RK-3はきだめスタジオブログ

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どうしたガンバ大阪!?今季好調の要因を5つのポイントで考察する回【後編/オフェンス編】

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え、ほんとに3位やん(3度見)

 

どーもこんばんは

 

さてさて、ガンバ大阪、3位です。

ガンバ大阪、3位です。

去年は下から3番目だったのに。

 

 

 

…いやね、言ってもまだJ1は半分にも到達していない訳ですから、シーズンが終わった時に「前半戦はなんだったのか」と嘆かずにはいられない結末になる可能性は当然ありますよ。それでもね、やっぱりね、なんでしょうね…記憶にないんですよ。近年。ここまで心穏やかな熱狂と共にシーズン中盤を迎えた事が。2020年は最終的には2位でしたけど、情緒としてはジェットコースターみたいな中で2位に着地したようなシーズンでしたし(それはそれですごい)。

という訳で今回は前回と同様に今季好調のガンバの2024年は果たして何が良いのか。何が良くなったのかを考えていきたいと思います。前回がDF面、守備での事を中心に書いたので今回はオフェンス面。というよりはポヤトス体制で培ったビルドアップの妙についてです。

 

 

 

【おしながき】

中谷加入と焦れないDFライン(前編)

ハイプレスではない前線守備(前編)

③ビルドアップの出口確保

④加速と減速の状況判断

ゼロトップ宇佐美の効果(Note編)

 

 

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③ビルドアップの出口確保

 

ビルドアップの安定感は極めて向上したなと思います。それはもちろん、チームとして去年一年を通して痛い目に遭ったりしながらも同じ意識でやろうとし続けた成果がチームのスタンダードとして浸透した…みたいな部分もそうでしょうし、その上で今季はGKに一森純という長短なんでもござれのパスを出せる選手が入った事もそうでしょう。

それと同時に、昨季と今季の違いというところで言うならばシステムの変更によって出口を確保しやすくなった、或いは出口を増やすようにした…という部分があるのかなと。

 

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ご存知の通り、昨季は4-1-2-3…ボランチの位置には一人のアンカーを起用していた昨シーズンから、今季はボランチを2枚にした4-2-3-1を採用するようになりました。

去年は主にアンカーをネタラヴィ、一部試合では山本悠樹やダワンが務めていましたが、DFラインでビルドアップを試みた時にどうしてもネタラヴィを探してしまっていたと言いますか、ビルドアップの出口がアンカーだけになってしまっていたような状況が結構多かったように見えたんですよね。すると前線から積極的にプレスをかけてくるタイプのチームはまずガンバのアンカーを押さえに来るようになった。特に前半戦はロスト覚悟で「ビルドアップ」「ポジショニング」の意識付けを徹底していたような時期でしたから、それこそ前編で書いた「パスコースを消す守備」のような状況に陥りやすくなっていたように見てたんですよね。

ただ、去年の夏の好調時を振り返ってみると…あの時期は両SBが高い位置を取るようになった代わりにインテリオールの2人のうちのどちらかがボランチの位置まで落ちる場面が多くなった事でロストが激減しましたし、シーズン終盤の真夏の夜の夢が醒めたような時期でビルドアップが割と安定していたな…みたいな印象がある試合って第30節名古屋戦と第32節福岡戦の前半だったんですけど、この2試合の共通点って今考えたらWボランチだったりするんですよ。特に福岡戦は山本悠樹と倉田秋が低い位置で2人繋ぎ役に徹していた側面があり、それが上手く機能していた前半はビルドアップがスムーズに回っていましたし。

 

 

つまるところ、別にWボランチが良いとかアンカー+インテリオールの形が良いとかそういう話というよりは、少々後ろの人数を増やしても前線でボールを運んでいける選手は一定数いるので、それなら最終ラインでビルドアップをした時にパスの出口を確保するにはボランチの位置に選手が2人いた方が良い…というところがシステム変更の要因としてあったようにも思うんですね(もちろん中盤での守備の整理、強度を発揮しやすいシステム構築みたいな部分もあるでしょうが)。なんにせよ、Wボランチにした事で昨季のようにネタラヴィが左右の回収と配球を全部担う、いかんせんネタラヴィが1人のプレスくらいなら剥がせちゃうもんだからわかりやすく敵も味方も「ネタラヴィ狙い」になっていた状態から、今はビルドアップの出口をどこに作るかというところが実に整理された印象があります。

推測ですが、今季半田が俗に言う偽SBのような形で内寄りの位置でビルドアップに参加するようにしているのは出口を2つ持っておく為の措置の一つだと思うんですよね。つまるところ、鈴木やネタラヴィとは異なりダワンは配球型のボランチではなく、むしろ運動量やスペースを使う・埋めるといったアクションで輝ける選手ですから、ダワンのストロングポイントを出すにはなるべく前に出しておいてあげたい。そこでWボランチが作る2つの出口からダワンが離脱する代わりに半田がその出口を担える状況にしておく…という事なのかなと。逆に言えば、第6節京都戦で「半田、そこまで中に寄らなくていいんじゃないの…?」という声が多かったのはまだ若干意識が先行した状態の中で迎えたあの試合のWボランチがネタラヴィと鈴木のコンビだった事を思えばしっくりはきますし、意識的にというよりもそれを自然にやれるようになってからは半田もネタラヴィと鈴木が組んだ時は岸本武流との兼ね合いも踏まえたポジションを取るようになった印象です。

 

 

 

④加速と減速の状況判断

 

前述の部分であったり、前編で書いた守備に対するスタンスでもそうですが、今季のガンバはとにかく局面局面での状況判断とそれを踏まえた選択が適切だなと。

基本的にポヤトス監督は「ポゼッション型の監督」というイメージを持たれていると思いますし、それ自体が別に間違っている訳ではないでしょうが、一方では別にポゼッションに拘っている監督という訳でもないんですね。これはもうガンバファンなら大体の方が理解している事と思いますが。実際に就任直後の沖縄キャンプでは東口順昭が「監督は『ビルドアップ手段でしかないから、一発で行けるなら行けよ』って言っているからポゼッションに固執はしていない」と証言していたり、ポヤトス監督自身も「チームプレーと言えばパスを繋ぐことが大事にされがちだが、自分はパスが賞をもらえるものだとは思っていない」「支配という言葉はポゼッションの数ではなく、支配イコールチャンスの数」と語っていて。じゃあ逆にポヤトス監督が何にこだわっているかと言えば「スペースを作る事」「スペースを見つける事」「スペースを使う(人が走る&そこにパスを出す)事」といったスペース三原則なる部分であって、言ってしまえば相手DFラインの裏に明確なスペースがあり、フリーでそこに走り込もうとしている選手がいた時、ボールを持っている選手に実現可能な能力と状況が揃っているならそれはむしろロングボールをドカンと蹴り込んででもそこを狙うべきだよね、という。

それこそこの部分については去年の4月にもこういう感じの長〜いブログを書いたのでそちらを読んで欲しいんですけれども

 

 

去年のブログはどちらかと言えば「ポヤトスはポゼッションに固執している監督ではない」という主語で書きましたが、自分達からしっかりとビルドアップしていく、ボールを保持していくというところを主語にすると、自分達でボールを持つ事はその時点でリアクションではなくなる訳ですから、受け手はスペースを作る為のアクションを自発的に起こせますし、出し手はスペースを見つける/探す時間ができて、その次官は同時にそのパスが本当に通るかどうか、このパスはギャンブルなのかどうか、或いはギャンブルでも賭ける価値のある状況なのかを判断する為の余白にも使えてしまう。即ち、私としてはポヤトス監督の言う「ポゼッション(ビルドアップ)は手段」という言葉の意味するところは、ポヤトス監督が最も強く求めるスペース三原則を満たす為の状況判断をスムーズかつ的確に実行する為のツールなんだという解釈で捉えています。

 

 

 

その上で今シーズンのガンバは上述したような構造でべらぼうにビルドアップが安定したんですけど、ボランチの人数を増やした事でボランチにとってもパスの出口が増えた。これによって、その段階でのベストな判断を下さる時間と余裕をガンバは得た。例えば鈴木がボールを持って、山田康太や坂本一彩が良い感じに抜け出してそこにコースもあるならばロングボール一発で良い。逆にコースはあるけど山田や坂本が動いていない、或いは山田や坂本は動いているけどコースは切られているなら相方のダワンやSBの半田、降りてきた宇佐美に繋げばいいし、繋いだら今度は鈴木自身がフォローに入る…と。

今季のガンバはこの連鎖がめちゃくちゃ上手く回る構造を作りましたし、そうする事で落ち着いて周りを見て判断を下すだけの時間と余裕を確保できた。その上に選手達自身が「焦れずにプレーする」という意識を今季は感覚レベルで持てているんですね。同時に、ポヤトス監督は状況が整っているのであれば縦にロングボール一発を入れる事も選択肢として肯定しているのは昨季から同じ。去年はおそらくポヤトスサッカーを実践しようとする意識とピッチ上での感覚にギャップがあったと思うんですけど、今季はそのギャップが限りなく埋まってきたのかなと。

そういう今季のガンバの状況判断の巧みさをよく表していたのが大阪ダービーにて、一部で「巨大ロンド」とも言われた67分からの約2分ほどのプレーぶりでした。

 

 

…まぁ、一部で議論になったように、これが巨大ロンドと呼ぶに正しいのかどうかはともかくとして、この一連のシーンは実に今季のガンバの状況判断力の卓越ぶりを示したシーンだったなと。

まず最初に黒川から坂本に渡った時点で坂本は3人に囲まれる形になっていました。リードもしていますし、結構セーフティーにクリアする判断になっても間違いではないシーンではあると思うんです。しかしウェルトンにスルーパスを出せるコース自体は空いており、万一相手DFに引っかかったとしても坂本がそのまま、或いはダワンがいつでも代わりにディフェンスに行ける。この条件が揃った時点で坂本のプレーは「思い切ったプレー」ではなく「確率の高いプレー」に変わった事になります。

そしてウェルトンはここからカウンタードリブルを仕掛ける訳ですが、どれだけ御託を並べれども、結局この時点でベストの選択肢は「ウェルトンが独りでシュートまで行けてしまう事」な訳です。それはどんな状況であったとしても、サッカーは出来る事ならばいつ何時もそれがベスト。実際にウェルトンもハーフェーラインを超えたくらいのところまではそのつもりだったと思います。しかし相手の田中駿汰がウェルトンに対して良い間合いをとって、ファーサイドは鳥海晃司がカバーに入った事で、そのベストが成就する可能性は減ってしまった。そこでウェルトンは無理にカウンターを完結させるのではなく宇佐美のフォローを待つ為に減速したんですよね。そのウェルトンからボールを受けた宇佐美も、一度は突破しにいくようなモーションを見せたとはいえ、冷静に周りを見ればシュートコースもウェルトンへのリターンのパスコースも無い。この時点で宇佐美は方針転換をするように黒川に戻し、ガンバの選手が中谷と福岡のCBを含めてセレッソ陣内に来るまでの時間を作り、そこからガンバがボールを待ち続ける時間が始まりました。

 

 

 

つまるところ、この一連のプレーの中でウェルトンは「突破ができない」と思った時に「無理に突破する事」と「無理せずにフォロー(宇佐美)を待って繋ぐ事」の確率を天秤にかけた。そして宇佐美は「シュートコースもパスコースもない」となった時に「シュートなりドリブルなりで強引にこじ開ける事」と「無理して失うよりも敵陣でのボールキープを優先する事」のどちらが今のガンバにとって良いのかを天秤にかけた。ちょうどこの場面ってセレッソに一時的に押し込まれていた時間帯で、目立ったピンチは無かったけれどなかなかガンバ陣内から抜け出せない時間が続いていた中でのこのシーンだったんですよね。だからこそウェルトンも宇佐美も「チームの流れ」「自分の状況」「味方と相手の数と位置」を適切に見極めてジャッジを下した。それをウェルトンと宇佐美だけでなく、全員が細かい思考と適切な判断を繰り返し続けたのがこの2分間であり、今季のガンバの妙味が詰まった2分間でした。

この③で述べたビルドアップの安定を担保にした、根拠を伴ったギャンブルという選択肢を捨てないながらも確立を重視した状況判断力は、多少贔屓目が入っている事は否定しませんがJリーグではトップレベルだろうなと。麻雀で言えば、自分の手牌ではどんな役が狙えるのかの選択肢を大きい役から小さい役までしっかりと用意しつつ、場にどの牌が出ているのかを把握した上で「この感じなら大きな役を狙えそうだからそういう状況に持っていこう」「この感じならちょっと大きいの狙うのやめとこう。小さい役でも上がれる時に大人しく上がろう/素直に安牌を切ろう」というジャッジを適切にできている。「麻雀で勝つ事は運にも左右されるけど、麻雀で負けない事は実力」とはよく言ったもので、今季のガンバはそういうサッカーができているなあとつくづく思います。

 

⑤ゼロトップ宇佐美の効果(Note編)】につづく。

 

 

ではでは(´∀`)