喜怒哀楽〜2020年のガンバ大阪を振り返る〜第3話 波瀾万丈オクトーバー

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第17節札幌戦……この試合は2018年第25節川崎戦や、2019年第12節C大阪戦のように大きな分岐点となった。まぁ、ターニングポイントという意味ではいずれもこの前の試合という言い方をした方がいいのかもしれないけれど…。

最下位相手にショッキングな敗戦を喫した第16節湘南戦からはメンバーが大きく変わった訳ではない。3人変更があったとはいえ、この3人はある種、いつもの交代パターンと言えるメンバー変更だった。大きく変わったのは他でもない、システムである。

 

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昨季以降、宮本恒靖監督がこだわっていた3バックと決別し、システムを4-4-2に戻した。無論、3バックと4バックにはそれぞれのメリットとデメリットがあり、一概にどちらが良いと言えるものではない。だが少なくとも、この時のガンバにとって4バックへの回帰は戦い方を整理する上で重要だった。特に夏場は戦犯扱いさえ受ける事の多かった藤春廣輝もイキイキするようになり、獅子奮迅の活躍を見せていた井手口陽介と、遠藤保仁矢島慎也からレギュラーポジションを掴みつつあった山本悠樹のWボランチは補完性という意味でもガッチリハマる。札幌戦、ガンバは遠藤、髙尾瑠でカウンターを仕掛け、最後は藤春のクロスを途中出場渡邉が詰めたゴールで1-0の勝利を収めた。

 

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だが、勝利だけなら第14節仙台戦も4-1で勝利した訳で「○試合振りの勝利」とかそんな訳ではない。重要なのは次の試合からで、仙台戦の次の柏戦では仙台戦で得た得失点差を全て吐き出す敗戦となった事からもその重要性は計り知れない。加えて、札幌戦以降のスケジュールは名古屋→広島→鹿島→鳥栖FC東京横浜FMと続く。鳥栖はともかく、名古屋とFC東京はこの時点で上位につけていたし、広島、鹿島、横浜FMの3チームは勝点が近い。上手くここで勢いに乗れたなら一気に上位進出も可能になる。今年のガンバの成績を見ると、川崎を除いては良くも悪くも「相手が強いか弱いか」はそこまで関係無かった。そんな中、パナスタで2勝1分とパナスタを得意とする名古屋との対決が幕を開ける。

 

 

 

この日も4バックでスタートしたガンバだったが、前半は札幌戦の勝利がハッタリにさえ見えるほど悪い展開で夏場の悪いところを全て詰め込んだかのような試合展開だった。GK東口順昭の好セーブもあって前半を1失点に抑えるが、1点のビハインドも当然とすら思えるような試合展開と言って差し支えない。だが後半に入ると試合展開は一変し、53分に山本の直接FKで同点に追いついたのを皮切りに面白いようにパスが回り、面白いように攻撃が進んでいった。

 

 

特に顕著だったのがパトリックの働きぶりだった。今思うと、パトリックには「覚醒」が3回あったように思う。1度目は2014年夏にガンバに来た時。この時は宇佐美という相棒を手にした事で持ち前の強靭なフィジカルを試合に活かせる形に昇華出来て、文字通りのフィジカルモンスターと化したところ。2回目は2018年の広島で、この時は広島が徹底的な「戦術パトリック」を敷いた影響もあるのか、ガンバ時代と比べてもシュートパターンのバリエーションが激増。ストライカーとして一つステップアップした。そして3度目が今年。33歳になってまた一段階進んだ事自体が驚きなのだが、今年のパトリックの凄みはポストプレイヤーとしての成長である。元々競り合いには抜群に強かったパトリックだが、例えばこの名古屋戦ではDFとの競り合いに確実に勝利した上で味方のチャンス…この試合で言えばアデミウソン小野瀬康介井手口陽介が飛び出す場面を促していたのだ。このような場面はこの名古屋戦以降急増し、話としてはこの試合の1ヶ月半後になるのだが大阪ダービーでのスーパーアシストはその象徴だったように思う。

 

話が少し逸れたが、1-1で迎えた76分には宇佐美貴史、渡邊、遠藤の3人を同時に投入というツネ様お得意の鬼畜交代を敢行。そして86分、遠藤ヤット大先生の超絶エロパスに抜け出した小野瀬の粘りから、最後は宇佐美が叩き込んで遂に逆転を果たす。まだ札幌戦に勝利しただけで、苦境から脱したとは言えなかったガンバが苦境から本当に脱出を果たした瞬間だった。だがこの時はまだ知らなかった。これが背番号7の移籍前最後の試合になる事を…。

 

 

第19節広島戦も2-1でなんとか勝利したガンバ。いつの間にか9位にまで落ちていた順位を7位に戻し、次節は勝点差1で6位につける鹿島との直接対決だ。そんな時だった。今でも忘れない10月2日のスポーツ報知の一報……正式発表はされていなかったが、鹿島戦ドラえもんでいうところの「ぼくだけの力できみにかたないとドラえもんが安心して帰れないんだ」状態ですらあった。

遠藤保仁ジュビロ磐田移籍……遠藤はガンバと契約更新はしており、磐田にはレンタル移籍だったので、この場で今、この事についてそこまで深く書いていこうとは思っていない。だが、遠藤の事も2020年の強く激しすぎる喜怒哀楽を表すパーツの重要部分だったのは言うまでもない。

 

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感情的にならざるを得なかった鹿島戦も2-0で勝利し、延期されていた第10節鳥栖戦、そして第21節ではFC東京もきっちりと撃破。特筆すべきなのは、今季のガンバは良いジンクスも悪いジンクスもことごとく打ち破られたのだ。

思えば2011年以来の開幕戦勝利から始まっていた。だがその後はガンバ自体の不振もあり、FC東京にはホームで12年振り、湘南に至ってはホームで22年振りの敗戦を喫する。逆にこれまでパナスタを得意なスタジアムとしていて、パナスタでガンバが勝てた試しのなかった名古屋、鹿島には勝利を収め、アウェイ戦では今までリーグ戦で勝ててなかった札幌厚別での札幌戦、長らく苦手としているアウェイ鳥栖戦、そして極め付けが19年振りの味の素スタジアムでのFC東京戦勝利。色々な呪いを解き放つように快進撃を続けたガンバは第22節横浜FM戦こそ引き分けに終わり、連勝こそ6で止まったものの、第23節で大分に勝った後の第24節では今季既に2敗を喫していた柏に逆転勝利。三浦弦太が怪我したら昌子源が復帰し、昌子源が怪我したら菅沼駿哉が出てくる圧倒的なCBの層の厚さをフルで活かしつつ、最後に勝負を決めたのは怪我の治癒以降圧倒的な存在感を見せるアデミウソンの一撃だった。アデミウソンの左脚から放たれたシュートがガンバの天敵、キム・スンギュが守るゴールを打ち破った時、今季訪れる負のイベントなどもう何も無いと思っていた。もう何も……。

 

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遠藤の移籍とはまた違った種類の衝撃のリリースが出た時、私はサイゼリヤで各種作業に勤しんでいた。イタリア絵画の真下の席、徐に開いたTwitterのトレンドワードの画面に飛び込んだ「酒気帯び運転」という言葉をガンバに結びつけてはいなかった。この2週間前にアルビレックス新潟の選手が起こした類似事件の続報か、或いはどこぞの芸能人か……。一つクリックした途端、我が目を疑ったのは言うまでもない。9月末以降、怖いものなど無いほどの快進撃を見せたガンバに最後の試練が降りかかる。特に今年は4人のFWを上手く組み合わせ、試合途中でガラッと入れ替える戦法と選手起用で掴み取った勝点は多いし、間違いなくそれがガンバにとって最大級の強みだった。それが突如としてら唐突に……。

2度目の札幌戦はもうすぐそこまで迫っていた。

 

 

 

つづく。