笛「ピッ、ピッ、ピゥィーッ」
実況「試合終了!!○○!!悲願のJ1昇格です!!」
…おめでとうございます。
J2もいよいよ最終節でございます。
今年は町田が既にJ1昇格とJ2優勝を決めました。残る自動昇格枠は一つ。清水か、磐田か、ヴェルディか。Jリーグ30周年の今年、皮肉にもその昇格レースはJリーグの歴史を牽引してきた名門が争う事となりました。時の流れでしょうか。30年とは時代を周回させますね。いずれにせよ11月12日の15:00頃には、復活を期すオレンジとサックスブルーと深緑の名門のどれかが歓喜の雄叫びと涙の咆哮を木霊させる事になります。
…しかし!
サッカーというスポーツにはいつだって「対戦相手」なるものが存在します。
歓喜の笛が鳴った瞬間、その歓喜の反対側にいるチームはその咆哮をただただ遠巻きに浴びることしか出来ません。メインスタンドを向く日本で一番熱くなる場所がそこにある時、反対側のチームは秋が冬に変わる頃、厚手のコートを纏った肩をちょっと内側に寄せてカイロを握りしめながらそれを遠巻きに眺める訳です。しかもホーム最終戦セレモニーを待つチームなら帰れない。「私は今何を見せられているんだ」と思いながら白い息を手で叩き割るような拍手を贈るその佇まいはもはやプロ。そう、その佇まいはまさしくプロの昇格見届け人。いや、彼らはJ1に上がるわけですから、ある種の送り人やもしれません。
…という訳で今回は、J2リーグが誕生した1999年から今日に至るまで、じゃあどのチームが最もプロの昇格見届け人なのか。どのチームが最も昇格を見届けてきたのか。どのチームが送り出してきちまったのか。如何に、如何にプロなのかをこの機会に調べてみました。もちろん昇格はJ3→J2もありますので、それを含めて絶対的、匠の送り人を決めていこうやんけと。
という訳で今回は最多昇格ではなく、最も多く昇格が決まった試合の対戦相手になってしまったチームをランキング形式で発表していきます!
J1プロの優勝見届け選手権はこちらから!
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J1プロの降格介錯人選手権はこちらから!
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Jリーグ30周年記念特集はこちらから!
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オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。
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【★ルール】
・対象はJ2及びJ3リーグ公式戦に限りますので、最初から昇格決定戦として行われる昇格プレーオフや入れ替え戦は含みません。
・試合終了時ではなく、試合終了から数時間後に昇格が決まったケースは含みません(例:2010年の福岡、2013年のG大阪など)
ではまずは昇格見届け回数1回のチームを見ていきましょう。
【17位】
《1回》
セレッソ大阪(2007年東京V)
FC東京(2011年札幌)
アビスパ福岡(2014年松本)
FC琉球(2014年金沢)
ツエーゲン金沢(2016年札幌)
ファジアーノ岡山(2017年湘南)
モンテディオ山形(2018年大分)
福島ユナイテッドFC(2019年群馬)
ガンバ大阪U-23(2020年秋田)
FC今治(2020年相模原)
ジェフユナイテッド千葉(2021年京都)
ベガルタ仙台(2022年新潟)
鹿児島ユナイテッドFC(2022年いわき)
AC長野パルセイロ(2022年藤枝)
まずはざっとこんな感じです。
FC東京は自分達がJ2優勝を決めた立場でのこの結果だったこともあって若干高みの見物的な雰囲気はありますね。ポイントが高いのは山形でしょうか。超大混戦となった2018年のJ2最終節、昇格の懸かった大分にアディショナルタイムの劇的同点弾で見送れないかもしれない危機に瀕してから見事にに他会場の結果で大分の見送り成功という。金沢の場合は昇格の懸かった札幌vs残留の懸かった金沢という構図で、双方の利害関係から日本ポーランド現象が起こったのも記憶に新しいですね。栃木は今年、磐田の最終節の相手になっているので1つ増える可能性があります。
さて、あれだけJ2にいる千葉が1回しか昇格チームを見送った事がないのは意地というか怨念も感じますね。「ァテメえ、フクアリで昇格決めようってかこのやろう」的な。にも関わらずその唯一の1回がよりもよってかつて永遠を誓い合った京都だったのはこれまた如何に。おう千葉よ、永遠なんか存在せんぞ。がんばれプレーオフ。
【9位】
《2回》
京都サンガFC(2001年仙台,2014年湘南)
FC岐阜(2010年柏,2021年熊本)
FC町田ゼルビア(2012年湘南,2019年柏)
大分トリニータ(2015年大宮,2015年磐田)
カマタマーレ讃岐(2017年長崎,2019年北九州)
2001年の京都は前述のFC東京と同じでやや高みの見物。ただこれがJ2史に残る昇格劇で、2014年は目の前で昇格を決めた監督が後に京都をJ1に引っ張り上げた訳でポイントは多いですね。
回数こそ2回ですが、それが同じ年、しかも2年連続、それも歴史上稀に見る壮絶な見届け方をしたのが2015年の大分。彼らはJ2残留を争う中で第41節で大宮、最終節で磐田の昇格を見届け、それもどちらも終了間際の失点で劇的昇格をアシストしてしまい、磐田戦に至っては降格に繋がる入れ替え戦出場が決まってしまう事態に。まるで結婚届の証人欄を血判で押すかのような出血覚悟の見送り姿勢はもう涙なしでは語れない…。
【4位】
《3回》
サガン鳥栖(1999年川崎F,2000年浦和,2003年広島)
大宮アルディージャ(2002年大分,2003年新潟,2020年徳島)
徳島ヴォルティス(2005年福岡,2016年清水,2018年松本)
ガイナーレ鳥取(2011年FC東京,2015年山口,2016年大分)
アスルクラロ沼津(2017年栃木,2018年鹿児島,2021年岩手)
3回で並ぶ3チームは徳島以外は全部2年連続のお見送りを経験していらっしゃる人たちですね。特に1999年の川崎は同年から開幕したJ2で初めてJ1昇格を達成したチームですから、必然的に最初にお見送りをしたチームという事になる訳です。しかもその次の年が今でも割と擦られる浦和の劇的昇格。しかもあろう事か鳥栖の場合は2年連続Vゴールでの昇格決定を見届けるという見届け人を通り越してもはや演出家っぷりよ。蜷川幸雄も嫉妬するんちゃうかこれ。
擦られるといえば、鳥取が見届けた山口の昇格もJ3史に残る昇格劇として擦られていますね。大宮は今年、東京Vの最終節の相手になっているので1つ増える可能性があります。
さて、いよいよ上位3チームです。
4回で並ぶ2位が2チーム。そして1位はお馴染み…。
【第2位】
《4回》
2000年札幌,2001年京都,2006年柏,2012年甲府
2008年広島,2008年山形,2019年横浜FC,2020福岡
2位は4回の湘南と愛媛でございます。ここまで来ると回数だけでなく、両チームともパンチと芸術点を備えていますね。見届けるだけじゃ気持ちは伝えられない的な。
愛媛の場合はやっぱり2008年に2チームを両方を請け負ったところでしょう。しかもどちらも最終節じゃないというのがまた。これはタイミングの妙も持ち合わせないと成し遂げられない見届け方です。
そして湘南は…2000〜2001年の連続お見送りも美しいのですが、見届けたやつに見返りを求めるというあまりにも凄まじい離れ業をやってのけたのが2012年。第38節の時点で甲府の独走昇格をきっちり見届けると、最終節には自分達が昇格を決める…「先に上で待ってろ、甲府…」的なストーリーだけでも高い芸術点を嗜めるのに、その最終節で2位だった京都に引き分けに持ち込んだ事で3位だった湘南を自動昇格に押し上げたのが甲府というアガサクリスティもびっくりのミステリーっぷり。技術力と演出力が光りますね。
さぁ、いよいよ1位です。
1位はこういう企画をやるにあたって、嘘でしょと言いたくなるほどあまりにも出来すぎたあのチームでした。
【第1位】
《7回》
2004年川崎,2004年大宮,2005年京都,2007年札幌,2009年仙台,2009年湘南,2021年磐田
驚異的実績、圧倒的信頼、絶対的送り人。いいえ、おくり水戸。J2クラブたるもの、やはりJ2に来れば水戸さんに挨拶を、J2を出る時も水戸さんに挨拶をすることが礼儀というもの。元ABCテレビアナウンサー・清水次郎氏の叫び声が聞こえてきそうです。「だからJリーグファンはこのクラブを主と呼んだ!」と。圧倒的な実力をここに感じますね。
近年は他にも送り人後継者に目処が立ったので見届け業をお休みする時期が増えていました。この手の業界はやはり後継者不足に悩まされるものですがJ2業界はどうやらそうでもない模様。しかしやはり水戸ちゃんの手際には職人の技が光るもので、やはり磐田のようなJ2のVIP客がお越しになられた際には主直々に立ち会おうとするのでしょうか。
恐ろしい事に2023年、現時点で最も自動昇格に近い清水の最終戦の相手は水戸です。彼らもやはりVIP客。格には格を。それは世の礼節とも言うべきでしょうか。おめでとうございますなのかどうかはわかりませんがおめでとうございます。
次回、J2降格送り人選手権につづく→こちらから。
「だからJリーグファンは〜」のくだりがわからない方は「桧山進次郎 引退 ホームラン」で検索してね!
ではでは(´∀`)