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喜怒哀楽〜2020年のガンバ大阪を振り返る〜第1話 ハイプレス

きど-あいらく【喜怒哀楽】
人間のもつさまざまな感情。喜び・怒り・悲しみ・楽しみの四つの情のこと。

(三省堂 新明解四字熟語辞典)

 

サッカーを見ていようが見ていなかろうが、生きていれば大体一年の間に程度の差はあれど全てを経験していくだろう。

それを踏まえても、今年のガンバ大阪は喜怒哀楽の起伏がこれまでのガンバの歴史に於いても尋常じゃなく大きかった。久々に感じる期待感、久々の開幕戦勝利、そして未曾有のパンデミック……再開しても尚、ガンバの辿る道は常にどちらかの坂道だったような気がする。これから先、2020年より良い成績のシーズンも悪い成績のシーズンも経験するだろう。だが、密度の濃さは今年30周年を迎えるガンバにとってもこれを超えるのは難しいのかもしれない。

 

今回からは2020年のガンバ大阪について振り返っていくブログを書こうと思う。

このブログはガンバの天皇杯の結果を見てから書こうと思ったのでこの時期になったが、そこはご容赦願いたい。

 

 

 

2020年のガンバは結構な期待感と共にあった。これだけ書くと2019年にも同じような印象を書いた気もするが、9連勝を飾った事でなんとなく様々な問題がうやむやになった感のある期待感とは異なり、それ相応の根拠は伴っていたと思う。

2019年の大阪ダービー以降、世代交代がある程度進んだガンバは2019年の終盤にはサッカーが形になりつつあったし、代表クラスがそのサッカーを織り成す陣容は贔屓目なしにリーグでも上位クラス。メンバーは若手のレンタルや出場機会の少なかった選手の放出以外は無く、移籍が噂された小野瀬康介三浦弦太の慰留にも成功した。加えて小野裕二の獲得やオ・ジェソクの復帰、そして誰もがタラレバで願望こそ言いながらも実現するとはまるで思っていなかった昌子源の獲得……。2月になるとサッカーを見ているみんなが「順位予想」を嗜み始めるが、贔屓目なしにガンバの優勝を予想出来るようになったのは2016年以来だったように思う。結果はともかく、開幕前の時点ではぶっちぎりの優勝候補がいなかった部分は影響しているが、妄信ではなくちゃんと期待出来た。シーズンはそうして迎えた。

 

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いざチームが始動すると、チームの指針として「ハイプレス」という言葉が並ぶ。

そもそもの是非に関しては好き嫌いや向き不向きもあるから一概には言えないが、キャンプを取材された記者の方から「何がしたいのかわからない」と口々に言われ続けたここ2シーズンを思えば、一つの指針を基にキャンプを進められたのは今振り返っても大きいと思う。

 

 

これは4月に書いたブログなのでタイムラグや状況の変化も多いが、インテンシティーを重視する時代の潮流もあるが、宮本監督がハイプレスを強調した戦術に取り入れたのは攻撃面での優位性に繋げる為との考えが大きいように見えた。伝統的にガンバにはスキルの高い選手は多い。4月にFootball Zoneでの宇佐美貴史柿谷曜一朗の対談で柿谷が言っていた「(倉田)秋くん、アデ(ミウソン)、宇佐美の連係いいよなあ~」という言葉は割とキーというか、核心ではあったと思う。この3人に小野瀬、井手口陽介を加えた5人が、攻撃時にはトライアングルを作るようにして3人でショートカウンターを成立させる。これがバチバチにハマっていたのが2019年の後半だった。要するに、高い位置で奪えればすぐにこの5人の誰かが良い場所でボールを持てる、或いはこの5人のところで取る事が出来れば……その背景を考えれば、この方針は実に理に適っていた。

 

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2020年の公式戦初戦となったルヴァン杯柏戦では、ガンバの習熟度不足もあるにしても、柏の戦い方が習熟していてもハイプレス戦術が効きにくい相手だった背景もあって上手くいかなかった。しかし後半、遠藤保仁を投入して攻撃の流れを整理してからの試合展開は敗れはしたが見事ではあった。

 

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そして迎えた開幕戦、対戦相手は前年度王者の横浜F・マリノス日産スタジアムで行われたこの試合はガンバにとっては2009年以来となるアウェイでの開幕戦だった。

宮本監督は特定の相手との試合の際はそれに応じたシフトを取る事が多い。この試合は2020年のやり方というよりも、システムも当初のシステムだった3バックではなく4-1-4-1で挑むなどマリノス対策という意味合いの方が強かったが、6分に倉田秋が奪ったゴールに至るまでの一連の流れは今年のガンバがやろうとしている事が早くも形になった瞬間だった。マリノスのやり方との相性もあるし、後半は一方的に攻められる展開にこそなったものの、最後はDF陣が耐えて2-1で勝利。2019年開幕戦で敗れ、そしてそのまま優勝まで駆け上がったマリノス相手に勝利を掴み、2011年以来の開幕戦勝利を掴む。


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この試合がもたらした歓喜は久しくガンバに欠けていた類のもので、劣勢ではあったがそれはあの時点での立場上仕方がない。そしてマリノス対策の方が色濃かったとは言えども、目指す形は垣間見えたし、結果も出た。この試合を怪我で欠場していた選手がここに戻ってくれば……。

第2節、ホーム開幕戦、パナソニックスタジアム吹田ではベガルタ仙台を迎える。横浜FM戦遠藤保仁はJ1通算631試合出場を達成し、横浜フリューゲルス名古屋グランパスで活躍した楢崎正剛が持つ記録に並んでいた。仙台戦に出場すれば単独1位なのだ。開幕戦を制した勢いを持つ今年最初の満員のパナスタで、偉大な記録を樹立した背番号7を万雷の拍手で迎え入れる……誰もがその頭でいた。

 

 

 

しかし、開幕前から燻っていた火種はこのタイミングで爆発する。

ガンバの火種でも無ければJリーグの火種でも無い。だが開幕戦が終わったタイミングで、2020年は一気に荒波へと飲み込まれた。

 

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正直なところ……2月〜3月くらいまでの中断は予想していたし、まあまあ、くらいに思っていた。逆に言えば4月には状況は収まっていると思っていた。更に言えば、2月時点ではガンバにとってはむしろ追い風とさえ思っていた。3月中旬、遅くとも4月頭には再開すると思っていたし、チームの活動停止になるとすら考えてなかった以上、この中断期間で怪我人が復帰したりハイプレスの練度が高まればいいな〜ぐらいに。

 

ガンバというより完全に筆者個人の話になるが、実は私は東京オリンピックのサッカーのチケットを有している。札幌ドームでの試合である。それに伴い、五輪が終わってからブログで公開しようと思って定期的に日記のようなものを記していた。結局五輪が延期になったので、そのタイミングで更新したけれど…。

 

 

これを振り返るとわかるが、私自身、Jリーグが中断になった時点ではオリンピック開催の有無どころか3月のキリンチャレンジカップの可否を気にしていた。要するに出来る可能性があると思っていた訳だし、この時は3月中旬はどうだろう、収まってるかな?くらいの感じだった。

これは私だけでなく多くの人もそうだったと思う。コロナを舐めていたワケではないし、自分なりに出来る事はやっていた。「若者はコロナにならないからへーきへーき」だとかそういう舐め方をしている人はそこまで多くないだろう。私もそんな舐め方は一切していない。だが終息時期については舐めていた。そこは否定出来ない。だが3月後半から風向きは変わり、4月には緊急事態宣言が発動される。それまでは「○月△日の第◇節から再開します」と明言していた再開時期でさえ「再開時未定」と発表されるようになって……。

 

こうなれば、果たしてJリーグは再開されるのだろうか?

こんな久々に開幕戦に勝ったのに。こんな久々に期待出来る年なのに。

勿論、世の中に様々な問題がある以上、サッカー以前に優先しなければならない事は個人レベルでも団体レベルでも多い。それはわかっているからこそ、なぜこうなった……そんな感覚の渦巻く4ヶ月の中断期間だった。

 

 

 

つづく。