こういう大一番を12年間待ってたんだぜ…
どーもこんばんは
さてさて、本日のマッチレビューは明治安田生命J1リーグ第28節、京都サンガFCvsヴィッセル神戸の一戦です!
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一つのクラブでプレーした時、一つのクラブを応援した時……極限までヒリヒリ出来るような、そんなシチュエーションがこれでもかと揃うような試合を、果たして何人の選手が、そしてファンが経験出来るでしょうか。
12年ぶりにJ1に上がったサンガが手にした武器とも言えるサンガスタジアム by Kyocera。そこにヴィッセル神戸というスター集団を迎え、順位は大混戦の残留争いの中、15位京都と17位神戸が勝点差2という壮絶な順位状況。この試合で勝つのか、果たして負けるのは、文字通り今後のサンガ…それどころか来年のサンガがどの位置にいるのかという結果に直結してくるのは言うまでもないでしょう。残留争いに於いて、残留しても降格しても「ここがキーポイントだった」という枕詞が添えられる可能性の高いゲームです。
……そして8月30日、「この人物がいなければ京都サンガは存在しなかった」と断言できる人物、経営の神様・稲盛和夫名誉会長が8月24日に亡くなったと発表されました。
各種メディアで見られた「サンガの父」という表現はまさしく読んで字の如く。それと同時に、稲盛和夫という人間は一人のサンガファンでもありました。彼がサンガに注いだ情熱は強く、これからも血脈として、この先も続いていくこのクラブの概念にに宿り続けていきます。
直接対決、スター集団への挑戦、そしてこのクラブの全てだった傑物へのレクイエム………。サンガという概念を生み出した男が最後に遺したモノは、このクラブとスポンサーの名前が並ぶ日本で唯一のスタジアムでした。彼の最期の舞台で、サンガに関わる全ての人間にとって、一世一代の大一番と言っても過言ではないビッグマッチです。
両チームスタメンです。
サンガは前節清水戦からスタメンを4人変更。前節ではベンチスタートとなった川﨑颯太、松田天馬、豊川雄太がスタメンに復帰。白井康介は右ではなく左SBに入り、右SBには長井一真が第17節鹿島戦以来となる先発入りを果たしました。これまでは武富孝介と松田天馬が同時にスタメンの際は松田が中盤、武富が左WGに入ることが多かったですが、今日は松田が左WG、武富がインサイドハーフでのスタートです。リザーブには前節を欠場したピーター・ウタカが戻ってきた他、新戦力のアラン・カリウスとパウリーニョもベンチに入っています。
ACL参加に伴い、リーグ戦としては3週間の空白が空いた神戸は直近のACL全北戦からは6人、前節にあたる第25節札幌戦からは2人の変更。自然の報道通り大迫勇也とアンドレス・イニエスタが負傷により欠場となり、インサイドハーフには第17節柏戦以来の先発となる郷家友太を起用。センターフォワードには第22節鹿島戦での負傷退場から参列を離れていた武藤嘉紀が復帰しました。また、負傷により長期離脱を余儀なくされていた藤本憲明が第3節広島戦以来となる半年ぶりの復帰を果たしています。
本日の会場は京都府亀岡市、サンガスタジアム by Kyoceraです。
本日はワコールスペシャルデーとして開催。ワコールが運営する宿泊施設の宿泊券や、かつてサンガのユニフォームも手掛けたCW-Xの商品が当たる抽選会も開催。また、2020年に大河ドラマ館が設置されていたテナントではミニ水族館も開催されるとの事で。また、サンガは9月開催のホームゲーム3試合でリミテッドユニフォームを着用して試合に挑みます。サンガが歴史上、限定ユニフォームを着用したのは2019年ホーム最終戦での25周年記念ユニフォームのみですから、これもなかなかレアな体験。
対神戸戦のホームゲームはJ2の2013年以来ですが、実はサンガはホームでのリーグの神戸戦は2008年から現在まで4連勝中です。今季はアウェイでも勝ってますし、サンガの神戸戦は実は相性の良いカード。なんなら、リーグ戦のホームで負けた神戸戦って2003年と金沢開催となった1997年の2回だけですからね。この流れを、はじめてのサンガスタジアムとなる今日もどうにか継続してほしいところです。
サンガの選手達は本日、稲盛和夫名誉会長への喪章を付けて試合に挑むと共に、試合前には黙祷が捧げられます。
本日は現地観戦!久々にサンガスタジアム行ってきました。スポーツ観戦日記は後日更新します。
日本で唯一、クラブの名前とスポンサーの名前が並ぶこの新しい本拠地で…………。
試合はいきなり動きました。1分…いや、記録は1分ですが開始38秒に。
神戸のキックオフで始まった試合でしたが、いきなりサンガは3トップからハイプレスを敢行。神戸がバックパスを選択するしかないように仕向けて、バックパスが回ってきたGK前川黛也がロングボールではなくクリアを選択せざるを得ない状況に追い込みます。右サイドでスローインを獲得すると、長井のスローインを受けた山﨑凌吾がDFを背負いながら巧みにポストプレー。これを拾った武富がエリア内にパスを入れると、中央に入ってきた松田が巧みなボディーコントロールで山川哲史を完全に振り切ってシュート!!サンガいきなり先制!!キャプテン松田の今季初ゴールで、サンガが1分にも満たない時間での得点に成功します。
神戸も反撃。失点直後に酒井高徳が左サイドを攻め上がり、そのクロスを逆サイドの飯野七聖がダイレクトボレー。これは白井がブロックしますが、6分には神戸陣内の左サイドから酒井がスローインを入れて武藤が競り勝ったボールを郷家が拾うと、郷家は持ち出してから右サイドに展開。右サイドで受けた飯野のクロスに最後はアンカーの位置から駆け上がった大崎玲央が頭で合わせましたがシュートは僅かに枠の上へ。
しかし神戸が反撃をしてきた事でいきなりオープンで、ハイテンションと化した試合で次なる一点を得たのはまたしてもサンガでした。サンガは神戸陣内でボールホルダーに対して一人は徹底的にプレスを、そしてもう一人が受け手を、もう一人がスペースをケアし、1対1+2のような守備陣形で神戸のキックミス、パスミスを常に誘発するような形を組んでいました。
9分、汰木康也に対して長井がチェックに入ると、川﨑颯太が縦のスペースを、武田将平が中央のパスコースをケア。汰木が無理に出そうとしたパスは長井が弾き、ここから山﨑・武富・松田の3人が狭いエリアの中でショートカウンター開始。最後は武富が神戸DFの視線を引きつけたサイドと逆の右に抜けた豊川へスルーパスを送れば、豊川もこのお膳立てにきっちり応えるようなシュートをニアに叩き込んでサンガが追加点!まさしく11人が一つの生き物として動いたような連動した守備からサンガは10分にも満たない段階で2点リード!献身性は常に評価されながらも、リーグ戦でのゴールが遠かった豊川にとってはサンガで初のリーグ戦でのゴールに。
2点をリードできた余裕もあって、少しサンガも立ち上がりほどのハイテンションからは少しペースを緩めて陣形を組み始めます。それもあって神戸はここから、まるでパスの出しどころが無かった立ち上がりから状況から少し自陣で落ち着けるようになった事で攻撃の回数は増えていきました。
17分には郷家の右からのクロスに汰木がトラップからシュートに持ち込もうとしますが井上黎生人がブロック。22分には酒井のグラウンダーのシュートに飛び込んだ郷家のシュートはGK上福元直人の好セーブで立て続けに阻止。33分には汰木が個人技で打開して決定機を迎えますがシュートはサイドネットに阻まれます。
ただ、神戸の攻撃はこの頃になるとほぼほぼサイドアタック偏重、それも酒井と飯野で何とかクロスまで持っていくか汰木の個人技でどうにかする事しか選択肢が無くなっており、サンガからすればある程度中を固めていればOKみたいなシンプルな形になってきたので、白井を右WB、松田を左WBにして武田と川﨑をWボランチに、長井を3バックに組み込んだ3-4-2-1にシフトして対応します。
サンガはカウンター時には山﨑・豊川・武富の3人がポジションチェンジを繰り返しながら、豊川と武富が山﨑のポストプレーをフォローする役割を担う事で連続攻撃を生み出していました。ほぼほぼ完璧に近い出来となった前半。3点目はならずとも、2点リードで後半へ。
3バック体制になった事で後半からサンガは長井を下げて本多勇喜を投入。対する神戸は郷家を下げて佐々木大樹を投入します。
しかし後半開始早々にサンガに大ピンチが。サンガのキックオフでボールをバックラインに戻すと井上のフリックから上福元がロングボールを蹴ろうとしますが、これを文字通りファーストプレーとなった佐々木がブロック。ゴールは無人状態で転がるボールに対して上福元が佐々木を追う形になりましたが、佐々木の狙い澄ましたシュートは何かが宿ったかのようにポストに弾かれ最大のピンチを回避。58分には佐々木が右から川﨑をかわしてドリブルで中に切り込むと右に抜けた武藤へスルーパス。武藤の折り返しに突っ込んだ汰木のシュートも枠を外れ、サンガは絶体絶命のピンチから2度逃れられる結果に。
するとその直後でした。汰木のシュートが外れたリスタートとなるゴールキックを山﨑が競ると、ルーズボールを山川と小林友希が共に処理しきれず。そして小林と上手く入れ替わる形で抜け出した豊川を小林が後ろから倒した事でサンガはフリーキックを獲得し、小林には一発退場。豊川の蹴ったFKこそ枠の上に逸れていきましたが、サンガは残り30分ほどを数的優位で戦える事になります。
一人少なくなった神戸は山川をCB、飯野を右SB、佐々木を右MFに配置した4-4-1のシステムにする事で選手交代を行わずに対応。67分には汰木の右からのFKをサンガが弾いたクリアボールを飯野がダイレクトで合わせ、井上がブロックしたボールがあわやゴールになりかけましたが…これも僅かに枠を逸れていきます。
ただ、数的不利も影響しているのでしょうが、前半と同じサイド攻撃を繰り返すばかりか、サンガ以上に2点を追わなければならない立場の神戸の方がどんどんセーフティーファーストになっていって大崎や山口が前に出てこれず、中に入れられたところで詰めてくるのも武藤しかいないのでサンガからすれば更に守りやすい状況に。
神戸は72分に汰木を下げて小田裕太郎、85分に武藤を下げて藤本を投入しましたが、状況は好転するどころか、むしろ汰木というストロングを失っただけ…というような状態に。サンガは80分に脚を攣った川﨑を下げて福岡慎平を入れた以外は、カウンターの際に推進力を発揮できる木村勇大、そして前でボールを収められるウタカに交代カードを費やし、一度のカウンターで決定機か、もしくは前線で時間を作れるような形に持っていこうとしました。
86分にはハーフェーライン付近でボールを収めた木村が独力でマークを剥がし、ウタカとのワンツーで抜け出して決定機。シュートはポストに嫌われたものの、終盤はむしろ前線でのプレー時間を多く作れる形となって試合終了。順位的にも感情的にも、今季最も重要な意味を持つ試合を完璧な展開で制しました!!
端的に言えば、おそらく今日の試合は曺貴裁サンガにとって「やりたいこと全部出せた」みたいな試合でした。試合後のインタビューなんかを読めば、こういうヒリヒリするような順位表としてのシチュエーションに、稲盛会長の事があり、曺監督や岡本剛人通訳からチームをモチベートするようなスピーチがあった事は多く語られていますが、ただただハイテンションになるだけじゃなく、そこに理屈と機能性が付いてきていました。それは昨季からやってきた事の基本軸は同じな訳で、昂るモチベーションを上手く足し算として組み込めたところはあると思います。
開始10分に2点を取れたのは偶然の産物ではないでしょうし、2点目はまさしくサンガがずっとやってきた形。その上で、豊川・武富・山﨑の3人の流動性は抜群にハマりましたし、特に潰れ役を担いながら確実に豊川や武富に繋いでみせた山﨑の働きは凄まじかった。"ウタカいない時問題"解決の糸口にもなるような試合だったのは言い過ぎじゃないはずです。ましてや、早い時間に2点を取れた事で、2-0になってからは少しペースを緩めつつ、相手の出方を落ち着いて見ながら体力を消費しすぎない戦い方にシフトする事も出来た。神戸の出方を見て3バックにシフトして対応したのはまさにその良い例で。退場のシーンもそういう積み重ねで生まれた訳で、ゲームプランとしては完璧としか言えない試合でした。
逆に神戸に関しては、もちろん数的不利が及ぼした影響はあったでしょうし、後半開始早々の決定機2つのうちのどちらかを決めていれば違った未来はあったかもしれませんが……あの攻撃で、それもサンガにしっかり対応された上で点を取ろうと思えば、それこそエリア内に暴力的なパワーを持つ選手を複数置く必要がある訳で。にも関わらず、あのやり方しか出来なかったのは……試合全体に於ける神戸のスカスカ感と単調感は、正直サンガを応援する立場で試合を見ても「いや、ACLの時もっと上手くやってたやん…」と思わざるを得ませんでした。もちろん怪我人とか、開始9分で2点を取られる事態に至った事もあるのは間違いないんですけど、「10人なったから負けた」と言うには無理がある試合だったとは思います。
サンガにとって、この試合の意味は唯一無二で、クラブ史の中でも本当に特別な試合でしたし、関係者はもちろん、スタジアムに足を運んだサンガファンもみんなそれを意識していたと思います。
ここまでのマッチレビューではサンガを称賛して、神戸を批判気味な感じで書いたとはいえ、後半ド頭の佐々木のシュートが決まっていたら結果はわからなかったと思うんですよ。あの一発はこの試合の運命を左右したシーンでした。あまり非科学的なことでこのレビューを締めるのもどうかな…とは思いましたが、あの場面だけは……世間では経営の神様だけど、我々にとってはサンガというクラブの父であり、そして一人の偉大なるサンガサポーターによる、京都サンガというクラブへの最後のアシストだった……と思っておきます。
稲盛さん、やったよ!!!!!
【うれしはずかしじゅんいひょうのコーナー】
明治安田生命J1リーグ第28節
1位 サンフレッチェ広島(50)
2位 横浜F・マリノス(49)※3
3位 川崎フロンターレ(49)※2
4位 鹿島アントラーズ(45)
5位 柏レイソル(44)
6位 セレッソ大阪(41)※2
7位 サガン鳥栖(40)
8位 FC東京(39)※2
9位 浦和レッズ(36)※2
10位 名古屋グランパス(36)※1
11位 清水エスパルス(31)
12位 北海道コンサドーレ札幌(31)※1
13位 京都サンガFC(29)※2
14位 湘南ベルマーレ(29)※2
15位 アビスパ福岡(28)
16位 ガンバ大阪(28)
17位 ヴィッセル神戸(24)※2
18位 ジュビロ磐田(23)※1
※未消化試合数
ACL組の横浜FM・浦和・神戸が戻ってきた第28節は全体的にかなりカオスというか、まあ恐ろしい週になりました。
残留を争う札幌と湘南は、いずれもホームで上位のC大阪、川崎相手にアディショナルタイムでの逆転勝利。最下位の磐田も上位を走る柏相手に2点ビハインドから追い付き、浦和は鹿島、とFC東京は首位の横浜FMと、優勝を争うチーム相手に2点差からの同点を達成しています。優勝争える位置にいる上位6チームが軒並み勝点を落とした中で、唯一好調・清水相手に2-0で勝利した広島が、試合数が横浜FMや川崎より多いので暫定ではありますが、遂に待望の首位に立つ結果となりました。
残留争いでは15位京都を勝点差2で追う神戸の直接対決が注目されましたが、開始9分までに2点を叩き出した京都が2-0で勝利して13位に浮上。上位相手に劇的勝利を収めた札幌と湘南も順位を上げた反面、中位の鳥栖・名古屋にホームで敗れたG大阪と福岡は同勝点で順位を落とし、得失点差でG大阪が再びプレーオフ圏へ。また、ここのところ好調だった11位清水も、今日は自分達が敗れた上で下位チームが勝点を積み上げた事で、16位G大阪との勝点差が再び3に縮まっています。
ミラノダービーの日付忘れてた
ではでは(´∀`)