G・BLUE〜ブログとは名ばかりのものではありますが...ブログ。〜

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【あれは本当に三浦のミスだったのか?】J1第8節 京都サンガFC vs ガンバ大阪 パトリックのゴールの奥深さを徹底考察〜三浦弦太のボールロストとサンガのビルドアップを殺すプレス〜

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目に見えるものが真実とは限らない。何が本当で、何が嘘か。

 

ベートーベンは本当に耳が聞こえなかったのか。

 

オズワルドはケネディを殺したのか。

 

アポロは月へ行ったのか。

 

ネタラヴィに本当にパスは通せなかったのか。

 

クリアやバックパスはできなかったのか。

 

結局三浦弦太のミスなのか。

 

コンフィデンスマンの世界へようこそ。

 

 

 

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どーもこんばんは

 

はい、ふざけました。

ふざけましたがブログは真面目に書きます。

先日行われました明治安田生命J1リーグ第8節、京都サンガFCvsの試合。私にとっては好きなチーム同士の試合だという事で「好きなチームダービー」だの「ワイクラシコ」だの言ったりしていたのですが、試合は2-1でサンガが勝利。激戦でした。

 

 

現地行ってきましたが面白かったですねぇ…。

サンガが自分達のスタイルで試合を制圧しつつ、ガンバもそれを如何にして掻い潜るかの方策を示してみせた。その上でサンガがさらにそれに対応するという非常に見応えのある90分でした。

その辺両者の狙いや試合展開の考察なるものはマッチレビューに書いたんですけれども

 

 

この試合の決勝点…パトリックが古巣・ガンバ大阪から決めたゴールシーンですね。

このゴール、まあ結論としては三浦弦太のミスである事には確かに間違いないんですよ。それは否定しようがない。三浦のミスである事は言うまでもなく事実です。

ただ、一応私はサンガファンでもあり、ガンバファンでもある立場として、いわばこの試合はどちらにも肩入れする立場で試合を見ていたんですよ。いわば両視点できというか。それで言うと…ガンバ視点としては、これを単に三浦個人の凡ミスで片付けるべきなのか?というところに疑問を感じていて、一方サンガ視点だと、相手選手のイージーミスを突いたラッキーゴール…ガンバの自滅によりもたらされたラッキーな決勝点という形で落ち着いてしまうのはちょっと納得いかない部分があるんですよね。

 

 

 

なので今回は、82分のパトリックのゴール…テーマはふざけた冒頭の文章そのままですね。「結局あれは三浦弦太のミスだったのか?」とでもいいましょうか、或いはなぜあのような得点に至ったのか…を考えていきたいと思います。今回は自分で書いたマッチプレビューマッチレビューからも文章を引用するというなかなかイタイ事もしますが、説明を円滑に進める為…という事でご容赦ください。

 

そんなの読んでる時間ねえわ!という方はTwitterが実質要約版みたいな感じなのでそちらを。

 

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

 

 

ではまずは件のゴールシーンから。

 

 

まあ、上で書いたように三浦のミスと言えば三浦のミスなんですよ。

ただ、このゴールにはこのシーンでの「サンガの徹底して連動した守備」「ガンバの構築段階ゆえのポゼッション未熟さ」「ここに至るまでの試合展開」という3つの要素が絡んでいて、多分第三者視点だとしても単に三浦のイージーミスでくくるには勿体ない…これ結構味わい深い得点だぞという側面があるんですよね。なんならこのシーンに限らず、伏線みたいなものはこの前からずっとあった訳で。

という訳でまずはここに至るまでの試合展開から振り返っていきましょうと。このゴールシーンそのものについて語るのはもうしばしお待ちください…。

 

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試合前に書いたマッチプレビューで、私はサンガがガンバ相手に優位に試合を運ぶ為に必要な事としてこう書いたんですね。

 

ポイントは全て、ガンバのDFラインをどこまで押し下げることが出来るか。ハイプレス・ハイラインを徹底して敢行できるかどうかが全てで、序盤からそこを制圧することが全ての鍵になってきます。ガンバのビルドアップも少しずつ形になってきたので、プレスを一枚剥がされた時のリスクというものもありますが……むしろサンガの場合はスタートからリスクを負えるかどうかで結構決まる部分はあるのかなと。

(中略)

そういう意識を持った上で、もちろんボールホルダーへのプレスがあってこそですが、より大事になってくるのはガンバの受け手へのコースを如何に消すプレスの動きが出来るかどうか。中盤を含めたチーム全体がプレス時に押し上げる動きはサンガも元々得意ではありますから、ボールを奪うことよりも逃げ道を奪っていくような連動したプレスはポイントでしょう。

 

 

前半というか序盤はサンガがほぼそういう展開で試合を優位に持ち込んだんですよ。特にガンバの攻守のキーマンであるネタラヴィをゲームから消す事でガンバを徹底的に押し下げていった。序盤の主導権は明らかにサンガが握っていた訳ですね。

 

 

 

で、それに対してガンバも前半の中頃から上手く対応し始めたんです。その辺りはマッチレビューに長々と書いたので詳しくはそちらを読んで頂きたいのですが、お互いのシステムが4-1-2-3である中で、サンガのインサイドハーフがガンバのアンカーであるネタラヴィを徹底的にケアしてくる状況を上手く使おうと。ガンバは両WG・両SBがサイドに張った位置を取る事で、今度はサンガのアンカーを務める川﨑颯太が一人で広大なスペースをケアしなければならない状態を作り、そこをガンバのインサイドハーフである石毛秀樹とダワンが激しいアップダウンを何度も何度も繰り返す…それでサンガのギャップを突く事で形勢を五分に戻した…という前半の背景があったんですね。ガンバが対応に成功してからは試合自体がオープンになってきて、後半まで「サンガの時間」「ガンバの時間」を繰り返すようになっていきました。

 

ところが、69分にサンガが荒木大吾とイヨハ理ヘンリーの2人を投入し、システムを4-1-2-3から3-4-2-1にシフトしたんですね。

 

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この試合は基本的に、サンガのやり方に対してガンバがサンガの立ち位置を踏まえてやり方をシフトした事で進んだ…という背景がありました。要はガンバはサンガの逆三角形の中盤を利用した事で形勢を立て直していたんですけど、サンガが3バックに変えた事以上に中盤の形を並列する形のWボランチに変えてきた事でガンバが狙っていたギャップを埋められる形になってしまったと。

サンガが途中で3バックにシフトするのはほぼ毎試合やっている進め方なので、必ずしもガンバ対策だとかガンバのやり方を踏まえてそうしたとは言えないですが、事実としてここからガンバは前半の序盤と同じで自陣内をサンガに制圧される形になってしまったんですね。展開はより一層強度が求められる展開となってしまい…ここからのガンバはチャンスを作るには目の前のDFを個人で剥がすか、宇佐美貴史が抜けかけたシーンのようにサンガのサイドを長いボールで狙う必要がありました。この時点でガンバはサンガに詰められる→押し下げられる→前の選手が後ろ向きで降りてくる→そこでサンガのプレスとぶつかるみたいな連鎖を繰り返し始めていました。要はこの試合のトリガーは、前半の展開を踏まえた上でのサンガのシステムというか、並びの変更にあったように思います。

 

さぁ、お待たせしました。件のシーンです。

 

 

説明しやすくする為に静止画を使いますが、静止画だと印象変わることもあるので動画は見ながら読んでもらえると。

 

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三浦はこの時点でネタラヴィへのパスを第一の選択肢として持っていたはずなんですよね。

ただ動画を見るとすごくわかりやすいんですけど、三浦がそういうモーションを取ったと同時にそれを察したパトリックが明確にギアを入れてネタラヴィのコースを切ったんですよ。それと同時に、画面右下にいるパウリーニョは元々ネタラヴィのマークに付いていたところからパトリックのタイミングに合わせて三浦をケアしつつネタラヴィも見れる位置に行った。三浦はネタラヴィにこの時点でパスを出す選択肢もあったでしょうけど、このパウリーニョの位置がなかなか絶妙で…三浦にアタックすることも出来るし、パスが出たタイミングでパスを切れる可能性もある。なんなら、この時点でのパウリーニョはまだネタラヴィにもアプローチに行ける段階でした。

ましてやこの時のネタラヴィは体勢を整えている段階で、ここに至るまでの場面でそういう状況でボールを受けた選手がことごとくサンガのプレスに遭ったここ数分の流れも脳裏にあったかもしれません。

 

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で、このタイミングでネタラヴィが良い体制になって、実際に三浦もこのタイミングでネタラヴィに出そうと試みたんですけど、既にパトリックがネタラヴィへのコースを切っており、パウリーニョが三浦にプレッシャーをかけている。そしてパトリックもパウリーニョも、いざこのコースにパスが出たらパスカット出来るかもしれない状況なんですよね。更に言えば、ネタラヴィに通ったとしてもネタラヴィの背後からサンガの松田天馬がプレス体勢に入っちゃってると。ネタラヴィのキープ力なら大丈夫じゃない?と思っても、仮にもし松田にボールを奪われるならこの段階で奪われるよりもおそらく遥かにヤバい事態に陥ったでしょうし。

…で、これ結構SNSでも議論になってたんですけど、この時ネタラヴィの前にスペースがあって、ネタラヴィもそこを要求しているように見えるんですよ。ただ…


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画面では切れてるんですけど、この黄色い矢印の辺りに川﨑颯太と福岡慎平がスタンバイしてたんですよね。ここでスルーパスをネタラヴィに出すと、この2つの矢印の上の方にいた福岡に弾かれる可能性が高い。だからと言ってスペースの手前側に出せば、そもそもパウリーニョやパトリックに切られる可能性も高かった。この時点でネタラヴィに出すという選択肢は事実上なくなってしまっていたように思います。

となると、三浦は別の選択肢を探さなければならない、と。じゃあどこに出せるのか。

 

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ネタラヴィが無くなった以上、受け手になり得るのは画面右下の山本理仁と画面下に頭だけ映っている半田陸の二択です。ただ、山本に出せば確実にパウリーニョにやられるでしょうし、半田に出せば荒木に詰められて同じ事を繰り返すでしょうし。

結果論で言えば確かにここで半田に出して良かったとは思います。おそらく荒木に取られた可能性が高いですが、取られたところでせいぜいサイド攻撃だったでしょうし。ただ「この先の結末を知らない状態」で考えれば、この時間帯のガンバは後ろ向きにボールを受けた選手がことごとくサンガに潰されて2次攻撃を喰らって…の連鎖を繰り返していたので、ガンバの守備陣がその繰り返しにこの時点でかなり疲弊していた可能性もある。それを考えると三浦からすれば、ここで半田に出して同じ事を繰り返すくらいなら、もう少し粘って79分のアラーノが宇佐美に出したようなロングパスを狙えるタイミングを探すか、パウリーニョを剥がしてサンガのマークを一つずつズラす二択になっていたように思います。少なくともそれは、今季ガンバが色々苦しみながらトライしている事との整合性は取れる意識ではありますし、こんなこと言うのもアレですけど、じゃあ完全にラインアウト目的のクリアをしたらそれはそれで批判されたでしょうし…。

 

 

 

で、もう一つの選択肢としてあるのが「じゃあGK谷にバックパスすれば良かったんじゃない?」というところなんですけど…多分それだと三浦のミスにはならないけれど、結果は一番最悪のパターンになっていた可能性が高いんですよね。

 

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三浦が谷にボールを出したと仮定すると(青線)、この日のサンガは「受け手へのプレス」を徹底していましたから、三浦にはパウリーニョ、画面上部のクォン・ギョンウォンには松田、ネタラヴィと山本にはそれぞれ画面外の福岡と川﨑が受け手を潰してパスコースを殺す事が出来てしまう。じゃあクリアしようにも、谷が右に持とうが左に持とうがパトリックはプレスに行けちゃう。谷が三浦同様にパスコースを探して詰まればパトリックは奪い切れるでしょうし、谷がクリアしようとしてもパトリックの身体のどこかに当てられる可能性が高い…三浦の時点で、谷へのバックパスで状況を回避する事は結構ミッションインポッシブル状態になっていました。それであれば三浦としては、谷のところで取られるよりはまだ自分のところで取られた方が自分でボールを取り返せるかもしれないし、クォン・ギョンウォンやネタラヴィのカバーに期待できるかもしれない…と考えた可能性はあります。

ただ、ここまでものの見事にサンガにパスコースを消されてしまった以上、この時の三浦の脳内は少なからず「やばい、詰んだ」と思っていたでしょうさ、それこそもう「あっ、これ詰んだわ」「この状況から入れる保険がありますか?」状態だったんじゃなかろうかと。

 

 

 

何が言いたいかって、このプレーは三浦のミスもそうですし、ガンバの開発段階のポゼッションスタイルの拙さがもたらす受け手の粗だったり、トライしようとする強い意識の副作用だったりするんですけど、この日のサンガのプレスのかけ方は「ガンバの自滅」で済ますには納得がいかないほどに素晴らしかったんですよ。このプレーは三浦とガンバのミスではありますが、自滅のミスというよりはサンガが誘発したミスだと考えています。

結局、このプレーに象徴されるように、この日のサンガはリスクを負って思いっきりプレスをかけていましたし、リスクを担保するようにこれをチーム全体で連動して敢行することができていたんです。それもネタラヴィ対策もその一つなんですけど、闇雲にボールホルダーからボールを奪おうとするのではなく、まずは徹底して受け手を潰す事でボールホルダーを四面楚歌状態に追い込むプレスを続けていたんですよね。いわばボールを奪うプレスではなくビルドアップを殺すプレスだった訳です。

 

 

以前のブログ(上のリンク)にも書いたんですけど、曺貴裁監督体制でのサンガのサッカーって、インテンシティーを高くハイライン・ハイプレスを徹底する事で偶発的に生じるエラーやコンビネーションを活かすというか、いわば「偶然が発生する可能性を必然的に高められるサッカー」をチームとして徹底して狙いを持ってやっていて、それが曺監督が口にしていた「秩序あるカオス」という戦術指針に繋がってくると思うんです。

で、このゴールをこうやって振り返ると既視感あるなぁ…って思ったのが、記憶に新しいカタールW杯の日本vsスペイン戦で、堂安律が決めた同点ゴールに至るまでの流れなんですよ。

 

 

詳しくは上記のブログを読んで頂きたいのですが、別にこの2つのゴールは似てるシーンではないんですよ。ただ、この2つのゴールに共通している事は「相手のパスコースを徹底的に潰す事で選択肢を一つずつ殺していった」というところなんです。その連鎖の果てにボールホルダーを詰み状態に追いやっていった。そのターゲットの定め方が既視感だったのかなと。

なのでこのゴールは単に三浦のミスと自滅として捉えるには勿体ないんですよ。それで括られると悔しいくらいにサンガのプレスの連携は見事でしたし、逆にガンバは今のサッカーを勝てるサッカーにする為には、そういう受け手をターゲットにされた時にボールホルダーは何を選択すればいいのか、受け手はどうリアクションすればいいのかをもっと詰める必要がある。少なくともこのミスはトライの意思は感じるプレーでもあった訳ですから。

三浦は三浦で批判されて仕方ないプレーだった事は事実で、不要論なんかも唱えられている始末ですけど…正直、三浦クラスってなかなか出てこないですよ。あのクラスを育てる事はかなり難しいし、このクラスを他所から獲得するのもかなり難しい。まだまだ三浦はこのクラブのDFリーダーであり続けるでしょうし、むしろそうあるべきだと思っています。だからここから三浦がまた奮起する事にも期待したいですし、ルヴァンはともかく次のリーグ戦ではまたCBの位置にしっかり居てほしいと思っています。

 

 

 

色んな意味で、このゴールは表面で捉えるよりも奥深いゴールだったぞという事を書きたくてこのブログを更新しました。以上!

 

 

パトリック古巣から点取りすぎじゃね問題

ではでは(´∀`)