RK-3はきだめスタジオブログ

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スタンスの使い分け〜2024明治安田J1リーグ第28節 京都サンガFC vs FC東京 マッチレビュー&試合考察〜

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最近妙に名古屋に行ってる

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビューは2024明治安田J1リーグ第28節、京都サンガFC vs FC東京です。

 

京都サンガFC 30周年企画ブログのまとめページはこちら!随時色々と更新しております。

 

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オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

 

 

「破壊的創造」──夏以降のサンガを一言で表せば、良くも悪くもその一言が一番似合うように思います。

夏を過ぎてからの大躍進は得点も失点も、文字通りその言葉を地で歩むような連戦でした。基本的にサッカーは「殴るけど殴られない」という状況であるべきものですから、その点で言えばゲームの進め方がうまくいかずにまあまあ殴られる隙を見せている事は非常によろしくない。一方で、夏のサンガが殴り勝てている事も事実であり、いくら3トップが強烈だからと言っても、彼らの出力をしっかりと確保できる状況を継続的に作れている事はポジティブに捉えるべきところでしょう。

いずれにせよ、点を取れること、そして勝点を取れることはいつでも何かの拠り所にはなります。取れる時に取ってこそ、守るダメージも抑えられる。今のサンガは良さを存分に出して粗さも隠せていない状況だからこそ、良さを出すことで粗さを多い、そして粗さを補う時間を稼がなければならない。それは90分という試合の単位でも、残り11試合というシーズンの単位でも同じことです。

8月24日……それは京セラの創業者にして日本経済史に於ける偉人であり、そしてこの京都パープルサンガというJクラブを築き上げた男が2年前に天へと旅立ったその日でもあります。今年、彼が作り上げた京都サンガFCは、日本のビジネスの歴史の中で「神様」とまで称された男が夢と情熱、そして愛を注いだチームは30年を迎えました。そんな年に8月24日のゲームが組まれる運命的な巡り合わせ。ここで勝利を遂げる事が未来を繋ぎ、過去の恩に報いることとなります。

両チームスタメンです。

 

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サンガは前節C大阪戦からのスタメン変更は1人のみ。左SBを今日は三竿雄斗ではなく、スタメンとしては第19節鳥栖戦以来となる佐藤響を起用しました。基本的にはここ最近の連勝の流れを維持するスタメンとなっているため前節より復帰した川﨑颯太もベンチに置き、アンカーに福岡慎平、インサイドハーフに平戸太貴と米本拓司を配置した布陣を継続しています。金子大毅は出場停止となっています。

3試合連続無得点という悩ましい状況が続くFC東京は前節東京V戦からはメンバーを2人変えてきました。森重真人が前節に負傷退場した事で岡哲平がスタメンに戻り、右SBには中村帆高を起用しています。古巣対決が期待されている原川力と白井康介はいずれもベンチ外です。

 

 

 

本日の会場は京都府亀岡市サンガスタジアム by Kyoceraです。

 

 

前述の通り、今年はサンガがクラブ創立30周年を迎えました。30周年記念試合と明確に銘打った試合は今のところありませんが、今節のFC東京戦から9月までのホームゲームでは黒を基調とした30周年記念ユニフォームを着用して試合に挑みます。これまでは予約販売のみでしたが、今節からはスタジアムでも店頭販売が実施されていますね。

またこの試合では任天堂のゲームシリーズ「スプラトゥーン3」とのコラボイベントを実施。スプラトゥーン3の体験会やフォトスポットの設置、グッズが当たる抽選会の他、コラボビジュアルの公開やPV上映、そしてキャラクターとサンガのマスコットのPK対決も実施されます。任天堂のスポンサーデーという訳ではありませんが、長年サンガのスポンサーを務めてくださっている任天堂とのコラボイベントは2002年以来22年ぶりとなりました。

 

 

サンガはいきなり攻勢をかけました。FC東京のキックオフで始まったゲームでしたが、ロングボールをカットして全然に速く展開していくと最後は原大智の折り返しをエリアスがシュート。このシュートは野澤大志ブランドンに弾かれましたが、こぼれ球をマルコ・トゥーリオが回収して攻撃を続けてCKを獲得すると、平戸太貴の絶妙な右CKにエリアスが合わせていきなり先制!

サンガは立ち上がりの波状攻撃をそのまま得点に持ち込む形に。

 

 

この日のサンガは、いわゆる「サンガの勝ち筋」とも言えるような形でゲームを進める事ができていました。まずロングボールを相手陣内に入れる事で最終ラインを上げられる、陣形を相手陣内でコンパクトにできる状態を作り、相手にボールを奪われても高い位置からプレスをスタートできる状態にしておく。加えて今日に限らず、最近の試合ではトゥーリオが前線で確実にボールを収めて攻撃の時間を作ってくれるおかげでカウンター一辺倒にならず、中盤に下げて平戸が展開するだとか、福田が良いタイミングでスペースに走り抜けられるような状況を構築できていました。

守備に関しても、基本的にFC東京は縦への推進力と中央での破壊力を持っている訳ですが、これまでならハイライン・ハイプレスに寄りすぎていたところを、今日はWGにある程度ボールを持たせてサイドに追い出していく。スピードを出せない状況を作ったコーナーエリア辺りから奪いに行くという状況に応じて守備のスタンスを変える守備を実践。セットプレー絡みのピンチがいくつかあったとはいえ、サンガは従来の長所と絶好調攻撃陣の躍動に加え、今日は守備の規律を掴みながらほぼサンガにとって理想的なゲームの進め方をしていました。

 

 

 

そして「理想的なゲームの進め方」が「理想の進め方」になった瞬間が36分でした。直前の福岡慎平の強烈なミドルこそGK野澤の好セーブに阻まれるも、直後のCKでまたも平戸のハイパープレースキックに原がドンピシャで合わせて追加点!かつてユース時代はFC東京で将来を嘱望された男が古巣相手の一撃で2-0!

 

 

前半終了間際にもエリアスが好機を迎えたサンガ。そのシュートは決まらなかったものの、前半を理想とも言えるゲーム展開であえて後半に向かいます。

 

 

後半も開始早々から前半の流れを引き継ぐ良い入りを見せたサンガ。早々に獲得したCKから、またも平戸のファンタジアキックからの原のヘッドはGK野澤に阻まれますが、50分には福岡がパスカットからダイレクトで縦パス。エリアスの突破は一度を阻まれるも、こぼれたところを回収したトゥーリオのエンジェルパスにインを抜けた平戸が、散々優しく完璧なクロスで合わせてきた平戸が今度はニアサイドをブチ抜いて3点目!リーグ戦では記念すべきJ1初ゴール!!

 

 

FC東京は後半から長友に代えて投入していた安斎颯馬が13分で東慶悟との負傷交代を強いられるアクシデントも発生する中、エヴェルトン・ガイアーノや小柏剛の投入でなんとか形勢を逆転しようと試みていました。

68分には中村帆高のクロスに合わせたディエゴ・オリヴェイラのシュートがクリアされたこぼれ球を仲川輝人がバイシクルでゴールネットを揺らすもオフサイドによりノーゴール。75分にはガイアーノが左から入れたクロスに高宇洋が頭で合わせますがクロスバーに辺り、こぼれ球も枠を捉えられません。サンガもこの後の俵積田晃太がクロスバーに当てた3つのシーンは不安なシーンではありましたが、5点取りながら3点取られた前節の反省もあり、無理にチャレンジするよりゼロで終わらせに行く意識はよく持てていました。

 

 

 

サンガもゼロに抑えることを最優先にしながら機を見てカウンターを狙う意識は常に持ち続ける…というリードを持つ側としての正しいスタンスを取り続けており、86分には原のカウンターパスに抜けたトゥーリオの折り返しに詰めた途中出場の平賀大空が決定期を迎えますが、相手の帰陣に阻まれて得点には至らず。

アディショナルタイムは基本的にボールキープの姿勢を見せていたサンガでしたが、川﨑颯太がサイドで奪いに来た相手をかわすと川﨑のパスを受けた中野瑠馬のシュートがネットを揺らし、ベンチ総出で大団円!…かと思いましたが、中野のシュートコースに入ってしまった原のハンドを取られてノーゴールに。去年の平賀といい、サンガユース出身にこれは必修科目なのか…。

 

 

 

とはいえ試合はそのまま3-0で終了!

絶好調の攻撃陣、そして前節はゼロで終わらせられなかった反省をきっちり活かし、全てが嫌になるほどの暑さを纏う京都の夏を鮮やかに彩りました!!

 

 

 

素晴らしいゲームでした。間違いなく今季のベストゲームだったと思います。

まず攻撃時と言いますか、立ち上がりの攻勢は曺貴裁体制の京都のストロングポイントがよく出ていた展開でした。高い位置にボールを入れて、そこに合わせて押し上げていく事でプレスのスタート地点を高くし、一人一人のプレスの所要距離を短くする事でチームとして連続してプレスに行けるようにする。その連鎖で敵陣を制圧していくというストロングポイントが出せましたし、中盤の3人を含めた今の攻撃陣が持つクオリティを踏まえれば、ボールを奪った時の攻撃精度も高い。加えてここ数試合に共通するテーマとして、トゥーリオが最前線でボールを収めつつ、ポストプレーというよりもそこからチャンスメイクを担ってくれるんですね。そこで原やエリアスとの連動、中盤を絡めたパスワーク、ましてや前節からは福田も復帰しましたから、タメを作ってサイドを打開するとか…トゥーリオの好調で劇的に増えた選択肢が、福田の復帰で更に拡がった印象です。トゥーリオのところで時間を作れるようになりましたし、そこのスピード調節は平戸、米本、福岡のプレーぶりの影響も大きい。上で書いたように、カウンター一辺倒の攻撃じゃなくなった事は本当に大きいなと。新潟戦こそ上手く行きませんでしたが、同じことを8月以降の試合で継続的にやれている訳ですから、攻撃の精度向上は偶然で片付ける必要もないでしょう。

 

 

そして今節の特筆すべきところは守備意識の向上…向上というよりは解釈変更とでも言うべきでしょうか。

サンガは上述したように、敵陣内での守備はチームの強みとして持っているチームでした。ただ、サンガの場合は長所と短所がわかりやすく表裏一体となっているようなチームで、アタックとステイで言えばずっとアタックの守備をしてしまう嫌いがあった。要は守備の温度感がどの場面もどの時間帯も同じテンションとなっていたんですね。それこそ上で書いた言葉を用いれば「一辺倒」と。それが前々節新潟戦に代表されるように対戦相手との相性でチームのパフォーマンスが大きく左右される要因にもなっていましたし、勝ったとはいえ前節セレッソ戦のような展開を招いていた。今季この順位にいるという事そのものについても、去年一昨年よりもそういう部分がより顕著になったところが大きいでしょう。

ただ、今日のサンガは守備のスタンスの使い分けがすごくしっかりと出来ていました。単純にFC東京が縦への推進力と中央の破壊力を持つチームなので、FC東京対策として考えればそれも自然ではあるのですが、敵陣や相手が苦しい状態でボールを持っている時は積極的にアタックしつつ、自陣や相手が明確なボール保持のフェーズとなった時は一度構えて、特にスペースを与えると脅威の仲川や遠藤からはボールを取る事以上にしっかりとサイドに追い詰め、そこまで待ってからボールを奪いに行く、もう1人の守備者が加勢することを徹底していた。加えて、前半10分過ぎくらいですかね…中村帆高がボールを持った時に、それこそ前節の原のゴールシーンみたいに仲川が斜めにスーッと抜けていこうとする場面があったんですけど、そこで佐藤が無闇にボール奪取に加勢したりラインを上げるのではなく、仲川をケアするように後方に走っていったんですよね。もしあそこで佐藤が中村に食いついていたら、或いはフリーの仲川に気付かなかったら大ピンチだったので影のファインプレーと呼ぶべき場面だった訳ですが、あの佐藤のプレーは「守備の使い分け意識」がチームにしっかり落とし込めていた表れだったのかなと。

 

 

 

総括すると、今日のサンガは元来持ち合わせていた長所をコントロールする意識を付け加える事で、表裏一体の短所を打ち消した上でより長所を効果的にした。そして絶好調の攻撃陣に対し、危なっかしかった守備陣がそれに釣り合うパフォーマンスを見せた。そういう意味でこの試合は間違いなく今季のサンガのベストゲームだったと思います。

サンガとしては、今日の試合の振る舞いを「FC東京対策」で終わらせる事なく、これからの試合で継続的にやれるようにしていかなければなりませんし、それができるようなら残留は固いと言っても差し支えないでしょう。無論、そういう継続性を出せないところがこのクラブの長年の悩ましさではあるのですが……。それだけに、次の鹿島戦でもこれをしっかりとやる。しっかりとやる。それを目指してトレーニングに励んでほしいところです。

 

 

鼻にかさぶた

ではでは(´∀`)