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Road to Tokyo…のようで違う話。〜東京オリンピック・五輪サッカー観戦日記〜第9話 五輪開会式の朝(2021.7.23)

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前話第1話はこちら↓】

 

 

 

7月23日(金)

 

ド深夜に自転車を飛ばし、嵐山まで来てみた。

時間はまだ朝6時にもなっていない。コロナ禍の前だとしても、多分この時間なら業者の方くらいしか渡月橋を渡る人はいないだろう。

遂に始まった東京オリンピック。昨日、男子サッカーは南アフリカに1-0で勝利した。

 

 

苦しい試合ではあったが、ここからメキシコとフランスが待っていることを思えばとにかく勝点3を掴めた意味は大きい。ソフトボールも2連勝と幸先が良いし、なでしこジャパンにしてもカナダとの初戦をドローに持ち込んだことはポジティブに受け止めていい結果だと思う。

 

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本来なら今頃、明日に迫る出発に向けて荷造りに追われているはずだった。開会式を見て、寝て、飛行機に乗って………もっといえば、その一連の流れは一年前に消化しているはずだった。この一年半で起こったありとあらゆる事は多くの人にとって理不尽な仕打ちだった。それを改めて痛感している。

あと何時間かすれば開会式は始まるのだが、どういう形になるのかはさっぱり読めない。色々ありすぎた。開会式に限らず、これまでの間に…。

 

 

五輪を開催すべきか、中止すべきか……コロナ禍になってから何度も繰り返されたこの議論を眺めて五輪の賛成派と反対派が争っているのは五輪の開催と中止では無いような気がしてきた。

今や五輪はディベートを通り越してゲームと化した。いや、ツールと化したと言った方がいいだろうか。JOCIOC、一部企業にとっては手段を選ばない利益を得るツール、一部反対論者にとっては気に入らない者という玩具を生み出すツール……五輪そのものが、互いの武器で場外乱闘を繰り広げる為のゲームに成り果てた気がする。開催派と中止派のどちらの主張が押し倒されるかのゲームだと捉えれば、開催はこのまま進みそうだけど無観客にはなったのでドローといった辺りだろうか。

メディアにも確信犯めいたところはある。この前のコカ・コーラの件は特にそう思った。

 

https://nordot.app/790158940154216448?c=39546741839462401

 

内容に関しては記事を読んで頂きたいが、かいつまんで言うと「組織委員会が茨城カシマスタジアムで観戦する招待小学校に対して、飲み物の持ち込みはコカ・コーラ商品か、他社の商品であればラベルを外すことを求めた」という記事だ。当然ながらこの記事が出た後はその他諸々の五輪問題の一角として批判と非難を受け、Twitterでも「コカコーラ不買」的な言葉と共にトレンド入りを果たした。

これに関しては批判派も悪くはないというか、この記事を読めばそりゃそういう反応になるよな、とは思う。ただ一つ、重要な事柄がこのニュースには書かれていないのだ。

 

Twitterにも書いたが、そもそも往々にして国際大会に於いて飲食物の持ち込みは認められていない。それは東京五輪に限った話ではなく、過去のオリンピックやサッカーワールドカップ、身近な例で言えば2019年ラグビーW杯でもそうだ。私自身もロシアW杯を現地で観たが、日本の国内イベントとは比べ物にならない厳重な手荷物を経た上で飲食物はその場で捨てるか、もしくは大きな荷物を預けたロッカーに置いてくるかの二択を求められた(大きな荷物も持ち込み禁止の為)。理由としては、日本ではあまり馴染みはないけれどテロ対策が一つある。もう一つは、そもそもこのような国際大会に於けるスポンサー権というものは「CM+関連施設での独占権」をセットとして販売する訳で、一部の業種を除いてスポンサーはスタジアム内には同業他社を入れない事を保証して販売するのだ。これはスポーツイベントというよりも、日本の各種国内イベントが比較的その辺りを緩くしてもらっているだけと考えた方がいい。世界的にこの件の相場は「スポンサー企業だろうがなんだろうが持ち込み禁止」なので、仮に東京五輪が全ての持ち込みをシャットアウトとしても、国際スポーツイベントの独占販売という意味での批判ならまだしも、それは東京五輪として批判されるような事ではないのだ。

確かに、今回のカシマスタジアムに訪れる観客は招待された小学生だから事情が違うんじゃないの?と言いたくなる気持ちはわかる。しかしむしろ、そういう事情だからこそ今回は特例としてコカ・コーラ製品の持ち込みどころか、他社製品でもラベルを外せば持ち込める事が可能となっているのだ。これまでのケースからするとこの措置は相当な譲歩である。この譲歩を最終的に決めた機関がどこなのかはわからないが、これに関してはむしろ東京五輪はよくやったとさえ言われてもいい部分なのではないか。

 

 

この記事の中で、共同通信は嘘は一切ついていない。ただの一つも。事実だけを書いている。だが正確に言えば「3つある事実のうち2つだけ書いた」が正解なのだ。この事を知っているのはスポーツビジネスに精通している人か、或いは私がそうであるように実際にこのような大会に足を運んだ者くらいだろう。特に日本は比較的自由に飲食物を持ち込む事が出来るから尚更なので、この事実を知っている人が少数派なのは否めないし、この記事を見て批判の声を上げた人を迂闊には責められない。

だが、これまで過去に凡ゆるスポーツイベントを取材してきた実績のある共同通信がこの事を知らない訳はない。むしろあれほどのメディアで知らなかったら問題なほど。しかし今、特に五輪関連の話題ではあえて完全な記事ではなく、八分目くらいの記事を書いて残りの二分を読者に想像させるような記事に仕立てた方がビジネスとしては正しい。五輪の運営に関する話題の記事は今や「賛成派にとって都合の良い記事」か「反対派にとって都合の良い記事」に分かれるし、そうすれば今回のようにアップさえすれば後は勝手に彼らは紛争を始めてくれる。嘘さえついていなければ、それでメディア側が何らかのダメージを背負う事はない。あまりメディアの悪口をこのブログで書きたくはなかったが、私自身が抜け落ちた注釈を把握できていただけにこの共同通信の記事には確信犯めいた感覚を覚えた。

 

 

 

前フリが非常に長くなってしまったが、要するに何が言いたいかというと……結局のところもはや、東京五輪をめぐる場外戦は賛成派だろうが反対派だろうがスマッシュブラザーズのように少しでもダメージを与える事が出来ればそれでいいゲームになってしまったように思う。上に挙げたニュースは反対派の人達の方が多く噛み付いたが、前述したように事情を知らない人は多いだろうし、その人達が叩きに走る事は自然の流れではあると思う。だが、ラグビーW杯がつい最近行われた事を踏まえるとあの中にこの事を知っている人は間違いなくいる。おそらくこの記事を最初に拡散させた人はスポーツイベントの事情を知らなかったのだろうけど、五輪への反感としてトレンドに入った流れの中でそういった経験を挟む事は水を差す事に他ならないのだろう。このコカコーラの件は自分の中でそれを強く感じた。

 

これは何も反対派に限った話ではなく、賛成派だって同じ部分がある。いや、なんなら今のSNSが発達したこの時代ではオリンピックやコロナ禍も関係ない。ニュースは正しいかどうかではなく、自分にとって都合が良いか悪いか、自分の思想や考えと近いか遠いか、なのだ。近年はその事を嫌でも感じる事が多かったが、今回の五輪の一連の騒動でそれを痛感した。もちろんそれは自分への自覚と戒めを含めて、なのだけど……。

 

 

 

あと何時間かすれば開会式が始まる。

小山田氏の件に関しては五輪以前からそれなりに有名な話だったから、そこの調査は必要だったようにも思う。ただ、小林氏の件になると少し話が変わってくる。解任される理由には足る部分があったのは否めない。だが、あの映像を探して引っ張ってくるには「意図」が必要だったように思う。

別に彼らを擁護しようと思っている訳ではない。だが正直、この流れが加速していけば、目的を達成する為の手段として確立されてしまうのではないか。これから先、作ることや切り抜く事も可能になるのではないか。技術はこれからも後戻りはせずに進化するだろうし、そのハードルも低くなるかもしれない。その先には韓国で俗に呼ばれる「国民情緒法」的な状態になってしまうのではないか…とか。その危惧はこの騒動で少し感じた。

 

果たして開会式はどうなるのだろう。

派手にしても簡素化してもどちらにしても色々と言われるだろうけれど、少しでも素敵な式典に仕上がっていてほしい。その答えはあと少しでわかる。

 

 

 

つづく。

 

 

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