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奪還〜ガンバ大阪2018振り返り企画〜最終話 ターニングポイント【2018.9〜2018.12】

第1〜3話は下のリンクから先に読んで頂けると幸いです♪

 

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第24節、残留争いの直接対決という大一番となった鳥栖戦で0-3の完敗を喫したガンバはまさしく崖っぷちに追い込まれる事になった。

幸い今シーズンは稀に見るほどの激しい残留争いとなっていた為にすぐにどうこう、という話ではなかったが、ラスト10試合となったタイミングで自動降格圏の17位。直接対決で敗れた為、16位の鳥栖とはこれで4の勝点差が付く。1敗が余命宣告となり得る時はすぐそこまで近づいていた。

前回の第3話でも書いたが、レヴィー・クルピから宮本恒靖への監督交代以降は組織としての向上も見られ、選手個々のパフォーマンスも確実に向上していた。だが相次ぐ逆転負け、そして後半アディショナルタイムの失点劇は内容に向上が見られる分、「もう何をどうやってもダメなのか…?」とそんな気分にさえさせる。

しかし追い込まれたガンバにも、まだ一つだけすがれる存在が残っていた。

 

「今野が復帰さえすれば…」

 

期限は過ぎた為に今から補強は出来ないし、キャンプを張るほどの時間もありもしない。ガンバが生き残る為に残された最後のカード、それこそが「今野泰幸の復帰」だった。

第25節、相手は2位の川崎フロンターレ。残留争いを余儀なくされているチームにとってはこんな時期に絶対に戦いたくない相手だ。しかしこの試合から今野泰幸が復帰したガンバは、ここから過去に例を見ないほどの快進撃を巻き起こす。

 

 

 

宮本監督の川崎対策もハマって川崎を2-0で撃破。後半の早い時間に追加点を奪えた事もあって、この日は悪循環にハマる事も無かった。今野がいるという精神的な余裕もあっただろう。だが、今野復帰は大きな追い風と言えどもこの勝利はガンバが強かったというよりは川崎対策がハマった、という印象の方が強く、迂闊にガンバのV字回復を期待出来るとまでは言えない状態で代表ウィークに伴う2週間の中断期間に入った。

実際、この中断期間中に当ブログで書いた残留争いの考察で私はガンバを15位で予想している。今野の復帰で残留は果たせるだろうが、前半戦の不信をチャラにする程の躍進までは想像し辛かった。

 

 

今野、そしてアジア大会に韓国U-23代表のオーバーエイジとして参加したファン・ウィジョが復帰し、切れるカードを全て切った格好となった第26節神戸戦はまさしくガンバにとって芽生えた希望の説得力が増すか、或いは希望が絶望に変わるのかが問われる一戦となった。

前半、今野をDFラインに配置した3バックを採用して1点ビハインドで折り返すと、4バックに変更した後半は倉田秋とウィジョの得点で今シーズン初、リーグ戦では約1年ぶりとなるアウェイでの勝利を収めた。後半から採用した4バックシステムはこの後に於ける宮本ガンバの最適解と呼べるシステムとなり、神戸戦の後半は戦術的な意味でターニングポイントとなった45分だったと思う。

とはいえ、2連勝までならガンバはクルピ時代の第11節鳥栖戦第12節仙台戦でも果たしている。ガンバが明らかに上昇気流に乗った、一つの悪いスパイラルを完全に断ち切る事が出来た、そう思えたのはこの試合ではなく、この次の試合となる。

 

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第27節、敵地で相見えるのは清水エスパルス。前半戦のラストゲームとなる第17節にホームで対戦した際は1-2で敗れ、これがクルピガンバ最後の試合となった因縁がある。あの試合の頃とは違う…それを何としても証明しなければならないゲームとなった。

ガンバは前半から完璧な入りを見せてウィジョの2ゴールで2点をリードする。この頃のガンバファンの心情としては、前半が完璧な試合だったからこその恐怖に苛まれていた。

そして後半、清水に1点を返されてからは「どこかで見たような試合展開」が劣勢というわかりやすい形で現れる。2点リードをひっくり返された第20節名古屋戦、ラストワンプレーで追いつかれた第19節磐田戦、第22節札幌戦で我々を絶望に追い込んだ試合と似たような展開になり始めれば、もう後は祈るような想いで否が応でも頭を過るデジャヴという言葉と戦いながらDAZNの画面を見つめるしかない。

第17節では決勝点を奪ったドウグラス、この後日本代表デビューを飾る事になる北川航也を中心に止まる事のない猛攻を仕掛けてくる清水と決死の思いで体を張った気迫溢れる守備を展開するガンバ…。

私は基本、非科学的な事は余り信じたくない。ただこの時ばかりは勝利の女神という偶像であるはずの存在を信じたような気がする。GK東口順昭のさらに後ろでガンバを救ったのはクロスバーだった。

 

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3連勝を飾った試合後、宮本監督がクロスバーにお礼を言ったシーンがメディアに取り上げられたが、戦術的なターニングポイントが神戸戦の後半だとすれば、全ての悪循環を断ち切り、前半戦のガンバと決別した流れとしての意味はこの清水戦だったと思う。前半戦の悪い流れの全てと、宮本ガンバになってからの絶望的な感情の全てを、クルピガンバに引導を渡した清水に勝つ事で振り切る事が出来た。9連勝の中で1番大きな意味を持った試合は始まりの川崎戦でも無ければ、広島を首位から引きずり下ろした試合でも大阪ダービーでも無く、この清水戦だったのかもしれない。

 

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第28節広島戦GAMBA EXPOと銘打たれチケットは完売。満員のパナスタという最高の雰囲気で行われた試合では、終盤のウィジョのゴールで当時の首位であった広島を撃破。ホーム最終戦の挨拶に於いて宮本監督が「広島の城福浩監督と話した時に、スタジアムの圧を感じて何も出来なかったと言っていた」という趣旨の事を話していたが、この試合の時にはもう上昇気流は確かなものになっていたのだろう。この試合は私も現地に居たが、広島の攻撃にハラハラしなかったと言えば嘘にはなるものの、それは第7節磐田戦第9節C大阪戦、果ては前節の清水戦などで抱いたハラハラとは全く別物の感情だった事は間違いない。

この試合で今シーズンの定位置ともなりつつあった降格圏を脱出したガンバは勢いそのままに第29節ヤンマースタジアム長居での大阪ダービーにも1-0で勝利。この試合では絶対的エースのウィジョを出場停止で欠いたものの、代わりに出たアデミウソンが自身の復調を印象付けるパフォーマンスを見せ、チームとしての強さを見せた形と言えよう。

これで5連勝。全く勝てる気がせず、DAZNスポーツナビの速報を見るのが怖かった時を乗り越えたガンバは負ける気がしなかった。三冠を達成したあの時以来の感情だった。

 

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今シーズンはガンバの他に、最下位からV字回復を果たした名古屋の7連勝も話題となった。だが名古屋の連勝は文字通り勢い的なもので代表ウィークによる中断と同時に途絶えたのに対し、10月の代表戦明けの第30節横浜FM戦では宮本監督の巧みなゲームプランが光って6連勝。7連勝を決めた第31節浦和戦では、ナショナルダービーと呼ばれるようになったあの頃のガンバのような試合展開を見せた。1点目の小野瀬康介のミドルも2点目のウィジョのゴールもスーパーゴールだったが、あの頃のガンバを思わせるような、細かく崩して奪ったアデミウソンの3点目には思わず込み上げてくるものを感じずには居られなかった。

 

 

 

最終節、3ヶ月前の状態なら逆の立場だったかもしれない柏の失う物が無くなった捨て身の勢いに押される形で敗北を喫したが、第25節から始まった連勝は最終的に9まで伸び、ラスト10節の時点で17位だったチームは順位表の左側、9位までジャンプアップを果たす。私もガンバファンになってからそれなりの月日が経ったが、リーグ優勝を果たしたシーズン以外では1番感情的になったシーズンだろう。夏場の絶望的な時には、シーズンが終わる事を寂しいと思えるとは思っていなかった。あんなに最悪だと思っていた2018年がこのような終わり方をするとは、あの時誰が想像出来ただろうか。

勿論、9連勝したからと言って今シーズンを手放しにハッピーエンドとして捉える事は出来ない。今シーズンを振り返った時、「もし今野が最後まで復帰出来なかったら」という所を避けては通れないし、補強も含めて来シーズンの事はしっかりと考えなくてはならない。「クルピなら適当に若手も育成してくれるやろうし、補強と適当でええやろ!」的な今シーズン開幕前の事なんて絶対にしてはいけない事はフロントは身に沁みて感じてくれていると信じたい。出来れば2012年の時点で刻んでおいて欲しかったけど。

 

 

 

フロントの無茶振りレベルの登用にも関わらず、あの状況からチームを立て直した宮本監督には当ブログで既に何度も述べているが感謝しかない。今野の復帰が最大要因ではあると思うが、今野の復帰があそこまで完璧にハマったのは苦しい状況ながらも失われたチームとしてのベースを植え付けた宮本監督の功績だろう。

例え来シーズンがどんな結果になったとしても、宮本監督が今シーズンのガンバに与えた結果は決して色褪せる事はない。ただそれを前提にしても、「宮本ガンバとしての真価」が問われるのはこれからのシーズンだ。西野朗監督がガンバの監督として保持した最長監督記録を超えるのは宮本恒靖であって欲しい……ガンバファンとして、それを願わずにはいられない。

 

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群雄割拠のJリーグに於いて、強豪と呼ばれても露骨に不振だったシーズンが無いのはせいぜい鹿島くらいだ。鹿島と一時代を築いた磐田はJ2に落ちたり今年はプレーオフに参戦するハメになり、東京VはJ1在籍年数をJ2在籍年数が上回るのも時間の問題だろう。横浜FM、浦和、名古屋、柏、広島といった優勝経験チームも、それぞれの形で盛者必衰を経ている。ガンバにとっての2018年は2012年と同様に、いつかは迎える事になるシーズンだったんだろうと思う。

ただ、ある意味2012年よりも濃すぎたこの1年で得た成功と失敗を良い方向に向ける事が出来れば、新しい黄金期を味わえる日々がまた訪れるのかもしれない。

 

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終。

 

 

【奪還〜ガンバ大阪2018振り返り企画〜はこれにて完結です!お付き合い頂きありがとうございました(´∀`)】

 

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