RK-3はきだめスタジオブログ

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もう雨に濡れない〜J1参入プレーオフ2022決定戦 京都サンガFCvsロアッソ熊本 スポーツ観戦日記〜

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思えばちょうど10年前もそうだった。2012年11月11日……あの日も雨だった。同じような天気だった。

大木武に率いられた京都サンガFCというチームは、ホームの西京極陸上競技場で「勝てば昇格決定」というシチュエーションで戦っていた。雨の中で始まった最後の90分、昇格レースの主導権はサンガが握っていた。

だが、最後まで1点が遠かった。遂にネットが揺れることは無かった。0-0で引き分けたサンガにもたらされた報は、他会場で湘南が勝利したという事、そして順位が入れ替わったという事。その意味を理解した時、運命を分ける瞬間を落とした事をサンガは知った。昇格を掻っ攫っていったのは曺貴裁率いる湘南だった───そして遂に、サンガファンに大きな夢とロマンを与えた大木サンガがJ1に挑戦できる日は訪れなかった。

 

 

 

 

 

2022年11月13日、スタジアム周りの人並みは傘をさして歩いていく。10年前のあの日と同じで雨だった。降りしきる冷たい雨とグレーの空は今の心境を表しているようで、誰もが見えない先行きの不安をそのまま映し出したようだった。

 

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運命を分ける瞬間は不定期的に訪れる。

その分岐点を取るか落とすか、それはクラブの歴史と個々の人生を左右する。かつてサンガはその運命を逃し続けて彷徨い、いつしか分岐点さえも訪れなくなった。

それでも干支が一周回り、サンガは取るべき分岐点を制した事で12年ぶりのJ1に辿り着いた。昇格出来た理由は色々ある。戦術的な事とか色々ある。だが、結局のところはその分岐点を取れたかどうかが全てなのだ。

 

 

今日もそういう日になる。

運命を取るも一瞬、運命を失うのも一瞬……このクラブが彷徨い続けた呪縛に争う為には、この分岐点をどうしも守らなければならない。この悲壮な90分に詰められた意味は、このクラブの俯きがちな歴史に抗えるかどうかの勝負だった。

 

本日のスポーツ観戦日記は2022年11月13日にサンガスタジアム by Kyoceraで行われたJ1参入プレーオフ決定戦2022、京都サンガFCvsロアッソ熊本観戦日記です。

 

 

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入れ替え戦」というシチュエーションはサンガにとって2回目ではあった。2007年に一度経験している。ただ、あの時は立場が違っていて、サンガが昇格を目指す立場だった。まぁ、そもそもレギュレーションも違ったし。

15年前のあの試合もスタジアムに行っていた。当時は10歳だったから、その感覚をイコールで語るには無理があるとて、3位になって上を目指す者として迎える最終決戦と、16位という追い込まれた立場で指で崖を掴みながら挑む最終決戦の空気が同じ訳がない。スタジアム全体が、どことなくピリピリしていた。

 

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第32節名古屋戦の時、いつも食べるこの小籠包も今年最後であれと願ったものだったがそうはならなかった。年内にもう一度小籠包を買えてしまった事はありがたくない幸運とでも言うべきだろうか。

 

 

満員のスタジアムで今日も10-FEETのhammer skaが鳴り響く頃、このクラブの全てを左右する"第35節"が始まる。

 

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前半から熊本が良いプレーをする時間が長く続いて、サンガ的には難しい展開を強いられていた。

プレーオフというか、入れ替え戦はえてしてそういうものである。どうしてもJ1側が受ける展開になる。それは自然の摂理のようなものであるし、熊本のようにチームとしてのベースが仕上がりまくっているチームであればそれは尚更。だからこそ、豊川雄太の得点は大きかった。

 

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劣勢の中でもサンガがあのやり方を貫いたのは、言わばあれ以外の策で仕掛けられるほどサンガに幅がなかった事も事実ではあるが、一方で熊本のパスワークのリズムを見ると、このやり方を続ける事でノッキングを発生させる可能性は少なからずあった。0-0がリードである立場としてはハイリスクと言えばハイリスクではあるが、攻撃的守備とも称されたハイリスクな守備意識ではサンガにとって立ち返る場所ではあった。そこにベースがあった事は、熊本がここまで勝ち進んだ事と同様に16位を守れた要因だったと思う。

一方で豊川のゴールというか、ボールを受ける前の動き方は逆に柔だった。ボールの軌道と相手DFの脚を読み切った動きは緩急という意味で妙のあったゴールだった。

 

 

 

とりあえずいつもの観戦日記の事ではあるが、スポーツ的な事に関してはこちらのマッチレビューを↓

 

しかし後半は、サンガは2点目のチャンスを流し続けた。1点目が今季サンガがやってきたことの賜物で、16位を死守できた部分なのであれば、2点目が取れなかった事は今年サンガが16位に落ちた要因のような場面ですらあった。

内容では押されながらも、極端な決定機まではそう多くは作らせていなかったサンガだったが、試合の中盤に同点に追いつかれる。そこからの展開はサンガにとって本当にしんどかった。第3者視点というものは常にある。「アウェイは近いところの方がいい」という関西クラブのサポ以外は、どうしても「熊本のシンデレラストーリーが成就する事」を願ってしまう。それは人間として仕方ないものではあるだろう。ここがホームだったのは救いだった。それでもこの空気で引き分けで試合を終わらせないといけないハードルは、サンガにとってそう低いものではなかった。

 

アディショナルタイムの攻防はまさに精神を直に抉ってきた。

このプレーオフという試合に引き分けという概念は存在しない。取ろうが取るまいが、取られなければサンガは残れる。だが取られればJ2に落ちる。アディショナルタイムコーナーキック……スポーツとは恐ろしいものである。あの一瞬の、あの1分にも満たない時間の攻防が、無数の人間のこれからを握っていた。あえて言うならば、未来を掴める立場にいたのは熊本だった。じゃあサンガの立場は何か?それは未来を守る立場である。サンガが握る未来を守るか、それを熊本が奪うか……そのせめぎ合いだった。

心臓が破裂するかのような一瞬───シュートコースにウタカがいた事、シュートコースにポストがあった事、リフレクションがサイドラインに逸れた事……それが必然だったのか偶然だったのかはわからない。ただ、それでも事実は一つだ。サンガは一瞬を制した。これまでサンガが何度も逃し、失い続けた運命を分けるその一瞬を遂に制した。一瞬の勝者として、サンガは自分達の未来を守り倒した。あのプレーが偶然でも必然でも、世間にどちらの勝利を望まれようと、世間がレギュレーションに意を唱えようと、事実はそれでしかない。あの運命を分ける一瞬が最後の最後でサンガに傾いた。それだけの、ほんのそれだけの大いなる結末だった。

 

 

2位で昇格したサンガは、いわば今年は18位からリーグ戦をスタートしたと言っていい。序盤が好調だったので少し高望みをしそうになったのも無理はないが、目指すべき目標はまず残留だった。

滑り込むよりは転がり落ちる形での16位だった事実はクラブとしての反省材料であり、今年のまま来季に挑めば結果は悲劇しかないだろう。そういう意味で残留という結果に甘えて過大評価してはいけないし、これからJ1で居続けるために手を加えなければならないポイントはある。そういう意味では、勝って全てがめでたしめでたしにならなかったのはある意味で救いになるのかもしれない。

 

だが反面、今シーズンに限っては目標達成、ミッションコンプリートである。繰り返すが、このチームは今年18位の立ち位置から始まった。ましてや12年ぶりのJ1なんて、復帰じゃなくてほぼ初挑戦みたいなものだ。1年目から躍進できれば1番良いけど、そんな上手く物事は転がらない。去年のJ2覇者である磐田は1年でJ2に帰っていった。残留争いでは規模でサンガを大きく上回る神戸・G大阪・清水との戦いも強いられた。その中で16位でこそあるが、残留を掴み取った。それはどんな形であれ、2022年の京都サンガFCとして大成功である。何度も「運命を分ける瞬間」と書いてきたが、16位に落ちたという表現も出来れば、16位になったところで分岐点に立つ権利は自力で掴んだ。ここは去年まで、ずっとサンガの定位置だったJ2じゃない。横浜F・マリノス川崎フロンターレのようなワニとかサメみたいな集団がうじゃうじゃいるJ1リーグなのだ。成功に胡座をかいては未来はない。現状維持は後退だ。だがそれと、今年を成功と呼ぶ事に矛盾もないし躊躇いもない。

 

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そりゃあ、反省するべき点は多い。引き分けでも勝ちではあったが引き分けたのは事実だ。だがそれでも、上福元の鬼神のようなプレーの連続や最終節での白井康介のスーパークリアがこの試合へと繋いだし、ベンチに下がってから「もうちょっと控えないとイエローもらうんじゃないか」と思うほどにテクニカルエリアギリギリで声を張り上げ続けた豊川の姿を見て魂を感じなかったファンはいないだろう。

そして何と言ってもピーター・ウタカである。彼は試合前にこう語っていた。

 

この1試合の結果次第で、自分たちのキャリアが変わるよ。試合が終わって、ぶっ倒れてもいい。『No Excuse(言い訳のない)』の試合をするんだ。倒れたら、スタッフに運んでもらったらいいのだから。

 

【京都】1対1外した17歳年下のMF川崎颯太へ FWウタカが送った愛情あるメッセージ(11月11日付 日刊スポーツ)

 

まさしくその言葉通りの顔面ブロックだった。

そしてよく見ると、ウタカが顔面を押さえてうずくまったのはボールアウトした後……即ち、ウタカがブロックしてこぼれたボールを熊本が拾って、再度攻撃を仕掛けようとしている間はウタカは立ち続けていた。

ここで名前を挙げたのは数名だが、彼らだけじゃない。「SAdventure」というスローガンを掲げた今年、サンガが歩んだ道のりはまさしく冒険だった。その冒険の最後のページで見せたチームとして、個々としての献身で掴み取った残留は、素直に心が震えた。もちろんクラブとしてはそれでも今年を精査しなければならないし、その上で課題を洗いだにて来年に進まなければならない。だがこの"第35節"をそれまでの34試合と同じ基準で評価すべきだとは思わないし、そう考えれば、この熊本戦の評価だけは「良かった」の一言で良いんじゃないか、とも思う。

 

 

 

ちょうど10年前、2012年11月11日。

大木武に率いられた京都サンガFCというチームは、ホームの西京極陸上競技場で「勝てば昇格決定」というシチュエーションで戦っていた。昇格レースの主導権はサンガが握っていた。勝てば良かった。勝つだけで大木サンガはJ1に行けた。だが届かなかった。たった1点が獲れずに引き分けた。J1は潰えた。あの日も雨だった。そして曺貴裁率いる湘南に昇格を掻っ攫われていった。雨晒しの西京極の灰色の空の下、ただただ冷たい雨に打たれるしかなかった。

 

そして2022年11月13日…あれから10年を経てJ1に戻ってきた。

元号は変わり、そして舞台は西京極からサンガスタジアム by KYOCERAという新たな本拠地へと変わった。それでもあの時と同じように、運命の主導権はサンガが握っていた。たった1点を守り抜いた。たった1点を耐え抜いた。J1を繋ぎ止めた。あの日も雨だった。だけど屋根がある今日は、もう雨に濡れない。

 

 

シーズン総括ブログは追々更新します(いつ更新になるかわかんないからブックマークしといてね!)