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MEANING OF LIFE〜大阪ダービー・J1第22節 ガンバ大阪vsセレッソ大阪 観戦日記〜

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どうしてもこの結末でなければならなかったのだろうか───。

 

 

 

21時を過ぎた万博記念公園駅への入場を待つスロープの列でピンク色のユニフォーム姿の人間に囲まれながら、ずっとそんな事を考えていた。

 

誰かが何かを決定的に間違えたとは思わない。

5月のダービーで見た景色の、居心地の悪い脱力感はどこにも無かった。

やりたい事も、やろうとした事も、チームとしてブレていたとは思わない。実際、前半20分までは完璧だったとさえ思う。何より、この試合に対する一試合以上の気迫は観ている此方側に対して痛いほどに伝わった。ダービーをダービーたる試合にする為に必要な要素を、この日のガンバは全て揃えていた。

 

確かに、今の実力を見れば妥当な結果なのだろう。

今のガンバのセレッソの間には精神論や気迫だけでは埋められない差がある。事実、ガンバが完璧だったのは20分までだった。その後はセレッソのゲームだった事は否定のしようがない。もし仮に、自分がどちらのファンでもない立場でこの試合を見ていればマッチレビューには「妥当な勝敗だった」と綴っていただろう。1-2というスコアは、そういう見方をすればごく自然な結果であり、フェアな数字だったように思う。

 

 

 

今回は7月16日に行われた2022明治安田生命J1リーグ第22節、ガンバ大阪vsセレッソ大阪観戦日記になる。

私はガンバファンである。先に言うが、第三者がこのブログを読んだ時、その感想は「おまえは何を言っているんだ」にしかならないかもしれない。それを前提にここからを読んでいって欲しい。

 

スロープを抜け、モノレールに乗り、違う路線に乗り換える。わかってる。スコアは妥当だ。だからこそずっとショックから逃げられなかった。その車内で音楽を聴く気力さえ無く、俯きがちにずっと考えていた。

 

 

 

「どうしてもこの結末じゃなきゃならなかったのだろうか」「もっと他の結末じゃダメだったのだろうか」と……。

 

 

 

 

 

この試合のマッチレビュー

 

オリジナルアルバム出してみました!聴いてみてくださいませ。

 

 

 

今回のダービーは過去のダービーと比べても少し異様な雰囲気だったように思う。異様とは言っても、これは別にネガティブな意味ではない。フルキャパで行われるダービーは3年ぶりだった。企画サイドも相当力を入れていたのだろう。

この日はイベントのゲストとして、ガンバのレジェンドOBが実に6名も来場していた。橋本英郎播戸竜二丹羽大輝加地亮明神智和中澤聡太……いずれもガンバの栄光の時代を創りあげた者達である。彼らが登壇したイベント自体はポップなイベントではあり、今年のガンバはホームゲームでは必ずOB選手がイベントに参加しているが、試合前後にOB戦が行われた時を除いて6人も来場した事なんて過去に無い。トークショーにはガンバTVのMCであるたむらけんじ氏も来場して、いわば関係者大集合状態だった。

 

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ましてやこの日から、鈴木武蔵や食野亮太郎が出場可能になる。特に鈴木は入団発表が比較的早かった分、この日に至るまでに数気合を要していただけに"満を持して"的な期待感はストップ高だった。勝てるかどうかはともかく、この閉塞感を打ち破れるとすれば、それは前節の川崎戦でもなければ天皇杯の鹿島戦でもなく、この大阪ダービーが最大の起爆剤になる……ダービーのようなビッグマッチの勝敗は、単なる勝点0〜3以上の意味を及ぼす事も珍しくない。それが低迷中のチームが補強を行い、彼らのデビュー戦に重なるなら尚更その意味は強くなる。

今日に限れば、セレッソの関係者はおそらくこの試合を単に「"ダービー"というビッグマッチ」の一点で捉えていたと思う。今の彼らは流れを変える理由はないからだ。極端な話、セレッソはここで負けたところで彼らの状況はそう大きくは変わらないだろう。その分の余裕はあったと思う。一方でガンバは、このダービーに乗せた要素がセレッソよりも遥かに大きくなっていた。流れを変えるなら"ここ"だと。誰もがその一心で入場ゲートを通ったはずだ。

その流れの中で、サプライズ的に宇佐美貴史までもがパナスタのピッチに現れる。ホームゲームではいつもスタンドで試合を観戦しているとはいえ、公式な形で宇佐美が姿を表す事は負傷以来初めてだった。

 

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試合前、夏限定イベントとしてスタジアムでは花火が打ち上がる。この花火の威力がまたなかなかに凄まじく、その花火をまあまあドカドカと打ち上げた訳で、ピッチからスタンドまで視界をガッツリ煙が覆った。

ただ、選手が入場した時……花火の残り香とコレオグラフィーに迎えられ、曇天から僅かに光が射し込む絵は異様なまでに美しく、荘厳な雰囲気とはこの事…ぐらいの空気をスタジアムに作っていた。あの雰囲気はこれまでのダービーのどれとも趣の異なるものだったと思う。

 

 

 

 

役者は揃った。

雰囲気も異様なまでに高まった。

もう望むものは一つしか無かった。

 

 

前半のガンバが見せたパフォーマンスは素晴らしかった。広島戦浦和戦で見せたハイプレスと、そこからショートカウンターに至るまでの連動性はピッチ上で上手く表現されていたし、そのガンバの立ち上がりの入りの良さが、そのままクォン・ギョンウォンの先制点に繋がる。新加入でデビュー戦となった鈴木武蔵にしても、チームと共に練習した時間もほとんどない中では試合にしっかり入ってくれていた。

 

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しかし、飲水タイム以降はセレッソの時間が続くようになってくる。

立ち上がりのガンバは良い入りを見せた一方で、目に見えてハイペースな部分は確かにあった。前半に飛ばしすぎたところから後半は防戦一方になったのは浦和戦という前例があったが、押し返されるまでの時間は浦和戦のそれに比べても早かったと思う。ただ今のガンバがセレッソに勝とうと思えば、少々飛ばし過ぎなくらいのペースでないと勝利には近付けない。ましてや、ダービーという異様なまでの熱気な中で、そこに様々な意味を乗せたガンバのペースがインフレ気味になる事は自然な流れではあった。簡単に言えば、ガンバは若干"ハイ"になっていた部分があったと思う。

そんな中でセレッソは前半は比較的セーフティーに入りながら、ガンバのペースが落ち始めた辺りでギアを踏み始める。セレッソのコンパクトな陣形に囲まれるようにガンバは行き場を失くし、試合はセレッソのターンで回り始めた。感覚としてはセレッソに押されていたというよりもセレッソのターンをずっと続けられたような感覚。東口順昭の攻守も光って前半はリードで折り返す。

 

手応えは確かにあったが、不安も同時に募った。それでも5月の惨劇を見せられていただけに、ガンバファンは前半に繰り広げられた「ダービーらしい熱気」にポジティブな感覚の方が上回ってはいたと思う。少なくともセレッソに対して、戦えていたのは確かだった。満足感では無いが、ダービーをダービーとして戦うだけの要件は満たしていたのだ。試合前、心のどこかで危惧していたような展開とは違う光景を見る事が出来た。

しかし後半開始早々、セレッソにぐちゃぐちゃにDFラインを砕かれるように山田寛人に決められたゴールは、ある種その"ハイ状態"の弊害とも言えるような失点だった。セレッソがガンバをじわじわと追い込んでいくような形になった事で、ガンバは自陣の中から出られない。この日のガンバは闘志はずっとチームの中で爆発していたからこそ、セレッソに追い詰められたガンバは狭い水槽の魚のようにバタバタしてしまった部分はある。

 

 

 

片野坂監督はそこのところを察してはいたと思う。食野亮太郎、倉田秋、坂本一彩の投入を経て、システムにこそ変更は無かったものの、戦い方は大きく変わった。

個人的には、勝ってさえいればこの采配はなかなか見事というか、相当な名采配になっていたと思う。理屈としては理に適っていた。現状、セレッソと中盤勝負をしても勝てない。押し返せない。それならば押し込まれるラインの深みを利用し、ピッチをUの字のように展開する形でのサイドからのカウンターを目論んだ。いわば変則的な中盤省略のようなものである。セレッソを押し返せない時間が続いた中で、劣勢を受け入れた上で得点を奪う為の采配だった。

 

事実、チャンスはあった。食野と倉田には決定機が訪れたし、左サイドの黒川圭介、右サイドの小野瀬康介は前半よりも高い位置でボールを持つ事が出来て、そこに中盤やシャドーの選手が絡むトライアングルでサイドをブレイク出来そうな場面はいくつかあった。

個人的には、あの采配は正しかったと思う。片野坂監督のあの采配は、あの状況でガンバが2点目を獲得する為にはそれしかないとすら表現できるものだったはずで、ガンバにも勝ち筋は少し見え始めた。終盤はガンバも一つギアを上げ、セレッソを押し返し始めるようにもなった。ガンバが押し込み、セレッソがカウンターを仕掛ける形になったけど、セレッソのスピード溢れるカウンターは全て三浦弦太が鬼神の如く防ぎまくった。この日の三浦は本当に凄かった。前キャプテンとして、副キャプテンとしての責任、なかなか上がってこない昌子源のコンディション、国内組限定にも関わらず逃した日本代表、そして前回のダービーで起こったこと…それらが全て折り重なった、この日の三浦のパフォーマンスは控えめに言って神懸かり的でさえあった。ガンバが勝てていれば、せめて引き分けであれば、MOMは間違いなく三浦だった…………。

 

 

 

アディショナルタイムに入ろうとした時、ガンバは右サイドから攻撃を仕掛ける。この頃には試合はオープンなペースになっていて、むしろガンバの方が前線への侵入回数は増えていた。齋藤・小野瀬・倉田の間でのパス交換は何度も見た。そしてそこに髙尾瑠も上がってきた。髙尾と言えば、元々右CBからの思い切りの良い上がりっぷりが評価された選手でもある。今度こそ…という思いはあった。だが、齋藤のパスは合わず、髙尾の前に入った船木翔に回収される。セレッソ陣内のペナルティエリアに近いところでジェアン・パトリッキがボールを受けた瞬間、"それ"は始まった。

味方からのリターンを受けたパトリッキがハーフェーラインを越えようとした時、上門知樹は三浦と福岡の間をちょろちょろと動き回る。確かに人数としては2対2、同数だったかもしれない。だが上門の動きは三浦と福岡を牽制するように動き続けた。このおかけで、2人はパトリッキに対してアタックを仕掛ける事が出来ない。パトリッキにチェックしなければならないのはわかっている。でも同時に、パトリッキにアタックに行った瞬間に全てが終わる事もわかっていた。

正直、この日の三浦であれば単純な1対1ならパトリッキにも勝てたと思う。しかし上門の動きは、攻撃の選手が守備の選手を封じ込めるという矛盾した効力を発揮したのだ。この状況になってしまった時点で、ガンバはパトリッキがシュートを外すか東口が止めるか…この2つに懸けるしかない。

 

 

三浦、福岡、上門………この3人の位置関係がハッキリと見えた。ガンバ側に座っていた自分の位置から、遠くに離れていくように走り抜けるパトリッキの背中はスローモーションに見えた。

確かに、今の実力を見れば妥当な結果なのだろう。今のガンバのセレッソの間には精神論や気迫だけでは埋められない差がある。事実、ガンバが完璧だったのは20分までだった。その後はセレッソのゲームだった事は否定のしようがない。もし仮に、自分がどちらのファンでもない立場でこの試合を見ていればマッチレビューには「妥当な勝敗だった」と綴っていただろう。1-2というスコアは、そういう見方をすればごく自然な結果であり、フェアな数字だったように思う。それでもガンバは恥じるような試合をした訳ではなかった。この日のガンバが見せたパフォーマンスは決して悪いものではなく、ダービーをダービーらしくする闘志も前面に出ていた。ガンバに勝つ資格が無かったような試合では無かった。ガンバはガンバで、勝利に値するプレーは見せてくれた。そこには決して5月の時のような、居心地の悪い脱力感のようなものは無かった。ファンやサポーターが選手に求めるダービーへの闘志…それは痛いほど伝わった。

1-2…この結果は妥当だった。セレッソはガンバより強い。それはわかっている。だったら、なんで、どうして───どうしても、どうしてもあの結末じゃなければならかったのだろうか。負けるにしても、他にもっと違う負け方があったんじゃないのか。崩れた真夏の方程式は、どうしてもこの答えに辿り着かなくてはならなかったのだろうか。なんでよりにもよってこんな結末じゃなきゃならなかったのか…………。

 

 

 

スロープを抜け、モノレールに乗り、違う路線に乗り換える。わかってる。スコアは妥当だ。だからこそずっとショックから逃げられなかった。その車内で音楽を聴く気力さえ無く、俯きがちにずっと考えていた。

 

東京V(ヴィクトリー)のサポーターで埋め尽くされた一角でアップの時からすげー必死に声出してたよ

(中略)

だったらあいつらを気分良く帰してやろうぜ。何万ているサポーターが肩落として帰ってくなか……あいつらだけ胸張って上機嫌で帰るんだ

 

「GIANT KILLING」#107(11巻)より

 

スタンドのほんの一角で湧き上がるセレッソサポーター、彼らを見上げて肩を組んで踊り狂うピンク色の選手達、彼らの背後を肩を落としながら歩く青黒のユニフォームを見た時、あの漫画のセリフが痛いほどに沁みる。

ただただ屈辱でしか無かったアウェイのダービーとは全く別のショックがそこにはあった。なんでこんな展開になってしまったんだろう…1-2という結果に落ち着かせるなら、もっと別の展開だってあったんじゃないか。そんな意味もないことばかり考えていた。考えようとしなくても考えていた。

 

 

 

「強いガンバを取り戻す」───その響きは確かに美しい。だが、過去は過去である。スマホを駆使する人間が今更ガラケーなんて買わないのように、時代は決して後戻りはしない。過去を追ったところで、あの時代が還る事はないのだ。

強いガンバを取り戻す事は出来ない。過去は過去だから。過去はあくまで美しい思い出であり、歴史の一部に過ぎない。強いガンバは帰ってこない。取り戻せない。だからこそ、強いガンバは取り戻すのではなく新たに作らなければならない。少なくともセレッソの今はその積み重ねの上に成っている。この妥当なスコアと理不尽な結末……わざわざ悲劇的な光景を突きつけられたこの現実に、何かの意味を追い求めなければならない。

セレッソはそれを実現させた。この2チームの間に存在した大きな力関係を覆した。次はガンバがその力関係を覆そうともがく立場になった……ただそれだけの話であり、重く壮大なテーマを課されたというシンプルな話である。歴史の流れの中で、過去に未来を重ねていく中で、いつかこの敗北に、何かしらのターニングポイントとしての意味を持たせる為に……強くならなければならない。今のガンバが目指すべきは名門復活ではない。どう足掻いたって、私はガンバから逃れられない人生を送る。その道のりをこれからも見届けていきたい。この理不尽な結末に、自分なりの意味をつけて整理しようと、この乱文を綴っている。

 

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完。