RK-3はきだめスタジオブログ

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さよならシンボル〜ガンバ大阪、2021年シーズン総括ブログ〜第2話 Before 3.3 / After 3.3

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【さよならシンボル〜、2021年シーズン総括ブログ】

 

第1回(前回)

 

オリジナルアルバムの配信も開始したのでそちらも観てね

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我々は誰も経験したことがない作業に取り組まないといけない

 

 

 

3月3日のリリースを境に全ての状況が変わった当時、宮本恒靖前監督が語った言葉である。

結局のところ、2021年はこの言葉が全てだった。

 

 

 

ただ、この時点ではまだポジティブな感覚も持っていた。

活動停止となった2週間が明けた時、シンプルに選手達は一瞬でも"解放された"という感覚を最初の練習で味わっただろう。何より、2021年から代替日程の確保が出来なかった場合、中止になった試合を「みなし開催」として自動的に0-3の敗戦扱いにされるルールが設定されていた。ガンバはACLの兼ね合いもあって6月に国内試合を組めない事もあってみなし開催になりかねない可能性が少ないとは言い切れなかったので、まずは代替日程を6試合全てで組めた事への安堵が勝っていたのは、恐らくチーム関係者もファン・サポーターも同じだった気がする。

 

 

あの時のガンバを包んだ「先の見えない恐怖」は計り知れなかった。名古屋戦が中止になり、翌日に鹿島戦の中止が発表。その後練習は再開されたが、陽性者が増えた事で大分戦が中止になり、その翌日に活動停止が発表……6試合まとめて中止が発表されるのではなく、1日ごとに陽性者が増え、そして1試合ずつ中止になっていくあの感覚…それが途轍もなく怖かった。明日も明後日も陽性者が出るんじゃないか、広島戦も福岡戦も中止になるんじゃないか……と。

この時思っていたのは「まだ3月で良かった」という事だった。その理由は上で書いたように、みなし開催という制度がある以上、残り日程が少なくなった10月や11月に6試合が飛ぼうものなら代替日程を捻じ込む事が困難極まりなくなるからである。もしその時に、優勝やACL圏内、或いは残留争いを僅かな勝点差で争っている状況なら…?それを考えた時、まだ開幕したばかりの「3月で良かった」という感想は多くの人が持っていたと思うし、そしてそれ自体は正しい感想である事は今振り返っても同じである。

 

だが、3月で良かったのはそうだったのだが……それこそがここから先のガンバを追い込んでいったのも確かだった。活動停止というのは、いわゆるオフでチームとしての活動が停止するのとはまるで意味が違う。1月から2月までガンバが進めてきた戦術的な、そしてコンディション的な準備の全ては水泡に帰してしまった。大袈裟でもなんでもなく、全てがパーになったのだ。

「開幕戦後にリーグが止まった」という一点に限れば確かに状況としては2020年と似ているかもしれないし、4ヶ月も停止した分2020年の方が深刻にも見えるかもしれない。しかし2020年の場合はJリーグチームがみんな一緒に中断していた上に、別にガンバに何かが起こった訳では無かった。今回の大きな違いは「ガンバにクラスターが起こった」という部分である。2020年は個々のレベルでは出来ていた事も今回は出来ない。文字通り、家に監禁されているような状態になった訳だ。例えば子供と公園でサッカーをするとか、一人でふらっとランニングをしたり…とか、そういう事だって出来ない。クラブとしてZoomを通じたトレーニングは行っていたが、この時点でガンバのコンディションは始動前に戻ってしまったと言っても過言ではなかった。そもそも、陽性判定となった選手の中でも体調を崩した選手はそこからの回復もしなければならないし、これから副作用と付き合っていかなければならない可能性だってある。

2020年の時は練習再開から公式戦まで1ヶ月の猶予はあったのに対し、始動前のコンディションに戻ってしまったチームが試合までに残された時間は僅か1週間。もちろん、最終的に全ての日程を消化する上ではこうするしかなかったし、こういう形でも全日程を消化出来た訳で、その為の日程を組めた事に対しての感謝が第一にあるべきなのは大前提である。ただ、現実として───この時のガンバはいわば、故障を箇所を修理出来ないまま飛び立ってしまった飛行機のようだった。

 

 

 

4月3日、ガンバの再開初戦は第7節広島戦。この試合は0-0のスコアレスドローに終わった。

この試合の感想は「よく引き分けた」の一点しかない。後半に体力がガクッと落ちるのは誰もが予想していた事だったし、むしろ立ち上がりがそこまでバタつかなっただけでも上出来で、クリーンシートでの引き分けはむしろ望外の結果ですらあった。1ヶ月遅れのホーム開幕戦となった第8節福岡戦はチャンスも作れていたし、続く柏戦は敗れたが、その次の鳥栖戦でようやく念願の初勝利&初得点を飾る。ここまで再開後の4試合で1勝2分1敗。ガンバが置かれた状況を踏まえれば、ここまではファンもサポーターも「思っていたよりは良い」と捉えていたと思う。

だが、この時点でもガンバは既に負のスパイラルの中にいたのだろう。鳥栖戦までは上に書いたように「思っていたよりは良い」という感覚を見ている側は持てていた。しかし、鳥栖戦で勝利を飾った中で迎えた第10節清水戦からは、その言葉さえも言えなくなってきてしまう。

 

 

上のブログで書いたが、宮本監督の傾向として「ベストよりベターを優先する」という傾向がある。リスクを背負いながら理想を追って100点を目指すよりも、より確率の高い方を選択する傾向…という事だ。

別にこれは何も悪い事ではない。あくまで監督としてのタイプの話である。Jリーグで言えば前者はアンジェ・ポステコグルーにミハイロ・ペトロヴィッチ、後者はマッシモ・フィッカデンティ辺りが代表格だろうか。宮本監督自身も、2018年の残留や2020年の2位はこの性質が良い方に転がって掴み取ったと言える。特に2020年の2位に関しては元々宮本監督がベストを追い求めようとした中で、コロナ禍に伴う変則過密日程となりベター路線に切り替えて掴んだ準優勝だった。言い換えればこのタイプは、極力リスクを避けたい…という部分がスタートにある。

2021年も前年と同じだった。宮本監督は最初、4-1-2-3と攻撃的スタイルというベストに舵を切った。第1話でも書いたように、「何をしたいのかわからない」みたいな否定的意見を受けがちだった宮本監督だったが、2019年のサッカーはやりたい事の輪郭は見えていたし、2020年のハイプレスも2021年の4-1-2-3も原作は2019年にあった。

 

 

結局2020年も頓挫した本来やりたかったサッカーを2020年の成果も踏まえてアレンジしたのが4-1-2-3だったんだと思う。しかしキャンプから取り組んできた積み重ねがパーになり、コンディションがリセットされ、活動再開から試合までは僅か1週間しかない。更にそこから4月22日の名古屋戦までは中2〜3日の6連戦がいきなり待っている。この時点では開催国すら決まっていなかったACLの事も考えれば、コンディションなんて十分な具合に戻せるわけない事をわかっていながらも勝点を稼がねばならない。

 

再開初戦、広島戦で宮本監督が採用したシステムは4-1-2-3ではなく4-4-2だった。

結論と、そしてそこに至るまでのアルゴリズムは、要は2020年と同じだった。

 

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再開直後に思っていたより勝点を積めたのはGK東口順昭、そして昌子源三浦弦太の両CBの好調と奮闘が大きかった。リーグ再開からの5試合で喫した失点は僅かに1。これはコンディションが万全なチームとてそうそう出来るものでもない。特に広島戦鳥栖戦はこの3人がゴールというよりも勝点を守ったみたいな部分もあった。序盤戦の彼らは凄みすら帯びていたように思う。

しかし得点が取れない。リーグ再開からの5試合で奪った得点は僅かに1。鳥栖戦の宇佐美貴史の決勝点のみであった。「ケチャップドバドバ」というネットスラングが有名なように、確かに攻撃はある意味で水物のようなところもある。鳥栖戦ぐらいまでは状況をエクスキューズに出来たかもしれない。だが清水戦以降、それははっきりと「停滞感」という感覚をピッチ上に生み起こした。むしろ再開からの数試合で作れていたチャンスさえも作れなくなっていく。ゼロックス杯で見せた躍動感や期待感は跡形さえもピッチから消えていた。

そうなると、ここまで奮闘を続けていたDF陣も徐々に耐えられなくなってくる。第11節名古屋戦は何かの糸がプツンと切れたような試合だった。この試合はこの年のガンバの全てを変えてしまった活動停止の最初の試合の代替日。この巡り合わせは今思えば皮肉にすら感じる。

 

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全てのことにはメリットとデメリットがある。それは上で挙げた、監督としての「ベストかベターか」のタイプと一緒だ。ベターな選択の方が確かに確率は高いだろう。しかしそれで上手くいかなかった時に陥る悪循環はその方が遥かに根深い。

そもそも、ガンバは身体もコンディションも不十分な状態でこの6連戦を強いられている。6月はACLを戦う為、6月分のリーグ戦を消化しなければならなかった。出来上がっていないコンディションの中、次から次へと襲いかかってくる日程……ゲームのHPなんかを想像してもらえるとわかりやすいが、あれだって回復薬を補給するにはどこかで立ち止まらなければならないし、走りながらHPを回復する事は出来ない。それこそ2020年のガンバがそうだったのかもしれないが、勝ててさえいれば連戦は勢いとしてむしろ味方につける事も出来る。だがそうじゃない。募ったのは疲労だけじゃなかった。

 

 

上のブログは広島戦の前に書いたマッチプレビューである。ここにも書いたが、私個人としては少なくとも清水戦までは4-1-2-3で行って欲しい気持ちがあった。これを書いた時点では名古屋戦の代替日が確定していなかったので、後付けで訂正するなら名古屋戦まで…と言ってもいい。名古屋戦までの連戦を乗り切れば1週間空く。冷静に考えて、当時のガンバの状況で5連勝なんてまず不可能だろう。それなら名古屋戦までの6試合を4-1-2-3の試金石にしても良いと思っていた。4-1-2-3に手応えを掴めたのなら継続すればいい。いや、やっぱり無理だとなった時に4-4-2に戻せばいい……せっかくゼロックス杯で川崎相手に手応えのある試合を見せたのだから、いくら積み上げてきた事がパーになったとは言っても全てをフイにする必要は無いんじゃないか…と。ベターな4-4-2はある種の保険であり、保険を使うのはまだもう少し待って良かったんじゃないか。ベターな方法で失敗した時、そこに戻る場所はもう無いのだから。

もっと言えば、正直…ガンバは2020年で2位になったとは言え、フラットな目で見れば優勝は決して至上命題では無かったようにも思う。優勝を目指すのは当然だけど、2〜5位であればある程度成功と見做された気がする。3月3日までは前年の2位をポジティブな刺激として受け止めていたガンバだったが、3月3日以降はその事実が焦りになっていたように映った。ガンバのネガティブな掛け算はただの掛け算ではなく、まるで指数の計算式のように全てが悪い方向へと転がっていくのが目に見えるようで、宮本監督体制終焉へのカウントダウンは試合を経る毎に加速していった。

大阪府に緊急事態宣言が発令されて、観客がいない中で迎えた第20節。これはACLでガンバが離日している期間の試合を前倒ししたものである為、相手は再開初戦の相手でもあった広島。誰かの声も、ボールを蹴る音も…無観客のピッチに響く音の全てが虚しく聞こえた。調子が良いどころかむしろ不調に陥っていた広島相手に喫した完敗──それはネガティブな指数計算の答えのような地獄絵図だった。2012年の降格決定試合を除けば、あの試合で感じた絶望感は今まで私が観てきたガンバの試合の中で最も根が深いものだったのかもしれない。

 

 

 

1勝4分5敗、得点3。

広島戦の2日後、レジェンドはパナスタを去った。

 

 

 

 

 

個人的には宮本監督の解任には賛成では無かった。

Jリーグでの歴代勝利数の1位と2位の監督が、その勝利の多くをガンバで稼いでいる事で「ガンバは監督選びの上手いチーム」という印象を抱いている人もいるかもしれないが、実際はそんな事は無く、その2人がめちゃくちゃハマっただけ…という方が正しい。クラブ創立から30年の間に13人の監督が指揮を執ったが、その中でガンバでの通算成績で勝ち越しているのは西野朗長谷川健太、そして宮本恒靖の3人しかいないのだ。セホーンレベルの事態でも無い限り、解任の為の解任にはしてほしくない。宮本監督を解任するのであれば後任候補にはある程度の目星を付けてから解任すべきだ。

そしてガンバ大阪というクラブは、残念ながら監督選び・監督招聘という部分のノウハウが致命的に欠落している。宮本監督を解任した時点で後任候補のリストアップさえもしていなかったのが全てだ。2021年はともかく、私は元々「監督・宮本恒靖」は過小評価されているのでは?とも思っている。それであれば、ガンバの監督招聘能力も踏まえれば…結局のところ続投が最もベターなんじゃないかと考えていた。

 

 

しかしそれでも広島戦を見れば、少なくとも「続投支持」とは言えないほどの閉塞感を突きつけられた。上で書いた事も続投希望というよりは消極的続投派のようなニュアンスが強い。いくらガンバの置かれた状況を踏まえても、あの閉塞感は解任反対を叫ばせてくれるような代物じゃなかったのは誰も否定出来ないし、詰まった蛇口から水を出す為の手段としての監督交代の意義は否めない。

宮本監督解任からたったの2日後、ガンバは無観客のパナスタに浦和を迎える。後任監督が決まるまでの間、暫定でチームを率いる事となった松波正信監督が浦和戦で執ったスタンスは「矯正」に近いものに感じた。極端な話、浦和戦は負けてでも全てが後ろに向いてしまったベクトルをどうにかしなければならない、今のチームを包む閉塞感だけでも、少なくとも次の監督が来るまでに取り除かなければならない…松波監督はこの試合で「繋ぎ」としての役割を果たそうとしていたのだろう。3-4-2-1にシフトして挑んだ残留争いの直接対決の第16節徳島戦第17節横浜FC戦では何とか勝利を収める事も出来た。それは決して、両手放しで喜べる連勝では無かったとしても─。

 

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だが、後任監督は一向に発表されない。メディアでは下平隆宏氏、大槻毅氏、大岩剛氏の名前が報じられ、最終的にガンバは2018年に鹿島をACL制覇に導いた大岩氏にオファーを提示する。しかし交渉はあえなく決裂し、6月2日に松波監督体制の継続(=正式な監督就任)を発表。小野忠史社長は松波監督続投の理由に以下の4点を挙げている。

 

・現時点において、条件面含めガンバ大阪が求める監督がマッチしなかったこと
・今シーズン過密日程の中、外部からの監督招聘による新体制でのチームづくりに時間的余裕がないこと
・松波監督体制におけるチームの団結力が日々向上していること
・松波監督体制において、チャレンジングな試合内容へと変化しつつあること

 

松波監督体制の継続を発表【G大阪】

 

監督続投の理由は結局は上の2つであり、下の2つはそれだけでリリースを終えるわけにもいかないから後付けしたに過ぎない。

これが正解だったとは思えないし、実際に炎上レベルの批判が飛び交った。だが一方で、大岩氏に断られた事実も含めて、宮本監督解任に踏み切った時点でどうあがいても選択肢はここに辿り着くしかなかったのも事実なのだろう。そしてここから前代未聞の15連戦…事実上の21連戦が始まる。

 

 

つづく。

 

 

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