G・BLUE〜ブログとは名ばかりのものではありますが...ブログ。〜

気ままに白熱、気ままな憂鬱。執筆等のご依頼はTwitter(@blueblack_gblue)のDM、もしくは[gamba_kyoto@yahoo.co.jp]のメールアドレスまでご連絡お願いします。

なぜ古橋と旗手は選ばれなかったのか?〜ジレンマで感じる日本代表の進歩〜

f:id:gsfootball3tbase3gbmusic:20230316163348j:image

 

 

 

3月15日に第2次森保ジャパンの初陣を飾る26人のメンバーが発表されました。

という訳で前回のブログでは"ステルス世代交代"をテーマに、今回の日本代表メンバーの意図や狙いを考察するブログを書きました。

 

 

…で、今回はと言いますと……今回のメンバー発表でも賛否両論が渦巻いている部分とはなんぞやと。ここに尽きるでしょう。

 

 

 

「なぜ古橋と旗手は呼ばれないのか?」

 

 

 

 

 

メインテーマそのままに、今回はなぜ古橋亨梧と旗手怜央が招集されないのか…を考えていきたいと思います。

もどかしさと致し方なさ、そしてジレンマで感じる成長……そして今後どうなるのか、みたいなところも踏まえて書いていきたいと思います。

 

カタールW杯日本代表、森保ジャパンのチーム造りと全4試合の考察

 

カタールW杯が終わっても楽しめる、振り返り企画なども更新中のカタールW杯観戦ガイド〜日本代表編〜も是非ご覧くださいませ。

 

Jリーグをもっと楽しめる(かもしれない)【Jリーグ開幕ガイド2023】作りました!是非お使いくださいませ。

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

 

 

まず古橋と旗手の落選について、自分の想いとしては以下の3つです。

 

・どちらも純粋に好きな選手である

・調子も良く、実力もある。どこかでもう一度チャンスはあげてほしい

・だが、落選という結果が間違った判断だとも思わない

 

ただ古橋と旗手の2人ではやや状況が違う部分もあるので、1人ずつ状況を考察していきます。

 

 

 

今現在、日本代表資格を持つ選手の中で"純粋なストライカーとして"最も優れた選手は古橋だと思っています。個人的にも好きな選手ですし、ファンに「観たい!」と思わせられるプレーヤーである事も間違いない。そこは疑う必要もないと考えています。

しかし、セルティックヴィッセル神戸はFWに点を取らせる構図のサッカーを組み立てている事とは対照的に、日本代表では基本的に2列目が点を取る設定のサッカーがずっと定着しています。日本代表も戦い方もポゼッション重視だった時代もあればカウンター重視だった時代もありましたが、ここ十数年はどのような戦術設定に変わってもそこだけは常に維持されていきました。理由は単純で、日本はこれまでFWの人材難が叫ばれる時代は多々あれど、2列目の人材難で苦しんだ時期は殆どない。となれば、まるで永久機関かのようにタレントが次々と出てくる2列目を如何に活かすかを前提としたスキームに組み上がっていたのは自然の摂理とでも言うべき流れだったのでしょう。日本サッカー界の人材資源のポテンシャルの最大公約数をチームとして引き出すには、結局そういうシステムを組み立てる事がベストな時代はまだ当分続くと思いますし。

 

 

 

となると「如何に2列目の選手を活かすか」「如何に2列目の選手に手を取らせるか」を考えた時に、日本のワントップやセンターFWには卓越したポストプレーの能力であったり、或いはプレッシングの急先鋒としてのスピードやインテンシティーが条件になってきます。今の代表FWは基本的にこのどちらかの役割をこなせる選手が求められており、それが前者なら大迫勇也、後者なら浅野や前田が代表的な選手になってくる訳で。

これを古橋に当てはめようと思うと、まず前者には当てはまらない。そして後者の場合、古橋は決して守備をサボる選手ではないのでこの要素が欠ける選手ではありませんが、この点で選ぶのであれば浅野や前田の方が上になってくるんですよね。なので今のチームで古橋が活路を見出すならそのポジションは2列目に食い込む事しかなくなってくるんですけど、そうなってくると今度は古橋が元々持つセールスポイントが失われてしまう。ここは2列目でこそストロングを出せる西村や中村との違いでもあるのでしょう。端的に言えば、古橋は「今の代表チームと合わない」と言うしかない状況になってしまっているんですね。細かく言えば、代表の求める役割と古橋のストロングポイントが噛み合わない…と。古橋と似た悩みを抱えているのは上田綺世もそうなんでしょうけど、上田は人材難のポストプレー型に求められる役割にある程度アジャスト出来るところを示す事が出来た部分が代表チームに於ける古橋との差になったと考えています。

そういえば振り返ると…ロシアW杯の時に、当時の西野朗監督が中島翔哉を外す理由として語った「ポリバレント」って、単に複数ポジションをこなせるかどうかではなく「プレースタイルに於けるキャパシティーの広さ」だと思うんですよね。器用さというか。その点で言えば、浅野や前田ほど戦術に合ったスペシャリティを持ち合わせずとも上田、そして町野にはそれがあった。そこの差はあったのかなと。

 

 

ただ、これまでに森保監督が古橋を評価していない事は無いと思うんですよ。どうにか古橋を組み込む為の試行錯誤は試みようとしていましたし、期待もしていたはず。実際にギリギリまで古橋は常に候補として招集されていましたし、ましてや特別な期待をしていない選手を、いくら親善試合とはいえブラジル戦の先発で使ったりなんかしないでしょうし。そこで出た最終結論が「合わない」という事になってしまった。逆に言えば、今のチームで古橋を活かすサッカーをする為には古橋中心に変える必要が出てくるんですよね。そうなってくると、じゃあ古橋の為のサッカーは鎌田や三笘を差し置いてまでシフトするべきものなのか?…と。古橋がそこまでのプレゼンスを代表で示せなかった事は現実として存在する訳で、プレミアで無双する三笘、ドイツやスペインで躍動する鎌田、堂安、久保といった選手がいる中で、そこまでの方針転換をするにはスコットランドでの無双では弱い…そこはもう仕方ないんですよね。決してスコットランドを軽視する訳ではないですが、サッカーは敵も味方も相対的に物事を考えなければならないスポーツですし。なので古橋に逆転のシナリオがあるとすれば、今スコットランドで残している数字を4大リーグで残すしかないんだろうな…と思っています。

この件で結構、森保監督が「古橋を活かせなかった事」で批判されたりもしていますが、結果としてはそれは正しいといえば正しいんですよ。稀有な才能が代表で活きれないままフェードアウトしつつある事は事実ですから。一方で忘れてはならないのは、チーム造りは足し算では成立しない…最大公約数で作るしかないんですよね。となると全員の長所が活きる仕様を作る事は不可能に近く、それは必然的に誰かが犠牲になる結末を迎えてしまう事もある。今回はそれが古橋だった。こればっかりはもう古橋は不運だったと表現するしかない。森保監督も代表チームも含めて、誰かが悪い訳ではない時代の被害者はどうしても生まれてしまう。サッカーに限らず、運とタイミングの介在を抜きに進む物事は無い訳ですから……。

 

 

 

旗手に関しては、必ずしも森保ジャパンとの相性が悪い…という訳ではないと思います。ただ、森保監督が4-2-3-1ないしは3-4-2-1を採用するとなると旗手のポジションが無いという問題が発生する。彼が最も力を出せるポジションは4-1-2-3のインサイドハーフであって、Wボランチシステムではボランチとして計算しても、2列目やSBとして計算しても序列には劣る。ここがポジション争いの妙というか面白くも厳しくもある話で、今の代表はFWに求めるのはポリバレントだけど中盤に求めるものはスペシャリティなんですよね。それを踏まえると、森保監督としてはそれこそ西村や中村のように今のシステムに合った、化けそうな選手を入れたい…と考えるのは自然だと思います。古橋のところで述べた事の繰り返しみたいになりますが、旗手の為に4-1-2-3に変える事は現実的ではないですし。

ただ、旗手の場合は古橋とは少し事情が違っていて、まず大前提として旗手はそこまで代表でチャンスを貰えている立場ではないので、正直旗手に関してはどこかでチャンスをあげてほしい気持ちはあります。ただ森保監督もこの先、もしかしたら普通に4-1-2-3に変更する可能性もあるかもしれない。もしそうなれば、おそらくその瞬間に旗手は一気にスペシャルな選手に昇格する可能性はある。そういう意味では、旗手はまだ必ずしも構想外ではないのかな…と考えています。

 

 

 

ただ……Twitterでも書いたのですが、今のこの状況自体は日本代表にとって喜ばしい状況でもあるんですよ。落選は選手本人や関係者であったり、神戸や川崎のファンにとっては実に悔しい話ですから迂闊に「喜ばしい」と言うと語弊もあるんですけど、これこそが日本代表の進歩の証である事も確かなんですよね。

 

 

これまでの日本代表であれば、問答無用で古橋と旗手は呼ぶ必要があったんですよ。海外で存在感を示せるような選手がまずいなかったから。どういう事かと言うと…26人の枠があるとすれば、とにかく良い選手を、代表に値する選手を26人かき集める必要があった。26人を集めるという考え方で代表メンバーを選んでいたんですよね。

それが「合わない」という理由で古橋や旗手を外せるようになった。もちろんそれ自体の是非はあるでしょうが、チームとの相性で選手を外せるようになった。これは26人を集めていたこれまでとは異なり、30〜40人の代表に値する選手から26人に絞り込むというやり方を選択できるようになったんです。これは日本代表という選手層のラージリストが底上げされた何よりの証左ですよね。

なので、今回の代表発表は…カタールW杯のメンバー予想ブログでもそんな感じの事を書きましたが、そういう選手選考の考え方の変化といったところで日本代表はなんやかんや言っても前には進んでるよね、日本代表としてはなんやかんやで良い方向に歩けてるんじゃないの、みたいなところを感じたメンバー発表でした。

 

 

さ、WBC見っぺ

ではでは(´∀`)