ロシアW杯観戦記〜あれから1年…《海外ド音痴、ロシアに翔ぶ。〜英語もまともに話せない私のロシアW杯観戦記〜》2019年再編集版〜第3話 精神崩壊チケット戦争

【ロシアW杯観戦記再編集版、第1話、前話はこちら↓】

 

 

 

ワールドカップに出場するという事は途轍も無く狭き門である。

幼い頃から「天才」なんて呼ばれた連中が集う場所で居場所を勝ち得た数少ない者達が次のステップに進み、更に天才の集った場所で勝ち抜いた者達が集まる場所でも勝ち抜いた更に少数の人間が晴れてJリーグへと向かう。そのJリーグでも過酷な生存競争にさらされ、単にこのワールドカップに至るまでの4年間ではなく、もっとずっと昔から選びに選び抜かれた23人しかワールドカップに出場する権利は与えられない。こんなブログを常々書いていてこんな事を言うのもどうかと思うが、本来は軽々しく「あいつがいらない」なんて言える立場では無いくらいなのだ。

そんな選手達に比べれば屁でもないのは至極当然の話だが、一方でワールドカップという大会は現地観戦するだけでもかなりの狭き門である。今回は開催地がロシアだったから、少し敬遠した人は居たのかもしれないが、これが2006年のドイツW杯、そして2026年のアメリカ・カナダでのW杯ならもっと凄まじく狭き門となるだろう(メキシコ開催分は比較的ハードル低めかも)。

「Road to Russia 」なんて言われていたが、そのサバイバルレースはW杯予選やメンバー選考と比べたら小さな小さなものとはいえ、これはこれでかなりの戦い…もはやネットを介した戦争だった。

詳しくは前回の第2話を先に読んで頂きたいのだが、改めておさらいして置くと我々がリストアップしているチケットは以下の8試合だ。

 

6月15日 モロッコvsイラン(サンクトペテルブルク)

6月16日 フランスvsオーストラリア(カザン)

6月16日 アルゼンチンvsアイスランド(モスクワ)

6月17日 ドイツvsメキシコ(モスクワ)

6月17日 ブラジルvsスイス(ロストフ)

6月19日 ロシアvsエジプト(サンクトペテルブルク)

6月20日 ポルトガルvsモロッコ(モスクワ)

6月20日 イランvsスペイン(カザン)

 

このうち、抽選会前の販売の時点で友人が既に確保していたのはモロッコvsイラン、ロシアvsエジプトのサンクトペテルブルク開催の2試合。開催国の試合は観てみたいという事で6月19日のスケジュールはロシアvsエジプトで固まっていたので、少なくとも「W杯観戦」は既に可能になっていた。そういう意味では最後のチャンスに賭ける他の人よりは精神的に落ち着ける状況だったかもしれない。我々の目的は、どうせ行くなら少々慌しいプランになっても、モロッコvsイランを何とか優勝候補国の試合に変える、もしくは追加する事を狙っていた。その結果候補に挙がったのが上に挙げた6試合である。

もう一つリストアップした試合に関して補足をつけると、アルゼンチンvsアイスランドの一戦は事前販売の時点で既に完売していた。リオネル・メッシ要するアルゼンチンの初戦は当然人気だし、対戦相手であるアイスランドはこの試合がW杯初試合。しかも元々熱いサポーターが多いとされるチームである。更に会場は利便性の高いモスクワだし、そのモスクワは2会場が設定されているが、その中でも収容人数が少ない方のスパルタク・スタジアムだったので、チケットが最終販売まで残らない事はある意味で必然だったのかもしれない。これで候補は事実上5試合となった。

 

余談だが、ロシアに行った事に関して色々な友人に驚かれたのは「ロシアまで行ったのに日本戦に行ってない」という事だ。

これは、元は友人がサンクトペテルブルクでW杯を観戦するべく計画した旅行だった事が一つの理由で、そもそも飛行機の日程が決まっており、その日程の間で行われる日本の試合は6月19日のコロンビア戦のみ。実際、6月24日のセネガル戦の時には既に帰国していて、自宅のTVで試合を観ている。

加えて、日本vsコロンビアが行われたサランスクという場所はロシアに慣れている人はおろか、ロシア人ですらとんでもない場所と認めるような場所で、余裕と金のある訳ではない行程にサランスクをねじ込む事はいっぱしの大学生には厳しい事でもあったのだ。そもそも、FIFAの規定により1日で2試合を観戦する事は出来ないシステムになっている。抽選の結果、我々がチケットを持っているロシアvsエジプトと日本vsコロンビアは同じ日の開催となり、この時点でどのみち日本戦には行けない事が確定したのだ。というか、システム上では観戦出来たとしても物理的に無理だろうし。

ロシアW杯開幕前、日本代表は大きな不安と批判に曝されていた訳だが、ガンバファンである私にとって「西野朗が率いる日本代表のワールドカップ」には実に感慨深いものがあったし、友人の方もせっかくだから日本戦に行きたい気持ちもあっただろうが、こればっかりは仕方ない。ただ我々はこの後、事の巡り合わせが余りにも上手くハマって日本代表に触れる事になる。

 

 

 

話を本題に戻そう。

私と友人、2人のスマホとパソコンの4デバイス体制で臨んだチケット最終販売は言うまでもなく先着順だ。とりあえずこんなところでお金をケチってもしょうがない。先にチケット売場に辿り着いた方が、リストアップした試合のチケットで買えるものをとりあえず抑えよう。そしてその後でスケジュールを整理して、行けない試合はリセールに出そう。この際手数料は仕方ないじゃないか、という方針を固めたところで、電話を繋ぎながらチケット販売開始の時間を迎える。

 

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何人かは、最近に似たような画面を目にした方もいるのではないだろうか。要は、東京オリンピックのチケット購入時と同じように、チケット購入サイトでサーバーダウンを起こさない為、そもそもチケット購入サイトに入れる人間の数をセーブしているのだ。

しかし、今日は諦めて数日置いて期限内にスムーズに入れる日にアクセスする事が出来る抽選販売と違って、これは先着販売という一種のプレッシャーゲームである。打つ手なく待っている間にもチケットは売れ、完売に近づいていくのだ。それを想うと、改めてこの「more than an hour」という言葉が恐ろしく感じる。

とはいえ、私のスマホは比較的早い段階で「more than an hour」は「59 minutes」という言葉に変わった。他の3デバイスはまだそこに到達する気配はない。要するに、全てのプレッシャーが私と私のスマホに降りかかる事になる。チケットサイトは日本語に対応していない事もあって、ここからはカウントダウンというよりも砂時計でも見ているかのような感覚だった。砂時計の砂が落ちる度に時間は迫り、そしてその砂が落ちていくのと同じように私の中にプレッシャーは積もる。性格的に、自分はこれまで余り緊張を抱くタイプでは無かった。ただ、ワールドカップという狂気の祭典への扉が開く少しずつ開くという異様な空気に苛まれ、今までに味わった事のない感情が常に渦巻き続ける。

そしてついに、ロシアへの扉が開く。

 

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無論、本当の戦いはここからである。

ここまではチケットサイトに入る為の順番待ち。即ち、戦いが始まるのはチケットサイトに到達したこの瞬間からで、世界を相手にした先着販売の恐ろしさをまざまざと見せられる事になる。

 

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先着販売中にスクショを撮っている余裕など無かった為、このスクショはチケットが大体売れ尽くした5月末頃のものではあるが、販売画面はこんな感じである。この段階では全て灰色で記されているが、「完売間近」のチケットは赤、「まだ少し余裕がある」チケットは黄色、「余裕がある」チケットは緑に着色されていて、既に予定枚数を終了したチケットが灰色となっていた。当然、サランスク、カリーニングラード辺りで開催される一部のカードを除いて殆どが既に赤色か灰色の表記となっている。

 

赤色のチケットをクリックし、いくつかの情報を入力すれば、入力している間にチケットは完売しましたと表示される。そしてどこかで赤色が付いたり消えたりする。そしてそれに飛びつけばまたチケットは完売したと言われ、またこの作業を繰り返す…。

この作業のプレッシャーは尋常じゃなかった。しかもチケットはVISAかMasterCardのカードでしか支払う事が出来ない。しかしなぜか、私のクレカが使えない事態が発生した。大したトラブルでは無かった為、実際に数日後に普通に何事もなく解決はしたのだが、いやだったら尚更このタイミングでかよ!と心底思った。しかもデビッドカードもちょうど給料日前だった為に大した金額が入っておらず、ATMに行くのも時間が惜しかったので、慌てて最寄りのコンビニで別の口座からデビッドカードに連携している口座にお金を移し、購入期限時間ギリギリでなんとか購入に成功した。人生で一番…と言っていいくらいに焦った。どれぐらいかというと、「address(住所)」と書いてある欄に何故かメールアドレスを入力してしまったほど。でも紆余曲折の末、なんとか6月16日のフランスvsオーストラリア(カザン)、6月20日のイランvsスペイン(カザン)のチケットを確保する事が出来た。

ようやく一息がついた。落ち着いた……あっ、そういえば完全に忘れてた。今日ガンバ、どうなったんだろう。

浦和に0-1で負けていた。

 

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…なんにせよ、間違いなく優勝候補である2ヶ国のチケットを手に入れ、これで所持しているチケットはサンクトペテルブルクでの2試合、カザンでの2試合の計4試合となった。

この友人とは4月21日にパナソニックスタジアム吹田でガンバ大阪vsセレッソ大阪大阪ダービーを観戦する事になっており、その試合前にEXPO CITY内でちょっとした大阪サミット( )を行う。その結果、日程面からモロッコvsイラン、イランvsスペインの2試合を断念し、観戦するのは我々のW杯はフランスvsオーストラリアとロシアvsエジプトの2試合。この場で既にFAN IDを申請済みだった友人にFAN IDを申請して貰い、後は自分自身がロシアに発つ準備を、そしてFAN IDの到着を待つのみとなった。

2ヶ月先のロシアへ、旅路に光が灯り始める。

 

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つづく。