えーっと、おたく、Jリーグアプリさんと申した?
喧嘩売ってる?
…一夜明けました。
あれから。
親愛なるガンバファンの皆様、いかがお過ごしでしょうか。
広島戦、1-2の敗北。
これで10試合を消化し、1勝5敗4分。得点1。
18位という順位に関しては試合数というエクスキューズがあるとはいえ、さすがにいよいよ3月の活動停止期間を抜きにしても看過は出来ない成績になってきてしまいました。
Twitterで「み」と打つと「宮本 解任」とサジェストで出てくるこの状況。C大阪戦後は4-1-2-3が多少機能していた事もあって、川崎戦後は単に相手が川崎という側面もあったのでしょうが、昨日の広島戦が終わってからは一気に解任派が増えた、或いは擁護派が減ったように映りました。
月曜日に更新したブログでも書きましたが、基本的に私は監督解任に関しては慎重でいてほしいと思っています。
ファンやサポーターが解任を唱えるにあたって後任を提示する必要は全く無いし、それはクラブの仕事であって見ている側が提案しなければならないような事はありません。解任を求める声を挙げる事に関しては、そこまで深く考えなければならないなんて事は無いです。ただ、それはあくまで見ている側にだけ許された特権であって、クラブとしては宮本監督を解任するのであれば次期監督との契約を取りまとめてから解任してほしいし、とりあえず解任してから後任探し…だけはやめてね、と。そういう意味での続投派、解任消極派という感じのスタンスは変わっていません。
ただ同時に、この状況であれば解任される事そのものには文句は言えない状況になってきました。中3日で浦和戦を控えているのでこの中3日での解任は現実的に無さそうですが、1週間空く浦和戦後、或いはACLの関係でリーグが暫くなくなる第19節湘南戦(6月2日)後は何が送ってもおかしくないのかなー…と。続投派、解任派、それもそれぞれに度合いもあるでしょうが、少なくともカウントダウンは始まっているのは確かです。
…前回は上でも書いた「あてもなしに即座に解任する事には賛成できない」というブログを書きました。一応その際に連載形式で宮本監督体制について書いていく〜的に言いましたので今回もその続編という体で。
今日はですね、解任すべきなのか続投させるべきなのかは置いておいて、改めて「監督・宮本恒靖の長所と短所、そしてスタンス」を見直していこう、書いていこうと思います。
本人でも無ければ、まして友人知人でもないので推測に過ぎない、見ての感想に過ぎないところが多数を占めますが……。
【まずはじめに…】
まずはじめに前提として。
「有能」と「無能」のワードで物事を判断するのであれば、少なくとも宮本監督は「無能」にカテゴライズされるほどの人ではないと思っています。よく残念な監督が「愚将」みたいなスラングで呼ばれる時がありますが、そこに当てはまるほど酷い監督とは言えないと考えます。今季の不振から去年の2位は偶然なんじゃないの?という声も出てますけど、いくら群雄割拠なJリーグだからといって、むしろ群雄割拠だからこそ偶然だけで2位にはいけません。
もちろん、どれだけ優秀な監督でもキャリアではなく一つのチームに対する賞味期限はあるのでそれが続投させる理由にはなりませんが、そこだけはまず最初に言ってから先に進みたいなぁと。
【長所】
・守備の整理能力
レヴィー・クルピ監督が解任され、当時U-23の監督を務めていた宮本監督がスクランブル的に就任したのは2018年7月の事でした。当時のガンバは16〜18位を常に彷徨い、むしろ最初の10試合くらいは最下位を突っ走っている状態。試合数としては第17節…ちょうどシーズンの半分を終えてのクルピ解任でした。
複数の選手が証言していましたがクルピ監督は良くも悪くも個人の自由度、ピッチの中での各々の判断に委ねられていました。典型的だったのがラストゲームとなった第17節清水戦で、統率も約束事も、そしてその為の練習もないチームは完全にスタートからギャンブル状態に陥っており、しかもその時のWボランチが遠藤保仁とマテウス・ジェズスの守備が得意ではないタイプの2人だった事もあって、あの試合は「4バックノーボランチ」という凄まじい状況で戦ってたのです。そんな背景もあって宮本監督が就任して最初に求められたのは「最低限の守備組織構築」でした。そんな中で宮本体制は最初の1ヶ月ほどは結果が出なかったものの、守備組織の改善にはある程度成功。そこに今野泰幸が負傷から復帰し、とことんまで割り切った4-4-2を固めた事で伝説の9連勝に繋がったのです。
…要するに、宮本監督の長所としてはチームの組織としての統率・戦い方を整理出来る事…が一つあると思います。どちらかと言えば宮本監督は「再建向きの監督」と形容した方が良いんじゃないかと。もし仮に宮本監督がガンバを解任されたとした場合、それこそ残留争いの渦中にいるチームとかからオファーが来る可能性は高いんじゃないでしょうか。
確かに今季は東口順昭、昌子源、三浦弦太という戦術がなくても守れそうな3人がどしっと構えている…この3人の個人能力が大きい部分はあるでしょうが、実際に守備崩壊は今年も避けているわけで、1試合単位のスポット的なものは別としても一定期間ずっと守備崩壊状態が続いたような事は宮本体制では無かったので、守備組織の整理が出来るのは宮本監督の強みというか、監督として一つのセールスポイントではあるんだろうと。
・ゲームプランの構築
対戦相手の特徴などを踏まえた上でガンバはどう試合に入るのか、どういったスタンスと戦術で90分を戦うのか、対戦相手に合わせたリアクション的な戦術を授けるのにも長けた監督ではあると思います。そういうやり方で勝利を掴んだ代表的な例で言えば2018年第25節川崎戦、第30節マリノス戦、或いは2020年開幕戦のマリノス戦辺りが代表例でしょうか。…全部神奈川やないか!という事は置いといて。要するに、2019年を総括した時のブログにも書きましたが、試合の入り方とかそういう部分は上手いのかなと。
多分、ここは宮本監督の現役時代のプレイスタイルも影響はしていると思うんですよ。最近のガンバファンの何割が「宮本恒靖選手」を見たかは分かりませんが(かくいう私もそんないっぱい見たわけじゃない)、選手時代の宮本監督はフィジカル的に劣る部分を読みと戦術眼、判断力で補っていた典型的なディフェンスリーダータイプの選手でした。伝わるかどうかわかりませんが、4バックのCBではなく3バックの中央に特化したタイプだった…と。テレビ番組で言うと、脚本というよりも番組のフォーマットは台本としてしっかり組んでおきたいタイプというか。試合前にチームをプログラミングするような作業にはかなり長けていると思っています。
上で挙げた何試合とは気色が少し違いますが、ガンバの歴史の中でもターニングポイントになった2019年第12節C大阪戦にしても、その前の鳥栖戦で踏ん切りがついたところもあるんでしょうけど、あの若手登用とシステム変更は鳥栖戦から大阪ダービーまでの1週間でバッチバチに固めていたんじゃないかしらと。
【短所】
・試合中の修正力
ここに関しては長所で挙げた「ゲームプランの構築」と表裏一体ですね。多分宮本監督って良くも悪くも完璧主義者的な部分はあると思うんですよ。それゆえにゲームプランを結構ガッチガチに組んで、試合を自分の想像の範囲内で決着させたいみたいな。だからこそ、試合の中でどこか計算が狂ってプランが崩れた時にそこから軌道修正を図れない、一度組んだゲームプランを上回る策を試合中に施す事は出来ないのが欠点ではあると思います。
多分一番典型的だったのが2019年第5節神戸戦だったと思うんですよ。試合に際して宮本監督が授けたゲームプランが完璧にハマって、あの試合の前半だけなら、前半アディショナルタイムまでならば宮本ガンバ最高の出来とすら言えました。ショートパスを徹底的に繋ぐ神戸に対して菅沼駿哉とキム・ヨングォンのCBの役割をチャレンジの菅沼とカバーのヨングォンで明確に分け、倉田秋と高宇洋のインテンシティーの高いボランチコンビで前半は「制圧」と呼ぶに相応しい出来だったんですけど、前半終了間際と後半開始早々の2発で一気に同点に追いつかれ、更に高がイエローカードを受けた事で強度が若干落ちると、そこからは修正が出来ないまま3-4の敗戦を喫した…という。私の現地観戦トラウマ試合ランキング第3位の試合です。
要するに、宮本ガンバというチームは先制点を取る事を前提に設計されたチームだと思うんですよ。良くも悪くも。実際、勝ち切れなかった試合はそこそこあるけれど逆転負けを喫した試合はさほど多くないんですね。試合前の時点で既に宮本監督の中でX+Y=Zの答えは確立しているんです。でも、試合とは水物な訳で、このYの値が狂った時にZに辿り着けなくなるというか。
スコアだけ見れば2020年は途中交代の選手が度々ゴールを決めて、一見交代策がハマった、試合中の修正力だ…と見えるのかもしれませんが、2020年は宇佐美貴史、アデミウソン、パトリック、渡邉千真とレギュラーFWが4人いる状態で、2トップをどこかのタイミングでそっくりそのまま入れ替える事をゲームプランとして組み込む事が出来たからなので、試合中の采配というカテゴリーで話すべき事では無いんですよね。
・ちょいちょい攻撃面をほったらかす
「ちょいちょいじゃねーだろ!」と思う方もいると思いますが、毎回…というわけではないのは後述します。ただ実際、マイルドに言えば攻撃を後回しにしがち、ストレートに言えば攻撃を個人に丸投げしがちなのは今の現状が表しているように難点なのかなと。
後述しますが、監督業に限った話ではなく、なんならサッカーに限った話でもなく「ベスト」か「ベター」を選べという場面はツネに…常にある訳です。「ベスト」に舵を切った時は攻撃面も色々考えているのですが、今季それが顕著なように「ベター」を選択した場合は完全にFWをほったらかす傾向にあるのは否めません。それこそ去年はゲームプランとして四種四様のFWを入れ替えられた事で変化とバリエーションを生めたので結果が出たのですが、アデミウソン退団後からパトリック依存は傾向は見えていました。現在のチームが守備に意識が行き過ぎていて、この前の川崎戦で…そういうプレーを得意としていないレアンドロ・ペレイラのカウンタードリブルに誰も何もフォローや追い越す動きをしていなかった辺りは顕在化しているようには見えましたね。
【宮本監督の基本スタンス】
・ベストよりはベターを選ぶ
ここからは別に長所でも短所でも無い、或いは長所でも短所でもあると言えるような部分です。
上で挙げた宮本監督の長所とも関連している話なんですが、宮本監督は基本的にはベストよりもベターを選択する向きにあります。宮本監督の場合はちょいちょいベストを目指す瞬間はあるんですよ。2020年開幕前のハイプレスとか、今季開幕当初の4-1-2-3とか。ただ、宮本監督は良くも悪くもベストを追うよりはベターを選ぶ確率の方が高い性格だと思うので、今季の新型コロナ集団感染からの復帰後がそうだったようにベストを追う4-1-2-3からベターな4-4-2に切り替えた辺りはこの習性の典型だったと思います。
このことは次回のブログで書こうと思っていますが、宮本監督のアンラッキーな部分としては、根っからの徹底的なベター主義者、現実結果主義者ではなく、宮本監督本人にやりたいサッカーはあるという事で、本人のやりたいサッカーを目指そうとしたタイミングで何らかのバッドイベントが発生してベターに切り替えざるを得ない状況が出来てしまうところなんですよね。ベターを選んで連勝を飾れば、それはベターがベターとして機能しているので次からもベターを選択する事で必然的に連勝は伸びます。逆にベターを選んで連敗でもしようものなら、ベターな方向で詰まる訳でギャンブルでもしない限り抜け出しにくくなるから連敗が伸びる……2018年も2019年も2020年も、宮本監督就任以降のガンバが好調な時期と不調な時期が凄まじくハッキリしていたのはそういう部分もあるのでしょう。特に昨季2位になれた理由には2トップ総替え采配のように手持ちの駒で考えられるベターなやり方を選択し続けたから…みたいなところはあるでしょうし。元々ガンバはそういう性質を持つチームではありましたが、これまでのガンバと今のガンバではそれの中身はちょっと違うのかなと。
だからこの部分も長所として挙げるなら「現実的選択に踏み切れる事」であり、短所として挙げるなら「理想を追うのか結果だけを追うのかがやや中途半端」となるでしょうか。宮本監督が多分こういうことやりたいんだろうな〜…的なサッカーについては次回書きますが、結局その辺りが「何をやりたいのかわからない」と言われてしまう部分なのかなと。
・秘密主義
ガンバに限った話ではないですし、そもそも長谷川健太監督時代からも少しその兆候はありましたが、基本的に最近のガンバは怪我人のリリースを出しません。ここ1年は怪我人が相当出ましたけど、リリースが出たのは小野裕二と一森純くらいじゃないでしょうか。まぁ、これに関してはツネ様というよりも松波正信強化部長とかクラブとしての方針説もありますが…。
情報規制をキツめに敷くこと自体はそこまで悪いとは思ってないんですよ。情報をオープンにする事も極力出さない事もどちらが良いと簡単に言える話ではなく、それぞれにメリットとデメリットがあるわけで。宮本監督の場合、自身の現役時代の経験として「完全非公開でやった日韓W杯の合宿」と「完全公開でやったドイツW杯の合宿」の話をメディアでしているのを何度か見かけたので、代表とクラブは別物と言ってもそういう経験もあって一層シビアにはなっているんだろうと思います。
ただ、こうなってくると若干好感度的な話にもなってきますが、今のチーム状況であれば怪我人情報くらいはオープンにしておいた方が風当たりは多少は小さくなったのかなと。結果的にこういうチーム状況になり、それでもクローズド状態が続いたので、不信感的なものは倍増してしまったところは否めないです。本来は一概にどっちが良いとも言えない話ですけど、状況が状況なので悪い方に転がってしまっているのが実情でしょう。
……なんかこうやって色々箇条書きみたいに書くと、たまに理想に行きたがるモウリーニョ的な感じなのかなって思ってきた。タイプ的には。とにかく、宮本監督の特徴を雑に列挙してみるとこんな感じなのかなーと考えています。結局、名将だろうが愚将だろうが、良いか悪いかなんてチームによっても変わるし、同じチームの中でも時によって変わるわけで。
次回、多分宮本監督がやりたいのであろうサッカーと、実現への片鱗が見えていた数少ない瞬間編、デュエルスタンバイ!