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軌跡と邂逅の果てに〜京都サンガFC、2021年総括〜第2話 疑心と確信

 

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【軌跡と邂逅の果てに〜京都サンガFC、2021年総括〜】

第1話(前回)

 

オリジナルアルバムの配信も開始したのでそちらも観てね

 

 

 

 

 

第5節秋田戦、圧倒的に押し込みながらも0-1で敗れたサンガは第6節でホームに千葉を迎えた。昇格が決定した後、曺貴裁監督にキーポイントと言わしめた一戦である。

「ズッ友」というスラングが示すように、サンガと千葉は似たような立ち位置で、そして似たような推移を辿っている。彼らもユン・ジョンファンという昇格やタイトル獲得経験を持ち、ベテランから若手まで優秀なタレントが揃うが、彼らも長年昇格が出来ないままで開幕5試合を1勝2分2敗で推移していた。

 

 

秋田戦までの5試合と、そしてこの千葉戦以降の大きな違いとは何か。この5試合も基本的にサンガがやった事、やろうとした事はそこまで大きな変化は無いし、その延長戦上をシーズンを通して進んでいる。この試合のポイントは勝利したことで流れを変えられたのもそうだが、スタメンと個々の選手の起用位置が固まったという点もあるだろう。

特にこの日が移籍後初出場となった武田将平がインサイドハーフとしてハマったのは相当大きかった。曺監督の言う「秩序の中のカオス」という攻撃スタイルを浸透させる上で、アタッキングサードへの侵入は松田天馬や福岡慎平、三沢直人も十分に果たしていた中、アタッキングサードで決定的なパスまでも通せる武田のフィットは決定的なポイントだったと思う。加えて武田はセカンドボールを回収する上でも大きな力を発揮した。これは相手のカウンターの芽を潰すだけでなく、高い位置でセカンドボールを回収する事でサンガの攻撃ターンを維持し続ける事が出来る。勝ったからこそ言えるセリフかもしれないが、この日、サンガの2021年のやり方は完成に大きく近づいた。

千葉戦がターニングポイントと目されるのはそういう意味もある。本多勇喜の負傷退場に伴い途中出場した麻田将吾が奮闘した事もあってスタメンも固まった。事実、怪我やコンディションの関係で多少の変更はあっても、基本的には千葉戦の翌節にあたる町田戦のスタメンがその後もほぼ固定される形となった。「メンバーの固定化」というとネガティブに捉える人もいるかもしれないが、メンバーを固定できるという事はそれだけ戦術としての完成度が高まっている事の表れでもあり、それをこの段階で実現出来たのは昇格出来た理由の重要な項目だったはずである。

 

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千葉戦で全てがガチッとハマったサンガは、昨季のチームを率いた實好礼忠監督率いる第11節愛媛戦を3-2で勝利して6連勝を飾る。特に第8節北九州戦ピーター・ウタカハットトリックを含む6-1の圧勝。6得点はサンガがJ2独走優勝を果たした2005年以来、実に16年ぶりとなるスコアだった。

 

 

愛媛戦終了時点で3位まで浮上したサンガはここまで9勝1分1敗の琉球との直接対決こそ0-0と勝ち切れずに終わったが、この頃にはもう「勝てなさそう」と感じるような試合は一つも無かった。J2自体も序盤戦の主役となった新潟と琉球を、最初の5試合はやや躓いたサンガと磐田が猛追する構図になっていく。

サンガファンの私が言うのもなんだが、まだまだ前半戦とはいえ4〜5月のサンガは新潟と琉球のファンには恐怖でしか無かったように思う。そして第14節、ここまで無敗を続けていた新潟が遂に負けた。第15節、敵地・デンカビッグスワンスタジアムにて両者は相見える。この時の勝点は首位新潟と2位琉球が共に33で、3位のサンガが32。曺監督の下で躍動的なサッカーを見せていたサンガと、アルベルト・プッチ・オルトネダ監督の下でポゼッションサッカーを進化させつつあった新潟の試合は前半戦最大のビッグゲームとして注目を集めた。そしてそれはサンガにとっても久々に体感する、非常にヒリヒリするシチュエーションでの直接対決だったと言えよう。

攻守ともに見応えある攻防戦が繰り広げられた中で迎えた58分、ウタカのパスを福岡が落とすと、今季のサンガの象徴とも言えよう選手である川﨑颯太がミドルを突き刺してサンガが先制。この決勝点を守り切ったサンガは1-0で天王山を制した。そして数時間後のキックオフとなった琉球が山形に敗北。この瞬間、序盤戦で築かれた新潟と琉球の牙城が崩れた。遂にサンガは順位表の1番上に来たのである。

新潟戦で上り詰めた首位こそ第16節甲府戦以降のドローで手放す事となったが、第18節群馬戦では引き分けながら新潟が敗れた事で再び首位に立つ。この第18節では磐田が2位に浮上し、2021年のJ2はここからサンガ・磐田の2強状態が確立された。結論から言えば、1位と2位の立場こそ入れ替わりながらも、この両者はここから最終節まで自動昇格枠となる2位以内から最後まで陥落する事なくシーズンを貫き通す事になる。

第6節千葉戦から始まったサンガの無敗も、第21節長崎戦に0-2で敗れるまで実に15試合も続いた。5月の天王山から僅か2ヶ月、2位サンガと3位新潟という立場に変えて激突した第23節の直接対決では死闘という他ない試合展開でドロー。この試合は東京オリンピックによる中断前最後の試合だったが、他会場で磐田が山形に敗れた為、サンガは中断期間に首位という状態で突入した。

 

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2013年の3位を最後に9位17位5位12位19位8位8位と推移したチームが中断期間に首位に突入したとなると、もう少し意外性を感じてもいいような気はする。だが面白い事に、試合を見ていた立場としては、首位で中断期間を迎えた事実を「出来過ぎ」だとはあまり思わなかった。

思えばサンガは2019年にも首位に立ち、昇格への期待を抱かせていた。2020年にしても、最初の10試合の結果に限れば昇格を狙える立ち位置には付けていた。だが、どちらも結局最後には上手くいかず共に8位で終わった記憶を各々が持っているからこそ、目の前で繰り広げられるサッカーに心躍らせながらも少なからずの疑念を持っていた事は否めない。「はたしてこれがどこまで続くのか…?」と。そもそもサンガは1J2で11シーズンも幽閉されるかの如く過ごしてきたのだ。どれだけ良いサッカーをしようが、どれだけ連勝しようが12月の結果などわからない。それをサンガファンは痛いほど味わい続けてきた。実際、2019年に首位に立った時もどこか「これは夢か?現実か?」的な感覚に陥っていた。だが今振り返ればサンガから、そしてサンガファンからその「半信半疑感」を打ち砕いたのが5月の天王山、新潟戦だったように思う。

上位対決を中心に、今季のサンガの試合は対戦相手も含めて「J2離れしたレベルの好ゲーム」みたいな評価を受ける事が多かった。例えば新潟との試合はアウェイでもホームでもそう言われたし、新潟戦の前の琉球戦、新潟戦の翌節の甲府戦、そして11月の磐田との天王山……サンガに限った話ではないが、2021年のJ2は完成度の高いチームが実に多かった。そしてその過程の中でのせめぎ合いを経ての躍進は大いなる地震と手応えをチームに与えたはずで、見ている側としても不思議な感覚に包まれていた。確かに惜しいシーズンは過去に何度もあった。大木武監督体制下での3年間もそう、2016年2019年でもそう…。しかしそれらの躍進とはどこか違う、今年は本当にいけるかもしれない……4月から7月にかけての15戦無敗にはそれだけの力があった。

東京オリンピックを経てのリーグ再開となった第24節町田戦。前半は劣勢になる時間帯もあったが、後半はこの日がサンガでのデビュー戦となった夏に加入したばかりのイスマイラが決勝ゴールを挙げて2-1で再開初戦を勝利。勝利という結果に後半の試合内容、そして新戦力のいきなりのゴール……これ以上ないほどに完璧な再開だったし、今年はマジで行けるかもしれないと本気でそう思った。新潟戦で振り払われた疑念はこの日、確信めいたものに変わったのだ。

 

 

 

 

 

ただ長年サンガの顛末を見てきた身としては、同時にこうも思った。

 

今年ですらJ1を逃せば、もう2度とJ1なんて行けないんじゃないか───と。

 

8月の3試合で全勝を飾ったサンガの正念場がここから始まる。

 

 

 

つづく。