うまい棒が10円から12円に値上げされるそうです。
その金額設定は「うまい棒すら買えねぇわ」的な比喩にも使われるほど市民権を得ていましたが、4月からは12円でございます。
さて、1月21日、それは一つのTwitterに流れた情報から始まりました。
「DAZN値上げのお知らせメールが送られてきた」と。
その時点ではまだメールが送られたのもauユーザーのみで、大手メディアも取り上げていなかった事から怪情報の域を脱してはいませんでしたが、瞬く間に日本のTwitterトレンド1位に躍り出るなど一大事に。そしてその後、DAZNの公式サイトにて価格改定の案内ページがアップされました。
キャリアやプランごとの細かい条件はサイトの方を見て頂くとして、ざっくり言えば月額1925円の利用料が2022年2月22日という語呂合わせの日に3000円に値上げされるとの事。それに応じて年間プラン等も当然値上がりしますので、各Jリーグファンは値段が変わる前にDAZNの年パス買っとけ!という流れになっています。値段自体にそこまで言うつもりは無いのですが、やはり約1.5倍の値上げというのはインパクトは強いですよね。
…という訳で今回は、今回の値上げの背景というか……なぜに今回、このような発表になったのか、このような状況になったのかというところを考えてみたいと思います。
先に暫定として言っておきたいのが、私は記者とかでは一切ないパンピーブロガーですので、別に新情報とか裏事情とかそういうのは一切出てこないので悪しからず…。
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まずそもそも、DAZNの3000円という価格が、或いはこれまでの1925円という価格が適正なのか否かについてはわかりません。よくある芸能ブログみたいな感じになりましたが、こればっかりはわかりませんでした!
…というのも、結局価値観なんて人によって変わる訳ですよ。例えば私であれば各国のサッカーは当然見るし、プロ野球やF1も観る。おそらく、3000円になったとしても元を取れる使い方は出来るタイプなんだと思います。一方で、Jリーグの好きなチームを追う為だけに入ったとか、それこそ日本代表のアジア最終予選目的で加入した人にとっては高いという感覚になっても無理はないでしょうし。だからまぁ、個人的には…この3000円という価格が高いのか安いのかは議論したところで定義しようが無いと。
なので価格の是非については高いとも安いとも言えない気持ちがありますが、値上げ自体には…遅かれ早かれこうなるのは目に見えていたというか、昨今の時代の流れ的にそうなるしかなかった部分はあると思います。
実際、資金繰りが怪しいというほどのレベルでは無いですが、DAZNが減収傾向にある兆候は表れていました。値上げ以前から、最近のDAZNの"変化"には多くの人が気付いていたと思います。
テレビだろうがネットだろうが、番組は制作費がないと番組を作れません。基本的に有料のサブスクリプションであれば月額料金、NHKなら受信料という形でそれを工面しますが、基本的には無料で見られる民放テレビやYouTubeだとどうなるかといえば、その役割は広告(CM)が果たしています。我々は無料でテレビやYouTubeを見ていますが、言い方を変えれば広告を通じて間接的に利用料を払っているような、間接的に課金しているような形式ですね。
逆に言えば、月額料金を直接支払うのであれば広告を見るという間接的な課金をする必要は無くなりますから、NHKにはCMが無いしYouTubeプレミアムでは広告が表示されなくなる。言ってしまえば月額料金を払いながらスキップ出来ない広告を見るのは二重課金みたいな形になりますから、それは有料サブスクリプションサービスにとってはある種の"禁じ手"に近い手法と言えるんですね。かくいう私自身、このブログにはGoogleアドセンスを用いて広告を貼り付けていますが、もしこれが読者の皆様から月額料金を徴収しているようなブログであれば、その禁じ手は極力使いたくない…と考えるでしょう。
その点で言えば、DAZNも当初は広告は試合中継を含むDAZN番組のお知らせ、或いは明治安田生命のように大会を主催する企業の広告が流れるだけで、ハーフタイムには前半や先週のデータであったり、或いは短時間の特集が流れたり、去年であれば「見飽きた」とみんなが口を揃えた名言集が流れたり。ただ、ハーフタイムに民放とあまり変わらないCMが流れるようになって、最近ではDAZN制作の番組ではスキップ出来ないCMすら流れるようになってきました。
「単に金が欲しいのでは?」と言えばそこまでかもしれませんが、それでも基本的に企業としてはこのやり方は極力避けたいはずで、そう考えれば最近のDAZNは「禁じ手か値上げか」の二者択一に迫られていた…とも考えられます。
そしてそうなった要因として大きいのはやはり放映権料の高騰です。
近年、サッカーというスポーツの放映権料は世界的に年々増加しています。イングランドのプレミアリーグが良い例で、プレミアリーグがNBC Sports(アメリカ)と交わした22-23シーズンからの6年契約の放映権料は日本円にして約3085億円。ただでさえ高騰化が叫ばれていた16-17シーズンから21-22シーズンまでの6年契約が1141億円ですから、そこから更に3倍近く膨れ上がったのです。
日本のサッカーファンがこれを一番痛感したのがアジア最終予選やACLの放映権問題でしょう。2018年に中国とスイスの独立会社である「DDMC Fortis」が、2021年以降のAFC主催試合に於ける天文学的な数字での放送権契約を締結しました。その結果、テレビ朝日はアジア最終予選を、日本テレビはACLの放送権を失う事になりました。
AFCが先にとんでもない金額を設定したのか、DDMC Fortisが先に巨額のオファーを提示したのかはわかりませんが…少なくともAFC側からしてみればそれ相応の旨味でも無い限り安い金額で他の社に売る理由は無い訳です。テレ朝の撤退はAFCサイドにとっても少なからずダメージはあったみたいで、その後多少値下げしたみたいですが……それでもテレビ局が出せる金額では無かったと。そこでDAZNがDMCC Fortisほどでは無くとも相当な金額でもってAFCと交渉し、ACLや世代別代表、女子サッカーやフットサルまでの放映権を一括で購入する事で何とか日本国内での最終予選の放送媒体は確保しました(参考サイト)。
最終予選の地上波中継が無くなった事をDAZNの横暴とする声も一部ではありましたが、実情はDAZNがむしろホーム戦の地上波中継だけは守ったと表現した方が正しいのです。一方でDAZNからすれば、彼らは決して非営利団体では無い以上、投資は回収しなければならない立場なので、自らの権利としてアウェイ戦中継の独占権だけは確保したというのが事の顛末でしょう。推測に過ぎませんが、おそらく今回の値上げの背景にはDAZNがAFCとの交渉で結構無理をした部分はあるように思います。勿論値上げに踏み切れたのは、少なくともJリーグファンはDAZNしか選択肢に入れられないという現状もあるのでしょうが、DAZN内のCMが急増した時期も考慮するとそう考えるのが自然なのかなと。
更に言えば、元々放映権料の高騰化が議題に上がる世の中になったタイミングで到来したコロナ禍はこの流れを更に加速させたとも言えます。入場料収入が大きく減少したリーグ・或いはクラブ側、いわゆる巣篭もり需要で更なるコンテンツの充実を迫られた配信サービス側、気軽にスタジアムにも行きにくくなった(或いはチケットが取りにくくなった)事で配信サービスを頼るしか無くなった消費者側……。なんにせよ、供給サイドも消費サイドも配信事業というコンテンツへの依存度が高くなった事でそれぞれがそれぞれに払う対価の相場が必然的に増加した事で三角関係は成立してしまった。そうなると配信ビジネスを取り巻くインフレはコロナ禍で更に加速したと見るべきでしょうし、スポーツに限らず色んなコンテンツで今回のDAZNの値上がりのような事例は増えていくと思います。
一度高騰化した市場の相場が下がる事は基本的に無いでしょう。今、我々がスマホからガラケーに戻せと言われても無理なのと同じで、時代とは後戻りが出来ないような仕組みになっています。上で挙げたような三角関係は誰かが勇気を持って止めない限りは止まらないでしょう。よく言われる「憎しみ(悲しみ)の連鎖を断ち切る勇気」みたいなものです。ただ現実問題として、その連鎖を断ち切る手段は誰かが泣き寝入りするか、誰かが損を一手に被る事しかない。当然ながら私だって出来ることなら低額で楽しめたら一番嬉しいですし「値上げ賛成!」と思ってはいません。ただ、昨今の時代の流れとしてはこうなるべくしてこうなったというか、遅かれ早かれ避けられない事ではあった…とは思っていますし、一概にDAZNを責められる話ではないのかな…とは思います。
それでもまだサッカーは恵まれている方です。サッカーファンはその状況が当たり前になっている節もあるし、その状況を当たり前にしたのは他でもないサッカー界の努力の賜物でもあります。例えば今回の件でも「他のスポーツは見ないからサッカーパックみたいな形で安くしてくれ」という意見があって、それ自体は気持ちもわかるし、DAZN内でも全く検討されていない訳ではないと思います。
一方で、日本のスポーツエンタメでの最大勢力は野球であり、サッカーファンは時として野球と比較した時の不平等を嘆き、まるで自らを被害者のように語る場面が多いですけど、全体で見ればサッカーも「野球ほどではない」というだけであってスポーツエンタメの中で十分優遇されている立場である事を忘れてはいけません。例えばマイナースポーツでは4年に一度のオリンピックが唯一の露出のチャンスになっているところもあれば、サッカーファンや野球ファンが契約するDAZNに組み込んでもらう事で「ついで」の感覚で触れてもらう事に懸かる業界だってある。私自身もそうですが、少なくとも今、まだおじさんとは呼ばれていない世代はサッカーが恵まれるようになった時代に生まれた訳で、視点を変えればまた違う物事の捉え方がある事は頭のどこかには留めておくべきでしょう。
市場規模としてサッカーを優先する事は悪でもなんでもありません。ただ、公共の福祉を理由にDAZNを守銭奴の如く扱って正義を主張するのであればそれはDAZNよりもタチの悪いポジションでしょうし、そこにサッカーの市場規模を理由に置くのであれば、それは決して間違いではないのと同時にAFCともDAZNとも立場は大して変わらないのではないでしょうか。
個人的には旧ロゴの方が好き。
ではでは(´∀`)