8月18日夜中、ガンバ大阪vsジュビロ磐田の試合を観終えた後、私は愚痴混じりに友人にこんな話をしていた。この日、埼玉メットライフドームでは私の大好きなバンド…GLAYの25周年ライブが行われており、Twitterなどでそのライブレポートを読んでふと思った事である。酒に異常に弱い私がスタジアムで生ビールを飲んでしまった影響も多少はあるかもしれない。
「スポーツ観戦って切ないよなぁ…。だってさ、ライブは行った時点で大体楽しい気持ちで家に帰ってくる訳やん?スポーツ観戦なんかさ、好きなチームを持ってしまった以上絶望を買って帰ってくる事もある訳で…。」
まぁ我ながら、だいぶ酔ってるというか気持ち悪いテンションである。ただ、よりによってガンバのこの3試合全てを現地で観てしまった私には心の叫びとしか言えなかった。友人曰く、過去に格闘家に同じような発言をしていた人がいるらしい。勿論、この儚さとどちらに転ぶかわからない部分がスポーツの面白さと魅力を作り上げている事に間違い無いが、同時にスポーツのチケットはコンサートのチケットとは違って「幸せが保証されたチケット」では無いのだ。3枚の持ち帰った半券を眺めながら、強くその事を思う。
ここからは私が現地で観戦した明治安田生命J1リーグ第21節ヴィッセル神戸vsガンバ大阪、第22節ガンバ大阪vsサンフレッチェ広島、第23節ガンバ大阪vsジュビロ磐田の3試合の観戦日記をお届けする。随分重たいイントロダクションになったが、どうかお付き合い頂きたい。
助けてください、R君のHPはもうZEROです…。〜第1話 風向き完全崩壊〜J1第21節 ヴィッセル神戸vsガンバ大阪戦観戦日記
8月2日、すっかり本格的な夏休みモードである。
ちょこちょこ野球を観に行ったり、サンガも観に行ったり、モタモタしてまだ観戦日記を書き上げていない横浜F・マリノスvsマンチェスター・シティも観戦していたが、何気に5月の大阪ダービー以降ガンバの試合には行っていなかった。だがこの8月は、このノエビアスタジアム神戸で行われたこの試合からパナソニックスタジアム吹田での2連戦を含めて3試合連続でのガンバ観戦。大阪ダービー以降、内容面でも改善が見られつつあったところに宇佐美貴史やパトリックが帰還し、多くの主力退団ショックはあったものの、ガンバのこれからを占うに当たって重要な関西ダービーとなったのがこの日の試合だった。
いつものように阪急電車を乗り回し、地下鉄に乗り換えてノエスタへと向かう。
高っけぇな、チケット…と思いながらも、やっぱりアンドレス・イニエスタは観れるしノエスタ自体はある程度変な席が当たっても見易いスタジアムだから(値段に不満はあっても)観戦環境に不満はない。ちなみに、ノエスタでも開催されるラグビーW杯のPRも始まっている。
この日は金曜日開催という事でフライデーナイトJリーグの対象日。もう一つのスポンサーデーであるケンミン食品の焼ビーフン先着1万枚様プレゼントには間に合わなかったものの、ヴィッセル神戸ベースボールシャツの配布には間に合って無事ユニフォームを獲得。いつぞやのセレッソ大阪とは異なり、私は神戸に関しては好きか嫌いかで言えば割と好き寄りだ。とはいえ、本分はイニエスタを拝む事では無くガンバを観る事。順位的にこの試合が引き分けで終わる事を祈っていた清水ファンの友人が嬉々として神戸ユニを着用する横で私は神戸ユニを鞄に閉じ込め、代わりに加地亮のタオルを取り出す。さすがに席がバックスタンドだったので、ガンバユニフォームまでは自粛したが…。とはいえ、自分が座っていたブロックにはガンバファンと神戸ファンは半々くらいだっただろうか。隣の席には神戸ユニを着用したカップルらしき男女ペアが座っており、彼氏らしき男が彼女に落ち着いたテンションで解説をしたりしている。後ろの席のガンバファンのおじさんは「ゴルァ!初瀬ェ!」と試合が始まる前から叫んでいた。
スタメン発表のVTRが始まる。ガンバファンは案の定初瀬亮に対してブーイングを喰らわせるが、やはりセレッソの子はセレッソという事で初瀬の次にコールされた山口蛍にも容赦なくブーイングを喰らわせる。一方神戸は渡邉千真、そして宮本恒靖監督に拍手を注いでくれた。とはいえ、セレッソとの開幕戦を観に行った時は都倉賢にブーイングをかましていたし、一方のガンバも拍手する選手には盛大な拍手を繰り出している。こういう時の拍手とブーイングって相変わらず謎の基準あるなあ…なんて思いながらいよいよキックオフ。ガンバは前節名古屋戦で復帰をゴールで飾った宇佐美貴史、そしてガンバ復帰が発表されたパトリックが早速スタメンに名を連ねた。
前半、ガンバはゲームプランが上手くはまり、イニエスタを中心としたポゼッションスタイルの神戸の攻撃をほぼほぼ無力化する事に成功する。逆に試合開始早々には矢島慎也の絶妙なボールから倉田秋のゴールで先制点を奪っており、その後アデミウソンや宇佐美に決定機が訪れるなど、基本的には理想的な前半戦を過ごす事ご出来ていた。隣の席の彼氏らしき男は彼女に「やっぱりガンバって不振やけど上手いよなぁ。」と穏やかに落ち着いて解説していた。後ろのガンバファンのおじさんはチャンスやピンチに一喜一憂、そして定期的に「ゴルァ!初瀬ェ!」と叫んでいた。
ハーフタイム、勝利を確信していたのか、随分呑気な話をしていた。正直、前半の感じを観て今日は勝ったと思っていた。スコアこそ1-0とリードは1点のみだったが、試合内容的には単純に押し込んでいただけで無く神戸に攻撃の芽を明確に与えず主導権を握る事が出来ていたから、もう相当楽観視していた。例えば神戸のハーフタイム抽選会の景品に対して
「下だけ貰ってもなあ」なんてツッこんでみたり、友人に「俺ガンバ観に行った時の勝率良いねんで、1勝3敗。」なんて余りにも悲し過ぎるジョークを言ってみたり。しかも後半が始まると、この勝利確信モードを裏付けるかのようにパトリックがゴールを挙げる。
そしてそのパトリックを下げて遠藤保仁が投入される。我らがヤット大先生はなんとこの試合で現役通算公式戦1000試合出場を達成した。
そもそも、前半の倉田の先制点はガンバにとってクラブ通算1500ゴール目というメモリアル弾だった。クラブ通算1500ゴール、パトリックの復帰初戦でのゴール、そしてヤット大先生の大記録達成…この試合を祝い事の多い勝ち試合とする事に疑う余地は無く、確かにその試合は偉大なる勝利に向けて歩み始めた。そう、79分までは…。
※一連の流れはテキスト速報形式でご覧下さい。
79分 イニエスタのPKを一度はGK東口順昭が防ぐもこぼれ球を自ら押し込んで神戸2-1G大阪。
80分 周囲のガンバファン、神戸ペースになりだす試合に動悸が激しくなり始める。
81分 友人が楽しそうにし始める。
82分 隣の席の彼氏らしき男が興奮し始める。
83分 「ゴルァ!初瀬ェ!」by後ろのおじさん
84分 ガ ン バ 同 点 に 追 い つ か れ る 。
85分 試合が一気にオープンになる。
86分 神戸ファンのテンションが一気に上がる。
87分 宇佐美貴史→食野亮太郎(結果的にこれがガンバラストゲームに)。
88分 みんな壊れ始める。私も壊れ始める。隣の席の彼氏らしき男も壊れ始める。
89分 友人キャッキャ。隣の席の彼氏らしき男の彼女ぽかーん。
90分 「ゴルァ!初瀬ェ!」by後ろのおじさん
91分 「出てるやろ!!」by神戸ファン 「出てないやろ!!」byガンバファン
92分 「オイコラ審判金貰っとんのかぁぁぁぁ!!!!」byさっきまで落ち着いて彼女に解説していた隣の席の彼氏らしき男
93分 「あぁぁぁぁぁぁぁぁ」by周辺の客 「wwwww」by友人
95分 試合終了。ガンバファンの瞳の色が死んでる。
豚骨がしみる夜。お楽しみ頂けただろうか。
完全に項垂れる私を尻目に、理想的な結果に落ち着いた清水ファンの友人は実に美味そうにラーメンをすすった。
第2話、第22節ガンバ大阪vsサンフレッチェ広島戦編に続く。