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ザ・フットボール・エンターテイメント〜PSGジャパンツアー ガンバ大阪vsパリ・サンジェルマン 観戦日記〜第3話 始まりはいつも非日常

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前回までのあらすじ】

日本vsブラジル戦から4試合連続で「試合を見に行く前にチケットが落ちる」という苦々しい目に遭わされたR。そんな過酷な旅路となってしまったが、それでもようやくRはガンバ大阪vsパリ・サンジェルマンの手にした!

スタジアムに入り、迫り来る高揚感の中選手入場。さぁ、花試合の始まりだい!

 

第1話

 

第2話

 

 

 

エアトリ Presents Paris Saint-Germain Japan Tour 2022 

vsパリ・サンジェルマン

2022年7月25日@パナソニックスタジアム吹田

 

〜観戦日記〜

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

 

 

さぁ、お待たせしました。

ようやく試合パートまで辿り着きました(お待たせしました)

 

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前半はね……まず序盤はガンバ押したたんですよ。それこそ、後半戦で取り組もうとしている事だとか、引かずに前からドンドン行ってやるでぇみたいな感じで。セカンドボールも拾いつつ、開始10分くらいはほぼPSG陣内でゲームをしているくらいの勢いだったんですね。小野瀬康介や黒川圭介辺りは常に深いところまでプレスをかけに行ったりして、バックパスを誘発したりイージーなキックを掻っ攫ったり…なんて場面も多々あって。

 

…あ、細かい試合のスポーツ的なところについてはマッチレビューの方をご覧くださいまし↓

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ただ、時間経過と共に試合は徐々にパリペースへ。しかしそうなると……今度はガンバ名物(名物になっていいのかどうかはともかく)東口順昭無双劇場が開演。まぁ止める止める、まー止める……さっすがまー様……。

 

 

私の席の周り、結構パリユニフォームの人が多くて、わりかしガンバよりメッシネイマールムバッペ目的に観に来た方だったと思うんですけど、多くの人がツイートしていたように…「うっわ、あのキーパーやっべ」「東口すっご…」的な声も漏れてましたし。最近好調の三浦弦太もフルスロットルで、最近のパフォーマンスの良さをパリ相手に出せていた。逆にここ最近は低調気味だった昌子源にしても、やはり個と個の対峙みたいな場面になると凄さを見せてくれて。

こうやって生で見ると、この日に限れば、多分戦い方のビジョンが明確だったのは贔屓目抜きにしてもガンバの方だったと思うんですよ。川崎戦でも指摘されたように、パリは確かに即興的にサッカーをやっているような感覚は見ていて思った。でも、即興の一つ一つのクオリティがクソ高いんですよね。パス一つにしても、何にしても。そういう意味ではW杯や欧州での経験がある昌子、昌子ほどではなくとも代表経験を持つ三浦と、そこの経験はまだ薄い髙尾瑠や福岡将太の差といえばなんですけど……なんて言うんですかね、修羅場をくぐり抜けた底力は凄く見えたパリの猛攻だったように思いました。

 

 

 

ただ、綻びは突然なもので。三浦のクリアがメッシに直撃したところから、1度は東口が頑張ったけど最後はサラビアに押し込まれて失点を許すと、ネイマール劇場炸裂により2失点目。

 

 

これね……世界中って次元で話題になった例のシーンですけど。肝心なところは見えなかったんですよね……我々の席からは。だからこの角度から見れば、ネイマールと三浦がガシャッってなっちゃった時点で「あ、やば」って感じだったんですが、ビジョンを見た瞬間に「おぉーい、おい!」って。

ただ、心なしか思い出したのがとある日の某サイトの某漫画。

 

 

いいもの見れたやね(ニッコリ)

 

 

 

 

 

 

 

ほいでその後ですよ。すっごい綺麗な流れでね…キャプテン倉田→小野瀬ラインで右サイドを崩して、鈴木武蔵のシュートは止められたけど(これ掻き出したドンナルンマも凄かったけど)、最後に黒川が突っ込んできてガンバが1点を返して。

この時面白かったのが、周りのパリユニの人達が、結構ガンバのゴールに喜んでたんですよね。立った人もいたし。要はメッシやらネイマールを見に来た人達が、メッシやネイマールのゴールと同じように黒川のゴールを喜んでいたっていう。あの時はちょっと不思議な感覚だったというか……例えばこの1週間前に行った大阪ダービーだと、ガンバが点取った時はセレッソファンは軽い舌打ちとかしたと思うんですよ。で、セレッソが最後に点取った時、ガンバファンは多分口から太鼓の達人みたいなやつ出してたと思うんです。

 

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要は、どこかのファンになってしまえば片方の得点は歓喜で、片方の失点は絶望。それを思うと、黒川の得点に喜ぶパリユニフォームの人達の光景は、見る人次第では中途半端なヌルいやつとかに映るかもしれませんけど、スターを肴に純粋にサッカーを楽しみに来たようにも見えて、一つのチームを追うこととまた趣の違う美しさを感じたというか。川崎戦や浦和戦であったような一悶着は普段のリーグ戦であればともかく、こういう花試合ではナンセンスだよな…なんて思いながら見ていました。

 

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…で、息もつかぬ間にヌーノ・メンデスとメッシにぶっこまれ、前半は1-4で終了。1-4ってほど悪くは無かったんだけど、さっきも言ったような…一つ一つのプレーの圧倒感、まさしく個の力で迫ってくる感じは、チャンピオンズリーグではそれに限界があるとしても、Jリーグ相手となればやっぱり圧倒的でした。

ちなみにコーナーキックをメッシが蹴りに来た時、みんながメッシのCK撮ろうとカメラ構えたら嘲笑うかのようにショートコーナー決めてたのちょっと面白かった。

 

 

 

で、後半。こういうPSMって前後半でメンバーがガラッと代わっちゃうのが定石みたいなところありますけど、漢パリサンジェルマン、まさかのメンバー交代なし。逆にガンバが7枚替えとかいう異例の展開に。そういえば私、3年前にマリノスvsマンチェスターシティ観に行った時もシティがかなりスタメンを引っ張ったんですよね…。謎の気でも放てるのかしら…。

 

 

後半はすごい試合展開でしたね……なんというか、もうとにかくド派手なゲームでした。前半からそうでしたけど、ガンバが試合を通じてとにかくハイライン・ハイプレスを徹底。パリは完全にカウンター主体になっていたんですけど、ガンバがボールロストした際のカウンターパスなどの一つ一つのクオリティの高さでチャンスはリアクションでバンバン作った事で、試合の様相は実質的にカウンターゲームのような形になっていって。ガンバで「おぉーっ!?」と言った直後にはパリに「うぉーっ!?」って言ってるような。ガンバ寄りのコーナーエリアで見ていたんですが、青黒のユニフォームが果敢に此方側に迫ってマルキーニョスやラモスと対峙する姿、メッシ、ネイマール、ムバッペ…10分ほどだけ実現した奇跡のスリートップが走り抜けていく背中を追う光景…それらの全てが何物にも代え難い観戦体験でした。

 

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トップオブトップとしか形容できない流れからネイマールにゴールを奪われて5失点目を喫したものの、その後で今度は奥野耕平→柳澤亘と繋いだところを山見大登が押し込んで2点目。大阪ダービーの時のブログで「過去の強いガンバを取り戻そうと思うな。新しい強い時代を作れ」的な事を書いた私ではありますが、この日のガンバが見せた姿勢には少し伝説のマンチェスターユナイテッド戦と重なる部分も感じて。

 

 

結局、最後はムバッペにもう一本PKを決められてしまったんですけど、純粋に楽しかった……極上の90分でした。

そりゃあパリは強かったですよ。善戦とはとても言えない。でもガンバは殴り返した。健闘は出来たし、意志の強さも見せた。それはそれで美しい日常ですが、普段のリーグ戦はやっぱり勝敗を追わなければならないけれど、この日ばかりは純粋に好きなチームとトップオブトップの連中の競演を堪能出来た、多幸感に満ちたサッカー観戦でした。

 

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上で書いた、黒川のゴールに喜ぶパリユニフォームのファンにも通じる話ですけど、この試合を一言で言えば「お祭り」であり、そしてエンターテイメント……フットボールエンターテイメントそのものでした。自分としても、久しぶりに肩肘を張らずに、純粋にサッカーを楽しめた感覚がありましたし。

 

もちろん、試合後の昌子がコラムで「結果的に大敗したにもかかわらず「楽しかった」という余韻が残ったのは、これがプレシーズンマッチで、対戦ができたことが奇跡と言えるくらい特別な試合だったから。」と語っているように、この試合はあくまでプレシーズンマッチで、仮にもしパリに勝っていたとしてもリーグ戦の影響には何の意味も及ばさない。だからこそ…これは川崎にも浦和にも言えた話ですが、この試合を意味あるものにする為に、ただのPSMで終わらせない為には、ガンバとしてのこの試合に対するスタンスが全てでした。

 

試合後、トゥールーズ時代に僕の通訳をしていただいた方に連絡をもらい「今のパリを相手にあそこまでハイラインを敷くチームは久しぶりに見たよ。リーグアンでも今のパリが相手なら、どこも引いて守るから」と驚かれましたが、僕たちも勝ち点が是が非でも欲しい公式戦なら、この試合で見せたハイプレス、ハイラインの戦いはできなかったかも知れません。
そう考えても、僕たちがこの先やるべきことはPSG戦の余韻に浸ることではなく、プレシーズンマッチという特別な試合で体感できた経験を、これからのJリーグの戦いに活かすことだと思っています。

 

Vol.57『特別な戦いだからこそ得られた財産。』-昌子源-

 

この昌子のコメントは、逆に言えば、ガンバはPSMでパリと戦えたからこそ純粋にパリ相手に何が出来るかを試す事ができた。ぶつかり合って、こぼれたカケラを拾う作業が出来た訳です。

リーグアンのチームは、例えばパリ相手にハイラインをキメて5〜6点でも取られようものなら、その後の順位表に得失点差として反映される。でもガンバは違う。どれだけ負けようが今後のシーズンには関係ない。だからこそガンバは開き直る事が出来たし、それこそ仮にリーグアンのチームのように引きこもって0-2くらいで傷を浅くした負け方をしたところで何の意味も無く、それこそただのPSMになってしまう……そこでガンバが見せた振る舞いとスタンスは称賛するしかないですし、こういう戦い方をしたから、こういう戦いを見せたからこそ、この試合が財産的な意味を持てた。無意味な集金試合で終わらせないだけのスタンスを、この日のガンバは確かに示しました。

 

 

 

そしてもう一つは興行的な面です。

 

 

この日のパナスタの入場者数は38251人。これまでの最多入場者数は2019年J1第23節、ガンバ大阪vsジュビロ磐田戦で記録した37334人という数字だったので、パナスタの最多動員記録を更新した事になります。ましてやコロナ禍が始まってから、パナスタで来場者が3万人を超えた試合は日本代表vsチュニジア代表戦の1試合のみ。この試合の主旨、そしてこの数字から導き出されるのは、如何に普段ガンバの試合に来ていない人がこの試合に来ていたか…という事。おそらくこの中には、初めて現地でサッカーを見るような人も少なからずいたでしょう。

要は、普段からガンバを追っている人にとっては日常であるサッカー観戦も、そういう普段観に来ていない人達にとっては非日常のエンターテイメントだった訳です。メッシ、ネイマール、ムバッペ……サッカーを知らない人ですら知っているスターの躍動に対し、そこに立ち向かった東口を中心としたガンバの守備陣、そしてパリ相手にガンバも果敢にチャレンジを試みた事で生まれた、エンターテイメントとして秀逸なオープンゲーム……。初めてスタジアムに来たような人は、少なからず現地で観るサッカーの歓びを、得点が生まれた時に足元から地鳴りのように震える感覚を、段々と自分がハイになっている事に気付いた瞬間の昂りを感じてくれたと思います。

この試合でガンバに興味を持ってくれた方も少なからずいるでしょうし、そういう方には是非一度、リーグ戦のパナスタに足を踏み込んでほしい。もちろんガンバから一番嬉しいんですけど、それは別に"お近くのスタジアム"でもいい。その行き先が例えばセレッソだろうがヴィッセルだろうがサンガだろうが、別にその対象がガンバに向かなかったとしても、非日常のこの試合から我々の日常に飛び込んでくれる人が1人でも増えれば、それに勝るこの試合の意味なんてないんじゃないかと思います。その点で言えば、わかりやすいスターを徹底的に活かしたパリというチームと、そこに対するガンバのスタンスはこれ以上ない訴求力を持っていたんじゃないでしょうか。それこそがJリーグクラブ側から見た時のこの試合の意義でしょうし、そこで生まれた極上のエンターテイメントは何より美しかったです。

 

 

無論、大事なのはこれからで。

このPSMにガンバは意味を確かに持たせた。そしてこれからこの意味を膨らませられるかどうか。このパリとの試合は収穫ではなく、あくまで種を蒔く為の試合。選手は特にこんな試合は一生に一度のような人間が大半でしょうから………。この試合で蒔いた種が、いつか収穫の日を迎えられた時、パナスタの日常は神々しいほどに光り輝くはずで、その日を目指して歩んで行ってほしいと強く思った夜でした。

 

 

 

ガンバ大阪vsパリサンジェルマン観戦日記、完。

第1話第2話