RK-3はきだめスタジオブログ

気ままに白熱、気ままな憂鬱。執筆等のご依頼はTwitter(@blueblack_gblue)のDM、もしくは[gamba_kyoto@yahoo.co.jp]のメールアドレスまでご連絡お願いします。

【秋春制】Jリーグシーズン移行に対する私なりの感想。

 

 

12月19日、Jリーグは2026/2027シーズンより、1993年以降のJリーグフォーマットとなっていた2-3月開幕→11-12月閉幕だったシーズンを、8月開幕→5月閉幕というヨーロッパと同様のシーズンシステムにする事を発表しました。

いわゆる、長年JリーグJFAで議論されていた「秋春制」が決定したという事になります。

 

 

詳しいところはJリーグ公式のリリースを見ていただくとして、ざっくりとまとめると、現在のシーズン制度は再来年の2025年シーズンを以って終了。2026年の上半期は特例大会を開催し、同年の北中米W杯を挟み、2026年の8月より2027年5月までの新シーズンへ移行。12月中旬〜2月中旬にはウィンターブレイクを設ける構想になっています。

 

 

 

今回の決定が5年後、10年後に成功に導いた英断として捉えられるのか、発展を歪めた改悪として捉えられるのかはその時になるまでわからないですし、現場からファン・サポーターまで各々に賛否はあるでしょうが、いずれにしてもJリーグは30年、移行時までと考えると33シーズン続けてきたシーズンを変更する訳ですから、いずれにしてもこれがJリーグの歴史に於ける大きな瞬間になった事は間違いありません。

そしてシーズン移行に関しては私自身、Twitterではちょこちょこ関連した投稿をする事もありましたが、ブログでは明確に触れてはいませんでしたので、これを機に私の秋春制に対する考え…と言うと大袈裟ですが、私なりの感想を書いていけたらと思います。

 

2023年のJリーグを振り返る記事も色々更新しています。それらの記事はこちらにまとめておりますので是非!

 

Jリーグ30周年記念特集こちらから!

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

 

 

先に心情と言いますか、感覚としての話をすると若干反対寄りの部分はありました。

ただあくまでそれは単純に、現行制度の「年始にシーズンが始まり、年末にシーズンが終わる」というスケジューリングが感覚的に収まりがいい、しっくりくる…というだけの話であって、そういう気持ちからの「あー、シーズン変わっちゃうのかー」くらいの抵抗感でしたから、そのふんわりした抵抗感で反対派とは言いたくなかったですし、その部分で賛成か反対かを考えるべきではない…と。

 

結論を言うと、私の意見としては「反対ではない」というところです。言い換えれば積極賛成ではない賛成、でしょうか。

というのも、サッカーに限らず近年ではグローバル化が急速に進んでいる訳ですが、世界と繋がった事で起こったことは何かというと「ゴールが世界共通になった」というところだと思うんです。つまるところ、サッカー界に於ける力関係のピラミッドが明確化され、そして固定化されたと。その頂点にいるのがイングランドプレミアリーグを筆頭に、欧州の一部のビッグクラブですよね。今のピラミッドは俗に言うスーパーリーグ構想で名前が上がったようなビッグクラブ群を頂点に固まってしまった以上、今のヒエラルキーが変わるとすれば欧州ビッグクラブの方が崩れるか、今夏のサウジアラビアのような事を継続的にやる以外に方法がない。そこはもうJリーグの努力と発展どうこうでどうにか出来る話じゃなくなってしまった。川の水が海に向かって流れていくように、今やこの流れに抗いようがないという現実があります。

既に2025年には6-7月の期間で大規模なクラブW杯が開催される事が決定しているように、今後はあらゆるスケジュールが欧州に追随する、欧州を基点に考えられていく可能性が極めて高い。ACLのシーズン移行に関しては日本に於ける秋春制推進派の筆頭と見られている田嶋幸三会長がマッチポンプ的に提案したとも言われていますが、確かに田嶋会長がAFCに提言した事は本人も認めていますが、田嶋会長がどう動こうがACLのシーズン移行は時間の問題、早いか遅いかの違いでしかなかったでしょう。

 

そうなるとシーズンの違いがJリーグのスケジューリングに於いて今後様々な歪みを生じさせることは明確で、この流れが止まるとも思えない。つまるところ、Jリーグにとってシーズン移行はいずれ避けられない事だった…と思っています。

言い換えれば、今の潮流だと現行の春秋制を継続する事が現状維持に繋がるとは限らないとも思うんですよね…。春秋制を続けるなら続けるで、今後は春秋制を維持する為の措置、制度変更が必要になる可能性もある。Jリーグがシーズン移行の目的にポジティブな言葉を並べるのは立場上仕方ない事ではあるのかもしれませんが、実際にはある種不可抗力的な事情で避けられない。それならばなるべく早い準備を、或いは雪国の事情をある程度把握している人物がトップにいる間にやっておく決断は間違いではないと考えています。雪国へのフォローの問題にしても、今のJリーグの説明に疑問点と説得力に欠ける部分は否めない一方で、外枠を固めた方が進みやすいものもあるでしょうし。

 

 

 

今回の場合で一つ大きかったのは、クラブ・選手という現場の意見はやはりシーズン移行を望む声の方が多かったというところはあると思います。

見かけや印象論で言えばJリーグJFA(というか田嶋氏)の独断とゴリ押しのようにも見えますが、実際は10年前の時点で「欧州とシーズンを合わせてほしい」という声は選手や監督からも出始めていましたし、一部の雪国クラブも諸問題の解決を優先とした上でスポーツ的な観点だけで言えばシーズン移行に同調するような声明もありましたから、やはり現場としては「シーズン移行を目指してほしい」という部分が大多数を占めていた事は事実でしょう。そこにJリーグJFA陰謀論的に絡めるのは違うかと。暑さ問題に関しても「結局8月1週に開幕するなら同じじゃないか?」という意見は理解できる一方で、8月開幕を避けられないとしても6〜7月を丸々カット出来るだけでも大きい。個人的にはその部分に関しては移行を躊躇させる要因にはならないと思いますし。

 

ただ海外移籍については…この部分に関しては、選手は間違いなく移籍しやすくなるでしょうし、海外に移籍する・移籍したい選手にとってのメリットは間違いなく大きいですが、Jリーグが言うような「移籍金増収」に繋がるとは思いませんし、フリー移籍が増える可能性すらあります。

 

 

しかし、これも難しいところで…おそらく、シーズン移行をしようがしまいが、Jリーグから海外に移籍する選手の移籍金が劇的に増える事は当分起こらないと思います。そこに関してはJリーグがやや楽観視し過ぎな部分です。

ただ同時に、むしろ移籍金がそこまで変わらないのであればこそ、さほど多くない移籍金ならシーズン途中に抜けられるリスクを避ける事の方を優先したいクラブは多いと思うんですよね。実際に2019年のFC東京や2021年の川崎はそれで相当苦しい目に遭った訳で、サウジアラビアという存在が出てきた今となっては今季の名古屋のようなケースも今後出てくるでしょう。シーズンが終わってからの移籍であれば編成をある程度仕切り直せる。そう都合良く移籍金は増えないでしょうが、そのリスクを軽減したい意図は現場には存在しているでしょうし、後押しというよりもその部分での論調の底上げは影響きたのかなと。

 

 

 

一方で、これだけ大きな決断にJリーグは踏み切った訳ですから、それ自体にも当然ながら大きなリスクは存在しています。

既に指摘されているように、雪国クラブでは今後のクラブ運営・試合運営に対するリスクは当然発生する。Jリーグそこに対するフォローやケアはしっかりやらなければならないのは大前提として、それをしても厳しい…という可能性は当然にある訳ですから、もし失敗しそうな時の対策も用意しておく必要はあるように思います。

 

 

例えば上記ツイートで書いたように、26-27シーズンから30-31シーズンまでの5シーズンは秋春制でやるとして、3シーズンを消化した28-29シーズン終了のタイミングで一度精査する。それでやはり秋春制は無理があるとなれば、残りの2シーズンを秋春制で消化しながら2032年シーズンには春秋制に戻せるようなフォーマットを用意しておく…とか。上記のスケジュールが実現可能かどうかはともかく、そういう可能性を踏まえた措置は何かしら持っておくべきだと考えています。

 

そして、最後まで強硬に反対した新潟を悪者にしてはならないという事も心に留める必要があります。実際問題、今回の件は最初から「全員が得をする結末はない」という前提を誰も否定できない事案な訳で、新潟のようなクラブからすればそれは死活問題に直結する。もしJリーグ全体の利益が明確に秋春制の方にあったとしても、新潟としてはまず自社の利益を守らなければならないのはエゴではなくクラブとしての責任であって、新潟が他所のクラブの利益を考慮して今回の事に賛成する理由は全くもってない。その点で、今回のスタンスを徹底した新潟の中野幸夫社長のスタンスは立派でした。

一方でそれは秋春制でメリットが見込めるクラブにも同じ事が言えて、自分達は利益が見込めるのであれば新潟等の雪国クラブの為に反対する理由もない。今回の秋春制問題の難しいところは利害関係がリンクしないところな訳ですから、決まった以上はJリーグも新潟を始めとした雪国への最大限のフォロー、ないしは悪者になる覚悟を持たねばならないと思っています。

 

同時に、新潟をシーズン移行を阻む厄介者的に扱う声であったり、逆にシーズン移行に賛成したクラブを裏切り者やJFAに媚を売ったと扱う声もありますが、そこで罵り合いに至るのは単にお互いの心象を害する以外の結果は生まないでしょうし、不必要な敵を生むだけです。そこはこの件に対しての意見を発する時は、賛成だろうが反対だろうが心に留めて物事を言う必要があります。

 

 

 

Jリーグが言うように秋春制にすれば全てが好転するとは到底思えない一方で、今後生じ得るリスクを踏まえた時に、シーズン移行か春秋制維持の為の制度変更のどちらかはいずれ迫られるものだったでしょうから、外的要因を踏まえた上で反対ではない…それが私なりの見解というか、感想といったところでしょうか。