RK-3はきだめスタジオブログ

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【後編】なぜ今季の欧州クラブジャパンツアーは空席が目立つ試合が少なくなかったのか?

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「今年のジャパンツアー結構空席目立った問題」に関して書いた前回のブログの続きになります。なので前回から読んでね!↓

 

 

 

【2023年夏の欧州クラブジャパンツアーの結果と来場者数】

6月6日 ヴィッセル神戸0-2FCバルセロナ@国立競技場→47335人

7月19日 横浜F・マリノス6-4セルティックFC@日産スタジアム→20263人

7月22日 ガンバ大阪0-1セルティックFC@パナソニックスタジアム吹田→12482人

7月23日 横浜F・マリノス3-5マンチェスター・シティ@国立競技場→61618人

7月25日 パリ・サンジェルマン0-0アル・ナスル@ヤンマースタジアム長居→25432人

7月26日 バイエルン・ミュンヘン1-2マンチェスター・シティ@国立競技場→65049人

7月27日 アル・ナスル1-1インテル・ミラノ@ヤンマースタジアム長居→13805人

7月28日 セレッソ大阪3-2パリ・サンジェルマン@ヤンマースタジアム長居→32430人

7月29日 川崎フロンターレ0-1バイエルン・ミュンヘン@国立競技場→45289人

8月1日 パリ・サンジェルマン1-2インテル・ミラノ@国立競技場→50139人

 

 

試合会場のバランス(前編)

②マッチメイクのストーリー性

③何をもってして"高い"と捉えるのか

 

 

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②マッチメイクのストーリー性

 

「ストーリー性」という言葉のチョイスが正しいのかどうかは自分でも今ひとつわかりませんが……。

ちょっとソースを失念したのでここで提示出来ないのですが(誰か心当たりある方いればコメント欄にでも貼ってください)、何かの記事か関係者のインタビューで、Jリーグ(ないしはJFA)は日本ツアーに於ける"欧州クラブvs欧州クラブ"の試合は基本的に認めないスタンスである…みたいな記事を見た記憶があるんですよね。ちょっと私も記憶が曖昧なのでソースとしては疑わしいですが、実際に今年以前で欧州クラブvs欧州クラブの対戦が日本で行われたのは2019年のバルサvsチェルシーくらいしか記憶にないですし、他国ではそういう試合が多く組まれている事を思うと、それはJリーグ側の何かしらの意図が働いていた事は自然な推測だと思います。

 

 

 

Jリーグがそうしたスタンスを持ち合わせていたとしたら、個人的にそれは結構肯定的なんですよね。それは選手側への経験値という意味でもそうなんですけど、それは興行的にも……例えば、欧州クラブと欧州クラブの試合って、極論で言えばチャンピオンズリーグで実現する可能性は普通にある訳で、言ってしまえばテレビではまあまあ見れる可能性あるし、ライブでも欧州に行ってしまえば見れる可能性はある。でもvsJクラブになると、レギュレーション的には絶対に実現しない対戦カードが爆誕する訳じゃないですか。特にそのチームのファン・サポーターにとっては「いつものチーム(選手)があのチーム(選手)と戦うのか…!」という感慨とストーリー性が芽生える訳で、その時点でやっぱり希少性は増しますし、希少性が高まる事は興行としての訴求力が増す事にも繋がるんですよね。もちろん競技レベルとしては欧州vs欧州の方が高いでしょうけど、これはサッカーに限らない話として……レベルの高さと興行としての訴求力は必ずしもイコールではないですし、そこにネイマールクリスティアーノ・ロナウド、ケヴィン・デブライネのようなわかりやすいアイコンがいるかどうか、そしてそこにエモーショナルな部分を足せるかどうかが肝になってきますし、それを普段からどっぷりJリーグや欧州サッカーに浸かっているファンだけじゃなくて、金払ってまでDAZNに入っている訳ではないような層にまで訴求力を提示出来る要素を揃える必要がある訳です。なので、PSGvsインテルの5万人動員は普通のスタジアムなら満員なので成功と呼べる部類だと思いますが、欧州クラブvs欧州クラブで大成功させるなら…それこそマンCvsバイエルンのような「行くとこまで行った黄金カード」くらいでないと、ちょっとシビアな結果に苛まれるような気はしました。

 

 

③何をもってして"高い"と捉えるのか

 

まぁ、前編でも言いましたけど、ここまでつらつら色々並べたところで結局は「チケット高すぎ」ってところになっちゃう訳ですよ。結局ね。

基本的にこういう華試合は特別試合という性質上、通年で利益を求めるリーグ戦とは違って1試合単位での収支を考える必要がありますし、そもそも欧州クラブは当然海外から来る訳ですから、渡航費や滞在費も含めて通常のJリーグよりも遥かに経費が嵩む。なので、チケット料金が高くなる事自体に関しては仕方ないというか、むしろ自然であり妥当ではあります。

ただそれを前提として……今回のジャパンツアーの管轄としては【①セルティック独自に行ったツアー】【②Jリーグ主導でマンチェスター・シティバイエルン・ミュンヘンを軸にしたツアー】【③インテルvsアルナスルを含むPSGを軸にしたツアー】の3形態があった訳ですが、6月の神戸vsバルサを含めて①と②の価格設定はまだ一般的な相場の範疇にはギリギリ収まっていたと思うんですけど、③に関しては確かに相場から逸脱していたなぁ…という感想は素直にあるんですよね。C大阪vsPSGの試合の空席がかなり目立った要因はほぼそこに集約出来るでしょうし、だからこそ香川真司がわざわざ苦言を呈した訳で。

 

 

ただ言っても……めちゃくちゃ極端な例えですが、例えば同じ1万円でも「缶ジュース1本1万円」ならクソ高いけど、「最新のフルスペックPCが1万円」なら何かを疑うぐらい安いのと同じで、「1万円」という金額そのものが高い・安いの基準になるではないじゃないですか。特にサッカーだとかスポーツは食品や家電を買うようにモノとの等価交換ではないだけに、価値の感覚を明確に定義するのは難しいからこそ、その1万円を安いと感じさせるか高いと感じさせるかになってくる。そしてその為に重要なのが希少性であり、バランス調整の工夫だったりする訳です。

例えば香川の苦言をフォローする形で発した本田圭佑の「子供連れでも気軽に観戦できる安い席を作った上で、席数を減らして希少性を高めたVIP席の金額を上げる」というツイートは、客層とその人数に応じたチケットの価格と客単価のバランスを調節する事で、希少性と買いやすさを両立させようとする工夫の一つとして妙案と言えるでしょうし。

 

 

その他にも国立と長居で固めるのではなく埼スタ日産スタジアム、或いは東海地方の豊田スタジアムにも試合を振る事で「クリロナを大阪で見れるのはこの日だけ!」という状況にして1試合の希少性を高める事も一つの工夫、対戦相手をJリーグクラブに設定する事で「普通なら起こり得ない試合」を作り出す事も一つの工夫な訳です。

加えて、これは前編で語った事と重複しますが……よく客入りがJリーグバブルの時代から減っているとは言いますけど、平均入場者数で言えばJリーグバブル全盛期の1993年当時とそんなに変わらないんですよ。でもあの時代はJリーグチケット自体がプラチナチケットと化していた。それはやっぱりスタジアムのキャパシティが当時は2万人収容のスタジアムですら数会場しかなくて、自然とチケットは争奪戦になっていったし、スタジアムは満員になった。そうするとその試合の希少性は自然と生まれてきて、チケット1枚に対する価値は跳ね上がる。チケットの価値が跳ね上がれば、額面金額は最初に見た時よりどこか安く感じる…その連鎖があのJリーグバブルだったと思います。今季のJリーグで言えば、G大阪は第11節C大阪戦で3.5万人近い観客を集めましたが、この試合はチケットが完売した事でプラチナチケットと化し、試合の希少性がすごく高まっていました。しかし例えば、横浜FMが7万人収容の日産スタジアムで3.5万人を集めたとしても、それはチケット完売どころか「半分売れ残った」という形容も出来てしまうんですね。

今回で言えば、マンチェスター・シティが絡んだ2試合以外…特にPSG群の試合やセルティックの2試合はチケットがほとんど売れていない事が常に白日の下に晒されている状態になっていて、いつしか「チケットが高過ぎて余りまくってる」という空気感が出来ていましたし、いざ試合が始まった時にスタジアムのガラガラ感も吹聴されるようになった。前編で「この値段でインテルvsアルナスルが5万人埋まると予想した関係者が本当にいるのか?」と書きましたが、ここで正しい推測をして、最初からスタジアムのキャパシティをサイズダウンしておく事も一つの工夫だと思うんですよね。それによって完売しやすい状況にする、満員を演出する、それによって希少性が高まればチケットの価値は自ずと上がり、チケットの金額の見え方が変わる……話が変わってくるので深くは書きませんが、アメリカのメジャーリーグサッカーはその状況を上手く活用しているような感覚もありますし。

…つまるところ、今回のジャパンツアーの印象としては…個人的な見解ですけど、「高い割にはあまりにも工夫が足りなかった」という部分だと思うんです。

 

 

 

その点で言えば、去年のPSGジャパンツアーは興行としてあまりにも完璧な事例だったと思うんですよ。

 

 

メッシ・ネイマール・ムバッペというあまりにもわかりやすいアイコンの存在、東京・埼玉・大阪という地域バランス、そこでそれぞれのJクラブと戦い「メッシvs川崎」「ムバッペvs浦和」「ネイマールvsガンバ」のようなドリーム感を生み出すマッチメイクに、空き日には様々な文化交流のアトラクションや積極的なファンサービスを付随させ、しかもコロナ禍を抜けて初めてくらいのビッグイベントという時代の後押しもあった……今振り返っても、去年のPSGジャパンツアーは興行を120%成功させる為の要素を全て揃えていたように思います。

ただ、今年と比較すると……チケットが発売された時点でメッシの退団は発表されていましたし、ムバッペもですが、それ以上にネイマールも今夏で退団すると囁かれていた。観戦を希望した多くの人間は去年はメッシ・ネイマール・ムバッペが来た事を知っている上で、今年はもしかしたら3人とも来ないかもしれないし、その上チケットの金額も去年より高い……おそらく運営側は昨年の成功を踏まえてチケット料金をより高額に設定したのでしょうが、チケットを買う側からすれば「去年より希少性が無いのに金額だけ高くなった」という印象は少なからず与えてしまった部分はあったと思いますし、選手の退団は致し方ない部分があるとは言えども、じゃあ金額の再考をする事もなければ、金額に価値を上乗せするほどの工夫も無かった。それは痛手だったのかな…と。

 

 

 

無論、試合内容はスペクタクルなものが多かったですし、一般的には無名の選手でもやはりああいう"選ばしクラブ"に入団する為のハードルを超えた選手達ですから、彼らの妙は随所に感じる事が出来たはずです。

今後、ジャパンツアーがどういう展開を見せるかわかりませんが、またこういう機会があって欲しいという気持ちと、その際にはお互いの為に価値を創出する為の工夫を施して欲しいなと…。

 

 

メジャーリーグって文言書いたタイミングで吉田麻也移籍発表見た。

ではでは(´∀`)