RK-3はきだめスタジオブログ

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妙味〜2024明治安田J1第9節 名古屋グランパス vs セレッソ大阪 マッチレビューと試合考察〜

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今日は後半からはF1と二元中継です

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビューは2024明治安田J1リーグ第9節、名古屋グランパス vs セレッソ大阪の一戦です。

 

 

 

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開幕3連敗。開幕戦の鹿島戦の大敗のインパクトとや全て無得点での3連敗だった事で先行きに不安感を抱く人も多かった名古屋ですが、第4節柏戦で今季初勝利を掴んで以降は一気に4連勝。第7節福岡戦こそドローに終わりましたが、柏戦での初勝利以降はリーグ戦5戦を4勝1分と一気に加速度を上げて走っています。今季は昨季までの3バックシステムに可変の要素を取り込み、去年よりも自発的なチャンスクリエイトを意識したブラッシュアップ戦術を志向。怪我人の復帰もあり、今季のコンセプトが確実に身についてきたというところでしょうか。

そして昨季からの戦術のマイナーチェンジとブラッシュアップ……少なくとも現時点、リーグ戦の1/4を経過しようとしている段階で最もそのアプローチが上手く行っているのがセレッソでしょう。クラブ創立30周年を迎えた今シーズン、小菊昭雄監督体制で昨季から導入を試みていた4-1-2-3とチームのコンセプトに沿う選手を的確に補強。その結果、開幕から8試合を終えて広島と共に未だ無敗で、前節は遂に首位にまで到達。もっとも状態が良いチームである事は確かでしょう。ロケットスタートの火をどこまで燃やし続けられるかは大いなるポイント足す。

復活か、悲願か……積極補強と戦術アプローチのマイナーチェンジに補強で説得力を持たせた好調チーム同士の対戦が、今後の優勝争いなどのような影響を与えるか注目です。

両チームスタメンです。

 

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前節は磐田に数的不利ながら1-0で勝利した名古屋は磐田戦からスタメンを3人変更。前節はスタメン、初ゴール、一発退場とあまりにも盛りだくさんだったルーキー倍井謙が出場停止となった事で前節は右WBだった和泉竜司をシャドー起用として内田宅哉が右WBとして先発復帰。3バックの一角には吉田温紀を起用し、GKは第6節札幌戦以降を負傷離脱していたランゲラックが入りました。左WBで先発の山中亮輔、前節までランゲラックに代わり攻守を見せていた武田洋平は古巣対決です。

基本的にスタメンを固定して戦っているセレッソは前節からの先発変更はなく、今季のチームのトレードマークともなっているブラジル人3トップを最前線に据えた4-1-2-3でスタート。西尾隆矢に加え、U-23インドネシア代表のジャスティン・ハブナーがAFC U-23アジアカップ参加の為に欠如となりましたが、直近のルヴァン杯で復帰した香川真司がリーグ戦では第4節鳥栖戦以来の復帰を果たしています。

両者とも水曜日に行われたルヴァンカップではターンオーバーを敢行しており、ルヴァンカップから連続で先発に名を連ねるのは名古屋は吉田と内田の2人、セレッソは鳥海晃司のみとなりました。

 

 

 

本日の会場は愛知県豊田市豊田スタジアムです。

 

 

豊田駅を出て、いずれも黒川紀章氏が設計した豊田大橋を抜けたところに聳え立つ大型スタジアム。豊スタも出来て20年以上建ってるんですね…。元々は全天候型の屋根を持つスタジアムとして稼働していましたが、現在は改修工事により屋根は固定される形になりました。

今日の試合はグランパスクラシックデーとして開催され、場外ステージではOB選手によるトークショーであったり、歴代ユニフォームや獲得トロフィー、過去の名シーンや歴代所属選手のパネルが複数展示されます。セレッソにとってはパロマ瑞穂スタジアムも含めたアウェイ名古屋戦は近年の鬼門で、最後に勝利したのは柿谷曜一朗フォルランがアベックゴールを決めた2014年(ただし、天皇杯ではその後はセレッソも豊田で何回か勝ってる)。名古屋が要塞を死守するか、セレッソが鬼門打破を達成するか…!

 

 

立ち上がりのリズムを掴んでいたのはセレッソでした。最終ラインでボールを持ちつつ、突破力のあるサイドに振ったところから一気に打開。名古屋もエリア内でのブロックや対峙した時など構えて行う守備では強みを見せていましたが、セレッソもサイドにポイントを置いた攻撃により多くのクロス、多くのセットプレー獲得には繋がっていました。

13分にはルーカス・フェルナンデスの左CKをファーサイドで舩木翔が頭で合わせるもクロスバー直撃。18分にはレオセアラと奥埜博亮のパス交換から左サイドを突破したカピシャーバのクロスをルーカスが落としたところに柴山昌也がワントラップからボレーを放ちますが枠を捉えられず。

 

 

 

対する名古屋はセレッソの攻撃に対して、可変システムを採用しているだけに選手間のスライドをこまめに行いながら対峙したいところでしたが、セレッソがストロングポイントとするサイドの圧力に押し込まれる形になり、WBは押し下げられて5バックにならざるを得ない展開になっていました。局面での対応は集中してやれていましたが、陣形としてはかなり後ろに重心がかかった事でボールを持った時の道筋を見つけられなくなり、またセレッソの攻撃ターンに至る…という流れを繰り返す形に。

この状況に長谷川健太監督は前半27分の時点で吉田を下げて河面旺成を左CBとして投入。4バック時には左SBとしてプレーできる河面の投入で山中が下がりすぎない態勢を作ろうと試みます。

 

 

 

この交代以降、名古屋は河面がサイドのスペースのケアを行う事で山中を前に出せる状況が生まれ始め、左サイドでそれができるようになると自然と右サイドの三國ケネディエブスと内田宅哉の間でも同じような連鎖を作れるようになるなど可変システムの妙味が少しずつ活きてくるようになりました。

名古屋が修正してからは試合の展開はイーブンな展開に持ち込めるようになりましたが、一方で名古屋は前半の間はそこからシュートチャンスに漕ぎ着けるまでには至らず。対するセレッソは押し込んでいた序盤と比較するとより長いボールを用いでのサイド打開を狙い始めたところで前半は0-0で終了。

 

 

名古屋は後半から山中を下げて中山克広を投入。中山は右WBとして投入し、内田を左WBにスライドした形で後半に向かいます。

後半も基本的に主導権を握ったのはセレッソの方で、コンパクトな陣形を保ちながら前進していく事によって試合の基準ラインのような位置を高く保ちながらプレーし続けられていました。ただ、名古屋も前半に施した修正に加えて中山という縦に速くプレーできる選手を投入した事で、守備時は4バック仕様にしながらセレッソの攻撃を切った後のボールの出しどころを確保した事で前半のような一方的に押し込まれるような展開は脱せており、試合の構図を「押し込むセレッソ」「カウンターを狙う名古屋」で両者にターンが訪れる形に持っていく事が出来るようになっていました。

 

 

 

セレッソは63分に奥埜と柴山を下げてヴィトール・ブエノと香川を投入。インサイドハーフをそのまま入れ替えて先手を狙います。

試合はここから一気に動きました。65分、名古屋はランゲラックのゴールキックからのルーズボールに走り込んだ稲垣祥がダイレクトパス。左サイドで受けた和泉竜司からインを取った永井謙佑の折り返しがCKを誘発すると、森島司の蹴った左CKから中央でワンタッチあった末に和泉が強烈なシュート。これはGKキム・ジンヒョンがなんとかはじきますが、こぼれ球を三國が押し込んで名古屋先制!三國はこれが移籍後、そしてJ1でも初ゴールという事に。

しかし開幕9戦目にして初めて先制点を許したセレッソもすぐさま反撃します。67分、名古屋の自陣でのビルドアップに対して詰めるようなプレスを敢行すると、パスがランゲラックから河面に渡ろうとするところをブエノがカット。そのまま右サイドを抉って折り返すと、無人のゴールの前で待ち構えていたレオ・セアラに割って入る形でカットを試みた三國の脚に当たってオウンゴール。0-0だった試合は一瞬にして1-1に。

 

 

名古屋は1-1になった直後に米本と内田を下げて椎橋慧也とパトリックを投入し、和泉をWB、永井をシャドーにした上でパトリックを最前線に送り込みます。ただ前半からセレッソの強烈なアタッカー陣への対応で疲労も否めなくなっていた名古屋は、ルーカスが張ってインをブエノが突く連動でブレイクしにかかってくるセレッソの右サイドを捕まえ切れなくなっており、逆に中央のスペースはブエノと入れ替わる形でフォローに入った毎熊晟矢にケアされてなかなか状況を翻せなくなっていました。

逆にセレッソもサイドを抉ってクロスまでは良い流れのアタックを何度も仕掛けられていましたが、ターゲットやフィニッシャーとしてのタスクをレオ・セアラに依存する形になっていた事で、サイドは名古屋が捕まえられない攻撃はできていたけど、ファイナルサードは名古屋に捕まりやすいジレンマのようなオフェンスの状態に。セレッソはそれを解消すべく、82分にはカピシャーバを下げて山田寛人を投入。

 

 

 

すると82分でした。名古屋は自陣の深い位置でフリーキックを獲得。ここで河面がファーサイドを目掛けてロングボールを入れるとパトリックが競り勝ち、走り込んだ森島の動きがうまくフェイントになったところで永井がジャンピングボレー!!ベテランストライカーの鮮やかで豪快な一撃で名古屋勝ち越し!

 

 

セレッソは85分、インサイドに持ち運んだ毎熊が香川に浮いたパスを送ると、このボールを絶妙なコントロールでキープして相手をかわした香川がスルーパス。ここにレオセアラが抜け出すセレッソにとっては願ったり叶ったりな決定機が訪れましたが、レオセアラのシュートは僅かに枠の左へ。

無敗記録を一日でも長く伸ばしていきたいセレッソは終盤にかけて猛攻を仕掛けますが、名古屋も85分のシーン以外は決定的な場面を作らせずに跳ね返して試合終了。遂にセレッソが9試合目にして今季初黒星!勝利した名古屋はこれで開幕3連敗のち6戦無敗となりました!

 

 

 

基本的に試合の主導権は常にセレッソにあった試合でしたが、それに対して名古屋が上手く対応し続けた…というゲームでしたね。セレッソからすれば前半20分くらいまでに仕留めなければならないゲームでしたけど、逆に言えば押し込まれながらも耐えて修正までの時間を稼いだ名古屋守備陣の奮闘というところも含めて。

名古屋の可変システムは守備時は4バックのような形にした上で、守備時でもどちらかのWBは前に出れる状況を作る事で守備のターンが終わった時にそこを糸口に攻めたい狙いがあると思います。そこで前半はセレッソのサイドの圧力に対してWBが押し下げられてしまい、前半で途中交代の憂き目を見た吉田はプレー自体が必ずしも悪い訳ではありませんでしたが、あれほど強いサイドアタックを前にCBとSBの間を行き来できるほど器用ではない。そこで前半のうちに器用な事ができる河面を入れた事で山中を前に押し出し、5バック状態になる事を避けられるようになりました。一つの栓を抜いたら一気に水が抜けるように、左でその連鎖が作れるようになると不思議なもので右でも同じ事ができるようになる。名古屋はその修正を施す事で前半のうちに試合展開を最低限イーブンに近いところまで持っていけたのは大きなポイントでしたし、そのWBに後半から中山を投入した事も、セレッソの攻撃に対してはある程度構えた状態で守らなければならない事を前提にした上でボールを奪ったら一気に翻す、その為にミドルゾーンから敵陣に押し込む人数を確保しておく…という狙いの筋道が通った采配だったと思います(もっとも山中を下げた理由に関しては負傷交代によるものだったとの事ですが)。

パトリックを最大限に活かした決勝点もそうですが、自軍のストロングポイントを発揮できるエリアまでどうやって運ぶか、その為に必要な手当てはなんなのか…というところで前半の修正はお見事でしたし、中山の投入もチームとしての狙いとの整合性が取れていた。そこはあれだけの実績積んでいるのは伊達じゃないというか、試合自体は劣勢だったからこそ長谷川健太の妙味みたいなものが実によく出た試合だったのでは。

 

 

一方のセレッソは、別に彼らのクオリティやパフォーマンスが否定されるような敗北ではなかったと思います。名古屋に対応される前の20分に手を取らなければならない試合ではあったとは感じましたが、対応された後でも押し込めていたように、チームとしてなぜここまで無敗を続けられていたかにたるだけのプレーは十分に出していました。試合は押し込むセレッソとカウンターで刺しに来る名古屋という構図で進んでいった中で、それこそ後半は何度か中山辺りが一気に抜け出しちゃいそうな場面をしっかり潰す…という事もやっていましたし。

ただ、ちょっとセレッソにとってジレンマとなっていたのは…上でも書きましたが、特にブエノ投入後のサイドでの崩しはほぼ完璧で、毎熊がインサイドをフォローしながら右は張ったルーカスとポケットを狙うブエノで攻略する、左はカピシャーバの個人のパワーを香川と登里でフォローする状態を作れていた。ここは凄かったと思うんですけど、右でも左でもパターンを作っていたがゆえにフィニッシュのところ、ターゲットとしてのタスクがレオ・セアラに全乗っかりになってしまっていて、そこでルーカスもカピシャーバもブエノも自分達でフィニッシュに行くというアクションも実は余りなかったように見えましたし。

名古屋からすれば、セレッソのサイド攻撃は捕まえられないけどファイナルサードはボールの行き先がレオセアラしかなくなってるから捕まえやすい…そういう状況になっていたところが、セレッソがサイドを崩しまくっていた割に決定機に感じるシーンがあまり多くなかった要因だったのかなと。じゃあいつもはどうなんだよと言えば、シュートまで行くかどうかはともかくとしてもなぜかファイナルサードに奥埜が入ってくるんですよね。そこで相手が絞れなくなるけど、あの時点ではもう奥埜はいなかった…セレッソにはそういう取捨選択のジレンマはあったのかなと。だからこそ、カピシャーバを切ってでも山田を投入した小菊監督の采配は良い交代策だったと思ったのですが…その直後に点を取られてしまった事で「1-1の82分以前に必要だった事」と「1-2になった82分に以降に必要な事」が変わってしまった事もポイントだったのかなと。

 

 

 

【うれしはずかしじゅんいひょうのコーナー】

 

 

J1第9節分は京都サンガFC vs アルビレックス新潟マッチレビューページに記載しています。

 

 

中国GPを見ながら書き切るマッチレビューでした。

ではでは(´∀`)