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乱気流の旅人 〜ガンバ大阪 2025シーズン振り返り総括ブログ〜 第1話 誤算→誤算→大誤算 (2024.12.8〜2025.2.22)

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乱気流の中に迷い込んだかのようなシーズンだった。

アップダウンの激しさはこれまでの2シーズンにも見られた現象ではある。だがこれまでの2シーズンは良い時期も悪い時期もそれなりに長く続いた。言うなれば悪い時期は下のところで、良い時期は上のところで安定飛行になったような瞬間がいくつかあったが、今季は振り返れば…一度も安定飛行のフェーズには突入しなかったような感覚がある。それは連勝が躍進に繋がらなかったことの表れであり、同時に連敗がスランプに結び付かなかったことの証明でもあった。熱情が湧き上がるようなエキサイティングな瞬間もいくつかあったし、サポーターの心の奥を冷たい手が抓ってくるような出来事さえも起こっていた。そんなシーズンは最後、指揮官との別れに至る。それは"安定"とは程遠い1年間であり、そして3年間だった。

 

 

今季の評価の難しさはある意味、ポヤトス体制の評価の難しさと同義なのかもしれない。

今季の評価を2024年を軸とすれば失敗のシーズンと評するべきかもしれない。理由は単純で、終盤まで優勝争いに生き残り天皇杯でもファイナルまで進んだ昨季から比較すれば、カップ戦は2つとも早期敗退。リーグ戦では優勝争いに一瞬も絡めず、なんとか一桁順位をキープするのが精一杯の年となった。その意味では期待はずれ…そう評される事が自然なシーズンなのだろう。一方、2023年…ポヤトスガンバが始まったその時を軸にすると、物語はまた見え方を変えてくる。ポヤトス監督の就任が発表された時点でのガンバ大阪の状況───その時点を起点に話を始めれば、勝ち越しての9位で終わった事実に期待はずれ感を抱けている事自体が成長、というところでもある。その観点で言えば、2024年との比較になれば劣るものの、少なくとも失敗と断じることはできないと思う。

SNSを見ても、その意見の幅は多岐に渡った。他の誰かを戦犯にこじつけてでも監督を盲信するように擁護する人もいれば、確かにポヤトス体制での積み重ねというべき素晴らしいフットボールで勝利を収めた試合でも「選手が良かっただけ」と一笑に付そうとする者もいた。監督に対して、今の選手に対して、チームそのものに対して。その評価は上から下へ、右から左へ、その幅を往復しながら日々を過ごしていた。その日常は2025年シーズンの全てであり、ポヤトス体制の3年間の推移でもあったように思う。クラブも、監督や選手といった個人も、そしてファン・サポーターも。ガンバを取り巻く全ての人にとっての2025年、そして2023年からの日々は乱気流を旅するような日々だったような気がする。

ただ、それでも確かな事があるとすれば。それは第36節神戸戦の後…おそらく彼の未来は既に決まっていた試合の後、その試合や今年ではなく"3年間の仕事"に胸を張るようなコメントを残した指揮官は、多くの監督が経験できない「拍手を背にピッチを去る」という形でガンバ大阪を後にした、その光景である。

 

 

 

今回から毎年恒例、ガンバ大阪の2025年シーズンを振り返る連載を全4回で更新していく。今回は少し、ポヤトス体制3年間の総括的な内容にもなってくるかもしれない。

是非年明けまでお付き合い願いたい。

 

 

 

【乱気流の旅人〜ガンバ大阪 2025シーズン振り返り総括ブログ〜】

第1話 誤算→誤算→大誤算(2024.12.8〜2025.2.22)

第2話 後日更新

第3話 後日更新

第4話 後日更新

 

【過去のガンバ大阪 シーズン振り返り総括ブログ】

2017年 -嗚呼、混迷のガンバ大阪-

2018年 -奪還-

2019年 -What is "GAMBAISM"-

2020年 -喜怒哀楽-

2021年 -さよならシンボル-

2022年 -砂浜のキャンバス-

2023年 -オトラブルー-

2024年 -SPECIALZ-

 

2025年のJリーグを振り返る記事をまとめたページを開設しました。随時更新していくので是非!

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

 

 

2025年2月14日、それは甘美なる舞台のはずだった───。

大阪・関西万博が開催される、いわば"万博イヤー"のリーグ開幕戦、特別なイベントが行われるシーズンが大阪ダービーで、それぞれ宇佐美貴史香川真司という一般層にも訴求し得るシンボルを擁する。しかもその会場は1970年大阪万博の跡地に息づくスタジアムで、太陽の塔に見守られたその場所で2025年シーズンの幕が上がる……それは2025年の背景を踏まえた時にあまりにも出来すぎたシチュエーション。ダービーで開幕するという事そのものへの賛否こそあったが、それは考え得る中でもっとも甘美な舞台だと思っていた。

世間がバレンタインデーに浮かれた寒空の下に巻き起こった吹雪が混乱の序章ですらなかった事を知るのはこの少し後の事になるのだが、期待で覆い隠した心に燻る不安が顔を出したその時に、ピッチ上の光景とビジョンに表示されたスコアは誤算と呼ぶにはあまりにも処理の追いつかないショックで殴ってきたのである。それは開幕戦を迎える高揚感、そして昨季を終えた瞬間の期待感とは最も遠いところにある感情だった。

 

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……時は少し遡り。

2024年シーズンを終えた時、ガンバファンは大いなる期待の中にいた。最後の最後こそ負傷離脱となったが復活と共に過去最高レベルのパフォーマンスさえ見せてきた宇佐美貴史、半田陸に坂本一彩といった外から獲ってきた若手とユースから育てた若手のそれぞれの躍動、チームと噛み合った外国籍選手の活躍、そして最後のピースのように当てはまった中谷進之介……ポヤトス監督と共に土台作りと意識付けを行った2023年の上にしっかりとクオリティを乗せた2024年のパフォーマンスはタイトルこそ逃したものの、見失いそうなほど遠ざかったかのように思えた10個目の星をそう遠くない未来に見せるには十分過ぎた。リーグ最終戦、優勝を懸けた広島に対し完勝を収めたその試合でシーズンは幕を閉じ、ガンバサポーターは希望を夢に見ながら年越しの瞬間を迎えていた。

 

 

 

誤算、誤算、誤算……序盤のガンバはもう、そう表現するしかない。

その号砲が轟いたのは1月6日の事だった。坂本一彩の海外移籍が報じられたのである。更に新体制発表会を終えて数日後、新体制のメンバーリストにこれまで通り背番号23として登録されていたダワンまでもが中国へと新天地を求めてしまった。1月頭、12月には契約満了選手以外はほとんど聞こえなかった退団リリース、それが年明けに、あまりにも甚大な形で訪れてしまった。

 

……まだ坂本の移籍は想像の範囲内だったというか、25歳以下の日本人選手がJ1でレギュラーを獲得し、二桁得点を獲るという事が何を意味するか…という事を踏まえれば、少なくとも坂本の海外移籍自体は誤算と呼べるものではなく、いつかどこかで訪れる事だろうと想像はついていたはず。ただ坂本にしてもダワンにしても、それが12月ではなく1月に展開した事がガンバにとって大きなダメージとなった。

今の移籍市場は基本的に、レギュラーや主軸クラスの選手の引き抜きは12月中には決着するし、多くのクラブが編成の大部分を固めてしまっている。現に坂本のニュースが出た1月6日にもなれば、早いチームなら始動や新体制発表会を既に行っている事もある。つまり1月にずれ込んでしまった以上、選択肢は①坂本の穴を埋めるには夏まで現有戦略でどうにかする、②適応リスクのある外国籍選手をキャンプに参加できない可能性が高い事を承知で獲得する、③新体制発足の時点でレギュラーと見做されていない選手を獲得する…この3つ。もちろんJ2やJ3の主力なら新体制が固まっていてもステップアップオファーに応じてくれる可能性は低くないが、なまじガンバはJ1の中でも上位の選手層を持っているだけに、お互いが得をしないパニックバイ的な結末に至る可能性も否定できないし(というか実際にそういうケースはこれまでにいくつかあった)、その際の移籍金は"予期しないもの"であるがゆえに相場よりも高くなる。少し後の話にはなるが、満田誠も結局のところ、いざ開幕戦を迎えた時に広島のスタメン構想から漏れていた事が移籍の要因として大きかった。

 

間の悪い事に、ガンバは2025年に向けては"現状維持路線"に沿った強化策を展開していた。放出も極力せず、補強も最小限に…といった具合に。坂本とダワンが退団した時点では、この2人を除けば放出選手の中で最も主力格だったのは福田湧矢で、獲得選手は新卒や復帰組を除けばDFラインのバックアッパーとして迎え入れた佐々木翔悟、近年のガンバの補強方針でもある「今いないタイプの実力者」である奥抜侃志の2人。

この部分は「補強が少ない」と疑問視・不安視する声は坂本とダワンの退団前から声は挙がっていた。ただ、現状維持路線自体は別に間違った判断ではない。なんだかんだ言ってもガンバは…もちろん山本悠樹の例が示すように全員とは言わないが、海外移籍を除けばレギュラークラスの選手であれば「放出する選手を選べる」という立場にある。即ち、よく"血の入れ替え"とは言うが、ガンバは選手の放出をある程度選べる手前、血の入れ替えは現状より戦力ダウンしてしまうリスクの側面の方が大きくなる。その点で言えばガンバは2023〜2024年の間にメンバーは大きく入れ替わったし、特に2024年を迎えるに当たっては山本など主力クラスも多く去った一方で中谷を筆頭に大型補強も実現させた。2024年はある程度"2年分の補強"という意味合いもあったのだろう。2024年に2年分レベルの予算を投じてチームとしてのベースを組み立て、2025年の補強はなるべく必要最小限に抑える……現に2024年は完成度の高いチームを作れて結果も伴っただけに、ガンバ大阪というクラブのバックボーンを踏まえても、クラブが現状維持を選択した事は少なくとも間違った選択だったとは思っていない。

だがその状況で坂本とダワンが抜けた結果、昨季のそのポジションの穴だけがぽっかり空く形になってしまい、年内ではなく年明けに話がずれ込んだ事で大幅な遅れを取る結果となってしまった。倉田秋ボランチコンバートが封じられる混乱の中で迎えたキャンプ地から漏れ伝わる情報は「宇佐美が開幕に間に合わないかもしれない」と……。そんな沖縄キャンプで、ポヤトス監督が掲げたテーマが「ハイプレス」だった事を聞いた時、SNSを含めて外野も若干困惑していたような記憶がある。

 

 

 

ハイプレス自体は別に戦術の一つなので驚くものでもない。しかしガンバは昨シーズン、守備時はゾーンディフェンスで構えて守る形を採り、ハイプレスとは対極的な守り方で結果を出していた。つまりハイプレスを導入するという事は、昨季の守り方を大転換させる事になる。

ポヤトス監督がハイプレス導入を掲げた要因は大きく分けて2つ考えられる。一つは純粋に、2024年のチームを更にブラッシュアップする為には2024年のチームに足りなかった要素を注入する必要がある、その要素がハイプレスだったという事。ここは沖縄キャンプ中の倉田の言葉が最もシンプルかつ端的に表している。

 

始動直後のミーティングで、ダニ(ポヤトス監督)が昨年のデータを使って説明したんですけど、昨季は自陣でボールを奪った回数は多かった反面、相手陣内で奪う回数はリーグでも下の方だった。今季は相手陣内でボールを奪う回数をより多くしていく必要があると強調していました。そうすれば、自ずと得点シーンやゴールに迫る回数は増えていく。今はそこを特に意識して取り組んでいます。

ガンバが次の領域に到達するために。ポイントは「前線からのハイプレス」と「後ろからの優位性」。名和田ら若手の突き上げも重要だ - サッカーダイジェスト

 

監督を含めた現状維持路線は昨季のチームをキープする事を目的としてやる訳だが、最大のメリットは昨季のチームをキープした上で、昨季のチームの強みを残しつつ足りないところを可視化し、強みの上に足りないところを補う、積み重ねる作業をこれまでの継続の中で行う事ができる点だ。

倉田の証言に基けば、ポヤトス監督はその上で今季取り組むべき事としてハイプレスを挙げたミーティングの席上でガンバが相手陣内でボールを奪った回数が少なかった事を強調していた。そこを補う事ができれば、いよいよこのチームは"なんでもできる"という事になる。それがポジティブな側面でのハイプレス導入の意図だろう。

 

…では考えられるもう一つの要因はネガティブな側面…とは言わないが、致し方ない理由でハイプレスを導入した、というところだ。

まずガンバはトップ下の坂本を失った事で、トップ下のプレイヤーは山田康太宇佐美貴史、名和田我空の3人となった。しかし宇佐美は昨季は最前線の起用が主だったし、トップ下起用しようにもジェバリのコンディションが読めない以上はFWが主戦場。そもそも宇佐美のコンディションも不安視されている状況だし、高卒ルーキーの名和田がどこまでやれるかは蓋を開けるまでわからない。要は確実に計算できるトップ下は山田しかいなくなった。これは昨季のよりインテンシティーを押し出す時は山田、よりポゼッションを意識する時は坂本…と言った具合に使い分けられていた状況とは大きな差である。加えて一人で数人分の運動量を誇るダワンもいなくなった。これまでは宇佐美を筆頭に前線の選手の分までダワンが走っていたが、今季はダワンが担っていた運動量を他の選手で分担しなければいけない。その状況…ダワンの役割を分担する為に、最も合理的な策が山田のトップ下起用を前提としてチーム全体でハイプレスをする事だったんじゃないか、という坂本とダワンの退団に端を発した可能性が考えられるもう一つの筋道だ。

 

どっちか、という事はないだろう。おそらくポヤトス監督の頭の中にはどちらの要因もあったと思う。その配分がどうなっていたかはわからないが、確かな事は3つある。一つは敵陣でのボール奪取は昨季のガンバに足りなかった部分であること、二つ目はハイプレス、即時奪回は現代サッカーのトレンドであり、特にJリーグは顕著にその潮流に乗っていること、そして三つ目は理由はどうあれ、ハイプレスを敢行する上では山田康太の存在が必要不可欠になる…という事である。

2024年、ゼロトップ運用時のCFを含めてトップ下を務めた3人のタイプはまさしく三者三様だった。宇佐美は他の追随を許さないほどの圧倒的な質とアイデアを担保してくれるなら、坂本はリンクマンとしてミドルゾーンとアタッキングサードを繋ぎながらストライカーとしての要素も備えていた。では山田は?となると、セカンドストライカーとしてアタッカーの才覚を持ち合わせると共に、トランジションでの貢献であったり、一人で行く時も複数人で奪いに行く時もプレスの起点がすこぶる優れていたところが特徴であり強みだった。となると、ガンバがプレスを基調とした戦い方を選択する以上は山田の存在はどうしても必要不可欠だったし、ポヤトス監督がメディア向けに口に出した訳でもなければチームミーティングでハッキリと言った訳でもないと思うが、頭の中の構想では山田康太ありきで考えていたんじゃないかとは容易に考えられる。

ハイプレスという言葉がメディアに思った時、ファンやサポーターが一抹の不安感を覚えたのはハイプレスそのものの是非ではなく、昨季までの守り方から大きく変更する形になりかねないところだった。ただ、相手によっての向き不向きで結果と内容が大きく変わる試合もいくつか見ていた上に、ガンバに降りかかったいくつかの誤算を振り返った時、チーム方針を転換させるのではなくゾーンもやれる、ハイプレスもやれる…といったように選択肢として持ち合わせようとする事には一定の整合性があったと思う。だがこの時、この事こそが最大の誤算であった事をファン・サポーターは誰も知らず、そして"事"は既に水面下で爆発の瞬間を待っていた事など知る由もなかった。

 

 

 

2025年シーズンは遂に開幕の刻を迎える。

対戦相手はセレッソ大阪。開幕戦から大阪ダービーをぶつける事への是非には賛否があったが、しかし今年は大阪・関西万博が行われる年で、1970年大阪万博の跡地に本拠地を置くガンバ、2025年万博の会場となる夢洲に程近い舞洲にクラブハウスを置くセレッソが、太陽の塔に見守られたようなスタジアムで2025年の幕を開けるというシナリオは実に甘美にもので、用意された舞台としてはこの上ないシチュエーションだった。試合前にはWEST.の小瀧望氏、更には吉村洋文大阪府知事とミャクミャクまでスタジアムに足を運ぶ。オープニングセレモニーとしてはあまりにも出来すぎていた。否が応でも昂るテンションは、絶望への助走を加速させていく。

2-5。新シーズンの開幕戦、それはオフシーズンの総決算とするにはあまりにも皮肉な、誤算続きのオフシーズンに最大の誤算を投下する結末だった。

 

 

この日のスタメンが出た時、多くのファンが抱えた期待と不安、目についたポイントは同じものだったと思う。

宇佐美が間に合ったという事、高卒ルーキーの名和田が大抜擢された事…そしてハイプレスを標榜するならば、そのキーマンとなる事が誰の目から見ても明らかな山田がベンチにすら入っていない事…。

 

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おそらくガンバがやろうとしたハイプレスは「相手のボールを奪う」というよりは「相手のミスを誘発する」という表現の方が正しかったと思う。

実際、開幕戦の前半も意図は見えていたというか、やろうとしている事が機能した場面はあった。22分の宇佐美のシュートに至るシーンはわかりやすい例と言える(DAZNハイライト)。この場面で言えば、相手のSBに入った時には対面のWGである奥抜と山下のタスクは奪いに行く事ではなく、なるべく近い距離で縦を向く事。その時に宇佐美と名和田はやや2トップ気味になって、ボールサイドの方にいる選手が横のコースを切り、斜めのコースにパスを出さざるを得ない状況を作る。苦しい状況で斜めに入れたパスをネタラヴィか鈴木がインターセプトする事で、展開力のある彼らが攻撃のフェーズに移行させる…という流れだ。そう考えれば、確かに"ダワンの負担分を全員に分散させる"という点で理に適ってはいた。

 

 

だがこれを成立させようとなると、トップ下の位置に入る選手がトランジションの対応やプレスバックに長けた選手である事が不可欠になる。実際、セレッソが斜めのコースにドリブルで介入する選択肢を見せてからわかりやすく決壊するようになっていった。少なくともトップ下にはそういう状況もケアできる選手が求められる。

名和田にそこまでをいきなり求めるのは酷な話だろう。宇佐美はなんやかんや言いながらもコースを限定するプレスはできるので、この戦術でも1トップのタスクには対応できるが、前述したトップ下での守備タスクは厳しくなる。少し機能した気配があったリズムが少しずつ剥がれていくにつれて、この戦術は山田康太ありきで組み立てられたもの、山田康太ありきでトレーニングしていたもの、そして彼がいないと何が起こるのか…その事を痛感させられるに至った。もちろん大敗の責任全てを山田に被せる事は筋違いだったが、ガンバはハイプレスをやる上での"大前提"が崩れた状態で無理やりハイプレスをせざるを得ない状況になってしまった。名和田の起用に関しても、抜擢というよりはそれ以外の選択肢が無かったと表現する方が正解だろう。

 

 

 

ガンバはこのハイプレスを続けるのか?去年の形に戻すのか?それとも一旦封印して、おそらく怪我か何かで欠場していると思われる山田の復帰を待つのか?

期待で覆い隠した心に燻る不安が顔を出したその時に、ピッチ上の光景とビジョンに表示されたスコアは誤算と呼ぶにはあまりにも処理の追いつかないショックで殴ってきた。それは開幕戦を迎える高揚感、そして昨季を終えた瞬間の期待感とは最も遠いところにある感情だった。だが世間がバレンタインデーに浮かれた寒空の下に巻き起こった吹雪が混乱の序章ですらない事を知るその1週間後の事である。

 

 

第2話につづく。

 

 

【乱気流の旅人〜ガンバ大阪 2025シーズン振り返り総括ブログ〜】

第1話 誤算→誤算→大誤算

第2話 後日更新

第3話 後日更新

第4話 後日更新

 

【過去のガンバ大阪 シーズン振り返り総括ブログ】

2017年 -嗚呼、混迷のガンバ大阪-

2018年 -奪還-

2019年 -What is "GAMBAISM"-

2020年 -喜怒哀楽-

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