RK-3はきだめスタジオブログ

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今年にあって去年にないもの〜明治安田生命J1リーグ第2節 ガンバ大阪vsサガン鳥栖 マッチレビュー〜

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今年も太陽の塔がドーン

 

どーもこんばんは

 

さてさて、本日のマッチレビュー明治安田生命J1リーグ第2節、ガンバ大阪vsサガン鳥栖の一戦です!

 

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さしずめ、ここ数年のガンバはずっと「シン・ガンバ」なるものを模索しては頓挫して、手探りの先を掴めないままで生きてきました。

抱いた期待はいつもいつの間にか淡い絵に描いたよう餅となり、夢はいつも夢で終わる日々を繰り返した。いつしかこのチームにとって、目標や希望はどこか皮肉にすら聞こえる響きにさえなっていました。

 

 

今年、ガンバにとっては2018年のレヴィー・クルピ以来、そして欧州出身監督としては1999年のフレデリック・アントネッティ以来となるスペイン人のダニエル・ポヤトス監督を招聘。昨年のエンブレムに続いて今季はユニフォームがヒュンメルに変わり、そして7番が新たなる象徴へと引き継がれました。

終わりの見えない脱皮を繰り返そうとしたここ数年のジレンマにケリを付けるタイミングは逃せば逃すほど取り戻せなくなっていきます。期待と希望、危機感と焦燥感、夢と決意……32年目を迎え、クラブとしての人生の岐路に立つこのクラブは今、何を求め、求められるチームになっていくのでしょうか。新章はいつもパナスタから始まります。

両チームスタメンです。

 

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ガンバは開幕戦からスタメンを3人変更しました。開幕戦ではアンカーを務めたダワンがインサイドハーフに上がり、アンカーには開幕戦は途中出場となった新加入のネタ・ラヴィが初先発。開幕戦では杉山直宏と食野亮太郎が両WGでしたが、今日はファン・アラーノと山見大登のセットになりました。ベンチには新加入で開幕戦は欠場したイッサム・ジェバリが初のメンバー入りを果たしています。開幕戦に続いて宇佐美貴史インサイドハーフ起用。東口順昭と谷晃生の争いが注目されるGKは今日も谷でスタートです。谷はJ1の選手としては初のパナスタ!

開幕戦では湘南に大敗した鳥栖はスタメンの変更は一人。前節はボランチ起用だった福田晃斗が3バックの一角に入り、ボランチには藤田直之が新たに起用されています。前節はベンチ外だったメンバーとしては島川俊郎と菊池泰智が新たにメンバー入り。昨季はお互いに逆のイメージが強かったですが、今季は開幕戦に続いて岩崎悠人を右、長沼洋一を左で起用しています。

 

 

 

本日の会場は大阪府吹田市パナソニックスタジアム吹田です。

この日は「青黒劇場」、そして今年からサプライヤーに就任した「ヒュンメルパートナーデー」として開催され、ヒュンメルのクリアファイル入りショルダーバッグが来場者にはプレゼントされます。スタジアムには先日現役を引退したOBの橋本英郎氏、そして2022年のM-1チャンピオンであるウエストランドが来場。橋本氏に関しては試合前に引退セレモニーも実施されます。また、スタジアム内では昨季から登場した新マスカット「モフレム」にちなんだショップ、そしてキッズルームもオープンしています。また、スタジアム場外ではヒュンメルの臨時大型ショップも営業します。

パナスタでのシーズンも早8シーズン目。ちゃんと予定通りに第2節のホーム開幕戦を戦うことが出来るのは実に2009年以来となりました。今季からアウェイ側のスタンドの大型ビジョンがヒビノ株式会社製の横長のビジョンが新たに設置。クラブとして推し進めるブランドとビジネスとしての拡大は、今年もしっかりと力を入れていく姿勢が窺えます。

 

 

本日は現地観戦です!

 

 

ウエストランドも見てきたよ!観戦日記は上のリンクから↑

 

 

 

 

序盤、畳み掛けたのは鳥栖でした。3分に右からCKを得ると、藤田のボールがエリア内でフリックされたところに原田亘。いきなり迎えた決定機は半田陸がなんとかブロックすると、直後の左からのCKではこぼれ球を長沼がミドルを放ち、これをブロックして迎えたCKからの長沼のシュートは谷晃生が好セーブ。ダワンのナイスカバーを含めた守備陣の粘りでどうにか掻き出しますが、立ち上がりからまさかの4連続CKを喰らう難しい展開に。

 

しかし序盤の嵐のような猛攻を抜けると、次第は少しずつガンバペースに移っていきました。12分には半田の縦パスを受けた宇佐美が左サイドにスルーパスを送ると、抜け出した山見が得意な形でのカットインからシュート。これはGK朴一圭に阻まれるも、ガンバはポゼッションを徹底しつつ、山見やアラーノが裏に抜けられそうなスペースを見出せば長いボールも駆使していくなどしてリズムを構築しており、特に鳥栖の右CBである福田は元々中盤の選手だけに高めの位置をとっていた事から、山見の左サイドでそれが顕著でした。

 

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16分、左サイドでCKを得たガンバは山見のショートコーナーを受けた宇佐美がクロスを入れると、三浦弦太が競り勝ったボールに反応した鈴木武蔵がネットを揺らして先制!…かと思われましたが、VARでの審議の末に三浦の時点でオフサイドをとられてゴールならず。

しかし、中央の低めの位置でネタラヴィ、高めの位置で宇佐美を配球役として2つの軸を設定しながらポゼッションを徹底したガンバは、鳥栖のハイプレスをこの2人に寄せたことでサイドを上手く活用できるようになっていき、25分には宇佐美のスルーパスを右に抜けた鈴木がシュートを放てば、28分にはパスの出し入れから再び山見がシュート。しかしGK朴の好セーブもあってなかなか得点には至らず。

 

40分にはネタラヴィの圧巻のボールキープから攻撃を展開すると、左に開いた山見のスルーパスにインナーラップ的に抜け出した宇佐美が決定機!しかしシュートはニアのポストに直撃してこれもゴールならず。しかし0-0ではありましたが、立ち上がり以外はほぼガンバが支配したような前半を終えます。

 

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内容の手応えと同時に、なかなかゴールに至らないもどかしさもあった前半でしたが、試合は後半開始早々から動きました。後半の立ち上がりは前半と同じく若干鳥栖に押し込まれる時間もあったものの、51分に宇佐美のシュートから獲得した右CKを宇佐美が蹴ると三浦がヘッド。これがゴール前での混戦を誘うと、最後は身体がグン!と一歩伸びた鈴木が押し込んでガンバ先制!

まさしく前半に取り消されたようなゴールを再現してみせた鈴木にとっては、このゴールがパナスタでの初ゴールという事に!

 

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しかし試合は慌ただしく動きます。鳥栖は56分に小野裕二を下げて富樫敬真を投入。小野のパフォーマンスが悪かった訳ではないですが、1.5列目タイプの小野が最前線だった事でゼロトップ気味になっていたところを富樫という明確なセンターを置く事で、2シャドーとの絡みを含めて鳥栖は整理された感を出し始めていきました。

61分には西川潤と岩崎悠人を下げて菊池泰智と樺山諒乃介を投入。その直後でした。64分、左サイドから持ち運んだ本田風智のサイドチェンジを右で受けた樺山は黒川、山見、そしてダワンを抜き去り最後はニアにズドン…。昨季は半田と共に山形でプレーしていた男の衝撃的なゴールが決まり、試合は再び振り出しに。

 

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更に67分には福田がアーリークロスを入れると、中央に走り込んだ富樫がワントラップで半田を振り切ってシュート…逆転…かと思われましたが、今度は鳥栖オフサイドによってゴールを認められない形となってガンバは九死に一生を得る形に。

それでもややマズい流れになってきたところで、ガンバは72分に最初の交代カードとしてダワンを下げて山本悠樹、そして鈴木を下げて待望のガンバデビューとなるジェバリをピッチに送り込みます。若干鳥栖の時間が続いていたものの、75分には本田のパスを受けた藤田の折り返しをカットしたところからカウンター。山見のシュート、更にその直後に山本のスルーパスに抜け出したアラーノのチャンスはいずれもGK朴に阻まれたものの、この辺りからガンバは鳥栖のプレスを剥がしながら地上戦でのカウンターを展開出来るようになっていきました。

 

ここからは宇佐美・山本・ネタラヴィでゲームを作りつつ、ジェバリを起点に両WGのアラーノと途中出場の食野が連動する形で、鳥栖も前がかりになってくるオープンな展開に突入していきました。87分には宇佐美、ネタラヴィと繋いだ横パスに最後は山本がシュート。89分には鳥栖のCKを谷がカットし、谷のスローを受けたジェバリが一気にカウンタードリブル。最後は左に流れたアラーノがフィニッシュに持ち込みますが…いずれも決まらず。

 

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アディショナルタイムはかなり押し込む形となったガンバ。しかし良いボールは入るものの、最後は前節の守備崩壊から立て直してきた鳥栖守備陣の奮闘もあってシュートまで持ち込めず。アディショナルタイムには途中から入った江川湧清が左サイドで粘り、最後は宇佐美が得意な形でシュートに持ち込みますが…山﨑浩介にブロックされてゴールならず。

新体制の色と期待感は存分にピッチ内で表現してきたガンバでしたが2点目だけが遠く、ホーム開幕戦は1-1のドローとなりました。余談ですが、開幕から2戦連続のドローは32年目にして初の出来事です。

 

 

 

基本的に開幕戦……特にガンバのように新監督が就任したクラブの開幕戦は、もちろん勝利に越した事はないんですけど、新体制としての方向性を示しつつピッチ上に輪郭を描くまで出来ていたら、例え負けていたとしても少なくとも失敗ではないと考えています。その点で言えば、柏戦を含めてここまでの2試合は上出来も上出来でしょう。

個人的に特に良かったところと言えば、ポゼッションサッカーの下地を利用した縦への意識だったように思います。沖縄キャンプの際に東口が「監督も『(ポゼッションは)手段でしかないから、一発で行ける時は行けよ』と言ってる。だからそんなに固執はしてない」と語っていましたが、東口の言葉にあるように「戦術はあくまで手段」と捉える意識を強く持てていたというか、ある意味ではその"一発で行く為のスペースを作る為のポゼッション"だったように見えました。最終盤のジェバリを中心としたカウンター攻勢であったり、12分の山見のシュートシーンだったりはその典型的なシーンだったように思います。それこそ今日の3トップに入った鈴木や山見は特に裏に抜けるスピードや、スペースのあるところでの動きが卓越した選手ですから、前に行き過ぎずに前にスペースを残す事、その余白を残して最終的にそこを突く為に後方から組み立てる事を心掛けていたように見えましたし、それを踏まえると『スペースを作る・スペースを使う』みたいな意識はここ数年より遥かに高く持てていたように感じました。そういうスペースを作る事で例えばフィード力の高い三浦やクォン・ギョンウォンがポゼッションを徹底して生まれたスペースにロングフィードを飛ばす事も出来るでしょうし、DFと前線を繋ぐ意味で宇佐美やネタラヴィの顔の出し方、ビルドアップへの関わり方も巧みでした。

……宇佐美とネタラヴィ…この2人の存在は凄まじかったですね。ボールを供給する起点が前目の宇佐美と後ろ目のネタラヴィで2つあるという事、そこに突破力やフィニッシャーとしての能力を備えた宇佐美と、後方から持ち運ぶ推進力と想像以上のボール奪取力を見せたネタラヴィと異なる才覚を持ち合わせた軸を2つ中盤に置ける攻勢はかなり期待出来るなと思いました。そこにダワンのような運動力のある選手を噛ませる事で2人の強みを更に出すようなフォローも出来るでしょうし。特にネタラヴィは圧巻でしたね…さすがチャンピオンズリーガーというか…。新戦力で言えば、ジェバリの収まり具合と推進力もロマンでしかなかったですし。

 

 

 

自分の書いたブログで恐縮ですが、私…2022シーズンのガンバを振り返るブログに、戦術についてこういう文を書いたんよ。

 

私は戦術とは列車と同じだと考えている。

人が電車に乗る目的は「目的地に向かう事」である。その為に現在地に近い駅の改札に入り、列車に乗り込み、目的地に向かう。列車にも様々な趣向を凝らした列車がある。食堂車があったり、販売ワゴンがあったり、くつろげる椅子、効きの良いWiFi…列車の旅を快適にする為の機能は色々揃える事が出来る。だが結局のところ、目的が達成されるのは目的地の駅の改札を抜けた瞬間であって、車内を快適にする事では無いのだ。サッカーに於いて、その目的地に辿り着くのは得点であり、勝利である。列車…即ち戦術は、あくまでそこに導く手段に過ぎない。

別の言い方をすれば、戦術は入口から部屋に入り、そして出口から出る事で初めて成立するのだ。6月以降のガンバは、試合内容や戦術的な完成度は間違いなく高まっていた。一方で、ガンバは戦術という部屋の中で出口を見つける事が出来なかった。得点や勝利は出口を出た先に生まれる。清水戦はその部分の欠如が実に色濃く出てしまった。ガンバは部屋をしっかり作りながらも出口を求めて右往左往していたのに対して、清水は入口から出口へのルートを確保し、後はそれに沿って90分を戦い抜いた。

砂浜のキャンバス〜ガンバ大阪2022シーズン振り返りブログ〜第3話 砂浜のキャンバス

 

 

片野坂監督体制でトライしたことの全てを否定したくはないんですけど、あの時は結構…やっぱり、若干戦術が先に来てしまったというか、戦術が目的化し始めてしまった部分はあったように思うんですよ。上の文に沿えば、いつしかガンバは戦術の出口を失ってしまっていたというか。

去年の開幕当初…正確には3試合くらいは片野坂体制にめちゃくちゃポジティブになっていた訳で、ポヤトス体制だってこのまま前進していける保証はない。それこそ去年のように中心も中心の選手が半年以上もいなくなってしまう事だって起こり得る訳で。ましてや、2試合連続でリードを守り切れずに引き分けた事は事実ですし、開幕当初なのでそこまでネガティブなポイントとして捉えるつもりはないですけど、去年はそれを繰り返すうちにああいう事になってしまった。過信するのも勿論危険です。

ただ、それでもこの開幕戦をめちゃくちゃポジティブな感覚を持って見ることが出来たのは、ポヤトス体制では単なるポゼッションではなく、その戦術の出口の作り方も見せていた事にあったと思います。ウエストランド的に言えば「今年のガンバにはあるけど去年のガンバにはなかったもの」が戦術の出口であり、最終的にゴールは戦術から抜けたところで生まれるという意識だったのではないでしょうか。

 

 

【うれしはずかしじゅんいひょうのコーナー】

 

明治安田生命J1リーグ第2節分は、サンフレッチェ広島vsアルビレックス新潟の試合のマッチレビューの方に掲載しておりますので、そちらをご覧下さいませ↓

 

代表首脳陣全員来てたんかい

ではでは(´∀`)