RK-3はきだめスタジオブログ

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1と3の間で〜2025明治安田J1リーグ第33節 京都サンガFC vs 川崎フロンターレ マッチレビュー&試合考察〜

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万博にちょっとだけサンガスタジアム表示されるの知っとるケ

 

どーもこんばんは

 

 

さてさて、本日のマッチレビューは2025明治安田J1リーグ第33節、京都サンガFC vs 川崎フロンターレの一戦です!

 

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引き分けは勝点1を拾うのではなく、勝点2を取り逃がすゲームとなる。そこで取り逃がした者から容赦なく脱落させられていく……9月の3試合で2分1敗という時期を過ごしたサンガは、その2試合が「よく追い付いた」と言えるゲームだっただけに、その事の重さを痛感させられる格好となりました。優勝争いとのプレッシャーとは追うでも追われるでもなく、勝つ事でしか走り続ける事を許されない逼迫感なのだと。それは9月のサンガが獲得した貴重な学びと言えるでしょう。

前節C大阪戦、ここは鹿島に喰らいつけるか、引き離されるか。その分水嶺でした。前の日に上位チームが総じて勝利した事を認識した上でピッチに入った選手達は、難しい試合展開ながらもしっかりと自分の役割、自分の持ち味、自分の仕事を全うし、そして最後に劇的な勝利へと繋げてみせた。プレッシャーは回避するものではなく乗り越えていかなければならない……今日、目の前に立ちはだかる川崎フロンターレという相手はそういう経験を何度も重ねた相手です。

曺貴裁体制が始まった時、時代の王だったのはまさしく川崎フロンターレでした。「いつかフロンターレマリノスを倒せるチームになりたい」…その目標から動き出したチームは、今あの時のフロンターレマリノスが戦っていたステージに辿り着いた。今年もフロンターレから始まった"1"を"18"とし、この幸せな極限状態を走り続けましょう!

両チームスタメンです。

 

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サンガは前節C大阪戦からスタメンを2人変更。前節負傷退場となったエリアスはメンバー外となっており、今日は原大智をセンターにして奥川雅也を右サイドで先発させる形。中盤は今日は中野瑠馬が先発となり、平戸太貴、福岡慎平との3人の組み合わせでスタートするのは初めてとなります。今日はジョアン・ペドロが累積警告による出場停止となった代わりに、ベンチには夏の移籍で獲得した齊藤未月がサンガ加入後初のメンバー入りとなりました。ちなみに曺貴裁監督の指導者デビューは川崎のアカデミーだったり。

川崎は壮絶なドローとなった前節柏戦からはスタメンを3人変更。累積計画で出場停止の山本悠樹のポジションには橘田健人を起用。FWは前節はロマニッチを先発させましたが今日はエリソンに戻しています。そしてGKは山口瑠伊がメンバーを外れており、第5節以来にチョン・ソンリョンが先発起用。安藤駿介も久し振りのベンチ入りとなっています。

 

 

 

本日の会場は京都府亀岡市サンガスタジアム by Kyoceraです。

 

 

auのスポンサーデーとして行われる今日の試合は場外ブースにてスマホの分解体験やガラケーの電源復活等のイベントを実施。他にも今日限定のイベントとしてバックスタンド外のコンコースにて「サンガグルメ街道」と称したスタグル販売が行われます。そして今日は今季最後のナイトゲームという事で、京都出身のDJであるHALFBY氏を招き、一部座席ではペンライト付きチケットも販売しての「サンガ史上最大の特別な演出」を実施するとの事。なお、この試合と第30節清水戦の2試合は試験的にダイナミックプライシングが導入されていました。

勝者には要塞というものがあります。動員好調のホームゲーム、特に前回ホームゲームの町田戦の雰囲気は優勝を目指すチームとしてふさわしい熱量がありました。今日も紫の聖地で、魂が震える瞬間を!

 

 

 

序盤は絶好調男伊藤達哉を中心に川崎が押し込みにくる展開が続きました。伊藤が右サイドのところで幅と深みを取るところから周囲の選手が絡んで中央に入っていく形を狙う川崎に対し、サンガも伊藤のところには須貝英大がついて守備対応自体は出来ていましたが、川崎が前線で圧縮するような隊列で攻めてきた事でなかなか翻しにくい状況に。

8分、一度カウンターの糸口を作ったサンガでしたが、敵陣でボールを奪われるとマルシーニョが右サイドにロングボール。ドリブルで持ち運んだ伊藤がエリソンに出したスルーパスはどうにか一度はスピードを止めたものの、再びボールを受けた伊藤が右脚を振り抜いて先制点。伊藤はこれで8月以降だけで8得点という事に。

 

 

更に悪い事は続くもので、失点に至る一連の流れの中で福岡慎平が脚を痛めて負傷退場。武田将平との緊急交代を余儀なくされ、サンガは前節はエースを、今節は心臓を前半で失う形になってしまいます。

サンガは中盤のところである程度ボールを前進させる事はできていましたが、サンガのボール保持では川崎がコンパクトに固めたブロックを前に3トップのところに当てる、3トップのところでコンビネーションを出すような場面は封じられ、加えてサイドに付けても川崎はそれに合わせて上手くスライドしてきた事で打開できず、逆にサイドからマルシーニョと伊藤でカウンターを仕掛けてくる川崎の戦い方にハメられている感のある時間帯が続いていました。

 

 

 

そんな中で38分でした。

サンガはクロスボールが一度跳ね返されたところに入っていた平戸が得意のテクニカルなループパスを送ると、ポケットのところに走り込んだ奥川がボールを残して折り返し、松田が反応したボールを最後は須貝が押し込んでサンガ先制!町田戦では決定的なシュートやPK獲得など攻撃面でも存在感を見せ始めている須貝はJ1初ゴール!この日初めての決定機に数人が雪崩込む"らしい"攻撃で前半のうちに追いつく事に成功します!

 

 

サンガが同点に追いついてスコアが振り出しに戻ってからも、試合の展開はボールを保持しながら前進の機会を伺うサンガと、基本は構えた状況からサイドからのカウンターで傾れ込む川崎という構図のまま前半終了。1-1で後半へ。

 

 

サンガは後半から奥川を下げて山田楓喜を投入。

後半の入りも基本的には同じ形で、後半最初の好機もエリソンのミドルシュートでしたが、サンガも前半と比べると中盤からの前進に対して3トップが関与できる場面も増えていきました。55分、右サイドで福田心之助のロングスローに対応する守備を見せた川崎を嘲笑うかのように福田がニアのポケットにボールを投げ入れると、走り込んだ平戸がノールックかつワンタッチで折り返したところに松田がダイビングヘッド!ボールの軌道はゴールに向かって転がりますが、バウンドした際にかかったスピンが無情にも軌道を逸らして得点には至らず。

 

 

 

61分には山田のファウルで川崎にFK。絶妙な位置でのFKで三浦颯太が絶妙なキックで狙ってきますが、こちらもGK太田岳志が壁の上を越すボールに手をグンと伸ばしてビッグセーブで阻止!川崎は74分にも決定的な直接FKのシーンを迎えますが枠の右に逸れていきます。

サンガは64分に松田と中野を下げて長沢駿とレオゴメスを投入し、長沢をセンターにして原を左にスライドさせた形に。川崎は74分にマルシーニョとエリソンを下げて家長昭博とロマニッチを投入。ここまでサンガがボールを持って川崎がカウンターを仕掛ける展開が続いていましたが、家長を投入して伊藤を左にしてからはサイドのところを起点にしたポゼッションにシフトチェンジしてサンガを窮地に陥れてきました。82分にはインサイドでボールを持った三浦が家長とのワンツーからGK太田と1対1の決定機を迎えて折り返しますが、ロマニッチには鈴木がなんとか対応して阻止。83分には右サイドからのボールが流れたところに走り込んだ伊藤が狙い澄ましたシュートを放つもどうにか太田がブロックし、川崎の波状攻撃をどうにか耐えていきます。

 

 

 

85分、サンガは平田を下げてグスタボ・バヘット、川崎は伊藤を下げて宮城天を投入。すると88分にはロマニッチが宮本を倒したプレーでこの日2枚目のイエローカード。サンガは終盤戦を数的優位でアディショナルタイムに突入します。

90+2分に、宮本と山田が細かい縦パスで繋ぎ、原がトリッキーなボールをファーサイドに入れると反応した長沢がワンタッチで決定機を迎えますが……シュートは僅かに枠の右へ。ラストチャンスは川崎。橘田の浮き玉のボールを脇坂が巧みなボレーを放ちサンガファンの心臓を凍らせましたが…立ちはだかったのはまたしても太田!

 

 

 

壮絶なラスト20分。死力を尽くした終盤戦のサバイバル。勝利の女神はどちらにも微笑まず、どちらにも転ばず、お互いの目標にとって痛み分けとしか表現しようのないドローに終わりました。

サンガは引き分けではありますが、他会場で神戸が敗れた事で2位に浮上しています。

 

 

 

苦しい試合でしたね。ゲームの流れとしては、後半戦唯一の黒星となった清水戦に近い流れがあったように思います。

前半の川崎の攻撃は、もちろん伊藤のスキルに代表されるようにそれだけで十分脅威でしたが、それ以上に川崎の攻撃のやり方でサンガの強みを奪ったというところが大きかったと思います。まず川崎は立ち上がりからなるべく右サイドの伊藤に付けてそこを起点に展開することでサンガの守備陣を川崎の右サイドに寄せていった。そういう状況が固まってきたところで、今度はスペースが空いた川崎の左サイドをマルシーニョが独走する形になっていきました。サンガのSBの背後を狙う事自体は多くのチームが狙ってくるパターンで、サンガとしてもそのリスクはある程度許容し、中盤がカバーに入れるような状況を作っている。ただ今日の川崎はむしろ右サイドでは背後を狙わなかった事でサンガの守備陣を片方に偏らせて、いつもよりコースが開いたところをマルシーニョに走らせるような形を何度も作ってきました。マルシーニョの快速もあって、いつもより遠い位置からカバーに行かなければならない中盤はフォローしきれないし、マルシーニョに対しては福田が単独で対応せざるを得なくなる状況が増えた…と。

川崎のこの攻撃って、ある意味"福田狙い"のところがあったと思うんですよ。これは「福田なら抜ける」とかそういう意味ではなく、むしろマルシーニョがああいうアタックを何度も仕掛ける事自体が福田の攻め上がりを牽制する事に繋がっていくんですよね。例えば中盤で福岡や武田がボールを持った時、右WGの奥川に入った時に福田が積極的に前に飛び出して攻撃に絡んで行くのが福田どころかサンガのストロングでもある。そこを牽制されてしまった事で中々福田が前に出て行けず、奥川も孤立状態になってしまう時間が増えていた。川崎の攻撃パターンは得点以上に「福田を攻撃から消す」という点で大きな意味を持っていたと思います。

ただでさえこの日のサンガの攻撃は、原大智がサイドに流れた時に前半はエリアスも長沢もいない中で常に松田か奥川と被ってしまう状況が多くエリア内の枚数が足りず、逆に川崎が守備時にはコンパクトなブロックを連動して左右にスライドしていく形を途切れずにやっていた事もあって、前述のように福田が前に出れなかった事からコンビネーションで崩す事もなかなか難しかった。負傷退場した福岡の穴は武田がある程度しっかり埋めてくれていましたが、今日の試合はちょっとそれ以前のところと言いますか、特に前半は構造として川崎に嵌め込まれた試合という印象はあったのかなと。だからこそ前半に、お互いにとってイレギュラー要素の多いクロスを積極的に入れながら一瞬だけ開いた隙に対して一発回答で同点弾を取り切った平戸、奥川、松田、須貝の連動は素晴らしかったですし、特に須貝は福田が封じられていた状況を逆手に取って素晴らしいアクションを起こしてくれたなと。

 

 

 

その点では前半のサンガの攻撃は、福岡を早々に失い、エリアスもトゥーリオもいない状況で原を起点にする事に拘りすぎた節はあり、加えて川崎守備陣のこまめな隊列移動でスピードとスペースを消された事が前半の停滞に繋がっていましたが、後半は鋭いカットインが出来る山田の投入により、前半はオートマチックに動くだけで良かった川崎守備陣の隊列移動にイレギュラーを突きつける事ができたのは大きかった。山田が常に縦と横の二択の選択肢を相手に提示していた事で、川崎の守備ブロックも機械的な動きで良いという状況ではなくなったんですね。少なくとも前半の詰まりをそこである程度解消できた事で川崎もカウンターに繋げるまでの流れの練り直しを余儀なくされましたし、逆にサンガは福田が攻め上がれる時間とスペースを作れるようになった。山田自身の決定機はあまりありませんでしたが、山田の動きと特性は後半に攻勢を取り戻すにあたって重要なポイントでしたし、前半のような原がサイドに流れた時の中央の枚数不足を曺監督も認識していたのか、いつもより早めに長沢を投入する事で確保した。この2点で前半の停滞感はかなり解消されていったのは良かったなと思います。

ただ終盤に関しては、試合を通じてカウンター主体だった川崎が家長の投入を機に家長を完全に基準点として、家長にとにかく右サイドで時間を作らせてから川崎の選手を前に持ってくるようなやり方で陣地回復を成功させた。あそこで川崎がカウンターから一気に家長起点のポゼッションに切り替えてきた事でサンガは相当苦しめられましたし、逆に家長投入だけであの切り替え方が出来た事はひとえに川崎の選手のスキルの高さを物語るものだったなと。そこから再び試合をイーブンに戻すにはロマニッチの退場まで待つ必要があったので、その辺りはDF陣の奮闘と太田の攻守、そしてロマニッチの退場に救われた部分はありました。数的優位という以上に最前線をケアする必要がなくなった訳ですし。

 

 

 

ゲーム内容としては6-4で川崎優位ではありつつも、後半はサンガにも勝ち筋がいくつかありましたし、ドローという結末は内容に対しての結果として妥当だったなと思います。特に苦しい時間に於いても最少失点に抑えた守備陣の粘り。太田のファインセーブ然り、あの状況で見せた"耐える力"は去年前半までの軽さとは全く違うものでしたし、今季は何度も同じことを言っていますが「悪い時間帯なりの振る舞い」がチームとして出来ていること、後半の攻勢や最終盤のオープンな展開のように「その上で出られる隙はちゃんと捉える」と言った辺りはチームとしての成長を感じるものでしたし。

一方で、このドローが優勝争いに於いて相当痛かった事も確かです。順位自体は神戸が敗れた事で2位に浮上しましたが、この後の試合で鹿島が勝利すれば鹿島は一気にカウントダウンに突入する。そのチャンスを鹿島に与えてしまった訳ですから。今のサンガが戦っているステージはこの試合を「よく追いついた」に留めてはいけない。曺監督も試合後の会見で「勝点1を得たのではなく勝点2を落とした」事を強調し、その上で「この悔しさを次に繋げなければならない」と結びましたが、優勝争いの重みを突きつけられるような一分けの苦味は、チームとして肥やしにする事でしか消化されない。内容的には広島だった1-1内容的にはサンガだった町田戦の1-1以上に、妥当なドローだったからこそ痛みや苦味はダイレクトに感じるドローだったように思います。

 

この試合でDAZNの実況を務めた若田部克彦氏は、放送席という場所から何年に渡ってサンガを定点観測してきた1人です。そんな若田部氏が試合後に語った言葉がありました。

 

「去年までは残留争いをしていた京都サンガFC。勝点1を積み上げる戦いから勝点1では物足りない戦いをするようになりました」

 

日々はいつか全て過去になります。

その過去が今日に、明日に、未来にどういう意味をもたらすか。それは優勝争いを走り続けていく中でしか得られない財産なんだと思います。何よりも次勝つ事。ただただそれだけです。

 

 

ちなみに私の万博はあと2回です。

ではでは(´∀`)