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大局は小局を兼ねず、小局は大局を刺す〜明治安田生命J1リーグ第11節 ガンバ大阪 vs セレッソ大阪 マッチレビュー〜

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DERBY DAY

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビュー明治安田生命J1リーグ第11節、vsセレッソ大阪の一戦です!

 

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人によって考え方は色々あると思います。それがリーグ戦というものです。ですから、勝てど負けれど所詮は1/34という考えは理屈としては間違いなく正しい。結局一つの試合をどうこうしたところでその年の結果は34試合の結果で構成される訳で、どんなに印象的な勝利もどんなに屈辱的な敗北も最後はその前に無力と言えば無力です。

それでも歴史の歯車は時として1/34では語れない試合を産み落とします。それは優勝が決まる試合でも無ければスーパースターのデビュー戦でもない。順位表だけで見れば本当にただの1/34に過ぎない試合。でもそのピッチを囲う者達は誰もそうは思っていない。チームとしての状態も知ったこっちゃない。もっと言えば勝点の計算さえも関係ない。1/34では測れない90分がそこにはあります。

Jリーグが開幕して30年。そしてその前からルーツに抱く因縁……いつしかこの国のリーグを代表するカードに育った両者の激突は60回目となりました。青とピンク、北と南。勝点で測れない価値のゲームがやってくるこの季節の彩りを全身で感じながら、青と黒で染まる聖地に歓喜の咆哮を挙げましょう。このブログにわざわざ来る人に多くを語る必要もないはずです。第60回ー、開戦です!!

両チームスタメンです。


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前節鹿島戦では0-4の大敗を喫したガンバですが、スタメンとしては右SBを髙尾瑠から半田陸に戻し、WGには食野亮太郎がリーグ戦としては第6節湘南戦以来となるスタメンと18人のメンバー入りを果たしました。石毛秀樹と杉山直宏は今日はメンバー外となった一方、ダービー史上最高のゴールを決めた男・倉田秋もベンチに入っています。

セレッソは前節広島戦からはスタメン・ベンチメンバー共に変更はなし。スタメンに関しては第9節FC東京戦から3試合連続で同じ顔触れとなっており、特にGKキム・ジンヒョンを含めた4バックの組み合わせは第4節鳥栖戦以来同じメンバーを継続して起用しています。

7番宇佐美貴史、8番香川真司……お互いにとって特別な番号を背負った2人が大阪ダービーで同じピッチに立つのは意外にもこれが初めて。そういうカリスマ対決にも注目が集まります。

 

 

 

本日の会場は大阪府吹田市パナソニックスタジアム吹田です。

満員御礼パナソニックスタジアム吹田!チケット完売のお知らせというリリースがクラブから告示されるほどのチケット売り上げを達成したこの試合は、プレシーズンマッチのパリ・サンジェルマン戦を除けばコロナ禍以降初、ガンバの試合では2019年以来となる3万人超えの大入りとなりました!来場者にも先着で3万人に大阪ダービーオリジナルフラッグ、TOYO TIERSからシリコンバンドがプレゼントされ、ダービー限定グッズも多数販売されます。また、試合前には2022年シーズン限りで現役を引退したガンバユース出身の安田理大氏が来場。トークショーの参加の他、試合前にはピッチ上で引退セレモニーも実施されます。

 

 

本日は現地観戦!来たぞパナスタ!さぁ!さぁ!さぁ!!!!!!!!!

スポーツ観戦日記こちらからどうぞ!

 

 

 

 

これまでの試合と同様に立ち上がりからボール保持を強く意識した形で試合に入ったガンバは立ち上がりから試合を押し気味に進める事には成功しました。セレッソもそこまでプレスをかけてくる訳でもなかったことで、ある程度ボールキープと主体的に攻撃を組み立てようとするアクションを起こせてはいたものの、やや引き気味で構えてきたセレッソの対応を剥がすには至らず、ガンバペースではありながらも具体的なシュートチャンスにはセレッソの方が持ち込める…という展開に。

 

 

 

そんな中でも23分、ガンバは左サイドで得たフリーキック宇佐美貴史が直接習いましたが、これはポストに直撃して宇佐美はまたしてもポストに嫌われる事態に。この頃のガンバはピッチをワイドに使って長短のパスを織り交ぜながら攻めようとしていきますがなかなか思うように事が進みません。

そんな中で28分、左サイドの山中亮輔からのパスを中央で受けた奥埜博亮が一気に右サイドに展開。これを受けた松田陸アーリークロスを入れると、飛び込んだレオ・セアラに完璧なタイミングでのヘッドを決められて被弾…。

 

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ガンバはその後も両SBが高い位置を取りつつ、中と外を使い分けながらの前進を試みていきます。しかし受け手が早かったのか、出し手が遅かったのか…タイミングのズレなのか、スルーパスを狙おうとする受け手と足元に出そうとする出し手の間でパスがズレる場面が頻発。ある種、自分たちのリズムを自分たちで手放す機会が多く、前半は0-1で終了。

 

 

後半からセレッソは松田を下げて中原輝を投入して毎熊晟矢を右SBにシフト。ガンバは前半のメンバーを維持して後半に入ります。

後半に入ると押し込むガンバ、構えてカウンターを狙うセレッソの構図はより色濃くなっていきました。ガンバも前半はサイドで詰まることが多かったものの、後半はサイドから中にボールが、或いは人が入っていけるように。56分、食野のスペースへのパスに走り込んだ宇佐美の折り返しをジェバリがスルーして最後はダワン!3.4万人が集うパナスタに歓喜が響き渡ります!

 

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60分にはガンバは食野が負傷交代となり山見大登がピッチへ。対するセレッソは同じタイミングで為田大貴を下げて上門知樹を投入すると、68分にはレオ・セアラと原川力を下げて北野颯太と加藤陸次樹を投入。香川をボランチに下げた4-4-2にシステムを変更します。

セレッソは人材配置としてはかなり攻撃的な形にしてきたとはいえ、ここからの時間はほぼほぼガンバのワンサイドゲームになっていきました。基本的にはガンバがボールを持ちながら押し込み続けており、セレッソもサイドからロングカウンターを仕掛ける際は人数をかけて攻めようとしましたが、ガンバにボールを奪われた後はガンバに遊戯王で言うところのカウンターカウンターを喰らうような形に。ただガンバも、セレッソが引いて固めた守備ラインを前にスペースを見つけ出す事が出来ず、加速と減速をあまり良くない形で繰り返すようにはなっていました。

 

 

 

それでもガンバは87分にダワンを下げて開幕戦以来のリーグ戦出場となる倉田を投入。山見が若干2トップ的な位置に入り、宇佐美と倉田のインサイドハーフが高い位置を取りながら宇佐美は左、倉田は右に流れやすい状況を作ると、倉田が上手くセレッソの守備陣の間に入っていく動きを見せることでサイドで硬直化しつつあったところの栓を抜くように攻撃は流れるようになりました。88分、半田のクロスが溢れたところをアラーノが左脚一閃!しかしシュートはキム・ジンヒョンがファインセーブ。

 

 

 

押し切りたいガンバ、翻したいセレッソ。わかりやすいくらいに二極化した攻防が迎えたクライマックスはどこか既視感のある残像でした。アディショナル直前、ガンバはCKの流れから攻撃を再構築しようと試みて左でボールを持った宇佐美がインスイングのボールを入れるも相手DFがクリア。しかしこのボールをセレッソは上門が香川に落とすと香川は北野へ。北野が左に展開したボールに抜け出した山中が入れたクロスにドンピシャで合わせたのは加藤……。

 

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ラストワンプレー、三浦弦太もクォン・ギョンウォンも前線に上がったパワープレーの中でガンバは山見のクロスを三浦が落としたところにジェバリ!誰もが両手を天に掲げようとしたそこに立ちはだかったのはまたしてもキム・ジンヒョンでした。最後のCKではGK谷晃生も攻め上がりますが……タイムアップ。3万4千人を超えたパナスタの夕刻、そこに待っていたのは太陽の塔よりも猫背になったように肩を落とす観客の姿でした。

 

 

 

お気持ち表明ブログは(元気があれば)別で更新するのでここでは極めて冷静を装って試合の考察だけを出来るように頑張ります。

 

(追記:書きました)

 

「大局を見て小局をこなす」という言葉がありますが、まぁ、その言葉の意味とは異なりますけど……試合を通して見て、その意味で言えば大局で勝ったガンバ、小局で勝ったセレッソみたいな試合だったんじゃないかなと思っています。

大局で、内容面で優位に戦えていたのはガンバでした。それはポヤトス監督も試合後の会見で強調していましたし、例えば香川も試合後にガンバの内容面を評価するようなコメントは出していた。セレッソからしても内容面でモノを言うのであれば決して良い試合ではなかった…みたいな感覚はあったはずで。実際問題、今ガンバがやろうとしている事はその大局をどうやって組むかみたいなところがあって、その観点では内容面の前進を説くポヤトス監督の気持ちもわかるにはわかる…と。

 

ただ、額面通りの「大局を見て小局をこなす」であれば大局で勝った方が明らかに良いように見えますが、ことスポーツに於いてはそういう訳でもない。ガンバは大局で見れば良かったと思いますが、ただ受け手と出し手のタイミングが合わなかったり、ボール保持の意識を高く持てていたと言えば聞こえは良いですがセレッソのアプローチを前に、打開出来そうな場面でもスピードがガクッと落とされてしまったような場面も多々あった。その結果として攻撃が硬直化してしまったり、押し込めている割にはパスのところでロストが頻発したり…みたいなところに繋がった訳で。

その点で言えばセレッソは小局に勝ったというか小局は詰め切っていた。上で書いたように、彼らにとってこの試合は内容面では良い試合じゃなかったでしょうけど、押し込まれていることをある意味では受け入れつつ、数少ないチャンスでリスクを出し切れるかどうかにチーム全体でコミット出来ていたようには思います。決勝点の場面でもそうですけど、単騎突破に頼りがちなロングカウンターの場面でボールホルダー以外にもニアサイド、ファーサイドバイタルエリアにそれぞれしっかり味方が追いついていたのはそういう小局での詰めたる所以でしょうし、カウンターの前段階に香川を噛ませる事でチームのスイッチを入れるところも含めて、一瞬を見逃さない為にどうするかみたいなところで戦っていた。大局を見過ぎて小局が粗だったガンバと、大局の劣勢を小局を詰める事で差し切ったセレッソ…試合としてはそういうゲームだったように感じましたね……。

 

 

 

あと…ダービーというよりはこれまでの事も含めてですけど、インサイドハーフどうするべきか問題についても少し。

とは言っても、先日書いたブログと言ってること自体はそんなに変わらないんですけど…

 

 

個人的には、宇佐美のインサイドハーフ起用はあんまり否定的には見ていないんですよね。今日の試合を見ててもそうですけど…スタンドから見ていて、あそこめちゃくちゃスペースあるなあみたいに思う場面は何度かあって。ただ実際問題として角度のないピッチ上でそれは見辛い訳で、そのスペースを見つけられなかったのか状況的に困難だったのかはわかりませんが、多くの場合でガンバが出せなかったそういうスペースに一番ボールを出してくれたのは宇佐美だったりするんですよね…。食野に出した7分と50分とパス…特に50分のパスは、ガンバではポゼッションやボール保持以上に「スペース」を強調するポヤトス監督にとって、あのスペースを見つけてくれる事、そしてそこに通せる瞬発力とキック力を持っている宇佐美を低い位置からスタートさせたいという意図を示したシーンだったように見えたというか。前述のブログで長々と書いたように、ポヤトス監督はおそらくガンバを戦術兵団みたいにしようとは考えていないと推測しているので、賛否を生みがちな宇佐美のIH起用で求めるものはそういうところなのかな…と。

もちろん、宇佐美の守備強度とかそういうところがインサイドハーフとしてリスキーなのは確かだとは思います。ただ、攻撃も守備もクリエイティブもハードワークも全てに対して超高得点を叩き出せる選手なんて世界のトップオブトップですらそうそういない。それぞれに出来る事と出来ない事がある以上、そこは取捨選択の問題になってくる。それは宇佐美でも石毛でもダワンでもW山本でも倉田でも同じな訳で、スペースを作る・見つける・使うを重要視するポヤトス監督にとって「取捨選択で切る訳にはいかないポイント」が宇佐美のスペースを見つけてパスで使う能力なのだろう…と解釈しています。

無論、ここはファンやサポーターにとっても考え方や望む形は色々あると思うんですよ。ただ、監督という職業は批判や責任と引き換えに取捨選択の権利を得ている。ポヤトス監督からすれば彼の描く大局に宇佐美というスペシャルは絶対的に必要な存在。だからこそ宇佐美は小局を詰めて大局を埋めなければならない。勿論それは出場選手全員に問われるところですし。基本的に現在の宇佐美の起用法は、上のブログで書いたようなポヤトスサッカー考察に近いところが実情なら肯定的な感覚で見ていますが、ガンバに限らず選手も監督もいつでもカウントダウンのタイマーを背中に背負いながら日々を生きなければならない宿命を背負っている訳で、努力や構想はスコアに乗せなければ勝点にはならない。だからこそ、夢に説得力を持たせる為に勝たなければならない。ダービーに散ったという十字架を背負った以上、これからはより強くそれが求められます。

 

 

ではでは。