先日、セレッソ大阪の新スタジアムであるヨドコウ桜スタジアムについてnoteで書きました。
…おそらく、それはnote自体よりもその後のTwitterの方が原因だと思うのですが……更新した後で、セレッソサポーターの方からTwitter上で色々意見を頂きましたので、まずは方針というか…このブログを書くにあたって、の部分から説明させて頂きたいと思っています。
今回の桜スタジアムって、noteでも書いたように……結構色々言われてきたんですよね。特に大きな問題として言われているのがアウェイ側席問題で、スタジアムの内覧会が行われたり先日のU-24日本代表の試合で有観客として最初の試合が行われたりトレンドに入るイベントが開催される度に誰かしらのTwitterがバズったりで論争になりがち…と。近年増えてきた新スタジアムの開場時にあまり見ない展開になってきています。
アウェイ側に屋根が無かったりやら諸々は何も別に桜スタジアムに限った話ではなく、そうなった事情はそれぞれにあります。それゆえに「じゃあなぜ桜スタジアムだけあんな賛否両論になるの?」という疑問にが沸いてくるんですね。前述のnoteは今、世に蔓延る情報の中での他サポ心情…みたいな側面で、いわゆる「文句を言う立場」でのnoteを構成し、その後で「文句を言われている立場の事情」のブログを書こうと考えていました。言うなれば自分で自分に説明する形というか、セルフQ&Aというか、言ってしまえばもうマッチポンプに近いですかね。
個人的には前述のnoteで書いた心情を持ちつつも、実際にああいう形状になった事情や理屈も把握はしているつもりなのですが、色々とコメントを頂いた上で改めてnoteとTwitterを読み返したらまぁ怒るか…そりゃ、と思う部分もやっぱりありました。だから…という訳ではなく、noteを書くと同時に元々続編みたいな形で書こうとは思っていましたが、今回はある意味で件のnoteとは逆の視点として、あの形になった(ならざえるを得なかった)理由をまとめていきます。
noteとTwitterに対してご指摘の声を頂いたように、あのnoteで書かなかった…全く触れていなかったけど凄く重要なポイントは2つありまして、その一つに「新築では改築」というポイントがあります(もう一つは後半で言います)。6月の天皇杯や先日の代表戦がこけら落としと称されたように「新スタ的扱い」は受けていますが、元は長居球技場(主にキンチョウスタジアムとして定着していたスタジアム)を大規模改修する形で建築されたスタジアムです。
要するに、基本的に桜スタジアムの場合はゼロベースのスタートではなく、元々あるスタジアムの土地の範囲内で作る(=元々あるスタジアムの土地の範囲内でしか作れない)と。新スタを計画して、新たに土地を購入しようにも大阪市なんて土地代だけでヒェッ…って金額になるでしょうしね。スタジアムが位置する長居公園のアクセス面の強みを捨てるのもそれはそれで勿体ない話でもありますし。ちなみにヤンマースタジアム長居(右)とヨドコウ桜スタジアム(左)の距離感はこんな感じ。
セレッソは「育成型スタジアム」という表現をしていますが、桜スタジアムの計画は段階的改修という形で進められています。一般的に新スタと聞くと完成品でオープンさせる形をイメージしますが、桜スタジアムの場合は現在の形が完成ではなく、ここからまた改修のフェーズを重ねていくよ、と。例えるなら、とりあえずケーキのスポンジとクリームという土台が出来た状態であり、イチゴなりフルーツといった装飾はこれから乗せていくよ〜みたいな感じですかね。なので桜スタジアムはまだ建築途中というか「開場はしたけど完成はしていない」という状態です。後付けでの改修や屋根の設置(or撤去)は別として日本では完成させてからオープンの形が一般的なので比較的珍しいケースですが、このスキームは欧州ではちょこちょこ見るケースです。
一見見切り発車にも見えますが、その辺りに関しては下にリンクを貼った方のブログが非常にわかりやすく、それ以外でもこのブログを書く上で色々と参考にもさせて頂いたのですが、その方の言葉を引用すれば「改修→資金を回収→次の改修の資金にする というサイクルを作る」という理屈に基づいたものでした。勿論キャパや席割りの理由もあり、セレッソはダイナミックプライシングを導入しているので一概には言えませんが、桜スタジアムのチケット価格がヤンマースタジアム長居の時よりも若干高めに設定されている理由としても合点がいきます。
じゃあ段階的改修をするとなると、「どこを優先するか」と同時に「どこを後回しにするか」という選択が迫られます。自分のnoteを読み返すと、重要ポイントを2つ飛ばして書いている事もあってまあ確かにこれはわかってないように見えるわ…とは思うのでその点は反省していますが、一応自分としてはその辺りの事情は把握はいるつもりです。
先日の代表戦ではスタジアムから見えるマンションから横断幕やらを掲げている方が多くいた事が話題になりましたが、あれが話題になった事そのものがアウェイ側に屋根をつけられない理由みたいなところはあって、前述したように長居公園の中とは言っても長居公園外が隣接する形になっていると、騒音問題とか高さ制限とか、そういう周辺環境だとか条例に関連した問題が出てくると。アウェイ側には大型映像装置やピッチとの距離問題とかも全部固まっているので、既存の座席の入れ替え以外はアウェイ側スタンドはクリアするべき問題が多すぎるあまり、他のスタンドと比較しても徐々に改修する事が出来ず、あそこに手をつけるのならあそこも同時に手をつけなければならない、であればあそこもあそこもあそこも…といった感じで、可能か不可能かの判断を含めた様々な問題をクリアした上で一気に改築しなければいけないのでしょう。一例を挙げれば…アウェイ側スタンドの距離をピッチに近づけようと思ったら、スタンドごとスライドして引っ張る事は不可能な訳で、であれば一度土台ごと解体する必要が出てくる。そうなれば解体費もかかる。このように完成に持っていく為には工費も当然馬鹿にならない訳で、優先順位の取捨選択をする上で「アウェイ側スタンド」というよりは「南側スタンド」を後回しにする必要があったのは確かなので、何も嫌がらせや意図的なアウェイの洗礼を作り出そうとした訳ではなく、理屈として正しいというか、このスキームで進める以上は他に無かったのは理解しています。
スタジアム説明会の議事録を見ても、例えば大型映像装置に関しては将来的には現在のものを撤去して近年建てられたスタジアムの(下の写真)のようにスタンドの角になる位置に対角になるように設置したい…という意向も示されてますし。
で、もう一つここで書いておきたかったのはヤンマースタジアム長居のライセンス問題について。この事をnoteでは完全スルーしていた事はTwitterでも色々頂きました。
noteではガンバ大阪と京都サンガFCの例を比較対象として「ヤンマースタジアム長居と比べてガンバとサンガの以前の本拠地が明らかにJリーグの基準に達していなかったから新スタジアム建設が急務だった」みたいな形で書きましたが、実情としてはヤンマースタジアム長居はヤンマースタジアム長居でJ1ライセンスを満たしたスタジアムではありません。その要因がスタジアムの内部のハード面…具体的に言うとトイレの数です。J1ではトイレの数は数そのものではなく収容人数に対する割合が基準になるので、長居はそれを満たしていない状態が続いた事でJリーグからの制裁対象になっていました。
この事は存じ上げてはいましたが、noteやTwitterで一切この事に触れていなかったのはご指摘も100%こちらの落ち度です。申し訳ないと共にご指摘頂いた事に感謝しています。
それを踏まえた上で、それがいつになるかはともかく、遅かれ早かれ長居かキンチョウ(現:ヨドコウ桜スタジアム)のどちらかの改修は将来的に避けられない事ではありました。
であれば、この2つの選択肢になった以上、セレッソにとって長居の方を改修する(or大阪市の改修を待つ)理由はなく、必要性のあった上での選択だった…という事になります。要するに見栄えやキャパというよりは、例えばロッカールームとかコンコースとか。必要性としてはそういった内部ハード面の理由が大きいと。
以上が自分が自分で書いたnoteへの補足というか解答というか反論というか……noteで書いた事を「文句を言う側の心理」とすればセレッソサイドの「文句を言われた側の事情」です。あのnoteを見れば、このブログとセットにする事も書いていないし、自分自身でTwitterで追い討ちをかけてしまった事もあって伝わりにくいというか読み返せば「伝わる訳ねぇなコレ」と反省していますが、どちらかと言えば法律・土地・予算上の理由を省みた時に、ここまで言われているのには少し同情的ですし、Twitterに流れてくる情報だけで判断・批判している人もいるでしょう。noteでも書きましたが、セレッソの場合は違いますが、個人的には意図的に「アウェイ魔境」みたいなスタジアムを作りやがるところがあってもそれはそれで面白いと思いますしね。
ただ一方で、現状での計画遂行と募金・寄付金を募るやり方との相性はやっぱり良くない気もしています。クラウドファンディングが返礼品で以ってある種の最終回答とするのに対し、さすがに株式会社ではないので過敏に反応する必要はないとは言えども、それは何かを言われる理由というか付け入る隙にはなってくるのだろうと。加えて言うなれば「将来的にはアウェイに屋根をつける事もお約束する」ではなく「なぜアウェイ側の改修が後回しになったか」を説明した方がここまで論争は大きくならなかったのではないかと。これはアウェイ席問題に理屈の通った理由があるからこそ、です。計画を公表、或いはある程度形になった時点で、理由はともかくアウェイ席の部分を確実に突っ込まれる事は予想出来たはずで、その時に「〜が〜で〜だから現状はこういう形になっています」みたいな事をもっと広く広報するやり方はあったと思います。理由が無かったら説明も出来ないですけど、理由はきちんとあるんですから。
例えばこのページには割と核心的な事が書かれていて、これからの改善目標みたいな部分も書かれています。ですが検索しても出にくいというか、例えば、疑問を持った人が「なぜこのような形になったのか」「これからどうしていくつもりなのか」を調べようとしたとしても、せっかくその答えになりそうな事が書かれている公式ページであるにも関わらずかなり具体的な検索ワードにしない限りヒットしにくかったりする…と。セレッソはJでも上位の人気クラブであり、各種SNSのフォロワー数を始めたとした影響力も強く、そのようなツールの創意工夫にも強みを持つクラブだと思っています。だからこそ、どこにケチが付きそうかの予想は出来て、その上で募金・寄付金でスタジアムを創ろうとする訳で、その疑問の答えも用意できていたからこそ、その辺りの工夫はもう少し方法があったのでは…とはずっと思っていました。実際、桜スタジアムアウェイ問題は調べようとしても、公式よりもセレッソサポーターの方の個人ブログ等の方が色々な検索ワードを試しても上位に出てきて、しかも公式より遥かにわかりやすくかつ詳細に書かれている状態は、その方のブログが素晴らしい出来であると同時に公式としてどうなのか…とも。そういう状況であれば、逆に100%フル批判のブログが上位に来るとか、サジェストがネガティブな単語で溢れるようにもなりますし、その情報が伝わないまま「アウェイに屋根をつける事もお約束する」と言われても「じゃあそこに手を加えるのは第何段階になるのか」「それがいつになるのか」「そもそも本当に次があるのか」と全てを懐疑心で見てしまう部分はやっぱり否めません。
今の時代は「調べたらわかる実情」を「調べなくても流れてくる印象」が上回ってしまう事が多々ある時代で、それが善だとは思わないですけど、その風潮は当分大きく変わらないでしょう。noteやTwitterではこれをセレッソとセレッソ以外との溝と表現しましたが、そういう意味でギャップと表現した方が正しかったのかもしれません。そのギャップは今回の計画では避けられないものだったと同時に説明次第では埋める事も出来たと思うと、段階的改修のこれからの考えやスタンスも含めてもっと伝え方はあったんじゃないかとも思います(勿論それでもケチをつける人はつけると思いますが)。そうすれば募金が集まるかどうかはともかく、少なくとも理解は浸透して批判は今よりだいぶ抑えられていたんじゃないかと。
一応これが前回のnoteの自分なりの最終結論というか、自分で仕掛けたマッチポンプの答えです。
「調べなくても流れてくる印象」に加担するようなツイートをしてしまったのは申し訳なかったと思いますが、自分としてはこれまでの喧喧囂囂とした議論を見て、これは2つの視点で書いておきたいという気持ちがあり、そしてそれを1ページで書くのは無理があると思い今回のような形で書かせて頂きました。