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喜怒哀楽〜2020年のガンバ大阪を振り返る〜第4話 時代

第3話はこちら

 

 

第25節札幌戦、この試合の持つ重要性は計り知れないほどに膨らんできた。

まずは一つはシンプルに順位的な側面。試合前の時点でガンバは2位につけていた。勝点で並ぶ2位セレッソ第25節を9月に消化済みで試合がなく、5位鹿島と6位名古屋は直接対決だからどちらかが確実に勝点を失う。4位FC東京の相手も首位の川崎だったので、勝てば優勝の可能性を僅かに残せると同時に、ACL圏内争いにおいて相当大きな加点になるところだった。

 

そしてアデミウソンの件である。

この札幌戦の影響は遠藤保仁の移籍報道が出た第20節鹿島戦と同じで、その結果一つが後々の流れに大きな影響をもたらすものである事は言われずとも推測できる。鹿島戦が近い将来のガンバを左右する一戦だとすれば、この札幌戦は2020年を左右しかねないゲームだった。

 

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遠藤保仁という存在が特別すぎる為に忘れがちだが、出場機会の少なくなった選手が他チームに移籍する事はごくごく自然だし、言ってしまえば「よくある話のうちの一つ」と表現も出来る。そうでなくても、これはどの道遅かれ早かれガンバにとって訪れる事柄だった。

だがアデミウソンの場合は事情が異なる。攻撃の核の一人である彼がやらかした愚行が試合に与える影響は、彼自身が前節の試合のヒーローだった事も拍車をかけていた。また、言い方は悪いがポッと出の外国人選手ならまだしも、アデミウソンはガンバで5シーズン目を迎えていて、外国人選手としては結構な長期間同一クラブで活躍したプレーヤーだ。実際、ガンバの歴史外国人選手の中でも2020年終了時点でオ・ジェソクに次いで2番目に在籍期間が長い。印象的なゴールのとても多いプレーヤーだった。2018年夏からは怪我も癒え、通年で活躍できるようになっていた時だった。そもそも宮本ガンバの歴史はアデミウソンから始まったと言っても過言ではない。間違いなく2020年の好調の立役者でもある。そんな選手があんなやらかし…クラブとして負の雰囲気に包まれない訳がない。もしここで負けたら……そもそも安定している2位では無かったし、一つ歯車が狂う事への恐怖は否定出来ない。アウェイ札幌戦は「好調に転じられるかどうか」のターニングポイントだったが、ホーム札幌戦は「スランプに陥らないかどうか」のターニングポイントだった。

 

 

それでもガンバは意地を見せた。

先制点こそ奪われたが、直後に渡邉千真ポストプレーから井手口陽介のゴールで同点に追いつく。後半には山本悠樹のFKからパトリックのゴールで逆転に成功すると、GK東口順昭を中心とした守備陣が終盤の札幌の怒涛の猛攻を耐え凌いだ。2-1。2位は固めた。後はこの2位を如何に守り通せるかだ。

 

少し話が前後するが、たしかにガンバは川崎との2度の首位攻防戦は2敗している。だが今思えば、直接対決とはまた違う…その後の流れを左右する「ターニングポイント」と位置付けられる試合は確かに勝利していた。開幕戦のマリノス戦に始まり、第17節札幌戦、第20節鹿島戦、この第25節札幌戦、そしてこの後に来る第28節浦和戦第33節横浜FC戦でもそう。というか宮本ガンバが発足した2018年7月以降、直接対決とはまた違う、そういう流れを左右するポイントは要所要所で押さえていたような気がする。

 

 

2020年11月3日、ヤンマースタジアム長居での大阪ダービー

順位としては2位のガンバと4位のセレッソという構図だったが、ここ数シーズンの事や今季のセレッソの出来、そして第2節の再開初戦の事もあってどこか「追いついた」みたいな気分だった。

 

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待ち焦がれた再開初戦で受けた虚無感…あの時のガンバとは全てが異なっていたし、まだ優勝の可能性を残すチームとして相応しい試合だった。今年のガンバは色んな喜怒哀楽に包まれながら、感情的になるような瞬間と出来事ばかり起こっていた。こうして振り返ると、今季一番感慨深さを覚えた試合はあの大阪ダービーだったのかもしれない。結果こそ1-1のドロー。勝ち切る事は出来なかった。それでも7月の再開初戦……セレッソ相手に全く歯が立たなかったあの悪夢から4ヶ月の時を経て、目の前で繰り広げられたのは間違いなくれっきとした上位対決だった。今年は余りにも色々な事が多すぎた。そんな中で飛躍的に成長したガンバ大阪…それを一番感じたのはどの勝利よりもあの大阪ダービーだったような気がする。引き分けた事でセレッソを突き放さなかったのは事実で、名古屋や鹿島との勝点差も大きくはないから、あの時点では5位以下に落ちる可能性だってあった。だが、11月3日の16時を少し過ぎた頃、心なしか満足気な笑みは浮かべていたと思う。

 

 

 

第32節前倒し分の神戸戦に勝利した後、無敗記録は最下位仙台にまさかの17試合振りの勝利を献上した第27節で途切れてしまう。それでも第28節浦和戦で逆転勝利を収めたが、1位2位の直接対決かつ、川崎が優勝に王手をかけていた第29節……川崎に圧倒的な力を見せつけられ、屈辱を味わう事になった。だが天皇杯決勝でもそうだけど、こればっかりはガンバ云々よりも川崎を称えるしかないし、ガンバがあの領域にまでまだ辿り着けていない事はそこまで悲観的に捉えるべきではない。川崎にしても時間かけて成熟させた末に今のスタイルと強さがある訳で。悔しさはあったけれど、あの姿は目指すべき姿の一つとして批判的に見るつもりは全くなかった。

去年から台頭していた髙尾瑠と福田湧矢、ブレイクした山本悠樹以外にも、アデミウソンの離脱や怪我人の急増もあったとは言えども奥野耕平、唐山翔自、塚元大、中村仁郎といったユース出身の若手選手も試合に絡むようになっていった。終盤は小野瀬康介宇佐美貴史、或いはCBの誰かが欠場している試合が一気に増えたものの、先制された第30節鳥栖戦をドローに持ち込むと湘南戦横浜FC戦に連勝。この時点で2位とACL、そして天皇杯の出場を確定させた。

2位……ガンバにとっては2015年以来、その2015年も年間勝点は3位でチャンピオンシップの結果によるものなので、純粋な勝点で2位まで来たのは2010年以来。西野朗監督退任以降であれば、長谷川健太監督の下で優勝した2014年以来の好成績だ。残留争いを強いられた一桁だったここ2年に対して、今季獲得した勝点は優勝した2005年と2014年よりも多い。近年の成績を思えば、今季の成績は純粋に賞賛されるに足るものである。

 

 

 

一貫性がない…みたいな事は今年のガンバが言われ続けてきた。だが、開幕戦のマリノス戦第33節横浜FC戦のゴールシーンを見るだけでもわかるが、あれだけ波瀾万丈な一年だったとしても宮本ガンバが今季目指した事、やろうとした事はブレてはいなかった。

勿論、内容としては押し込まれる試合が多かったのも事実で、東口のおかげでなんとかなった試合も少なくはないし、ここで過信するとそれこそ2019年序盤の二の舞になりかねない。2021年は間違いなく去年よりしんどい年になる。降格枠が4枠になる事は戦い方の面でも上位チームにだって影響を及ぼすし、ACLによる過密&変則日程は絶対にガンバに対してダメージを与えていく。だが、2020年は間違いなく良いシーズンだったをファンとして胸を張って言えるし、言うべきなのだ。逆に言えば、過信する訳にはいかない事はシーズン最後の試合でまたも川崎に返り討ちを喰らった事が何よりも選手に刻みこんでいるはずである。

 

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元号が令和に変わった直後、2019年の大阪ダービーから始まる宮本ガンバは、言わば「緩やかな改革の歴史」だった。2020年、ありとあらゆる喜怒哀楽を詰め込んで、最終的には成功と呼ぶべき結果を手にした去年は、そのギアを更に踏み込むには十分過ぎる事が多過ぎた。

2021年、ガンバはいつ振りかもわからなくなるほど久し振りに「背番号7」を空き番号としてシーズンの開幕を迎える。一つの時代が終わった時、また別の時代は訪れる。

 

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OLD TIME IS PAST NEW TIME BE COME
ALL RIGHT GET SET ON YOUR MARK
IT'S NOT TOO LATE BECAUSE WE ARE YOUNG
BECAUSE WE ARE YOUNG

 

TEENAGE EMOTION / BOØWY

 

完。