宮本恒靖監督がガンバに残した功績と、そして降りかかった不運。

noteにも書きましたがツネ様ガンバ大阪というチームを知り、それをきっかけに合わせたチャンネルで見たガンバと東京ヴェルディの試合でガンバファンになった私にとって、スポーツ的なことを一切抜きにして感情論オンリーで語れば長い夢が潰えたような気分ではあります。

 

 

というか、そもそもこれもnoteで書いたんですけど、結構私的に不意打ちな感覚があったんですよね。

解任のカウントダウン自体は始まっていましたが、実際に解任に踏み切るとすれば試合間隔的なことを踏まえると5月16日の浦和戦後、もしくは6月2日の湘南戦の後だと思っていました。だからちょっと5月13日付で契約を切ったのは意外だったところはありますね。だから昨日と月曜日で宮本恒靖監督解任の是非…とか、そもそも宮本監督の長所と短所はなんぞや、みたいなブログを呑気に更新しちゃってますし。

 

 

 

……で、すごく感情的なことに関してはnoteである程度書きましたから、ここではサッカー的なところで宮本監督のガンバでの功績、ガンバにもたらしたメリット、不運だったところ、そしてこれからの事を書いていこうと思います。昨日のブログと少し被る部分があるかもしれませんが、それに関しては昨日と今日で状況があまりにも変わり過ぎたのでご愛嬌…という事で。

 

 

 

宮本監督の功績というか、上手くいった部分とそうでなかった部分を語る上で重要な要素と言えるのは宮本監督の現役時代のプレースタイルです。現役時代のタイプと監督としてのタイプは必ずしも似るわけではないですが、裏返せば似る事とある。宮本監督は現役時代のプレースタイルと似たようなスタイルの監督でした。

 

 

現役時代の宮本監督はCBとしては劣る身体能力を戦術眼や読みなどを含めた分析力で補っていました。CBはCBでも、2CBの一角よりは3バックの真ん中でこそ力が最大限に発揮されるタイプというか。

 

宮本監督の長所といえば「守備組織の構築」「戦い方の整理」「ゲームプランの構築」辺りがパッと思い浮かびます。さすがにマネジメント力とかまでに話が及ぶと性格とかパーソナルな問題になってくるので、そこは私なんかが知れる訳がないので。外から見てもわかる監督としての強みは大きく分けるとこの3つです。この3つの特性に「ベストよりもベターを選ぶ」というスタンスを兼ねているのが宮本監督でした。

2018年は途中から、2021年は途中までなので、宮本体制4年目とは言いつつも宮本ガンバは実質的には3シーズン。成績で言えばこんな感じ(J1リーグ戦に限る)。

 

2018年 9位 10勝3分4敗(17試合)

2019年 7位 12勝11分11敗

2020年 2位 20勝5分9敗

2021年 18位 1勝4分5敗

 

宮本監督の最大の功績は何かといえば、昨年の2位以上に2018年のチームを残留させた事だと思っています。

 

 

 

長谷川健太監督による5年間の体制が終わり、レヴィー・クルピ監督が就任したガンバの状況はかなり厳しいものでした。この年の守備組織は完全に壊滅状態に陥っており、クルピ体制のラストゲームとなった第17節清水戦では「4バックノーボランチ」みたいな状態と化していて、誇張表現でもなんでもなくGK東口順昭だけで守っている状態が長らく続いていました。この時のガンバの崩壊はクルピ監督のやり方によるものが一番大きかったのは確かですが、実績を見ても分かる通りクルピ監督は別に無能な愚将という訳ではないので、強化面などフロントの落ち度もありましたし、そもそも2018年が長谷川体制末期と呼ばれる大スランプを引きずったまま入ってしまった部分があったので、どこからどう見ても最悪というか、ある意味では病巣は実際に降格した2012年より深かった部分がありました。

そんな中で宮本監督は第18節鹿島戦から監督を引き継ぐ訳ですが、就任当初は終盤の失点癖など勝ち切れない試合は続いていたものの、少なくとも組織構築はある程度植え付けられている感覚は確かにありました(それで負けが込んだから余計に泣きそうだった部分はあるけど)。だいぶ守備が形になっているけど、あと少しが足りない……そこに怪我から今野泰幸が復帰し、U-23韓国代表のオーバーエイジとしてアジア大会に参加していたファン・ウィジョが復帰した事で「あと少し」が埋まり、その結実が怒涛の9連勝だったのです。クルピ体制での17試合を4勝3分10敗で終えたガンバが最終的な成績を14勝6分14敗のタイに持っていったのは見事という他なかった。2018年の出来だけでも宮本監督が無能や愚将ではない事の証明にはなると思います。

 

これは宮本監督は守備の規律をチームに落とし込む手腕に加え、その時々に応じてベターな選択は何か、という事を見極める能力に長けていたのもあると思います。これは2020年の2位躍進にも同じ事が言えて、ベターな選択を選んで上手くいけばベターな報告に進み続ければ必然的に連勝は伸びていく。2018年の9連勝も2020年の12戦無敗もそういった部分から生み出された好成績です。

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20210514150045j:image

 

そしてもう一つの功績といえば世代交代の断行でした。

そもそも宮本監督はユースコーチ→ユース監督→U-23監督→トップチーム監督という流れだったので、彼らの特徴を知っている分踏み切りやすかったところはあるのでしょう。2018年はチーム自体に余裕が無かったのでベテラン・三冠メンバー中心でしたが、世代交代に一気に舵を切った2019年第12節の大阪ダービーガンバ大阪というクラブの歴史に於いて重要度の高い試合となりました。

いつの間にかガンバは2014年の三冠メンバーへの依存度が相当高くなっていて、もちろんファンにとっては功労者との別れなので寂しいものではありますが、過程としては遅かれ早かれ経なければならないものでした。

 

 

そして、宮本ガンバで起こった最も大きなトピックの一つが遠藤保仁の退団でした。

 

 

 

それが移籍なのか引退なのかはともかくとして、遠藤保仁の退団はいつかはどこかで訪れるでした。インタビューとか見る限り、ヤットさんはギリギリのギリギリまで現役を続けたそうなタイプなので尚更。要するに、誰かがどこかで遠藤保仁を切るという作業をしなければならなかったのです。

競技は変わりますが、阪神タイガースで一時期鳥谷敬がチーム内でアンタッチャブルな存在になっていました。連続フルイニング出場とか、連続試合出場も絡んで。こういうのって外野からは「スタメンから外せー」とか簡単に言えますけど、実際に一定の基準を超えたレジェンドに対してそれを断行する事のハードルってめちゃくちゃ高いんですよ。だから鳥谷の連続出場は金本知憲監督体制じゃないの止められなかったと思うし、同時に鳥谷の放出は金本監督の後任である矢野輝弘監督じゃないと出来ない作業でした。

例えば、ひょろっとやってきた外部監督が……そうですね、例えばクルピが遠藤放出に踏み切っていたらえげつないことになっていたと思うんですよ。そうなってくるとクルピはおそらく、四冠制覇を達成して初めて許されるぐらいの勢いの話になってたんじゃないかと。だから口で言うのは簡単なんですけど、外部監督がレジェンドを切るのって、その監督が監督として相当なブランドでも築いてない限り困難なんですよね。話を阪神に戻すと、金本監督と矢野監督に共通している事……それは両者とも阪神のレジェンドだったという事です。要するにレジェンドはレジェンドじゃないと切れない…と。

 

話をガンバに戻せば、遠藤保仁ほどの偉人を切る事が出来る監督って、歴代全てのガンバ関係者を見てみても宮本監督くらいしかいないと思うんですよ。だからこそ、2018年に宮本監督が就任した時点で、2018年に残留を果たした暁に彼に求められていたミッションの一つは遠藤保仁からの卒業」であり、ちょうど良いタイミングで矢島慎也や山本悠樹の台頭があった。これは本当に宮本監督しか出来なかった事であり、宮本監督の間に絶対にやらなければならなかった事だったと思います。世代交代というか、チームに若い選手を積極的に組み込んだ、年齢層を循環させたのも功績だったかなと。

 

 

 

冒頭でも言いましたが、月曜日昨日、そして本来なら今日の3回に渡って「宮本恒靖監督を解任するべきなのか?」というブログを書いていたんですよ。で、本来なら今日更新しようと思っていたブログの内容が「宮本監督がやりたかったと思われるサッカーとはなにか」っていうテーマだったんですけど、それが何かは後日更新するとして。

 

解任は仕方ない成績を出してしまったのを前提にしても、宮本監督がやっぱり気の毒だったのは「まともに1シーズンを戦えた事がない」という部分なんです。

上に書いたように、2018年はボロボロになったチームを建て直さなければならない、とにかくJ1に残留しなきゃいけないという状況で、自分のやりたい事を出せるような状況ではありませんでした。2019年は前述の大阪ダービーを機に宮本監督の色が出始めて、内容も伴ったサッカーをするようになってきたんですけど、海外に移籍したファン・ウィジョを筆頭にスタメン組めるほどの人数で選手の入れ替えがあって、チーム作りは一旦完全リセット状態になってしまいました。

それでも彼等と入れ替わる形で入ってきた宇佐美貴史井手口陽介がフォームを取り戻してからは再び内容面も軌道に乗って、終盤戦の形を踏襲した上でちょっとした流行語となった「ハイプレス」を軸にした宮本監督の色を出した戦術に取り組もうとしましたが、突如発生したパンデミックによりカレンダーが大幅に変更。やはり宮本監督はそういう状況になるとベストよりベターを選択するので……やりたい事を一旦封印した上で現実路線で結果を出して、改めてまたやりたい事をやるぞと。その意気込みで2021年を迎えて、実際ゼロックス杯では可能性を見せてはいたんですが……。

 

宮本監督の「ベストよりもベターを選ぶ」というスタンスは長所とも短所とも言えないんですよね。だってこれは能力ではなくタイプ、考え方の問題であって、それが上手くいくか失敗するかはTPOによる訳で。上でも書いたように、ベターを選んでうまくいけば、後はずっとベターを選んでおけばある程度連勝は伸ばせるんですよ。でも逆に、ベターを選んで負けた時はチームに結構なダメージが残る、そしてそれを繰り返してしまった、それが今のガンバであり、悪循環から脱する為には環ごと切る以外に選択肢が無くなってしまった…と。1年で良いから、宮本監督に通年でまともに指揮を執れる1年があって欲しかった…というのは悔やんでも悔やみ切れません。ベストがベターの選択を迫られて、一度だけベストの方に踏み切ったのがあの大阪ダービーだったと思うと色々込み上げるものもありますが…。

 

 

ともかく、大事なのはこれからです。監督交代に踏み切った以上、最悪なのは「宮本監督を切らなきゃ良かった」という結末になる事です。実際、過去のJリーグでもそういう事例は何回かありました。当面は松波正信強化アカデミー部長が暫定監督を務めますが、次の監督選びは何があっても失敗出来ません。

既に後任監督が固まっていて指導可能になるまでの暫定監督なのか、はたまた監督探しもこれからなのかはわかりませんが……一つでも良い明日を祈る事しか今は出来ません。

 

 

 

とにかく、宮本監督には感謝しかありません。初勝利となったあのFC東京戦歓喜は一生脳裏に焼き付く事でしょう。宮本監督からツネ様に戻る訳ですが、また何らかの形でガンバに帰ってくる日を心待ちにしています。まずはゆっくり休んで、突然のガンバの5時間に渡る監督就任要請を受けてくれたが為にキャンセルになってしまったであろう家族旅行でリフレッシュしてきてください。

 

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20210514150453j:image