ふふふ藤井風
どーもこんばんは
さてさて、本日のマッチレビューは天皇杯JFA第102回全日本サッカー選手権大会決勝、ヴァンフォーレ甲府vsサンフレッチェ広島の一戦です!
オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。
↓
その聖杯はいつも、目標であり、憧れであり、ロマンでした。今回の決勝は、ある意味ではそのロマンを象徴する一戦なのかもしれません。
ヴァンフォーレ甲府という、日本のプロビンチャの代表例として度々挙げられるようなクラブにとって、今日は言うまでもなく、文字通りの夢舞台です。準決勝では圧倒的なタイトル獲得経験を誇る鹿島を撃破。今季のJ2では、前節にようやく残留が決まるなど苦戦を強いられ続けた一年となりましたが、リーグ戦での戦いぶりとカップ戦での戦いぶりがまた異なるものになり得るのはこれまでの勝ち上がりが証明済み。クラブ消滅危機を始め、多くの難題を超えた先の景色として、甲府は今日の舞台に立ちます。
一方、今季の広島はまさしく新時代の序章とも言うべき大躍進を見せました。ミヒャエル・スキッベ監督の下で、リーグでは前々節まで優勝を可能性が残っていましたし、優勝の可能性こそ消滅しましたが、現在でも3位という好成績につけております。何より、来週行われるルヴァン杯の決勝を合わせて2つのカップ戦の両方に生き残っている彼らですが、在任中にJ1リーグを3度制覇した森保一監督体制の時を含め、カップ戦でのタイトルは未だに獲得した事がありません。
決勝に辿り着いたプロビンチャがロマンを爆発させるのか、最多準優勝回数を誇るクラブがこの称号に一つのケリを付けるのか。例年のように一年を締めくくる天皇杯決勝ではないですが、秋晴れの空の下、聖杯を掲げる最後のプロセスが始まります。
両チームスタメンです。
両者共にシステムは3-4-2-1。ミラーゲームの構図となりました。
甲府は直近のリーグ戦である第40節岡山戦からは3人、天皇杯準決勝の鹿島戦からは、鹿島戦で決勝点を挙げた宮崎純真が負傷によりメンバーを外れ、代わりに準々決勝福岡戦で決勝ゴールを決めた鳥海芳樹がシャドーに入っています。鹿島戦からの変更は負傷の宮崎のみです。
広島は直近のリーグ戦である神戸戦はターンオーバーとしてスタメンを全員入れ替えていました。なので準決勝京都戦からの変更としては、京都戦を累積警告で出場停止となっていた塩谷司が右CBに復帰。神戸戦から連続してスタメンとなるのは塩谷のみになっています。また、柏好文、佐々木翔、野津田岳人の3人は元甲府の選手。古巣対決です。
横浜F・マリノスのホームスタジアムであり、今からちょうど20年前…日韓ワールドカップでは日本代表がW杯史上初となる勝利を掲げた場所であり、そして日本でワールドカップ決勝(ドイツvsブラジル)が行われた唯一の舞台。ちなみに、広島のスキッベ監督はその決勝にドイツのヘッドコーチとして参加していました。ラグビーW杯決勝もオリンピックサッカーも、この国でファイナルとしての重みと歴史が最も染み込んだスタジアムの一つで、今年からは大型コンサートの開催も復活しました。
天皇杯決勝といえば国立競技場でお馴染みで、新国立競技場がオープンした2019年大会以降は天皇杯決勝も国立で行われていましたが、今年の決勝の舞台は横浜という事になりました。日産スタジアムでの決勝開催はガンバ大阪がモンテディオ山形を下して三冠を達成した2014年大会以来ですが、国立競技場が稼働中でもあるに関わらず、国立以外のスタジアムで天皇杯決勝を行うのは1966年大会以来。早稲田大学が優勝したこの年ですが、この決勝で準優勝となったのがサンフレッチェ広島の前身となる東洋工業サッカー部でした。ちなみに、Jリーグ開幕以降、リーグ閉幕より先に天皇杯決勝が行われるのは1993年大会以来であり、天皇杯決勝が10月開催は戦後初です。
序盤は広島がボールを持ち、そこから押し込むような時間が続いていましたが、基本的にはセーフティーな流れで試合は進んでいきました。するとこの試合で最初の決定機を掴んだのは甲府で、16分に右サイドでボールを持った関口正大のスルーパスに抜け出した長谷川元希がGKとの1対1を迎えますが、ここはGK大迫敬介が1対1を制してこれを阻止。そこからは甲府が裏に抜ける場面を多く作りながらチャンスに繋げるような場面も増え始めていきます。
すると26分に試合が動きます。甲府は左サイドでコーナーキックを獲得するとショートコーナーを選択。リターンしてそのままクロスかと思われましたが、リターンを受けた長谷川がインナーラップした荒木翔にスルーパスを送ると、荒木が左サイドの深いところから折り返し。ニアサイドに飛び込んだ三平和司が冷静に流し込むと甲府が先制!!髪型をフィーバーさせた男が結果を早々と残します。
先制点の後もリズムよく攻めて行けたのは甲府の方でした。時間が経過すると共に広島もサイドを深く侵入することを試みながら押し返すような時間も生まれ始めました。しかしクロスまでは行けても、いつもの広島の攻撃の鋭さやフィニッシュに至る過程にまでチームがなかなか乗り切れずに前半は終了。甲府のリードで後半に向かいます。
後半から甲府は森島司とドウグラス・ヴィエイラを下げてエゼキエウとナッシム・ベン・カリファを投入。
しかし後半最初の決定機も甲府でした。50分、カウンターから長谷川が粘って繋ぐと荒木翔がワンタッチでスルーパス。抜け出した三平が決定的な場面を迎えましたが、最後は荒木隼人のタックルとオフサイド判定によりゴールならず。ただ、後半は前線のユニットを入れ替えた広島が息を吹き返してリズムを取り戻し始めていきました。
それでも甲府は決定機までは許さず、カウンター要員として途中から投入したウィリアン・リラがクロスバー直撃のシュートを放つなど惜しい場面も作り出します。そんな中で、広島は70分に柏好文と茶島雄介の両WBを下げて野上結貴と松本泰志の2人を投入し、塩谷司をボランチに配置。更に立て続けに79分には野津田を下げてピエロス・ソティリウを送り込みます。
すると84分、左サイドでボールを受けたエゼキエウが左サイドで時間を作るとインナーラップしてきた川村拓夢にボールを流し、川村がそこまで角度のないところから豪快に叩き込んで広島が同点!!少し焦りも見え始めてきた広島が、ここにきて意地の一発で同点に追いつきます。
同点弾を取ったタイミングでエゼキエウが脚を痛め、実質的に10人でアディショナルタイムを含めた10分を戦わざるを得なくなった広島でしたが、こうなると試合は完全に広島のペースとなっていきます。アディショナルタイムには抜け出したソティリウがシュート。しかしこれはうまく飛び出したGK河田晃兵が体を張って阻止。
延長戦はそのまま終了。終盤に何とか同点に追いついた広島が延長戦に持ち込む形に。
延長戦で最初のチャンスは広島。ペナルティエリアの角辺りから得たフリーキックで満田誠が狙いますが、そのシュートは鮮やかな軌道を描きながらもクロスバーに直撃。広島は塩谷を前線に上げて、ソティリウとベン・カリファと組み合わせて前線のパワー感を増そうと試みていました。100分にも満田が強烈なミドルシュートを放ちますが、今度はGK河田が攻守で阻止。105分にも川村がシュートを放ちますが、僅かに枠を捉えられません。
そして118分、満田の縦パスに対し、途中から入った甲府のレジェンド、山本英臣の対応がハンドと判定されてしまって広島がPK獲得。
キッカーは今年のブレイクスター・満田。対するは2014年にガンバ大阪の一員として天皇杯を制しながら、自分はベンチでピッチには立てなかった河田……この2人の対決を制したのは河田でした!絶体絶命のピンチを阻止し、決勝の行方は1990年大会の松下電器vs日産自動車以来、すなわちJリーグ開幕以降初めてとなる決勝のPK戦へ。
広島先行のPK戦は、両者共に3人目までのキッカーが揃って成功。
そして迎えた広島の4人目、同点弾を叩き込んだ川村のキックの前にまたしても立ちはだかった河田晃兵!!!!8年前、ガンバ大阪の一員として天皇杯制覇を果たしながら、自身は同じ日産スタジアムのベンチからその光景を眺めていた男がここに来てヒーローに辿り着きます。
そして最終キッカーは甲府一筋20年、このクラブの全てを背負い続けてこの舞台に辿り着いた男、山本英臣……
いやー…感動的でしたね。
広島としては、試合の設定としてかなり難しい立場になってしまっていたのは確かだと思います。前評判が物語るように、広島にとってはある種「勝って当たり前」のようなシチュエーションになってしまった。これがチームパフォーマンスに硬さを生じさせてしまった部分は少なからずあるでしょう。それに対して甲府は上手くブロックを作り、アグレッシブな姿勢が少し歪んで精細を欠き始める広島を上手く誘い出すような守備と、そこからのショートカウンターに繋げるビジョンをチームとして共有出来ていました。GK大迫が防ぎましたが、16分に長谷川が迎えた決定機なんかはまさしくそういう表れだったように思います。
広島からすれば、ヴィエイラや森島、野津田を下げてまでベン・カリファやソティリウを投入し、塩谷を前線まで上げたのは、追い込まれた状況をパワーでこじ開ける選択肢で、あのスキッベ監督の采配はあの状況からすれば理に適ってはいましたし、実際に同点に追いついた訳で盛り返した。ただそこからは広島にかかるプレッシャーと甲府の割り切りの中のせめぎ合いで、耐え切った甲府が粘ったというか、何か神通力的なものを見た試合でしたね。
山本英臣が最後のPKを仕留める……。かつて、クラブ消滅一歩手前まで陥った過去を持つクラブのプロビンチャとしての歴史を築いた上で、自分たちで育てた選手が多くプレーする広島相手に、山本程ではなくとも長く甲府でプレーした河田がヒーローになり、最後は山本が決めた……天皇杯の物語として、これほど美しいドラマはそうそう描けなかったと思います。
NHKの中継で懸命に大旗を振るおじいちゃんが映った事が話題になりましたが、全ての脈に血を通わせたその結実がこの地だったと思うと……ましてやサンガファンという立場で甲府を、J2を定点観測していた私自身としても、やっぱり心にくるものがありました。甲府の皆さんおめでとうございます。今季のJ2の事とか来年のACLの事とか、難しいことは一旦置いておいて、ただ今はこの喜びに浸ってください。
【うれしはずかしじゅんいひょうのコーナー】
天皇杯JFA第102回全日本サッカー選手権大会決勝
優勝:ヴァンフォーレ甲府(初優勝)
準優勝:サンフレッチェ広島
ベスト8:アビスパ福岡、セレッソ大阪、ヴィッセル神戸、東京ヴェルディ
サンフレ、ルヴァンがんばれ。
ではでは(´∀`)