独走状態だった札幌にこそ4-0で圧勝したが第16節で柏にミスからの崩壊で2-6の惨敗を喫すると、第18節ではマリノスに終了間際の失点で敗北を喫して一向に降格圏から抜け出せずにいる。いよいよ後がなくなりつつあったガンバは夏、カタールからレアンドロマジョルカから家長昭博を復帰させると共に清水から岩下敬輔を獲得。シーズン途中とは思えないレベルの大型補強を敢行して巻き返しを図った。するとレアンドロの圧倒的な得点力などもあってガンバの調子は回復し、第22節名古屋戦、第23節札幌戦では共に5点差での圧勝を果たすなど第18節からの5試合を3勝2分、それも5試合18得点という爆発っぷりでようやく降格圏からの脱出に成功する。それでも第24節には鳥栖に1-4で完敗を喫して残留争いまで抜け出せずにいた。

柳下正明監督を就任させて成績が上向きつつあった新潟もガンバと共に成績を上げていたが、逆に大宮がズルズルと降格圏にまで順位を落とし、同時に鹿島と川崎とセレッソも黒星先行でじわじわと残留争いに足を踏み入れていく。第24節、Jリーグがラスト10試合となったタイミングでJリーグは再び2週間の中断に入るが、この時にはガンバや鹿島が巻き込まれていることもあって事実上広島と仙台のマッチレース状態となっていた優勝争いよりもJリーグファンの視線は下位争いに注がれ始めていた。

 

第24節終了時

11位 ヴィッセル神戸(33)

12位 鹿島アントラーズ(32)

13位 川崎フロンターレ(32)

14位 セレッソ大阪(29)

15位 ガンバ大阪(24)

16位 アルビレックス新潟(24)

17位 大宮アルディージャ(24)

18位 コンサドーレ札幌(10)

 

この時点で前述のガンバと新潟を含めて6チームが監督交代に踏み切っていた。神戸は5月の時点で和田昌裕監督を解任して昨年までガンバを率いていた西野朗監督を招聘。大宮も5月末に鈴木淳監督を解任してズデンコ・ベルデニック監督を迎え入れ、そしてセレッソセルジオ・ソアレス監督を切って昨季まで指揮を執ったクルピ監督を復帰させている。

この頃になると、世間の注目は「どこが残留するか?」「どこが合格するのか?」というより「ガンバは本当に降格するのか?」に集まり始めていた。混乱が混乱を呼ぶシーズンはいよいよ波乱のラスト10試合に縺れ込まれていく。

 

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終盤戦

 

第25節はいきなり直接対決となった。勝点で並ぶ15位ガンバと16位新潟が激突する、まさしく勝点3の行方が今後を左右する局面である。

試合は14分にレアンドロのゴールでガンバが先制。ガンバとしてはここで新潟に勝てば少し突き放せるはずだった。しかし……アディショナルタイム、最後の最後でPKを献上すると、これをブルーノ・ロペスに決められて目の前で勝点3がすり抜けていく。ガンバにとっては余りに痛い勝点1となった。

 

2012Jリーグディビジョン1第25節

ガンバ大阪1-1アルビレックス新潟

2012年9月15日19:03@万博記念競技場

G大阪得点者:レアンドロ(14分)

新潟得点者:ブルーノ・ロペス(90+1分)

 

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それでもガンバはここから巻き返しを見せた。新潟相手に痛恨のドローを喫した翌節には3位の浦和相手に敵地で5-0と勝利を収め、1分1敗を挟んだものの川崎にも敵地で勝利を収める。なんやかんやで夏の補強も功を奏し、後半戦と呼べる第18節から第29節までは5勝4分3敗と白星先行でラスト5試合まで持っていった。巻き返しに成功したという意味では大宮と新潟にも同じ事が言えた。大宮は札幌、新潟は名古屋に5-0で勝利するなど、引き分け先行ながら負けもないサッカーを展開する。14位に沈んでいたセレッソも、シーズン前に退任したクルピ監督復帰以降は白星を積み上げて巻き返した。

 

14〜17位のチームが巻き返すとどのような事態が起きるか。……簡単な事だ。残留争いにニューキャストが誕生するのだ。

勝負強さが売りだったはずの鹿島は世代交代の渦中で本来の強さが隠れてしまい、残留争い直接対決となった第27節ガンバ戦では最後の最後でレアンドロに同点ゴールを奪われて突き放すチャンスを逃す。更に第29節ではこの時点で降格が決まっていた札幌にも引き分けてしまい、勝点を積み上げられない上に下が迫ってきたせいで残留すら確定させられない。現実的に降格の可能性は既に低かったが、第27節の時点では4位につけていてまだ優勝も狙えるポジションだった磐田も連敗が嵩んで一気に順位が急落し始めていた。

 

そして残留争いに急激に名乗りを上げたのが神戸である。

この年の神戸はある意味、三木谷浩史会長が本気を出した最初の年だったように思う。野沢拓也橋本英郎に現役日本代表の伊野波雅彦を補強し、優勝すら狙っていた。5月には和田昌裕監督を切って西野朗監督を迎え入れた。しかし連勝と連敗を繰り返しているうちに下位から抜け出せなくなり、遂には第22節で札幌に勝利してから勝利から見放されてしまうのだ。ガンバ、大宮、新潟の巻き返しは新たなチームを巻き込み、Jリーグ史上に残る残留争いは怒涛のクライマックスに向けて車輪の軸を急速に回転させていく。

 

第29節終了時点順位表

11位 セレッソ大阪(39)

12位 川崎フロンターレ(39)

13位 鹿島アントラーズ(38)

14位 ヴィッセル神戸(35)

15位 大宮アルディージャ(33)

16位 ガンバ大阪(32)

17位 アルビレックス新潟(31)

18位 コンサドーレ札幌(14)(※6)

 

※6 札幌は第27節で川崎に敗れた時点でJ2降格が決定。この時点で最下位も確定している。

 

ラスト5試合、まず世間が痛感するのは「大宮の恐ろしさ」だった。

大宮というチームは不思議なもので、大きなスポンサーがついているから予算もそれなりに多く、あの順位にいるチームにしては優秀な選手を揃えることも出来る。だが毎年のように下位に沈み、毎年のように残留争いを強いられ、毎年のように「そろそろ落ちる」と言われていた。…でも落ちないのだ。それどころか、残留争いには巻き込まれるが毎年のように最終節より前にはしれっと残留を決めている。この年は例年よりも降格圏に陥る事が多かったり、まだ「まぁ、それでもガンバはなんだかんだ残るだろう、去年の浦和(※7)もそうだったんだから」という論調が強かったので危険視されていたが、ベルデニック監督の就任、ズラタンとノヴァコビッチというスロベニア代表コンビのFWの獲得が功を奏して第24節以降ただの一敗たりとも喫さない。その象徴が第30節の柏戦で、復調しつつあった前年度王者の柏を4-1でフルボッコに叩き割ると、第32節ではセレッソとの直接対決を3-1で制して残留決定に王手をかける。終盤戦にかけて発揮した大宮の異常な強さ……大宮の残留マスターっぷりは元々言われていた事だったが、当時世界最強と言われていたチームに準えて「終盤戦の大宮はバルサより強い」とまで言われ始めていた。

 

※7 2011年の浦和も大きく低迷し最終節まで残留が確定しなかったが、最終的に15位で残留には成功している。

 

ラスト5試合の段階では12位にいた川崎は第30〜32節までの3試合で勝点7を獲得して残留を決める。一方で鹿島、セレッソ、磐田の3チームはこの期間で1勝も出来なかった為に残留争いから抜け出せない。いよいよ崖っぷちに立たされ始めた16位ガンバは粘りを見せ、広島、柏と続いた上位勢との連戦での敗北は回避し、第32節では清水を3-1で下してこの3試合で何とか勝点5を獲得した。ガンバが粘る反面、17位新潟は第31節では清水に勝利したが他の2試合で敗北。大宮とは逆でに降格に王手をかける羽目になる。

そして大きく動いたのが神戸だった。第30節の川崎戦こそ都倉賢の2ゴールで3-3のドローに持ち込んだものの、第31節では冨澤清太郎の退場で一人少なくなったマリノスから1点を返すのが精一杯で1-2で敗れる。するとクラブはここで西野監督を解任するというショック療法に打って出た。この時点で神戸の未勝利は9試合に延びていたが、西野朗という実績豊富な指揮官を招聘しながら急な解任となった事は神戸というクラブの体質もあって賛否両論を生み起こすなど、シーズン前は希望に満ちていたはずの神戸がここに来て激乱の時を迎える。俗に言う解任ブーストもかかったのか、何とか第32節ではFC東京に勝利。降格圏転落だけは免れたが「降格」は確実に現実性を帯びていた。

 

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第33節

 

第32節終了時点

11位 ジュビロ磐田(43)+5

12位 セレッソ大阪(41)-3

13位 鹿島アントラーズ(40)+4

14位 大宮アルディージャ(40)-9

15位 ヴィッセル神戸(39)-7

16位 ガンバ大阪(37)+3

17位 アルビレックス新潟(34)-9

 

第33節

2012年11月24日

14:30 ベガルタ仙台(2位)vsアルビレックス新潟(17位)

14:30 名古屋グランパス(4位)vs鹿島アントラーズ(13位)

14:30 ガンバ大阪(16位)vsFC東京(10位)

14:30 サンフレッチェ広島(1位)vsセレッソ大阪(12位)

17:30 大宮アルディージャ(14位)vsジュビロ磐田(11位)

17:30 柏レイソル(6位)vsヴィッセル神戸(15位)

 

詳しくはWikipedia2012年J1最終節のページも見て頂きたいのだが、ここでも一応第33節で決まる可能性のある事柄を挙げておく。

第33節で降格が決まる可能性があるのはガンバと新潟の2チーム。ただ、ガンバは勝てば今節での降格は無くなるし、敗れても鹿島、大宮、神戸が3つとも勝利しない限り第33節での降格は回避出来る状況だったのに対し、新潟は引き分け以下で降格決定、勝った場合も鹿島、大宮、神戸が勝利すれば降格決定という状況。しかも相手は優勝争いの最中にいた2位の仙台だった。

逆に自力で残留を決められる立場にいたのは引き分けで残留決定の磐田、勝てば残留決定のセレッソの2チーム。13〜15位までの3チームは勝てばガンバと新潟の結果次第で残留が決まるが、鹿島と大宮は敗れた場合、神戸は引き分けた場合は無条件で残留決定は持ち越しとなる。

 

 

 

ガンバの大不振の影に隠れていたが、しれっと残留争いに巻き込まれていた鹿島だったが、この日はACL出場を目指す名古屋相手に意地を見せる。先制点を奪いながら一時は同点に追いつかれたものの、35分にドゥトラがこの日2点目となるゴールを決めて勝ち越しに成功。ナビスコ杯を制した勢いに乗り(※7)、ガンバと新潟の結果次第では残留が確定する中で攻勢を強める。

少なくとも新潟に抜かれる可能性はない(=17位の可能性はない)など、今節では比較的優位な立場にいたセレッソだったが、セレッソのこの日の相手は勝てば2位仙台の結果次第で優勝が決まる可能性もあった広島だった。オリジナル10のチームとして唯一三大タイトルの経験がなく(※8)、悲願の初優勝をホームの大観衆の前で決めたい広島の圧に押される形でセレッソは序盤から劣勢を強いられる事になり、40分には山口螢の退場で数的不利も被れば前半だけで3点のビハインドを許すハメに陥る。

 

※7 リーグ戦では不振だった鹿島だが、ナビスコ杯では柴崎岳昌子源などの若手が躍動して決勝で清水に2-1で勝利。前年に続いてナビスコ杯2連覇を果たしていた。

※8 広島以外のオリジナル10のチームは三大タイトル(リーグ、リーグ杯、天皇杯)のいずれかを獲得済で、獲得経験がないのは広島のみという状況だった。ただし広島は1994年にステージ優勝(サントリーシリーズ=1stステージ)の経験がある為、この時点でも広島をタイトル経験チームとする声もある。実際、G大阪が2005年にJ1リーグを制して初タイトルを手にした際には「オリジナル10全チームがタイトルホルダーになった」と書く媒体もあった。

 

そして敗北は勿論、引き分けさえも許されない立場に陥った17位新潟は、敵地で広島が逆転される可能性は極めて低くなった事で敗れれば優勝の可能性が消滅する仙台との崖っぷち対決に挑んでいた。しかし大宮と並んで「残留マスター」とも称される新潟にとって残留争いはある意味慣れっこ。優勝争いの崖っぷちで体が固くなっている仙台相手に試合を優勢に進めた。17分、ミシェウのスルーパスに右サイドを抜け出した三門雄大の折り返しにファーサイドで待っていたキム・ジンス無人のゴールに流し込んで先制点。5戦勝ちなしと言えば聞こえはいいが、ここ3戦は下位チームとのドローが続いた仙台は赤嶺真吾、ウィルソンの2トップを軸に攻め込み、「上から2番目の仙台」「下から2番目の新潟」の戦いはまるで残留争い直接対決のような非壮な攻防戦が繰り広げられていく。

 

一方、この試合で大きな鍵を握っていたのはガンバ である。ガンバは勝利すれば、他会場の結果次第では今節で降格圏を抜け出し、鹿島、大宮、神戸を降格圏内に引き摺り込める可能性があった。だがその反面、ガンバが勝利を逃せばその時点で磐田の残留が確定、結果次第ではその他のチームの残留も確定する上にガンバ自身が降格する可能性もあったのだ。対戦相手は2年前にまさかの降格を喫しこの年からJ1に復帰したFC東京。「優勝争いをする為に…」そう言ってこの年にFC東京からガンバに移籍したDF今野泰幸にとっては余りに皮肉過ぎる状況になってしまう。

前節でこの年8枚目のイエローカードを受けたDF岩下敬輔が2試合の出場停止を喰らったセンターバックに前節4ヶ月ぶりに怪我から復帰した中澤聡太を起用したガンバだったが、この日もシーズン通じて改善し切れなかった守備の脆さが目立つ。21分、FC東京の左サイドバック太田宏介がクロスを上げると、2年前までガンバに在籍したルーカスを経由して最後に叩き込んだのは右サイドバック徳永悠平。先制点を許したガンバは、優勝も降格もないノープレッシャーのFC東京にその後も攻め込まれてしまう。それでも37分には遠藤保仁フリーキック家長昭博が飛び込んでなんとか同点で前半を終えた。

 

前半終了時点

名古屋1-2鹿島

G大阪1-1FC東京

仙台0-1新潟

広島3-0C大阪

 

後半、広島は50分にも石川大徳がゴールを決めてリードを4点に広げる。セレッソも61分に枝村匠馬のゴールで1点は返したが、優勝に向けて突っ走る広島の勢いを10人で覆す事など出来る訳もなく4-1で試合終了。セレッソの残留決定はガンバが敗れれば…となった。逆に鹿島は前半のスコアを後半も維持する事に成功して勝利を収める。此方はガンバが勝たなければ残留決定。

 

2012Jリーグディビジョン1第33節

名古屋グランパス1-2鹿島アントラーズ

2012年11月24日14:33@

豊田スタジアム

名古屋得点者:増川隆洋(25分)

鹿島得点者:ドゥトラ(7分、35分)

 

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2012Jリーグディビジョン1第33節

サンフレッチェ広島4-1セレッソ大阪

2012年11月24日14:36@広島ビッグアーチ

広島得点者:高萩洋次郎(17分)、青山敏弘(20分)、佐藤寿人(42分)、石川大徳(50分)

C大阪得点者:枝村匠馬(61分)

 

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勝たなければ降格が決まる新潟だったが、ここから勝たなければ優勝が無くなる仙台の猛攻撃を受ける事になる。仙台は関口訓充中原貴之らを投入してパワープレー気味の攻撃に打って出た。仙台の攻撃にも悲壮さが滲み出始める中、87分には柳下正明監督が主審への執拗な攻撃で退席処分を課されるなど次々に新潟に試練が襲い掛かる。それでも、それでも新潟は何とか耐え切った。耐え切って何とか1-0で勝利を収めた新潟は、ガンバと17:30キックオフの神戸次第ではあるが、なんとか絶対条件はクリアしたのだ。

また、仙台が負けた事で同時に広島の優勝も確定した。

 

2012Jリーグディビジョン1第33節

ベガルタ仙台0-1アルビレックス新潟

2012年11月24日14:34@ユアテックスタジアム仙台

新潟得点者:キム・ジンス(17分)

 

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そして、彼らの結果次第で何チームかの運命が決まるという表現も出来たガンバは47分に渡邉千真にバー直撃のシュートを放たれるなど劣勢が続く。仙台が慣れない優勝争いで苦戦したように、ガンバは大宮や新潟とは比べ物にならない戦力を有しながら慣れない残留争いの出口を見つけられない。それでもガンバは落ちる訳にはいかないチームだという事を証明しなければならなかった。62分、途中出場のスーパーサブ佐々木勇人のシュートが溢れたところから始まった混戦に最後は家長が詰めてこの日2点目。劣勢の中、シーズン途中に帰ってきた「ユース最高傑作」の逆転弾は悩める名門にとって一気に光明が差し込むゴールとなる…はずだった。

この年のガンバには大きな問題がいくつもあったが、多くの問題を一言で表せた文言がある。「ガンバは3点取らないと勝てない」というのだ。この年のガンバは9勝を挙げている。これは残留争いを強いられているチームとしてはかなり高い水準ではあるが、問題は勝利数では無く「その全てが3点を獲得した試合(※9)」だったという事。そういう言い方をすれば得点力のあるチーム…なんて見方も出来れが、逆を言えば「2点しか取れなかったら逆転されるか追いつかれるか」という状況だったのだ。

今から後2試合で守備が劇的に改善する訳なんてない以上、ガンバにとっては1点を守るより3点目を取る方が勝利には近い。2-1になった後、松波正信監督はMF阿部浩之、FWパウリーニョを投入するなど守備固めを行わなかったのはこの辺りにも理由があると考えられる。しかしこの日は試合の主導権すらFC東京に握られてしまったことで守備の時間ばかりが長くなった。そしてこの年のガンバが後半の45分、ほぼほぼずっと続いた猛攻を凌ぎ切れる訳が無く……ガンバを窮地に追い込む同点弾を奪った男が、この6年後に再び訪れたガンバの降格危機を救う事になるとは、この時はまだ誰も知る由も無かった。

 

前年、10年間指揮を執った西野朗監督のホーム最終戦となった試合では仙台を1-0で下し、首位だった柏が引き分けた事で逆転優勝の可能性を残した中でのホーム最終戦セレモニーとなった。会場は西野監督ありがとう……そんな雰囲気に包まれ、キャプテンとして挨拶した明神智和の笑みには逆転優勝を目指す力を感じられた。それが僅か一年後、挨拶に向かう「ミスターガンバ」こと松波監督に浴びせられたのは盛大なブーイング。万博はお通夜とも違う、壮絶な空気に包まれる。誰もがこの万博のこの空気が2012年の悲劇の終着点である事を祈りながら…。

 

2012Jリーグディビジョン1第33節

ガンバ大阪2-2FC東京

2012年11月24日14:33@万博記念競技場

G大阪得点者:家長昭博(37分、62分)

FC東京得点者:徳永悠平(21分)、渡邉千真(84分)

 

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※9 第6節G大阪3-2川崎、第7節G大阪3-1清水、第15節札幌0-4G大阪、第20節G大阪3-1大宮、第22節名古屋0-5G大阪、第23節G大阪7-2札幌、第26節浦和0-5G大阪、第29節川崎2-3G大阪、第32節清水1-3G大阪。2点を奪いながら勝利を挙げられなかった試合は引き分け含めて9試合に上る。

 

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ガンバが引き分けた事で名古屋に勝利した鹿島、そしてこの時点ではまだ試合を行なっていなかった磐田の残留が確定すると共に、セレッソの残留決定が最終節まで持ち越される事も決まった。即ち、ガンバの降格が第33節で決まる可能性はない。17:30に試合が組まれた大宮と神戸は勝てば残留が決定し、この両チームが勝てば新潟は仙台に勝利したものの降格が決定する。大宮はホームで残留を決めたばかりの磐田と、神戸は敵地でACL圏内を狙う柏に挑む。

 

ここまで9戦無敗と相変わらずの残留マスターっぷりを見せつけていた大宮は、残留争いに慣れすぎたせいでそんな状況下でも焦る事なくプレーし続ける。前半のうちに先制点を奪うと、後半にはもう一点追加して2-0。淡々と、それはもう淡々と自らの仕事をこなすようにミッションをクリアし、一時は17位で「今年こそは…」と囁かれ始めたにも関わらず、終わってみれば危なげなく残留を決めて無敗記録を10に伸ばした(※10)。

 

間違いなく安くはない金額を叩いて招聘した西野監督を半年で解任する最後のギャンブルに踏み切った神戸は、解任ブーストを発動したのか安達亮監督の下で前節FC東京に勝利して長いトンネルから抜け出したようにも見えた。とりあえず神戸にとってはこの試合に勝てばいい、後のことはそれから考えればいい……だが、37分の田中英雄の退場で全てのプランが狂うと防戦一方。何とか失点だけは防いでいたが、71分にジョルジ・ワグネルの一撃に沈んで万事休す。この結果、神戸も残留決定は最終節まで持ち越される事になり、同時に新潟が何とかギリギリのところで降格決定を免れた。

 

2012Jリーグディビジョン1第33節

大宮アルディージャ2-0ジュビロ磐田

2012年11月24日17:33@NACK5スタジアム

大宮得点者:金澤慎(28分)、渡邉大剛(57分)

 

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2012Jリーグディビジョン1第33節

柏レイソル1-0ヴィッセル神戸

2012年11月24日17:33@日立柏サッカー場

柏得点者:ジョルジ・ワグネル(71分)

 

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※10 大宮は最終節でも清水に引き分けて11戦無敗の状態でシーズンを終える。翌年は開幕10試合負けなしを達成し、最終的に無敗記録は2012年第24節鳥栖戦〜2013年第10節広島戦までの21試合まで伸び、これはJ1リーグの記録となった。

 

最終節

 

第33節終了時点

14位 セレッソ大阪(41)-6

15位 ヴィッセル神戸(39)-8

16位 ガンバ大阪(38)+3

17位 アルビレックス新潟(37)-8

18位 コンサドーレ札幌(14)-60(※11)

 

※11 札幌は既に降格と最下位が確定している。

 

第34節

全試合15:30キックオフ

アルビレックス新潟(17位)vsコンサドーレ札幌(18位)

ジュビロ磐田(12位)vsガンバ大阪(16位)

セレッソ大阪(14位)vs川崎フロンターレ(8位)

ヴィッセル神戸(15位)vsサンフレッチェ広島(1位)

 

第33節の項同様、詳しい事はWikipedia2012年J1最終節も参照して頂きたいが、ここでも状況を整理しておく。残留争いに絡む4チームの残留・降格条件は以下の通りだ。

 

14位 セレッソ大阪

勝利or引き分け→残留

敗北→神戸、G大阪のどちらかが引き分け以下で残留(※12)。両チーム勝利した場合は降格。

 

15位 ヴィッセル神戸

勝利→残留

引き分け→G大阪、新潟が共に引き分け以下なら残留(※12)。どちらかが勝利した場合は降格。

敗北→G大阪が敗れて新潟が引き分け以下なら残留。G大阪が引き分け以上、新潟が勝利のどちらかが達成された場合は降格。

 

16位 ガンバ大阪

勝利→C大阪が敗北、神戸が引き分け以下のどちらで残留。C大阪が引き分け以上、神戸が勝利の両方が達成された場合は降格。

引き分け→神戸が敗北した上で新潟が引き分け以下なら残留。神戸が引き分け以上、新潟が勝利のどちらかの場合は降格。

敗北→降格

 

17位 アルビレックス新潟

勝利→神戸、G大阪が共に引き分け以下で残留。どちらかが勝利した場合は降格(※12)。

引き分けor敗北→降格

 

※12 残留か降格かが左右される部分だとC大阪G大阪、神戸とG大阪、神戸と新潟が勝点で並ぶ可能性があったが、得失点差勝負になった場合は【G大阪>C大阪】もしくは【G大阪>新潟>神戸】となる事は理論上確定していた。また、この時点で新潟がC大阪を抜く可能性=C大阪の17位と新潟の14位以上の可能性は無くなっていた。

 

以上の状況に加えて、柳下正明監督のベンチ入り停止処分と攻撃の要であるミシェウが出場停止の新潟は圧倒的に不利な状況に立たされていた一方、対戦相手に関してはぶっちぎりの最下位が確定していた札幌だった事で「ボーナスカードを最後まで残していた」と揶揄すらされるほど、勝利だけなら容易に叶うのではと見られていた。セレッソも引き分けでOKである上に新潟とはもう関係ない立場(※12)だった事から必然的に全ての鍵を握るのは神戸とガンバになり、実際にNHKも最終節はNHK第一でガンバ、BSで神戸の試合を中継している。

この時、世間で盛んに騒がれたのは「前田遼一のデスゴール」というジンクス(※3)だった。最初はネット上だけで言われていたジンクスではあったが、ガンバが低迷から抜け出せずに降格が現実味を帯びると各サッカーメディアがこのジンクスを取り上げるようになる。そして最終節が近づくと、遂にはNHKや民放各局のニュース番組までもがスポーツコーナーでこのジンクスを取り上げるようになった。そして……運命とは恐ろしいもので、よりにもよって最終節でガンバと対戦するのは前田を擁する磐田だった事で、優勝チームが既に確定した事もあってか全Jリーグファンの注目と視聴を一斉に集める事となった。

試合は各会場、15:30に同時にキックオフとなる。

 

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最初に試合が動いたのは物語最大の舞台となるヤマハスタジアムだった。5分、右サイドを突破した磐田の山田大記の折り返しがガンバのGK藤ヶ谷陽介とDF中澤聡太の交錯を誘ってゴールへとボールが転々と向かう。このボールは怪我から復帰した加地亮が一度は懸命に掻き出したが、クリアした先に待ち構えていたのはある意味この最終節で「影の主役」とも言えた男、前田遼一だった。冷静に押し込んで磐田が先制を奪う。

セホーンへの監督交代が転落劇の始まりだったとはいえ、そもそもガンバは西野監督が率いていた黄金期と呼ばれる時期からいくつかのウィークポイントのテコ入れを放置していた側面はあった。一つはGK。長らく藤ヶ谷陽介松代直樹ゴールマウスを守っていたが、両者とも優勝を争うチームのGKとしては安定感が欠けており、サッカー雑誌がよくやる「補強ポイント」企画には毎年のようにGKが挙げられていた。松代が引退して以降は藤ヶ谷がフルタイム出場を続けるが、2012年には特にミスを連発した事で遂にガンバはGK交代を決意、2003年のプロ以来J1リーグに出た事が無かった木村敦志を抜擢すると、この木村のパフォーマンスが想像以上の出来でGK問題は一定の解決を迎えたように見えたのだが……そんな最中に木村が練習中の怪我で長期離脱を強いられたのだ。そして藤ヶ谷も藤ヶ谷で、この磐田戦は怪我を押しての出場だったらしい。もう一つ放置していたのは右サイドバック。レギュラーに関しては加地亮という絶対的な存在がいるから問題は無かったが、加地という選手が元々負傷の多い選手であるにも関わらず、長らくガンバには加地以外に右SBを本職とする選手が誰もいなかった。2012年も加地は負傷で離脱する事が多く、その都度ボランチ武井択也センターバック丹羽大輝内田達也サイドバックを務めたが、加地のいる時といない時の差は歴然と言えた。セホーンへの監督交代はガンバを一気に崩壊へと導いた最大の要因である事に異論の余地は無い。しかし燻る火種だけは随分前からガンバにはあったのも確かである。

 

神戸と広島の試合では、前節に優勝を決めた広島相手に神戸は優位に試合を進める。2010年にはギリギリのところで残留を決めた彼らにとって、勝てば自力で残留が出来るこの年の状況はまだ余裕があるものだった。しかしチャンスを活かせないまま前半を0-0で終える。4チームの中ではかなり優位な立ち位置だったセレッソはガンバ同様に1点のビハインドで前半を終えた。

そして崖っぷちに追い込まれた新潟はぶっちぎり最下位の新潟を圧倒する。立ち上がりの時間帯で先制点を奪うと、43分にはセットプレーの流れからエースFWブルーノ・ロペスのヘディングで追加点を挙げる。……時を戻して第33節の終了間際、ロペスは審判の判定にかなり激昂し、怒りを露わにしていた。それこそカードを貰いそうな勢いで。しかしロペスの累積警告は既に7枚だった為、ここで警告を受けると既に次節出場停止が決まっていたミシェウに加えて、新潟は攻撃の核2人を欠いた上で最終決戦に望まなければならない。それだけは何とかして避けなければならない……そこで新潟の柳下正明監督は主審に対し、自身の感情よりも過剰に執拗な抗議をしてみせると、主審の注意はロペスから柳下監督へと向いた。最終的に柳下監督には退席処分と最終節のベンチ入り停止処分が科されたが主審の目が柳下監督に向いている間にロペスが落ち着く事も出来た結果、新潟は最終節に臨む上でエースのブラジル人2人欠場という最悪の事態を回避できた。そしてロペスもそれに応えるように大きな追加点を奪う。

前半終了時点でリードしているのは新潟のみ。このまま行けば降格は神戸、そしてガンバとなる。

 

前半終了時点

新潟2-0札幌

磐田1-0G大阪

C大阪0-1川崎

神戸0-0広島

 

14位 C大阪(41)-7

15位 新潟(40)-6

16位 神戸(40)-8

17位 G大阪(38)+2

 

 

 

後半は後半開始から10分以内に長居スタジアムを除く3会場で試合が動く。

新潟は何とか最後に意地を見せて終わりたい札幌の反撃を受け、53分に途中出場の榊翔太に決められて1点差に追い上げられる。だが、2-1というスコアでもこの年の新潟が2点ビハインドを跳ね返せるものとは誰も思っていなかった。NHKの中継で表示される「このまま行くと…」の順位テロップや実況でも可哀想なほど「既に降格の決まっている札幌」と泣きたくなるほど連呼されていたし、新潟が残留できるかどうかは別としても少なくとも札幌には勝つと誰もが予想していた。2012年の札幌戦はそれだけボーナスステージのような舞台だったから、2-1になっても他会場のチームは新潟の勝利は前提に考えていたと思う。要するに……セレッソとは異なり、新潟に抜かれる可能性のあった神戸とガンバは後半の時計の針が進めば進むほど焦りが生まれてくるのだ。そんな中で神戸は52分にPKを献上してしまい、これを森崎浩司に沈められて先制点を許す。

一方、ヤマハスタジアムではガンバの猛攻が始まる。そもそもこの日のヤマハスタジアムでは今までのJ1で見た事がないくらいの異様な雰囲気に包まれていた。ハーフタイムの実況ブースでは実況が順位パネルを解説に持たせて、解説者がアシスタントに徹するというシュールな光景も見られた。そして迎えた53分、右サイドを切り崩した倉田秋が角度の無いところからシュートを叩き込む。新潟が勝っている以上、自分達も勝利必至ではあったがまずは試合を振り出しに戻した。この時…いや、この辺りから解説者がどんどん壊れ出す。前半やそれ以前の試合では落ち着いた解説をしていたのだが、この試合の後半からは己の職業を忘れたかのように「うぉぉぉぉぉ!?」「おぁぁぁぁぁ!!!!」と叫ぶようになり、倉田が決めた際にも感情移入丸出しの視聴者のような声まで上げていた。…そう、この試合で、このヤマハスタジアムで解説を務めた人物こそ、後のガンバにとって大きな存在となる男だったのである。

 

65分時点

新潟2-1札幌

磐田1-1G大阪

C大阪1-1川崎

神戸0-1広島

 

14位 C大阪(42)-6

15位 新潟(40)-7

16位 G大阪(39)+3

17位 神戸(39)-9

 

63分に横山知伸のゴールで同点に追いついたセレッソは84分に川崎に再びリードを許す。既に新潟に抜かれる可能性は無く、引き分けなら自力で残留を決められるセレッソではあったが、セレッソセレッソで負ければ降格の可能性はそこまで非現実的とは言えなかった。88分には播戸竜二を投入して自力残留を目指すべく反撃を仕掛ける。

1点差に詰め寄られた新潟だったが、札幌の優勢な時間をDF陣が耐え切ると71分と80分に1点ずつ加えてリードを3点差に広げた。神戸にとってもガンバにとっても、もはや札幌が勝つ可能性には特に期待していなかったが、新潟はとりあえず3点差をつけた事で得失点差勝負になる可能性は殆ど無かったこの年の残留争い(※12)で最も重要だった「勝利」というミッション達成をほぼ達成に近づけた。こうなってくると焦るのは神戸とガンバだ。神戸は森岡亮太田代有三と攻撃のタレントを次々と投入して64分の時点で交代枠を使い切るが、3バックを5バックにして守りを固める広島相手に好機を見出せない。

 

そうなってくると、いよいよ全ての鍵を握るのはガンバになってくる。神戸が負けている為、ガンバは勝てば、あと一点取れば残留できる。だが新潟が勝っている以上引き分けで終われば降格を余儀無くされる……ここからガンバの猛攻撃が磐田DFに襲い掛かった。79分、倉田の柔らかいクロスにレアンドロが頭で合わせるがクロスバーに阻まれ、こぼれ球を狙った藤春廣輝のシュートもミートしない。81分には藤春のクロスに家長昭博がゴール真ん前で胸トラップからボレーを放つが磐田DFにブロックされ、続く佐々木勇人のシュートも磐田の必死のディフェンスに阻まれる。そのこぼれ球を拾った加地のクロスに今度は遠藤保仁が頭で合わせてゴールネットを揺らすが、これは遠藤がオフサイドの判定を受けてゴールが決まらない。どうしても、どうしても遠い1点……時間だけが刻一刻と過ぎてゆく。余談だが、この時ガンバの前に立ちはだかった磐田DFのうちの一人は「いつかはガンバに戻りたい」という目標を掲げて退団を決意し、「自分達が勝つ事でガンバをJ2に落ちてしまう」というジレンマに苛まれながらもプロとして邪念を振り払いながらプレーしていた菅沼駿哉である。磐田の森下仁志監督も元ガンバ戦士であり、ガンバの松波正信監督とは当時のチームメイトでもあった。

スポーツの世界には、目には見えなくても見続けると「流れ」というものが確かに見えてくる。その流れはどんどん「ガンバ大阪のJ2降格」へと流れて行くように映った。前田の件しかり、レアンドロクロスバー直撃弾しかり、家長と佐々木の連続シュート、そして遠藤の幻のゴールも……。

 

 

 

 

 

 

同じ大阪を本拠地とするセレッソがラストワンプレーで同点に追いついて自力残留を決めた頃、ガンバは長身DFの中澤聡太を全身に上げてパワープレーを敢行する。松波監督も選手交代をしたい気持ちはあったのだろうが、試合を押してはいる事がかえって選手交代を躊躇わせていた。そして80分、ガンバの左サイドを崩されると、最後は前田のスルーパスから小林裕樹にニアサイドから放ったシュートがゴールネットを突き刺す………。

 

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アディショナルタイムを含めると、試合はまだ10分近く残っていた。ただ、確かに言えるのはこの瞬間に「2012年が終わった」という事だった。後は確定した流れに沿うカウントダウンを刻む以外に許される事は無い。

 

試合中は感情を剥き出しにしていた解説者は試合後、暫く言葉を実況に任せた後、どこか絞り出すように感想を紡いだ。

 

「もうちょっと……早く動けたらな、という感じはしましたけどね……」

 

本人はあくまでこの試合に関しての感想としての言葉のつもりだったのだろうが、この一年を通してのガンバにとって、この言葉は色々な意味合いを感じずにはいられなかった。

奇跡の生還を果たした新潟が優勝したかのような歓喜に包まれる頃、静岡の空から沈んだものは陽だけでは無かった。

 

 

 

2012Jリーグディビジョン1第34節

アルビレックス新潟4-1コンサドーレ札幌

2012年12月1日15:33@東北電力ビッグスワンスタジアム

新潟得点者:坪内秀介(8分)、ブルーノ・ロペス(43分、80分)、アラン・ミネイロ(71分)

札幌得点者:榊翔太(53分)

 

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2012Jリーグディビジョン1第34節

ジュビロ磐田2-1ガンバ大阪

2012年12月1日15:34@ヤマハスタジアム

磐田得点者:前田遼一(5分)、小林裕樹(85分)

G大阪得点者:倉田秋(53分)

 

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2012Jリーグディビジョン1第34節

セレッソ大阪2-2川崎フロンターレ

2012年12月1日15:34@大阪長居スタジアム

C大阪得点者:横山知伸(63分、90+5分)

川崎得点者:中村憲剛(17分)、小林悠(84分)

 

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2012Jリーグディビジョン1第34節

ヴィッセル神戸0-1サンフレッチェ広島

2012年12月1日15:34@ホームズスタジアム神戸

広島得点者:森崎浩司(52分)

 

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2012年のJ1リーグ

 

1位 サンフレッチェ広島(64)

2位 ベガルタ仙台(57)

3位 浦和レッズ(55)

4位 横浜F・マリノス(53)

5位 サガン鳥栖(53)

6位 柏レイソル(52)

7位 名古屋グランパス(52)

8位 川崎フロンターレ(50)

9位 清水エスパルス(49)

10位 FC東京(48)

11位 鹿島アントラーズ(46)

12位 ジュビロ磐田(44)

13位 大宮アルディージャ(44)

14位 セレッソ大阪(42)

15位 アルビレックス新潟(40)

16位 ヴィッセル神戸(39)

17位 ガンバ大阪(38)

18位 コンサドーレ札幌(14)

 

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優勝した広島、準優勝の仙台のみならず、マリノス鳥栖にしても前評判が決して高いとは言えないチームの躍進が目立った。特に鳥栖は降格候補筆頭と目されていたにも関わらず、豊田陽平のブレイクなどもあって最終節まで来季ACL出場の可能性を残していたほどである。

さて、下位争いに目を向けると、この年の15位新潟が獲得した勝点は40であり、同時に神戸の記録した勝点39という数字は18チーム34試合制になった2005年以降の降格チームとしては歴代最多の勝点となった(※13)。そして最も大きな話題となったのは17位で降格したガンバの成績である。

ガンバが獲得した勝点38も17位チームとしては歴代最多(※14)だったが、それ以上に衝撃的だったのはガンバ が叩き出した総得点67という数字はリーグトップの数字だった。即ち、リーグで最もゴールを挙げたチームが降格したという事になる。無論、「3点取らないと勝てない」現象に代表されるように失点も相当多かったしそれが降格の最たる要因だった訳だが、それでも得失点差は+2を記録していた(※15)。この事実は「リーグで最も得点を取ったチームが降格した」「得失点差がプラスのチームが降格した」と前田遼一のデスゴールと併せて海外メディアでも報じられた。言うまでもないが、リーグトップの得点数及び得失点差がプラスで降格した事例はこれ以前もこれ以後にも発生していない。そもそも、世界のリーグを見渡してもそんな事例を探すのは困難だろう。

 

※13 2005年以降、降格圏のチームとして最多の勝点だったのは2008年の磐田(勝点37)であった。その為、神戸のみならず17位のガンバもこの記録を抜いていた事になる。尚、降格圏のチームとしての最多勝点記録はその後2018年の磐田が勝点41で更新している。

※14 これ以前の17位チームの最多獲得勝点は2008年の東京V(勝点37)。尚、17位の勝点記録はその後2018年の柏が勝点39で更新している。

※15 この記録は各所で珍現象と言われる事が多いが、このような現象になった大きな理由としては5点差で勝利した試合が3試合あった事が大きいと言われている。守備が降格最大の要因であるのは間違いないが、同時に昨年までは取れていた「3点目」が取れなかった事も降格の一因と分析されている。

 

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その後…

 

ガンバは松波正信監督の下、降格のショックを抱えながらも天皇杯に挑んだ。今野泰幸ボランチに配置した新布陣で町田、セレッソ、鹿島を撃破して決勝に進出したが、決勝では柏に0-1で敗れて優勝を逃している。

 

この年、最終節まで残留を争って生還したセレッソと新潟は翌シーズン共に躍進を果たした。一方、シーズン終盤散々「デスゴール」「前田の呪い」と騒がれ、最終的には前田のゴールとアシストでガンバをJ2に突き落とす役割を担った磐田は2013年シーズン開幕前から「前田に初ゴールを決められるチームはどこだ?」と盛んにメディアに取り上げられ、その過熱ぶりは当時の森下仁志監督が自粛を要請したり、開幕戦で磐田と対戦し、前田のゴールは回避した名古屋のドラガン・ストイコビッチ監督が試合後の会見で「ナゴヤ、セーフ。」と言うほどであった。

結局前田の初ゴールは第6節の浦和戦で挙げられ、浦和はシーズン6位で残留争いにも巻き込まれていない。だが、逆に磐田がシーズン序盤から大不振に陥り、森下仁志監督から関塚隆監督への監督交代も功を奏さず第31節鳥栖戦に敗れてクラブ史上初の降格が決まってしまう。「前田の呪い」と騒がれたジンクスは磐田の降格という形でピリオドが打たれた。

 

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J2降格を余儀なくされたガンバと神戸は共に1年でのJ1復帰を達成。特にガンバは遠藤保仁今野泰幸といった現役代表のみならず、加地亮、二川孝弘、明神智和家長昭博宇佐美貴史などの人気選手を擁していたことで集客面に苦しんでいたJ2のアウェイゲームでチケット完売を連発させる現象を起こし「アベノミクス」をもじって「ガンバノミクス」「アシノミクス(※16)」などと呼ばれる、ガンバの出張グッズショップに相手チームのサポーターが長蛇の列を作る、挙げ句の果てには「J2マガジン」なるものが創刊するなど、今日に至るまでのJ2のブランド価値向上の観点では2013年のガンバの貢献は大きく、この年の平均入場者数は2012年度と比べても大きく伸びている。

 

余談ではあるが、ガンバの降格が決定した後、ヤマハスタジアムでは磐田の最終節セレモニーの一環として音楽グループ「シクラメン」が2012年のジュビロ磐田シーズンソングである「必死マン」を披露した。

だが、この時のスタジアムには降格という事実に絶望するガンバサポがまだ多く残っている。そんなガンバサポの前で高らかに歌われた「必死マン」の歌い出しの歌詞をご覧頂きたい。

 

 

 

 

 

 

「ちょいちょいそこの君!そんなに元気ない顔してどうしたんだい?」

 

 

 

 

 

…ファンやサポーターを含めたガンバに絡むに全ての人が絶望を見たヤマハスタジアムでの光景から2ヶ月後、ガンバは1年でのJ1復帰、そして強豪復活を目指す新たな旅路を進み始めた。迎えた新体制発表会、新加入選手らと共にガンバ大阪の新監督として紹介された人物………それはあの日、ヤマハスタジアムで感情剥き出しの解説をしていた男、長谷川健太である。

 

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次回、第10回、2014年優勝争いに続く。